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《英国ゆずりの新しいスタンダード》Kz Guitar Works訪問インタビュー

試奏とモデル説明

2階には応接室があり、ギターやアンプが並んでいて、試奏や商談ができるようになっています。応接室に案内されると、珍しいスタッフさんが出迎えてくれました。

──何と!わんこがいるじゃないですか!

Kz 代表の愛犬、クロちゃんです。代表がこの部屋にいない時は、ずっとソファの上で寝ています。

Kz One Standard Solid(NAMM出展モデル)

Kz One Standard Solid

Kz One Standard Solid
  • Kz One Standard Solid
  • Kz One Standard Solid:ボディ
  • ネックバインディングは、NAMMショウのための特別仕様。
  • ケーラートレモロ
  • 何と23種類ものサウンドバリエーションがある、このブランドだけの特別な操作系。サウンドの自由度はかなり高いです。トーンのノブもお洒落ですね。
  • オリジナルピックアップ「KGW」
  • Kz One Standard Solid:ボディ杢目
  • トレモロ付きモデルなのに、背面はつるんとしています。これもケーラーの特徴。
  • Kz One Standard Solid:ヘッド
  • 背面のネジで弦を固定するロック式ペグ。チューニングの安定と、弦交換のスピードアップに貢献します。
  • 均一な目が美しいマホガニーネック。

──奇麗!とても美しいギターですね!この色調はしびれます!

「ケーラートレモロ」の採用

Kz 今まではセミホロウモデルのみだったんですが、こちらは新たにレギュラー入りした、空洞を持たないソリッドボディとなっています。「ケーラートレモロ」を採用しているのが、「Kz One Standard」シリーズの大きな特徴です。ボディへの加工が最小限で済みますから、貴重な木材を少しでも有効に利用できます。このギターはナットでロックしないので、ファインチューナー(ブリッジでチューニングする機能)は外しています。アームバーは特注で、ボディからの距離をシンクロナイズド・トレモロに近くしています。
ケーラーはアームダウンもアップも大幅にできますし、表側のネジを使って、アームのトルクとユニットの張力を操作できます。アームを使わないという人は、ユニットをロックするネジを締めることで固定することもできます。現在ではなかなか珍しくなってしまったブリッジですが、ケーラーは演奏も調整もやりやすい優秀なシステムなんです。

23通りの音が出せる「3トグルスイッチ・コントロール」

Kz 弊社ではこの操作系を「3トグルスイッチ・コントロール」と呼んでいます。まず、3つのトグルスイッチで、各シングルコイルのON/OFFを操作します。この状態は3基ともONで、全部反対にすると音が出なくなります。もう一つのミニスイッチが「シリパラ(シリーズ/パラレル切り替えスイッチ)」で、二つ以上のピックアップを使用する時の直列/並列を切り替えます。これによってハーフトーンも、ハムバッカーサウンドも出すことができます。ピックアップ3つのハーフトーンや疑似ハムバッカーも可能なわけです。

──実は分かりやすい操作系なんですね!ボリューム/トーンのポットもスイッチになっていますが?

Kz さらに、ボリュームポットがフロントの、トーンポットがセンターの、「フェイズ(位相反転。プラスとマイナスを逆転させる)」になっています。

3シングルでマホガニーボディ/ネック

Kz マホガニーネック、マホガニーボディで、セットネック仕様です。ネックはマホガニー柾目ワンピースです。柾目材はきれいに反りやすいので、ネックに最適なんです。3シングルモデルでここまでマホガニーが主張するギターも、なかなか珍しいのではないでしょうか。しかし弊社では、これが標準仕様です。
これまでマホガニー+マホガニーで弊社はずっとやってきましたが、新作の「Kz One Junior」では、メイプルネック/アルダーボディという3シングルとしては伝統的な木材を採用しました。しかし、セットネック仕様はそのまま残しています。弊社では、ボルトオンモデルのラインナップはありません。

Kz サドルからナット、ペグまでを一直線にしています。これによって各部に発生する摩擦を最小限に抑えることができますから、チューニングの安定度が高くなります。ロック式ペグが採用されていることもあって、アーミングを多用してもチューニングはほぼ維持できます。

メイドイン・ジャパンを主張するヘッドデザイン

メダル

このメダルは、Kz Guitar Works代表、伊集院家の家紋を中央に配置したデザインです。「家紋」は日本独特の文化ですから、このメダルはメイドイン・ジャパンの主張でもあります。

──エレキギターの設計って、もう出尽くしたように思っていたんですが、このギターは「新しさ」を強く感じさせてくれますね!

Kz 弊社のギターは、かなり特殊ではないかと考えています。ケーラーは今では珍しいし、ピックアップはオリジナルで、操作系も独特です。また、マホガニーボディにシングルコイルピックアップをダイレクトにマウントするというのも珍しいですね。

プロトタイプと最新のショウモデル 工房立ち上げ当初に作成したプロトタイプ(写真左)と最新のショウモデル(写真右)。ボディ形状に大きな変化が見られますが、ピックアップにも変更が認められます。

Kz 最初期のプロトタイプはボディ形状が現在のものと異なっており、レッド・スペシャルにかなり近いものでした。旧モデルはピックアップのルックスも違っていて、「ドッグイヤー」型になっています。現在の仕様では取り付け部分とピックアップ本体に境界線のない、スッキリとしたデザインになっていますね。しかし基本的な仕様はこの時点でほぼ決まっていました。

Kz One Standard Solid(NAMM出展モデル)試奏しました!

──チューニングをするときの生音の時点で、すごくいい感触です!鳴りがいいとか、乾いた音とか、音が速いとか、音の良いギターで使われる表現の全てが当てはまります。また、細すぎないネックが握りやすいですね。カッタウェイは深く、22フレットまで余裕で手が届きます。

フロント:柔らかさと丸さがありながら、低音域が出すぎず整理された印象。
センター:フロントの音をキュっと引き締めた印象。
リア:パリパリ/コリコリしながらバリバリ/ジャリジャリ言わないまとまった印象。

いらないところをしっかりと整理して、おいしいポイントをくっきりと際立たせているサウンドですね!シングルコイル特有の「弦ごとの音量差の問題」も、全く気になりません。レコーディングスタジオでキッチリ処理された音が、シールド直でギターアンプから出ているかのようです。マホガニーの個性が活きているのでしょうか。総じて太めな印象ですが、耳が受け止めやすい優しい感触で、なおかつくっきりと響きます。トーンもしっかり効きますね。トーンポットで「手ワウ」ができますよ。

シリパラも面白いですね!ハーフトーンでは「鈴鳴り」感がありながら、擬似ハムバッカーではしっかり太くて力強いサウンドになります。ノイズも出ません。不思議!
ギター一本であらゆる音を出したい、多機能なギターが欲しい、という人には最高のギターですね!

Kz センターピックアップが「逆巻き&逆磁極」になっていますから、「センター+リア直列」にするとハムキャンセル効果が働いてノイズは出なくなります。逆なのはセンターだけですから、「フロント+リア直列」ではノイズが増えますが、フェイズアウトすると減ります。
シリパラは使い勝手がいいですね。リア+センターのハーフトーンでコードを弾きながら、ソロでシリパラを切り替えると、リアのハムバッカーサウンドになる、なんていう使い方もできます。
「シングルコイル直列」は、ハムバッカーのコイルタップとは逆の発想ですね。コイルタップは「減らす」方向なのでパワーダウンした感じですが、こちらは「増やす」方向ですから、パワーが増した感触になります。
直列/並列を切り替えても音量差はあまり目立たちませんから、制御しやすいですよ。これも弊社オリジナルピックアップとセッティングの特徴です。ピックアップのセッティングについては、濱野さんがギターごとの個性に合わせ、一台当たり時間をかけて追い込んで、最適なポイントにビシっと設定しています。

──リア+センターのハーフとリアハムバッカーの切り替えはSSHストラトでもできるんですが、ストラトの5Wayスイッチが苦手なギタリストもいるんです。リアにするのはいいけど、ハーフトーンに戻すのにちょっと神経を使いますから。いろいろな可能性を秘めている配線なんですね!

Kz One Standard Semi-Hollow

ホロウボディ

──こちらはネックに程よい厚みがありますね!総じてソリッドモデルより柔らかな、また軽やかに響く印象です。ボディ中央の一本線は、ラグビー選手のようなスポーティな印象です。ソリッドとセミホロウでは、どんなところに違いがあるのでしょうか。

Kz 現在の「Kz One Standard」は、ソリッドボディとセミホロウボディの両面で展開しています。カタログでは「わかりやすさ」を重視して、セミホロウモデルではFホールのついているものを掲載しています。ですがFホールの有無は選ぶことができます。これはサウンドの違いよりも、デザイン的な違いで選んでいただいております。たとえばこちらもセミホロウですが、Fホールはありません。

ソリッドボディはボディ厚を少し抑えて、セミホロウモデル(3.2~3.5kg)とだいたい同様の重量(3.4~3.6kg)になっています。また、ネックグリップにも違いがあり、セミホロウモデルはちょっと厚みが増しています。セミホロウ構造では音の伸びが弱かったり中低域が出にくかったりするんですが、こうした問題をネックで解決させています。弦長は、両方とも25インチです。

トップ材もオーダー時に選ぶことができます。やはり杢のあるメイプルが人気ですが、ほかの木材を使用することもあります。マホガニーをトップにするときには、ブックマッチのマホガニーボディにバインディングを施して完成させます。「Kz One Standard」シリーズについてはレギュラーモデルがあるわけではなく、ある程度の仕様が決まっているところにお客様のご希望を取り入れて、一本一本をカスタムメイドしています。

参考:古くて新しい「フェイズサウンド」
位相を反転させた二つのピックアップを鳴らす「フェイズ」サウンドは、60年代にはすでに実用化されていました。ギブソンの3ピックアップモデルやフェンダーのムスタングなどで、それを確認することができます。しかし近年のエレキギターでは、出荷時にフェイズサウンドが使えるものはかなり珍しくなっています。現代の感覚で聴くフェイズサウンドは、とても新鮮な感触です。

──このフェイズサウンドは、とても面白いですね!本来の甘いトーンとの違いがハッキリ出ていて、ホロウボディとは思えない、キャリキャリな音色です。

Kz 歪ませると、フェイズの面白さがもっと良く分かりますよ。ワウペダルを途中で止めたような印象です。ブライアン・メイさん自身がソロでこういう音を使っていましたし、60年代のブルースギタリストの間で流行した音でもあります。「Kz One Standard」はシリパラでフェイズができますから、違ったキャリキャリ感を味わえます。

──フェイズのドライブサウンドは、なんだか叫び声みたいな面白さがありますね!突き抜ける抜けの良さを感じます。ピックアップの組み合わせで、それぞれのフェイズサウンドに違ったフィーリングがあります。

Kz リア+センター直列でフェイズにすると、テレキャスターのリアピックアップのようなフィーリングになりますよ。

──何と!本当にテレキャスター特有のトゥワンギーなサウンドに聞こえます!
ストラト的な音も、ハムバッカーサウンドも、そしてテレキャスターサウンドも出せるなんて、これ一本でギターを三本持っているのと同じですね!

「ブリティッシュサウンド」と言われるけれど?

──Kz Guitar Worksのギターに対しては「ブリティッシュ(英国風)サウンド」と表現されることが多いように思いますが、この「ブリティッシュ」とは、どういうものなのでしょうか。

Kz イギリスのアーティストが出す音、またイギリスメーカーのピックアップの音に共通した「重さ」や「ダークさ」、また「ウェットさ」が、いわゆる「ブリティッシュサウンド」ではないでしょうか。イギリスのギターメーカー「バーンズ」の60年代のピックアップがその起源なんですが、イギリスのミュージシャンの手にかかれば、フェンダーでもギブソンでもブリティッシュの音になります。


Black Sabbath – Paranoid (Full Album)
イングランド発ブラックサバスは、現代ヘヴィ・メタルサウンドを形成した功績のあるバンドです。まさに暗さと重さを持ったギターサウンドですね。

この「ダークさ」は「抜けの悪さ」を伴う宿命なんですが、弊社のオリジナルピックアップはそこを出発点としながらもダークな部分を整理していて、抜けの良さを確保しています。ですから純粋なブリティッシュよりカラっと乾いた、明るいサウンドイメージになっています。

──確かに、太さがありながら、湘南の風のようなさわやかさがありますね!

2ハムバッカーモデル

Kz Guitar Works:2ハムバッカーモデル

──こちらはまた、ずいぶんシンプルにまとまっていますね。いままでのものと違う形のギターにも見えるんですが、同じボディなんでしょうか。

Kz きっと、ピックアップのルックスによって印象がだいぶ変わって見えるんだと思います。ボディ形状は今まで紹介したものと同じで、ピックアップと操作系が違っています。この個体も、Fホールはありませんがセミホロウボディです。ピックアップは弊社のオリジナルで、非常にシンプルな操作系ですが、コイルタップができます。

──さすがに2ハムバッカーは操作の説明がいりませんね!低音が整理されていて、スッキリ感と重量感のバランスがとても気持ちの良い音は、通常の3シングルモデルと同じ方向を向いているように感じられます。ハムバッカーサウンドは太くて力強く、タップ時のサウンドは鋭く響きます。ジャジーな甘い音色も出せますね!これは「コンプ感」と言うんでしょうか、アタック感がしっかりありながら、整ったサウンドになります。

Kz One Junior

Kz One Junior:メイプルネック/アルダーボディ仕様 「Kz One Junior」メイプルネック、アルダーボディ仕様。ジョイント部分はボルトオンっぽく塗り分けています。

Kz One Junior:アフリカンマホガニーボディ&ネック仕様 「Kz One Junior」アフリカンマホガニーボディ&ネック仕様。

Kz 3シングルモデルで「操作のシンプルさ」をフォーカスしているのが、2018年冬のNAMMで発表した「Kz One Junior」シリーズです。操作系は新たに採用した「5-wayレバースイッチ・コントロール」です。ピックアップの選択を5wayレバースイッチにまとめていますが、シリパラとフェイズは付けられています。また、「Junior」シリーズのみ、右ひじ部分にコンター加工が施されています。「ジュニア」というくらいですからお値段も控えめで、20万円台です。

Kz One Standard Semi-Hollow:40万円~50万円
Kz One Standard Solid:35万円~40万円
Kz One Junior:23万円~25万円

──ギターの値段を見慣れていない人にとってはかなり高額なんですが、最高の素材を使って、すべてハンドメイドで、セットネックで、ピックアップがオリジナルで、パーツも特別仕様で、と考えるとこの値段はかなり頑張って抑えていますね!


以上、工房内の様子とギターの特徴について、スタッフの東川さんと濱野さんに案内していただきました。続いては、代表の伊集院さんからもっと深いところをお聞きします。