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これからのBOSSを牽引する上位モデルのひとつ「技 WAZA CRAFT(わざくらふと)」は、これまで他社が行ってきたBOSS製品のモディファイに、BOSS自身が全力で取り組んだ意欲作です。これまでに「技 WAZA CRAFT」コーラスやディレイ、チューナーまでいくつものペダルがリリースされています。このうち歪みエフェクターでは、アナログ機種としては最も汎用性が高いと思われるブルースドライバー「BD-2」、並びにスーパーオーバードライブ「SD-1」がモディファイされています。
左:「BD-2」、右:技 WAZA CRAFT「BD-2W」
左:「SD-1」、右:技 WAZA CRAFT「SD-1W」
「技 WAZA CRAFT」では、これまで「アナログでできることは、全てやり尽くした」とまで言われるBOSSが、高品位なアナログエフェクターの美しい姿を目指し、各ペダルの設計を抜本的に見直し、通常モデルに比べて大幅なグレードアップを果たしています。
集積回路(IC)を使用していた「オペアンプ回路」からICに頼らない「ディスクリート回路」へ改め、価格を抑えるために採用を遠慮していた高品位な部品を厳選してしっかり使い、新たな機能も追加し、職人によるハンドワイヤリング(手作業によるはんだ付け)で作られます。「オペアンプ回路とディスクリート回路では、音質に明らかな違いはない」とも云われますが、現在の高品位アナログエフェクター市場では、「ディスクリート回路とハンドワイヤリングが必須条件」だと見られています。
日本の厳しい基準で検品を受けて出荷されることも手伝って価格は上がりますが、それでも他社のモディファイ製品と比べてかなりのコストパフォーマンスを見せています。
BOSS BD-2 vs BD-2W WAZA Craft 【Supernice!エフェクター】
こちらでは、技 WAZA CRAFTから「BD-2W」をピックアップし、通常版のブルースドライバーと比較しています。「カスタムモード」でどんな音になるか、ぜひ確認してください。
BOSSを代表する両機をモディファイしたブルースドライバー「BD-2W」とスーパーオーバードライブ「SD-1W」は、「モードスイッチ」の追加によって
を切り替えることができるのが大きな特徴です。カスタムモードはスタンダードモードに手を加えるのではなく、スタンダードモードとは別の回路を起動させます。一個のエフェクターに二つの回路が内蔵されているわけで、BOSSの気合の入り方がうかがえますね。
スタンダードモードの音色は、モディファイする前のサウンドをそのまま再現とも、もう一歩レベルアップしたとも言われます。いっぽうカスタムモードでは大幅にブラッシュアップされた新しいサウンドを確認することができます。ブルースドライバー「BD-2W」のカスタムモードでは、音がズ太くなったとも、中低域の粘りが追加されたとも言われます。スーパーオーバードライブ「SD-1W」では、より現代的なハイファイなサウンドになり、高域が煌びやかに響き、低域は無理なく存在感を発揮します。
BOSS BD-2W
BOSS SD-1W – Supernice!エフェクター
BOSS SD-1W Super OverDrive Sound Preview
BOSS公式動画では、カスタムモードのサウンドを全面的にプッシュするような内容になっています。このうち1分48秒あたりからのテレキャスターでの演奏では、モードごとのサウンドを聞き比べることができます。「SD-1W」のカスタムモードは高域と低域が強調された現代的なサウンドになると言われていますが、あなたはどう感じましたか?
ディストーションの名機、DS-1を「技 WAZA CRAFT」からリイシューしたモデルです。伝説的なギタリストが使用してきたオリジナルのサウンドに加えて新たな回路が追加され、2つのトーンを選択できるようになっています。オリジナルの回路はザクザクとした他の歪みペダルにはない特徴的な歪みが高い人気を得ていましたが、そのサウンドを弾きにくい、ニュアンスが表現しづらいと感じるギタリストも少なくありませんでした。新たに追加された回路はこれらの弱点を補うべく中音域のプッシュとレスポンスの向上がなされており、DS-1らしさと使いやすさが両立されたトーンに仕上がっています。もちろん技 WAZA CRAFTのプレミアム・バッファも搭載されており、音痩せの問題も解決されています。
BOSS DS-1W – Supernice!エフェクター
スウェーデンのデスメタル界隈を中心に愛されてきたハイゲイン・ディストーション・ペダル、「HM-2」のリイシュー・モデルです。HM-2は1991年に生産が終了していますが、近年ではYouTubeのレビュワーが多く取り上げたことなどにより再評価が進んでおり、再販を熱望するファンの声を受け、2021年に技 WAZA CRAFTより本機がリリースされました。全てのノブを全開にすることで得られる通称「チェーンソー・サウンド」はメタルのみでなくシューゲイザー系のギタリストにも好評で、スタック・アンプのような低音の鳴りと迫力が特徴です。またオリジナルのHM-2よりさらに攻撃的な「カスタム・モード」も追加されており、さらに「凶悪」な一台としてアップグレードされています。
BOSS HM-2W – Supernice!エフェクター
1991年に登場したBOSSの名機、「MT-2」の技 WAZA CRAFTバージョンです。他の技 WAZA CRAFT機と同じく、オリジナルのサウンドに加えて新たなモードが追加された計2モードが搭載されており、新たに搭載されたカスタム・モードはレンジの広さ、ピッキング・ニュアンスへの追従性、タイトな低音域など、モダンなハイゲイン・ディストーションを意識したトーンに仕上がっています。さらにオリジナル機を再現したスタンダード・モードについても、キャラクターはそのままに、よりクリア、ローノイズにブラッシュアップされているため、MT-2からの買い替えにもおすすめできる一台です。
BOSS MT-2W – Supernice!エフェクター
2021年に英国Sola Soundと技 WAZA CRAFTのコラボレーションにより誕生したトーン・ベンダー系のファズ「TB-2W」は大きな話題を呼び、限定生産であったこともあり現在では定価を大きく上回る高値で取引されています。このTB-2Wの開発をきっかけにヴィンテージ・ファズの研究に着手したBOSSが技 WAZA CRAFTからレギュラー・ラインとして発売したのが本機です。オリジナルのヴィンテージ・ファズの中には扱いにくいサウンドを持つ個体も少なくありませんが、本機ではコントロールの柔軟性、バイアスやノイズの問題なども考慮した、現代のシーンでも汎用性の高いファズにチューニングされています。
BOSS FZ-1W Fuzz – Supernice!エフェクター
アナログに強くこだわった「技 WAZA CRAFT」シリーズとは正反対に、「X」シリーズは最新のデジタル技術を傾注し、アナログを追うだけではない、デジタルだからこそ実現できた新しいサウンドを出すことを目指しています。
Xシリーズの歪みペダル「OD-1X」「DS-1x」
これまでBOSSが発展させてきたデジタル技術は、アナログの完全再現を目指したモデリング技術「COSM」でした。これは単に音を真似るだけではなく、「アナログ回路に組み込まれた各部品の作動まで計測する」という徹底的なものです。これまでマルチエフェクターに組み込まれるアンプシミュレーターや各種エフェクターに採用されてきたほか、コンパクトエフェクターではスタックアンプのサウンドを再現したパワースタック「ST-2」や3つの名器を選べるファズ「FZ-5」といった製品に反映されています。「3段積みの大型アンプのサウンドをコンパクトエフェクターで再現」など、アナログでは絶対不可能な芸当をやってのけた功績は甚大ながら、目指している音は「アナログの良い音」であり、「音はアナログが至高」という考えに立脚していました。
「COSM」の代わりに「X」シリーズで採用されている「MDP(Multi-Dimensional Processing。多元的信号処理)」は、アナログ回路への追随を一旦やめて、「デジタルだからこその音」を作るための技術です。これは、
などいろいろな要素によって変化する音量、倍音成分、周波数特性などなど、入力される信号に含まれるたくさんの情報を多元的に分析し、それらに対して最適な処理を施すものです。
これによってローポジションを弾いてもハイポジションを弾いても、コードを弾いてもソロを弾いてもパワーコードをミュートで鳴らしても、音楽的に心地よく響くサウンドを得ることができます。特にピッキングの強弱については、弱く弾くと倍音成分が乏しくなりがちになり、強すぎると濁りがちになる、といったところに対しても補正を加え、常に美しい音楽表現が成立するようになっています。こうして作られる音はアナログ回路ではとうてい実現できない、デジタルが遂にたどり着くことができた新しいサウンドです。もちろん昔のいわゆる「デジタル臭さ」は微塵も感じさせません。
先述の「技 WAZA CRAFT」は、従来の製品をモディファイしてパワーアップしていました。こちらは製品名こそ「OD-1」や「DS-1」を使用していますが、モディファイやマイナーチェンジではなく完全な新作で、操作性もサウンドも一新しています。ギターサウンドの定番を築き上げた名機の名を受け継いだ両機が、これからのギターサウンドの王道を切り拓いていくわけです。では、「X」シリーズの2モデルをチェックしてみましょう。
「TONE」つまみを持たなかった初代オーバードライブ「OD-1」と違い、オーバードライブ「OD-1X」はトレブルとベースの二つのEQ(イコライザー)を備えています。つまみを全て「12時」に合わせた標準の音色では明瞭で派手めなサウンドですが、ゲインの幅が広く、煌びやかなクランチからディストーション並のハイゲインまでカバーできます(35秒あたりから)。ふたつのEQがしっかり機能するため、王道のオーバードライブサウンドから高域の立つキャリキャリした音、低域を膨らませたズムズム言う音まで自在です(47秒あたりから)。1分11秒辺りでは3つのつまみを思い切り上げていますが、ここまでしてもノイズが出ていません。アナログエフェクターなら「シャー」っと言いっぱなしになることでしょう。
つまみの設定次第でさまざまな表情を見せることができ、ピッキングによる味付けがきれいに効いて、しっかり歪んだ状態でもコードが美しく響く、こうした使い勝手の良さがオーバードライブ「OD-1X」の大きな特徴です。
さらに3分44秒からの演奏からは、別の凄さを確認できます。しっかり歪んだ音からギターのボリュームを絞り、メロウな演奏をしたと思ったら、音量を全開にしてヘヴィな演奏に移行します。実は「OD-1X」のDRIVEはフルだった、というオチなのですが、歪み全開でもボリュームを絞った音がここまで美しく響くのは、アナログを使いこんでいる人からすれば、夢でも見ているのかと思えるほど非現実的です。入力信号を多元的に解析し、状況に応じた処理を行うという「MDP」。BOSSのスタッフさんがいかに頑張ったのかがわかります。
BSS OD-1X – Supernice!エフェクター
BOSS OD-1X オーバードライブをギター博士が弾いてみた!
「信じられないくらい音が良い」と評される新時代のオーバードライブ。デジタル臭さは全く感じさせず、それでいてアナログの後追いではない、次代を担うオーバードライブサウンドです。
日本では流通が止まっていた時期もありましたが、世界的には今まで生産中止になることがなかったディストーションの名機「DS-1」。この名を受け継いだディストーション「DS-1X」は、一個だった「TONE」つまみがトレブルとベースの二つに増え、さらに積極的なサウンドメイキングができる高性能ペダルとして生まれ変わりました。
ハイゲインに設定しても音が前に飛んでいき、クリアに響いてコードの分離感も損なわず、また非常識なほどにノイズが出ません。低域はスッキリと聞こえ、中域と高域は太く伸びのあるサウンドです。過激なセッティングにするとノイズが増える、音にコシが無くなる、音が前に飛ばなくなる、従来のディストーションペダルで起こりがちなこうした悩みは過去のものとなりました。
ディストーション「DS-1X」は名機「DS-1」の方向性を受け継ぎながらも、つまみをどうセッティングしても良好に響く「尋常でない高音質」を持ち味としています。もともとオーバードライブより歪みを深くするために開発されたエフェクターでしたから、「DIST」をゼロにしても歪みは出ます(3分4秒)。しかしこのちょっと歪んでいる感じこそが好き、という人もおおいことでしょう。「ハイゲイン比較(2分24秒から)」に注目してみましょう。しっかり歪ませながら、低音のコードがしっかり響いているのが確認できますね。
BOSS DS-1X – Supernice!エフェクター
オーバードライブとディストーションを比べてみた【ギター博士】
オーバードライブ「OD-1X」とディストーション「DS-1X」を並べ、つまみの設定を同じにして弾き比べています。総じてディストーション「DS-1X」の方が、歪みが深いのが確認できますね。オーバードライブとディストーションでは歪みの深さだけでなく、エフェクター本体の持つ音色にも違いがあります。
世界初のオーバードライブ・ペダルとしてそれ以後の音楽シーンや後発のメーカーに多大な影響を及ぼした名機「OD-1」。ここから始まったBOSSのオーバードライブは、今や「王道のサウンド」とまで呼ばれています。使い方としてはクリーンなサウンドを歪ませるより、ちょっと歪んだアンプやエフェクターと組み合わせる「ブースター」として使用されることが多いようです。
現行のオーバードライブは3機種とも「LEVEL(音量)」、「TONE」、「DRIVE(歪み)」の3つのつまみで音を作るシンプルな設計になっていますが、それぞれ異なるサウンドキャラクターが設定されています。
ブルースドライバー「BD-2」は、その名の通りブルース志向に設計されたオーバードライブです。しかし憂いを帯びたダークな、またエッジの立つサウンドが広く受け入れられ、「Bump of Chicken」や「ACIDMAN」を代表とするロック系のバンドを中心に、盛んに使用されています。
ゲインの幅が広く、チャリチャリのクランチからディストーションに近いズムズムなドライブサウンドまでカバー、しかもピッキングやボリュームの操作がサウンドに反映されやすく、サウンド的にも性能的にもたいへん優れています。KeeleyやWeedなどさまざまなブランドがモディファイしていることからも、その人気のほどがうかがい知れます。
万能型オーバードライブ:BOSS BD-2の魅力とは – Supernice!エフェクター
スーパーオーバードライブ「SD-1」は、モデル名こそ違いますが名機「OD-1」直系の後継機種であり、後に続く「OD-2」や「OD-3」よりも「OD-1」らしいサウンドだと考えられています。中音域が豊かに鳴り響くように帯域を絞った設計で、ミッドブースターとして活躍することも多いようです。キレの良いカッティングとの相性がよいため「カラっと明るいサウンド」と言われることが多く、ダークな雰囲気を持つブルースドライバー「BD-2」と対極をなしています。
この「SD-1」は1981年の発売以来、生産が止まったことがありません。世界的には生産が止まらなかったディストーション「DS-1」は国内での流通が止まっていた時期がありましたから、販売期間の最も長いモデルは「SD-1」とされています。
名機「OD-1」の名をそのまま継承したオーバードライブ「OD-3」は、まさに王道ど真ん中のドライブサウンドを持ち味にしています。BOSSのオーバードライブ3機種の中では、ブルースドライバー「BD-2」のダークな雰囲気とスーパーオーバードライブ「SD-1」のカラッと明るい雰囲気との、ちょうど真ん中を狙ったバランスの良いサウンドになっており、ピッキングやボリュームの操作が反映されやすいため、初めて手に入れる歪みエフェクターとしても、中上級者の選択としても大変良好です。ハイゲインとまではいきませんが、深くしっかりと歪ませることもできます。
BOSS OD-3 – の価格を比較する
BOSS OD-1X vs OD-3【Supernice!エフェクター】
デジタル処理技術「MDP」を駆使した「OD-1X」とアナログ代表「OD-3」、二つのオーバードライブを比較しています。「OD-1X」は現代的で派手なサウンド、「OD-3」はトラッドな暖かいサウンドと言われることが多いですが、いずれも王道の使えるサウンドなので、どちらか一方に人気が偏ることはないようです。
こちらでは、BOSSの歴代オーバードライブを年代順に紹介しています。現行のアナログモデル全てが、20年以上のロングラン製品となっています。「自分が生まれる前から作られていた」という人も多いでしょう。いくつか廃盤になっていますが、中古市場で見かけることがあるかもしれません。
製造年 | 製品名 | 仕様 |
1977~1988 | オーバードライブ「OD-1」 | 伝説になっている、世界初のオーバードライブペダル。オペアンプ回路。 |
1981~ | スーパーオーバードライブ「SD-1」 | 現行品。BOSS最長を誇るロングラン製品。 |
1985~1994 | ターボ・オーバードライブ「OD-2」 | 「OD-1」にトーンとターボを追加。ディスクリート化したが、音は「OD-1」にかなり近い。 |
1994~1999 | ターボ・オーバードライブ「OD-2R」 | 外部フットスイッチで、ターボをON/OFFできる。 |
1995~ | ブルースドライバー「BD-2」 | 現行品。これだけ筺体が青い。 |
1996~1997 | パワードライバー「PW-2」 | 製造期間9カ月は、BOSS短命記録の第一位。ワイルドな歪みと「FAT」「MUSCLE」という謎の名前のEQが特徴。 |
1997~ | オーバードライブ「OD-3」 | 現行品。王道ど真ん中ストレート。 |
2007~2012 | ダイナドライブ「DN-2」 | BOSS初のデジタルオーバードライブ。ピッキングの強弱で歪みをコントロールできる。上級者か、ピッキングを向上したい人向け。 |
2014~ | オーバードライブ「OD-1X」 ブルースドライバー「BD-2W」 スーパーオーバードライブ「SD-1W」 |
現行品。新時代のデジタル機と、高品位アナログ機。 |
表:BOSSの歴代オーバードライブ
初代オーバードライブ「OD-1」についても知っておきましょう。「OD-1」は、ギターアンプの音量をめいっぱい上げた時に発生する歪み「ナチュラル・ディストーション」を電気的に発生させるために考案されました。歪みエフェクターといえばファズしかなかった当時、ファズほど狂暴に歪まないことで嫌った人もいたそうですが、その歪みのナチュラルさやブースターとして使用できる便利さが広く受け入れられました。荒削りな歪みと倍音を多く含む暖かみのあるサウンドが持ち味で、熱心な愛用者としてはジェフ・ベック氏が有名です。
「世界初のオーバードライブ」として伝説的な存在で、後発のエフェクターへの影響力がいまだに強く残っています。そのため、現存する個体にはヴィンテージ・エフェクターとしてのプレミアムが付いています。「オーバードライブ」という歪みの呼び方は、このオーバードライブ「OD-1」の製品名に由来しているのです。
8年という製造期間の間にいくつかの仕様変更が行われており、初期のものは「銀ネジ」と言われ、電池ボックスを留めるネジが銀色でした(今は黒)。この銀ネジが「X」シリーズで復刻され、マニアの間で話題になりました。また初期モデルのランプは、スイッチを踏んでいる時にしか点灯しませんでした。ファズやワウペダルなど当時のエフェクターでは、踏んだら「カチっ」という感触のある機械式スイッチが一般的でした。この感触で作動を確認できたのですが、「OD-1」は電子スイッチなのでその感触がありません。「確かにあなたは踏みましたよ」とユーザーに教えるために、赤い発光ダイオードが使われたのです。スイッチから足を離したらランプが消える、という設計は電池の節約のためでした。しかし作動状態をより分かりやすくするため、「ONの時は常時点灯」へと変更されました。
BOSS OD-1 OverDrive – Supernice!エフェクター
「ディストーション」を名乗った世界初のコンパクトエフェクターは、BOSS「OD-1」に先立つ1973年発売、、MXR社の「ディストーション+」です。BOSSの初代ディストーション「DS-1」は、「OD-1」が発表された翌年、1978年に発表されました。「OD-1」のマイルドな歪み方では物足りないというギタリストに向け、もっとよく歪むエフェクターが開発されたわけです。
オーバードライブとディストーションは歪ませる原理が同じですから、「違いは歪みの深さだけだ」と言われます。しかしBOSSではベーシックなサウンドにも違いを設けており、ディストーションはオーバードライブよりしっかり歪む、そして一味違ったサウンドになるよう設計されています。
BOSSの記念すべきディストーション第一号「DS-1」は、クセなくバランスの取れたサウンドが使いやすく、マイケル・シェンカー氏、エドワード・ヴァン・ヘイレン氏、スティーヴ・ヴァイ氏、ジョー・サトリアーニ氏、高中正義氏ら名だたる名手が愛用した名作です。ターボ・ディストーション「DS-2」のリリース時に日本国内では廃盤となりましたが、カート・コバーン氏(NIRVANA)のブレイクに乗じて再販されました。
トーンつまみの効きがよく、ズモモモっと言わせる低域を強調した音から鼓膜を破るかのようなカリッカリの音まで、大変広い可変域を持っています。またしっかり歪むことからピッキングのばらつきをある程度は削ってくれるし、他のボスコンと比べて価格が抑えられていますから、初めて手に入れるエフェクターとしてたいへん良好です。しかし、初心者用というわけでもありません。「DS-1」は音抜けのよい硬質なキャラクターを持っていますが、それゆえ流麗なギターソロを弾こうと思ったら、両手が技術的にきちんと機能している必要があります。
ターボ・ディストーション「DS-2]は、先代「DS-1」のサウンドを引き継ぎながら、
この二つのモードを切り替えることができます。「ターボI」は先代「DS-1」に比べてマイルドな、柔らかさのある音だと言われます。ジョン・フルシアンテ氏(元レッド・ホト・チリ・ペッパーズ)、デイヴ・ナヴァロ氏(元レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)の両名が愛用していると伝えられています。
切り替えはつまみの操作で行いますが、「ROMOTE」に外部スイッチをつなげることで演奏中にこのモードを切り替えることができるのが、廃盤となったターボ・オーバードライブ「DS-2」との大きな違いです。
BOSS DS-2 – Supernice!エフェクター
メガディストーション「MD-2」は、BOSSの歴史の中で最大のゲインを誇り、またこれ以降の新作がデジタルのみであることから「最後のアナログディストーション」とも言われています。
「MD-2」は、歪みを作る「DIST」つまみの前段に、ブースターとして機能する「GAIN BOOST」つまみが追加されています。ですからこれ一個で「ディストーション+ブースター」の強力な歪みを作ることができるわけです。歪み方はワイルドかつアグレッシブで、それでいてピッキングニュアンスをしっかり残していますから、キメが細かくダークに響く「メタル系ディストーション」とは異なる印象です。むしろ第一号「DS-1」から続く伝統的なディストーションに、猟奇的な攻撃性を付加して作った新しいハイゲインモデルだと目されています。
高域と低域を一つのつまみで操作できるEQの効きも強力で、高域に寄せきったシャリッシャリの音から低域を膨らませたズムッズムの音まで自在です。守備範囲が広いうえに価格が抑えられているため、初心者にも手に入れやすいディストーションです。
BOSS MD-2 – Supernice!エフェクター
歴代ディストーションを見てみましょう。アダプティブ・ディストーション「DA-2」以外、これまでリリースしたディストーションの全てが現行品という驚くべき命中率です。
製造年 | 製品名 | 仕様 |
1978~ | ディストーション「DS-1」 | 現行品。 |
1987~ | ターボ・ディストーション「DS-2」 | 現行品。 |
2001~ | メガディストーション「MD-2」 | 現行品。 |
2013~2014 | アダプティブ・ディストーション「DA-2」 | MDPを採用した初めてのディストーションで、音は王道。コンセプトは「DS-1X」に受け継がれた。 |
2014~ | ディストーション「DS-1X」 | 現行品。 |
2017 | ディストーション「DS-1-4A」 | ボスコン40周年を記念した、限定生産の黒い「DS-1」。中身は普通。 |
表:BOSSの歴代ディストーション
わずか1年で廃盤となった「DA-2」でしたが、これは売れなかったからではなく、「X」シリーズとして大々的に打ち出す「DS-1X」に道を譲った、政治的な判断があったと言われています。
ヘヴィ・メタルにおけるディストーションは、ジャンル特有の方向性を見据え、従来のディストーションとは異なる道を歩んでいます。こちらのジャンルではギターのボリュームは、
・弾く時に10
・弾かない時は0
が基本で、ボリュームやピッキングに追随する表現力よりも、攻撃的で伸びのある歪みが求められます。またピッキングハーモニクスやライトハンドなど、ゲインが低いと物足りなく感じやすい奏法が多用されることもあり、コンプ感のある(強弱が整えられた)キメの細かいハイゲインなサウンドが求められます。
メタルゾーン「MT-2」は、時代と共に攻撃性を増していくメタルシーンにおいて、今なお第一線で使用できる性能を持った、高性能ディストーションです。「DIST」つまみは一つですが、内部のゲイン回路は2段になっており、ブースターに頼ることなくこれ一個で十分以上の歪みが得られます。それでいて歪みを抑えた設定でも普通のディストーションとして使用できる、いっそのことメタル以外でも充分使用に耐える、懐の深さを持っています。
EQが特に強力で、トレブル、ベース、ミドルに加え、ミドルで操作する周波数を決定できる「フリーケンシー」を備えています。ギタリストが心地よく感じる中音域は人それぞれであり、コンパクトエフェクターにここを操作する機能が付けられるのは、まさに画期的な発明でした。
30年近く愛用されてきたのは、「MT-2」がアナログ回路だからでもあるでしょう。アナログでこの多機能を達成するため、「MT-2」の基盤は二重になっています。この多機能をこのサイズに凝縮できたエフェクターは、後にも先にもほぼありません。
BOSS MT-2 – Supernice!エフェクター
上記メタルゾーン「MT-2」からさらにメタルに特化したメタル専用デバイス、メタルコア「ML-2」は、デジタルモデリング技術「COSM」を取り入れたデジタルディストーションです。ハードに歪んでも音の輪郭が残る、ヘヴィかつ鋭いサウンドを持っており、ズンズンザクザクとリフを刻むのにたいへん良好で、かつデジタルなのでノイズに非常に強い静粛性を持っています。
サウンドは「金属感」と表現される、情け容赦ない冷たさを持っています。トレブルとベースのつまみは可変域が広く、低音は多弦ギターやドロップチューンングにも余裕で対応、トレブルでキレの良さを操作します。
BOSS ML-2 – の価格を比較する
ML-2 Metal Core [BOSS Sound Check]
明るい未来や愛や平和ではなく、退廃や怒りや闘争を歌いたくなる、そんな時だってありますよね。
では、BOSSの歴代メタルディストーションを見ていきましょう。
製造年 | 製品名 | 仕様 |
1983~1992 | ヘヴィメタル「HM-2」 | BOSSのディストーション第二弾。マーシャルを再現しており、メタル専用機材に乏しい当時の市場を席巻した。 |
1987~1992 | デジタル・メタライザー「MZ-2」 | ギターサウンドをデジタル技術でメタライズする。コーラス、ダブリングも付く多機能。 |
1991~ | メタルゾーン「MT-2」 | 現行品。 |
1993~1998 | ハイパーメタル「HM-3」 | HM-2の実質後継機だが、荒々しい歪み方。 |
1996~1998 | エクストーション「XT-2」 | スラッシュメタル志向の豪快な歪み |
2007~ | メタルコア「ML-2」 | 現行品。 |
表:BOSSの歴代メタルディストーション
メタルという分野はサウンドの移り変わりが激しく、時代ごとのサウンドを目指したものが作られては廃盤になっていく中、守備範囲の広いメタルゾーンは、しっかり踏みとどまっています。
ファズというエフェクターには、「野太い、荒々しいサウンド」に加え、「武骨でシンプルな本体」というイメージがあります。回路もシンプルなので自作する人も多いのですが、ここでBOSSがリリースしたのはデジタルモデリング技術「COSM」を使用したデジタルファズでした。
ファズ「FZ-5」は三つのつまみを持つシンプルな本体ながら、ファズの名機3機種のサウンドを切り替えることができます。それでいてデジタルですから、「ノイズ発生機」とも呼ばれるファズをノイズなくクリアに使用することができます。
本体の記載 | モード名 | モデルにしたエフェクター | サウンドの傾向 |
F | FACE | ダラス・アービター(Dallas Arbiter)社の「FUZZ FACE(ファズ・フェイス)」 | 歪みの深さはないが、太い。 |
M | MST FUZZ | マエストロ(Maestro)社の「FZ-1A」 | 高音域が主張するサウンド。演奏中に音が途切れるところまで本物を再現。 |
O | OCTAVE FUZZ | ロジャー・メイヤー(Roger Mayer)社のOctavia(オクタヴィア) | ジミ・ヘンドリックス氏も愛用した。1オクターブ上の音が追加される。 |
表:FZ-5の3つのモード
しかもこれらは単なる再現ではなく、ゲインの強化が図られています。「GAIN」つまみは12時で、お手本となったファズの最大ゲインになります。「FZ-5」はそこからさらにゲインを上げることができるのです(ゲインを12時以上に上げると、Mモードでも音が途切れなくなります)。
BOSS FZ-5 – の価格を比較する
FZ-5 Fuzz [BOSS Sound Check]
3つのモードそれぞれが、強烈な個性を主張しています。作動が不安定で音が途切れるところまで「味」だと解釈する、独特な価値観がファズにはあります。
BOSS歴代のファズを見ていきましょう。意外なことに、ファズの歴史は90年代からです。
製造年 | 製品名 | 仕様 |
1993~1997 | ハイパーファズ「FZ-2」 | 二つのEQ、三つのモードという多機能、そして国産ファズを再現した音が逆に不評だった。 |
1997~1999 | ファズ「FZ-3」 | 「FZ-2」の反省を活かして一気にシンプル化し、海外ファズ志向の音に。 |
2007~ | ファズ「FZ-5] | 現行品。 |
表:BOSSの歴代ファズ
満を持して発表されたハイパーファズ「FZ-2」は、BOSSらしい多機能をコンパクトエフェクターの筺体にぶちこんだ意欲作でした。それが裏目に出た経験から、ファズ「FZ-3」ではつまみを3つにした超シンプル路線へ移行します。デジタル化した「FZ-5」でもつまみは3つのままで、モード切り替えが付いたぶん、トーンが外されています。
そもそもオーバードライブ「OD-1」自体が、最大音量に設定したアンプの歪みを再現したものだったのですが、こちらは特定のアンプのサウンドを頑張って再現したものです。シンプルに歪みエフェクターとして使用するのが第一ですが、Roland JC-120などソリッドステートのアンプで真空管の音を出したい時の、アンプシミュレーターとして起用されることもあります。
パワースタック「ST-2」は、スタック(二段積み、三段積み)アンプのサウンドを、デジタルモデリング技術「COSM」で再現したエフェクターです。どんなアンプを再現しているかの公式なコメントはありませんが、Marshall JCM2000に近い感触だと感じる人もいるようです。
操作系はシンプルで、音量つまみ、ベース、トレブルのふたつのEQ、そして「SOUND」つまみの4つを備えています。「SOUND」つまみは設定「0」でクランチ、「12時」でドライブ、設定「フル」でウルトラと表示されている通り、チャリチャリのクランチからズムズムのハイゲインまでをカバーしています。
BOSS ST-2 – の価格を比較する
ST-2 Power Stack Overview
クランチは設定「0」でもちょっと歪みの残る、味わい深いもの。ドライブの時点で迫力十分です。
BOSSアンプシミュレーションの歴史は、10年そこそこです。歴代のモデルがすべて、「COSM」を使用したデジタルモデリング機となっています。
製造年 | 製品名 | 仕様 |
2007~2013 | フェンダー・ベースマン「FBM-1」 フェンダー・デラックスリバーブ「FDR-1」 |
フェンダー社とのコラボで、名アンプの音と感触をコンパクトエフェクターで再現。 |
2010~ | パワースタック「ST-2」 | 現行品。 |
2011~2017 | コンボドライブ「BC-2」 | VOXと思われるブリティッシュ系チューブアンプの再現。 |
表:BOSSの歴代アンプシミュレーション
一台で二つのエフェクターを切り替えたり、ミックスしたりできるものを「2イン1」と分類しました。二つが一つにまとまれば、二つの音色が一度に手に入りますし、エフェクターボードの限られた面積に余裕ができるので大変助かりますね。二つ買うよりはるかに安上がり、というコストパフォーマンスも重要なポイントです。
BOSSの40周年を記念して作られたのは、まさかのコラボレーションモデル、アングリードライブ「JB-2」でした。モディファイ製品でも知られるJHS社の「Angry Charlie V3」と、BOSSの代表的エフェクター、ブルースドライバー「BD-2」が合体、自由な組み合わせで使用できる柔軟性を持ったエフェクターが完成しました。
JHSの「Angry Charlie V3」は、マーシャル社の「JCM800」を再現したディストーションペダルで、モデル名の「Charlie」は、マーシャル創始者ジム・マーシャル氏のミドルネーム「Charles」に由来します。まさにマーシャル直系と言える、粘りのあるハイゲインサウンドは「怒りのチャーリー」の名に恥じないパワーがありますが、アンプ直で演奏しているようなダイレクト感があり、ピッキングやボリュームの操作に美しく追随します。
トーンとドライブの両つまみはそれぞれ「2軸」となっており、「Angry Charlie V3」、「BD-2」それぞれのサウンドを作ることができます。「MODE」つまみの操作によって、この二つのエフェクターのあらゆるつなぎ方ができるほか、外部フットスイッチを使用することで、さらに自由度のある使い方ができます。以下のリンク先で、その柔軟性をチェックしてみましょう。
BOSS JB-2 – Supernice!エフェクター
Boss JB2 Angry Driver 2 Minute Tones – American Musical Supply
JB-2はJHS/BOSSモードに設定し、ルーパーを使用したサウンドチェックです。それぞれ全く違った個性を持つエフェクターが同居しているのが分かりますね。
オーバードライブ/ディストーション「OS-2」は、1台でオーバードライブとディストーションをブレンドできる、世にも珍しいエフェクターです。OD(オーバードライブ)、DS(ディストーション)、ミックスの3タイプで使用できるので、ODとDSでどちらを買おうか迷っている人や、独自のブレンドで自分だけの音を作りたい人、あるいはバンドごとに違ったサウンドを出したい人にぴったりのエフェクターだと言えるでしょう。
「COLOR」つまみを絞り切るとオーバードライブ、フルアップにするとディストーション、その間で両エフェクトのミックス具合を操作できます。「ブレンドした音を出す一つのエフェクター」としてまとまっているので、OD/DSの切替はありません。
BOSS OS-2 – の価格を比較する
OS-2 OverDrive / Distortion [BOSS Sound Check]
それぞれのだサウンド、ミックスしたサウンドを確認できます。オーバードライブの暖かさとディストーションのシャープさを、好きなブレンドで得られるわけです。
これまでBOSSはいくつも2イン1をリリースしています。 そのすべてが二つのエフェクターを違った形で使用しているのが面白いところです。
製造年 | 製品名 | 仕様 |
1984~1993 | スーパーフィードバッカー&ディストーション「DF-2」 | 「DS-1」にフィードバッカーを追加。踏みっぱなしでフィードバックする。 |
1993~1998 | デュアル・オーバードライブ「SD-2」 | クランチ、リード、完全に独立した二つのオーバードライブを内包。外部スイッチで切り替えもできる。 |
1990~ | オーバードライブ/ディストーション「OS-2」 | 現行品。 |
2017~ | アングリードライバー「JB-2」 | 現行品。 |
表:BOSSの歴代2イン1
以上、BOSSの歪みエフェクターをチェックしていきました。BOSSはオーバードライブ「OD-1」から始まるさまざまなエフェクターを生み出し、また斬新なアイディアで料理してきたことがわかります。
BOSSのエフェクターは価格が手ごろなので、初めて手に入れるエフェクターの代表格とされています。しかし決して初心者向きなどではなく、その実力は本物です。若くして手に入れたBOSSを使いながら、そのままプロになる人もいます。お金ができてハイエンドなエフェクターに手を出しつつも、やはりBOSSに帰ってくる、という人もいます。エレキギターはアメリカが発祥ですが、オーバードライブは日本のBOSSが作りました。エフェクターを検討している人は、ぜひBOSSをチェックしてみてください。
エフェクターの売れ筋を…
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