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Fender Starcaster Guitarについて

Fender Starcaster Guitar

「フェンダー・スターキャスター」は、1970年代にギブソンのヒット作ES-335に対抗する形で発表された、フェンダー初となるセミアコースティックギターです。製造開始時期は1974年とも1975年とも言われていますが、セールスは振るわず数年で廃盤になりました。生産本数も少なくレアな存在でしたが、あまりにも不人気だったためヴィンテージ市場でも注目される事は永らくありませんでした。ところが2000年代に入りビザール(珍しいデザインの古いギター)の人気ががじわじわと盛り上がり、またジョニー・グリーンウッド(レディオヘッド)が使用した事により再評価され、ヴィンテージ市場でも注目されるようになりました。この状況を受け、2014年にModern Player Seriesとしてスターキャスターの再生産がコロナドと共に開始されました。
ジョニー・グリーンウッド(Jonny Greenwood)

Radiohead – The Tourist – Youtube:「軽いから」という理由でメインはテレキャスターだと言いますが、スターキャスターにしたのも中空で軽いからだったのでしょうか?

スターキャスターは、フェンダーにとって忘れたい過去?

スターキャスターは、先駆けとなったコロナド(Fender CORONADO)とともに商業的には失敗作でした。市場では

  • フェンダー:ソリッドボディ、シングルコイル
  • ギブソン:ホロウボディ、ハムバッカー

というイメージがついていたからだという意見があります。2000年代には「Stracaster by Fender」という名前で、スクワイア製のストラトキャスターに練習用アンプなどのグッズをパッケージした初心者用セットが販売されますから、フェンダー社としてはスターキャスターの事は忘れたいどころか、忘れてしまっていたのかもしれません。

オリジナル・スターキャスターの特徴

同一ブランドのものでも、当時生産されたものを「オリジナル」、後になって再生産されたものを「復刻版」または「リイシュー」と呼んで区別します。ここでは70年代に生産されたオリジナルの特徴について紹介します。

fender-original-starcaster 1975 Fender Starcaster:引用元 Garys Classic Guitars & Vintage Guitars

スターキャスターは、「セミアコ」というギブソンの土俵上でありながら、あまりフェンダー的ではなかったコロナドが不評だった反省からか、あくまでもフェンダーのスタイルを固持していました。

オフセット・ウェスト:非対称なくびれが「セクシーだ」と表現されるボディは、ジャズマスターやジャズベースにも見られるフェンダー特有のデザインです。
メイプル1ピースネック:指板とネックが一体化した構造は、フェンダーにしかないものでした。またロングスケールで22フレットというネックは、フェンダーではスターキャスターが初めてだと言われています。
ボルトオンジョイント:コロナドに続き、アーチトップでまさかのボルトオンジョイントを採用。
裏通しの固定式ブリッジ:弦をボディ裏から通すのはストラトやテレキャス、またシンラインでも当たり前の仕様ですが、アーチトップでこれをやってしまうのは後にも先にもこのスターキャスターだけです。

70年代という時代を反映した仕様も特徴です。

バレット・トラスロッドナット:ヘッド側に突出した弾丸状のトラスロッド。
3点止め:ネックの仕込み角度を調整するための「マイクロティルト」が組み込まれたネックジョイント。

また、これまでにない新しい要素も投入しています。

新デザインのヘッド形状:新しさを演出するため、独特なシェイプのヘッドデザインが採用されていますが、これにはトリニ・ロペスモデルES-335で「片側6連ヘッド」のデザインを真似された当てつけに、スターキャスターでギブソン・ファイヤーバードのヘッドを真似したのだという説があります。
独特の電気系:テレキャスター・カスタムなどで採用されている「ワイドレンジ・ハムバッカー」を2基搭載、ギブソン系のハムバッカーと事なりトレブル成分が豊かに響くように設計されています。それぞれのピックアップにトーンとボリュームがついているのはギブソンに似ていますが、マスター・ボリュームが追加されている所が大きなポイントになっています。これはグレッチに特有の回路で、先輩モデルのコロナドに続いてグレッチ的な要素が含まれています。
ボディ形状に合わせたFホールの配置:オフセットウェスト・ボディ形状にあわせて、Fホールは左右でずれた位置に刻まれています。コロナドではブリッジの位置と無関係な配置にFホールがありましたが、スターキャスターでは両側の「F」の横線がブリッジの位置を貫くように配置されています。

オリジナル・スターキャスターのサウンド

有名なギタリストでスターキャスターを弾いていたのはミーターズのレオ・ノセンテリくらいで、ほかにはなかなか資料が得られません。楽器の構造、ピックアップの設計共に立ち上がりがシャープでタイトなトーンが得られるようになっており、それでいてホロウボディに由来する柔らかさが加わっている、というバランスになっているようです。

The Meters – Cissy Strut – Youtube
この曲は「ファンク古典」の一つと言われています。

復刻版スターキャスターの特徴

復刻版スターキャスター

Modern Player Seriesは「かつての名器を現代的なアレンジを加えてリリースする」というコンセプトのラインナップです。復刻されたスターキャスターも、オリジナルの仕様から大きなアレンジが加えられています。

継承されている基本仕様:ボディシェイプとセミホロウ構造、ネイプル1ピースネック、象徴的なヘッド形状などルックス上の大まかな仕様はそのまま継承しています。またワイドレンジハムバッカーもそのままで、トレブルが豊かに響くトーンになっています。ギブソンESシリーズに酷似しているピックガードもそのままですが、このピックガードをボディ側から支えるパーツ(ブラケット)の固定ネジが、1本(ギブソンの基本仕様)ではなく2本になっているところもオリジナルと同様です。

現代的な仕様:70年代の仕様であった「バレット・トラスロッドナット」は廃止されシンプルな穴に、またマイクロティルトの仕込まれた3点止めジョイントもスタンダードな4点止めになっています。フレットには弾きやすいミディアムジャンボが採用されています。

現代のプレイスタイルを意識した仕様変更:マスターボリュームが廃止され、2ボリューム2トーン、トグルスイッチというシンプルな操作系にまとめられています。また、ブリッジはハードテイルからチューン・O・マチックに変更されており、ギブソン的なフィーリングが色味を増しています。またソフトケースに入る全長を考慮してか、ネックがオリジナルよりも2フレットほど深く挿入されており、Fホールとブリッジとの関係など外観の印象に若干の違いが出ています。

まさかの新製品:オリジナルではベースのラインナップがありませんでしたが、スターキャスター復刻に際して新たにベース版のスターキャスターがリリースされています。セミアコ、ボルトオン、ワイドレンジハムバッカーなどスターキャスターの基本構造を継承した新しいベースになっています。

復刻版スターキャスターのサウンド

多くの仕様変更を受けましたが、ホロウボディのもつ柔らかな軽やかなトーン、メイプル1ピースネック、ボルトオンジョイント、ワイドレンジハムバッカーによるタイトでシャープなトーンの合わさった、柔らかさと鋭さの共存した独特なトーンはオリジナルの方向性と変わっていません。

所ジョージ 最近の唄13 夏をあらためて – Youtube
かなり歪ませていますが、軽やかさ/柔らかさ/タイトさを感じることができます。