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《今までにないものを作りたい》Kino FACTORY訪問インタビュー

木工エリア

木工所 奥行きのある工場内。これより潜入します。

ネック加工 ネック加工の作業を少し、実演して頂きました。

CNCルータ 現在、ピックガードをCNCで加工中。CNCは常に稼働しています。粗加工、仕上げ加工、工程ごとに刃物を交換しながら自動的に作業しています。正確なマシンの動き、キレイにできあがるピックガード、いつまでも見つめていたい。

木下:手でやる代わりにマシンにやってもらうんですが、やはり人間より早いですね。ピックガード材料の板には最初からフィルムが貼ってあるので、めくらないようにいったん細い刃物で加工してから太い刃物に交換するなど、加工手順を考慮したプログラミングをしています。

弊社のCNCは他社様と比べて動きを遅く設定しており、加工精度を高く保ち、また機械への負担を軽くしています。しかしこれももう12年なので、もってもあと5年くらいかな、と思っています。機械が新しいものに移行しても、既存のデータはちゃんと利用できます。

木材 所狭しと木材が積み上がる。

木材積み上げ 迫力ある積み上げ。それぞれに重量がメモされている。

指板用ローズウッド 指板用のローズウッド。

木材を寝かせるための部屋

木材保管庫 加工した木材はいったんこの部屋で寝かせ、狂いを出させます。

マダガスカルローズ指板+メイプルネック 写真左から、マダガスカルローズ指板+メイプルネック、指板&ネック共にオバンコール、パーフェロー指板+ウォルナットネック

木下:オバンコール製ネックはイイ感じでできるかと思って作っていますが、かなり重いです。逆にウォルナット製のネックはかなり軽いですよ。叩いてみると音の違いが分かります。オーダーもののコリーナ製ネックは、コリーナのボディに合わせる予定です。指板はオークなんですが、とても硬い木材です。

パープルハート・ネック パープルハートのネックにフレイムメイプル指板。

バーズアイ・メイプル 「目」がボコボコ出る「バーズアイ・メイプル」。なかなか見る機会が減ってきた木材。

フルオーダー・ベース フルオーダーのベースのヘッド。こんなものも作る。

研磨部屋

研磨スタッフ 機械もあるが、やはり人の手でひたすら磨く作業は重要。

バインディング こちらはナットに合わせてバインディングに切り込みを入れています。

──以上、Kino FACTORYの工場見学でした!

異業種コラボレーションで作る、新しいエレキギターの姿

サウンドスプライト社の特殊配線材

木下:独自技術「セラミックコーティング」のサウンドスプライトさんは、常に実験と開発を繰り返しているメーカーです。サウンドメッセでは共同で展示を出しましたが、そういうお付き合いがあるため、弊社の製品で使ってみた結果はいつもお伝えしています。

サウンドスプライトさんの線材は「パワーが出すぎる」というぜいたくな悩みがあって、繊細な音が欲しい時には出力を抑えた配線に変更したり、あるいは採用しなかったり、みたいな選択をしています。ピックアップと配線の組み合わせには終わりがなくて、時間が許せばいつまでも実験できます。

Guardian製金属パーツ

木下:ベースやパーツのブランド「Guardian(ガーディアン)」を運営する株式会社トキワさんは、超精密な金属加工が主な業務です。トキワの社長さんも商売より研究と開発に熱心な方で、弊社とはパーツの共同開発などで深くお付き合いさせていただいております。

今回の5本のギター(後述)には共通してGuardian製「アンカーブロック」が埋め込まれていますが、これ以外にもいろいろなパーツを開発しています。

特許取得「アルミフレーム」

アルミフレーム

木下:ここにある「アルミフレーム」はベース用ですが、レビュー記事の「mortカスタム」のネックには、これと同等のギター用が埋め込まれています。ネックにこの形そのままのザグりを入れ、隙間なく埋め込みます。木が太っても痩せても密着する仕組みです。各フレットの真下に来る横線と「X」の組み合わせにより、順ぞり逆ぞり方向にはしなりますが、決してねじれません。はじめは「ねじれ防止」が目的でしたが、ネックが強くなったぶん、音の立ち上がりが飛躍的に向上しました。

トキワさんの発案で、寸法と設計は僕が担当し、「GBS (Guardian Bridge System)」として日米で特許取得済みです。アルミフレームは高精度な加工が必要で作るのに時間がかかり、たくさん作ることができません。現状でGuardianとKino FACTORYでのみ使用できる構造ですが、これでオーダーいただくなら、1年以上待ってもらう必要があります。

新発想「アルミ製ジョイントグローブ」

ジョイントグローブ 新しい金属部品「ジョイントグローブ」の表(左)と裏(右)

木下:最近、ジョイント部の補強をする金属部品「ジョイントグローブ」ができました。これも指板の内側に埋め込みます。斜めにカットしたヒールではネックが斜めに起き上がろうとするので、それをコレで防ごう、という発想です。そこから発展して、これでジョイント部の強度をかせいだ「柔らかいネック材」で、デタッチャブルネックのギターを作ろうとも考えています。また、5Pなど多層ネックの張り合わせ部分にネジ穴が来てしまうような場合にも、このパーツはかなり期待できます。

【社長の思い】今までにないものを作りたい

木下:今は新しいものを作ることばかり考えていて、売ることまでは考えが至らない状態です。今までにないものを作りたいし、やっていないことをやりたいので、同じギターをたくさん作ることはあまりありません。アコギもやってみたいんですが、手始めにセミアコを作ってみたいし、フルアコも作ってみたいです。ちょうどVのトップにぴったりのポプラバール材を手に入れまして、Vもやってみたくて、というようにいろいろなプランが待機しています。やってみたいことは、たくさんあります。

常に「こうかな」と仮説を立て、「自分で答えを導き出すしかない」というのが僕らの仕事で、やってみたらどうなったのかが全てです。これは料理で言う「レシピ」や「塩加減」と同じで、それぞれに自分なりのものがあり、メーカーそれぞれに独自の作り方があって、それぞれの個性が生まれています。その中でもかつてなかったもの、そういうギターを作っていきたいです。

これまで作ってきた中で今のところのお気に入りは「コリーナのネック&ボディの本体に、P-90タイプを3基」というものです。かつてなかったものではありませんが、スタンダードなものでもなく、面白みを感じています。今まであるものに対しても、アプローチを変えたらどういう方向に行くのか、無限大の組み合わせの中で興味が尽きることはありません。しかしいろいろ複雑に絡み合いますから、頭の整理が大変です。時間も手間も限られているので、ピックアップや配線などパーツについてはポイントを絞って、試行錯誤しています。

一般のユーザーさんに持ってもらいたい

木下:一般ユーザーさんに快適に弾いてもらえる、丈夫で狂いにくい、ネックが反らない「耐久力のあるギター」をお届けしたいと思っています。プロなら主治医のようなリペアマンがいますから、強度より音を優先した設計のギターでも大丈夫です。しかし一般のユーザーさんに、同じようにお得意のリペアマンがいるとは限りません。メンテナンスは必要だと思いますが、一般のユーザーさんがそういうことを過度に気にせず、安心して弾けるものを作っていきたいです。

たとえば「塗装しない方が音は良い」みたいな考え方がありますが、塗装しないと狂いが大きく出てしまいます。音のために塗膜は薄いに越したことはなく、ラッカーの方が薄くていいな、と思うこともあるんですが、弊社では製品の丈夫さ、扱いやすさを優先して、ウレタン塗料を使っています。ラッカーはゴム製品と反応しやすくて、傷もつきやすくて、扱いに神経を使います。

夢を持った社員に来てほしい

木下:求人を出すなら、まじめでやる気があって、先を見ている人がいいです。みんながみんな独立したいわけではないとも思うんですが、自分の夢があって「こうなりたい!」というビジョンがある人が良いですね。僕もそうだったわけですし、夢のためなら弊社がその踏み台になってもいいんです。独立してくれたら、こちらの仕事を外注で手伝ってもらうこともできます。

若い子でも僕らの知らないことを知っていることは多く、その意味で上下はありません。また、どんな会社もそれぞれに強いところがあり、同時にみんなが発展途上なので、その意味でも上下はありません。志を同じくする会社にどんどん増えて行ってほしいと思っています。

誰かとでなければ、エレキギターは作ることができない

木下:弊社はもう増員しなければならない状態で、もっと大きな工場への引っ越しも考えていて、そのタイミングで機械を買い替えたり買い足したりたいです。木材を置く場所と、二つ三つ加工機を置く場所も欲しいし、今は塗装を外注していますが、やはり塗装ブースも持ちたい。それでもエレキギターメーカーというものは、金属パーツ、フレット、ピックアップ、配線材、弦までは作らないのが普通です。こうしたものを作ってくれる業者さんがあって、初めて成り立つんです。

アンカーブロックなど独自の金属パーツは株式会社トキワさんと開発しています。モデルによってはサウンドスプライトさんの配線材を使用しますし、武良さんからはプレイヤー目線の意見をもらいます。そのほかにもいろいろな業者さんとのお付き合いの中で、弊社のギターは作られています。

パーツ屋さんにとっても、弊社としか取引がなかったら商売が続きません。他のギターメーカーさんがあって、初めて成り立つんです。いろんなメーカーがあるから材木屋さんが何件もあって、輸入材の流通があって、業界は成り立っています。どこまで行っても「周りがあって自分がいる」ということに代わりはありません。フェンダーやギブソンのような巨大なメーカーでも、ペグは他社製というように、エレキギターは一社では完結できないんです。

──ありがとうございました。

木下:ありがとうございました。


以上、長野県塩尻市、Kino FACTORYの取材でした。音の立ち上がりがよく前に出る、というところを大事にしたギターは、とても新しい感触でした。ネック材の杢の入り方一つでも違いが出る、というのも興味深いポイントです。

【特別企画】読者プレゼント!!応募終了

木下さんより、情報サイト「エレキギター博士」読者の皆さんに、プレゼントをいただきました。

KINO FACTORY:Tシャツ

KINO FACTORY:ステッカー

プレゼント内容

  • A)Kino FACTORYオリジナルロゴTシャツ(Sサイズ:グレー):1名様
  • B)Kino FACTORYオリジナルロゴTシャツ(Lサイズ:チャコール):1名様
  • C)Kino FACTORY エンブレムステッカー(金銀各1枚ずつ。幅約95mm):5名様

応募方法

プレゼントをご希望の方は、当サイトの問い合わせページから、「Kino FACTORYプレゼント応募」の件名にて、

  • ご氏名、送り先
  • 希望するプレゼント
  • ギター博士、もしくは運営スタッフに一言!

をご明記のうえ、メールを送信してください。

締め切り

応募の締め切りは2019年8月31日です。

当選者の発表方法

当選者の発表は発送をもって代えさせていただきますが、当選した人は、ぜひご自分のSNSで盛大に自慢してください。ご応募、お待ちしております!

(※個人情報はプレゼント送付以外の目的には使用いたしません。いただいたメールは、抽選後に全て削除します。)