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1954年にデビューした「フェンダー・ストラトキャスター」は、フェンダー・テレキャスター、ギブソン・レスポールと並ぶ「エレキギターの王道」です。70年以上の歴史にその魅力が色あせることはなく、全ジャンルに対応できる素直なサウンド、ハイポジションが弾きやすくアーミングもできる演奏性、ピックアップなどカスタマイズ性の高さなど、多くのギタリストを今なお惹きつけます。
「ストラトの本家」はフェンダーであり、フェンダーブランドだけが正式に「ストラトキャスター」を名乗ることができます(それ以外のものは「ストラトタイプ」)。とはいえそのラインナップは膨大。そこで今回は、フェンダーブランドからリリースされているストラトキャスターを選ぶポイントを考えていきましょう。
Kenny Wayne Shepherd Band – Never Lookin’ Back [OFFICIAL VIDEO]
ケニー・ウェイン・シェファード氏は、高校在学中にリリースしたアルバムがゴールドディスクになるという鮮烈なデビューを飾ったブルース・ロックギタリストです。氏のシグネイチャーモデルは太めのネックに平滑な指板、ジャンボフレットを備えた男気あふれる仕様で、シグネイチャーピックアップ、社外ブロックサドルなど随所に深いこだわりが反映されています。

フェンダーは、最高グレードの「フェンダー・カスタムショップ(FCS)」、王道の「フェンダー(レギュラーライン)」、求めやすい「スクワイア(Squier)」の3つのブランドでラインナップを展開しています。
FCSはカリフォルニア州コロナ工場内の専用工房で製造され、このほかフェンダーはアメリカ、メキシコ、日本、インドネシアの4カ国で分担して生産、スクワイヤはインドネシアで生産というように、ブランドごとに生産地を分けています。
また、フェンダーブランドにおいてはアメリカ製と日本製のみ、シリーズ名に生産地を冠してブランド化しています。個々のモデルをチェックする前に、各ブランドの概要を見ていきましょう。真っ先にこうしたブランドから絞り込むのも、有力な選び方です。
60 Stratocaster Heavy Relic Built by Kyle Mcmillin
FCSは、フェンダー最高グレードの名にふさわしい格の高さと品質の高さを併せ持っており、ヴィンテージギター特有の感触やサウンドまで再現するほか、新しい設計も柔軟に採用します。工房は本社コロナ工場の一角に構える独立したセクションで、技術の高い限られた職人たちが仕事をしています。
そのトップに位置するマスタービルダーは品質管理や製品開発の監修なども担当しており、フェンダーブランド全体の品質向上に寄与しています。
未来感じる音とルックス!Fender American Ultra II Stratocasterを弾いてみた
「フェンダーUSA」と呼ばれることもあるアメリカ製フェンダーは、カリフォルニア州のコロナ工場で生産されています。モデル名に「American」がついていたら、USAです。工員たちはマスタービルダーの技術指導を受け、技術の向上と伝承に努めています。プロの酷使に耐える品質とサウンドがあり、リセールバリュー(下取り価格)が高いのが特徴です。
フェンダー・ジャパン製ストラトキャスターをギター博士が弾いてみた!
日本製は、モデル名に「MADE IN JAPAN」が添えられ(除アーティストモデル)、カスタムショップ出身スタッフ監修のもと、日本の提携工場にてOEM生産されます。提携工場は長らく「フェンダー・ジャパン」の生産にたずさわった経歴もあり、価格に不釣り合いな高いクオリティが世界的に評価されています。
アメリカとも日本とも表示されないギター(除アーティストモデル)は、メキシコ製かインドネシア製です。メキシコ製はバハ・カリフォルニア州エンセナダにあるフェンダー直営の工場で生産され、価格帯は日本製とほぼ同じです。木材の調達先、工作機械や製造ノウハウなどはUSA工場と同じで、工員にはカスタムショップのマスタービルダーによる技術指導が定期的に行われています。
インドネシア製は、パートナー工場によるOEMで生産されます。フェンダーの職人や品質管理スタッフが派遣されることで、フェンダーの名を冠するに足る製品が作られています。
スクワイヤーのストラトキャスターをギター博士が弾いてみた!!
「これからギターを始める人が、最初の一本として手に入れやすい価格」を実現させるブランドで、インドネシアをはじめとするアジア諸国のメーカーでOEM生産されます。フェンダーの下位ブランドという位置づけですが、フェンダーの設計によるピックアップが使われるなど、フェンダー社がしっかりプロデュースしており、調整やカスタマイズによってはプロミュージシャンの使用にも十分耐えることができます。
ストラトキャスターのギターケース:3種類の比較
オレンジのハードケースがFCS、ブラックのハードケースがUSAアメリカンシリーズ、ギグバッグはメイド・イン・ジャパン
付属品については、特に「どんなケースが付くか」に注目するべきでしょう。FCSとUSAはハードケース、MEXとMIJはギグバッグ、スクワイアはソフトケースが付属するのが基本です。FCSとUSAについては、ケースだけでなくストラップやシールドまで同梱されるものがあります。

こだわりのない目で見れば、ストラトキャスターはどれも同じように見えます。しかしながら実際には、グレードのほかにもいろいろなところの違いから、大きく2つのスタイルに分けられます。こんどはココに注目していきましょう。
「ヴィンテージ・スタイル」はストラトキャスターの原点であり、愛用するアーティストやヴィンテージギターの人気も手伝って、今なお厚く支持されています。1950年代、1960年代、1970年代の3世代で大別するのが一般的で、グレードが上がるにつれてその再現度は上がっていきます。各年式の特徴を見ていきましょう。
Cliff Richard & The Shadows – Move It (The Cliff Richard Show, 19.03.1960)
ストラトキャスターは1954年、テレキャスターを大幅に改良した全く新しいギターとしてデビューしました。Vシェイプのネックは親指を出した握り方に有利で、チョーキングを駆使するブルース系の演奏に良好です。良好な音抜けを重視した明るく鋭い音色が持ち味で、コード弾きにも大変良好。出力は低めです。

Made in Japan Traditional ’50s Stratocaster
メイプル指板と8点留めピックガードが外観上の特徴。
Taste – What’s Going On – Live At The Isle Of Wight Festival / 1970
1960年代型はローズ指板により高域がやや丸まったマイルドな感触と、アンプドライヴに耐える厚めの中域を持つ太いサウンドが特徴。ロックやポップスなど幅広い音楽に浸透できる柔軟性があり、その完成度の高さからモダン・スタイルのお手本にもなっています。

American Professional Classic Stratocaster
ローズ指板と11点留めピックガードが外観上の特徴。
CHIC – Le Freak (Official Music Video)
1970年代型は大型化させたヘッドと重量のあるアッシュ製ボディによる、硬質でサスティン豊かな弦振動が持ち味です。またピックアップの出力も増強され、音圧が強化されています。太い音が得られることから、ハードロック/ヘヴィメタルの分野でも盛んに使用されます。

American Vintage II 1973 Stratocaster
ラージヘッドとブレットナットが外観上の特徴。
Dirty Loops & Cory Wong – Follow The Light
もっと弾きやすく、もっと調整しやすく、さらなるサウンドバリエーションを、と改善を積み重ねてきた1980年代以降の新しい仕様が「モダン・スタイル」です。サウンド面では抜けの良いフェンダー・トーンを継承しつつ、エフェクターやシンセサイザー、DTMが当たり前の現代音楽で使いやすいバランスの良さとクセのなさ、そして充分な出力が持ち味。上位機種にはノイズレス・ピックアップが搭載されます。
ただしモダン・スタイルはどれもが「全身モダン仕様」とは限らず、「ココだけモダン」や「ココだけヴィンテージ・スタイル」というように、新旧の設計を織り交ぜているモデルが多数見られます。

フェンダーのストラトは、ヴィンテージ・スタイルとモダン・スタイルに大別できることが分かりました。それでは、どちらを選べばいいのでしょうか。
ずばり、迷う人にはモダン・スタイルがおすすめです。音楽を奏でる道具として優秀で、弾きやすいからです。一方で、使用アーティストのイメージや音楽を支えた歴史に何か感じるものがある人には、ヴィンテージ・スタイルがおすすめです。ただし、初心者さんに細く低いフレットはおすすめしにくいので、ミディアムジャンボもしくはヴィンテージ・トールフレットが採用されているモデルを選ぶといいでしょう。
アーティストモデルには、新旧の設計でレギュラーモデルにはない組み合わせが見られるほか、そのモデルにしか採用されていない仕様が見られます。多くのアーティストモデルが「何の変哲もないストラトキャスター」というルックスを持っていることもあって、ファンならずとも魅力を感じ、また自分のメイン機として堂々と使用できます。では、そのいくつかを見ていきましょう。

Fender x Hello Kitty Black Stratocaster
Made in Japan Limited Stratocaster Pink Paisley
Limited Edition Suona Stratocaster Thinline
遊び心を感じさせる製品開発もフェンダーの魅力で、いろいろなコラボレーションでさまざまなストラトキャスターが限定生産されます。レギュラーモデルの本体にグラフィックを施すものばかりでなく、このために本体ばかりかピックアップまで開発することもあります。
では次に、ビンテージ/モダンといったスタイルの違いがどんな設計から生じるのか、またその演奏性やサウンドへの影響を見ていきましょう。
ストラトキャスターのネック:メイプルネックにローズウッド指板のモデル
ネック仕様は時代の変遷で大きな変貌を遂げています。それぞれについてざっと見ていきましょう
ストラトのネックグリップ6種類
サテン・フィニッシュのネック
ネックの横幅を決める「ナット幅」については42mmが大多数ですが、42.8mmから40mmまでの振り幅があります。欧米人に体格で劣る日本人には細いネックが有利なようにも思えますが、細いネックはコードを押さえる際に隣の弦に触れやすくなります。また、ナット幅が広いネックはそのぶんだけネック本体の体積が大きくなることから音響性能が良くなりやすい傾向があります。
上:ローズウッド指板、下:メイプル指板
ストラトキャスターの王道スタイル
ストラトキャスターで使用される指板はメイプルとローズウッドの二種類が基本ですが、このほか色々な木材が使われます。
と言われます。しかし音の違いは分かりやすくはありません。深いこだわりがなければ、ある程度見た目上の違いだと割り切っておきましょう。モデルによっては、ボディカラーと指板材を対応させているものもあります。
Made In Japan Traditional 60s Stratocaster GOLD HARDWAREの指板Rの様子
指板曲線の曲がり具合を、Rの値で示している。
この指板は250R。
指板Rについては、ヴィンテージ・スタイルが7.25″ (184.1 mm)で、現代標準は9.5″(241mm)、このほかの仕様も採用されています。
ミディアム・ジャンボ・フレット
ヴィンテージ・スタイルでは小さめのフレットが標準的に使われていましたが、現代では大きめが弾きやすいと考えられています。小さめだと木材の個性が活かされ、大くなるにつれて金属の個性が強くなり、アタックとサスティンが増すと考えられています。
21フレットのストラト
ストラトキャスターは21フレット仕様でデビューしました。現代の音楽では22フレットまで欲しくなることもありますが、チョーキングで対応するなどで21フレットを工夫して使う、という面白みもあります。ルックス的には21フレット仕様は指板の端とフロントピックアップとの間に若干の開きがあり、デザイン的に収まりの良さを感じさせます。
一方、モダン・スタイルの22フレットは便利ですが、指板の端がフロントピックアップにかなり接近するため、外観的には窮屈さを感じる人もいるでしょう。ストラトキャスターの生みの親であるレオ・フェンダー氏も、その一人だったといいます。
トラスロッドがエンド側にある60年代スタイル・ストラトキャスター
モダンスタイルのストラトでは、トラスロッドはヘッド側にある
フェンダーはエンド側についていましたが、やがてヘッド側へと移行していった歴史があります。ネックエンド側から操作する形式では一旦ネックを外してしまわなければならず、調整にはある程度の技術を必要とします。
「ネックエンド側からのトラスロッド調整」は面倒臭いイメージがあるかもしれませんが、この方式こそフェンダーが世に知らしめたデタッチャブル(着脱可能)ネックの大きなメリットでした。ジョイント部の奥までロッドが行きわたることで、最も高い剛性が求められるジョイント部近辺の強度を上げることができるわけです。
American Vintage II 。左から、1957、1965、1973。
フェンダーのストラトには普通のヘッドと「ラージヘッド」の2種類があります。ラージヘッドは70年代に採用された仕様で、ヘッド重量が増したことでサスティンに優れると言われます。ボディとヘッドが同じ色のものは「マッチングヘッド」といいます。
左:アルダー材、右:アッシュ材:アッシュ材の方が木目がしっかり出ている
ストラトキャスターのボディ材はアルダーとアッシュの2種類がメインです。
「アタックのアッシュ、粘りのアルダー」と言われ、ピックアップなど他の仕様が同じでもボディ材の違いによってトーンのニュアンスが変わってきます。アッシュ材は木目がはっきり出るため、その美しさもポイントです。FCSでは厳選された最上級のボディ材が使用されます。
バスウッドやポプラなどが使用されることもあります。これらは安価で加工しやすい木材ですが、素直な音響特性から、他のブランドでは高級モデルで採用されることもあります。
ボディ材について詳しく:
ギターのボディ材について
左から、American Professional Classic、American Professional II、American Ultra II 。
ヒール部分は、長方形が基本です。これに対してモダン・スタイルでは、ハイポジションの演奏性を高めるため「ヒールカット」が施される場合があります。フェンダーは歴史上ヒールカットに消極的で、初めての採用は「American Ultra(旧モデル)」でした。
白/ミントグリーン/黒/べっ甲/パール、ピックガードのカラーも様々
ストラトのルックスは、ピックガードで決まると断言してもいいでしょう。基本は白ですが、ヴィンテージ感のある黄色がかったものや薄い緑が入ったもの、黒やパール、べっ甲柄などいろいろなものがあります。また金属製やミラー(鏡)になっているものなど、変わった素材が使われることもあります。
白+黒+白の3Pピックガード
ネジにこだわる人もいる
かなりマニアックなポイントですが、50年代風のストラトキャスターのピックガードは8本のネジで、60年代以降のストラトキャスターやほとんどのストラトタイプのギターは11本のネジでボディに固定されています。ネジの個数でも印象に違いが出ますよ。
ストラトキャスターを極める!(ネジ編) – ギターニュース.com
同じアメリカン・スタンダード・ストラトの中でHSS配列のモデルも存在する

SSSスタイルのストラトでも、内部を見てみるとハムバッカーに変更が可能なようにあらかじめ「ザグリ」が入れられていることがある。
写真のMade in Japan Hybrid Stratocasterは、HSH配列にすることもできる様子だ。
ストラトキャスターのピックアップは3シングル(3S、SSS)を基本としていますが、現代的なモデルではリアをハムバッカーに置き換える「HSS」配列が多く採用され、このほか「HH」配列も見られます。ハムバッカーは高出力で出音が太く、ロックにおいては特にディストーション・エフェクターとの相性が抜群です。HSS配列ではシングルコイルとの音量差が懸念されますが、フェンダーのハムバッカーは出力がうまく抑えられているので心配ありません。
キレの良いコード演奏などで澄んだ音が欲しい場合は、オーソドックスなSSS配列が最も理想的です。このSSS配列で歪ませた軽やかで鋭いトーンも活用されますが、太くのびやかなソロ用のトーンを得ようと思ったら、ファズで飽和させるのが一般的です。
フェンダーはギター本体のメーカーでありながら、世界的なピックアップのメーカーでもあります。ヴィンテージ・スタイルでは材料から作り方まで当時と全く同一のレシピで作られるものもあれば、年代を大まか再現にとどめたものもあります。
モダン・スタイルではヴィンテージ風のサウンドを残しつつ、ハムノイズを除去した「ノイズレスピックアップ」、ヴィンテージPAFを再現した「ショウバッカー」など、新しい設計であってもサウンド的にはヴィンテージ系のフィーリングを残すモデルが目立ちます。
アーティストモデルではディマジオやセイモアダンカンなどの社外品が特別に搭載されることも多く、カスタムショップ製のピックアップを搭載してアップグレードしたモデルも多くリリースされています。
ストラトキャスターの操作系は、マスターボリューム1基&トーン2基の「1V2T」に、5WAYセレクタースイッチ、という構成です。新旧の違いは特に、トーン回路で見られます。
ヴィンテージ・スタイルでは、トーンがそれぞれフロントピックアップ、ミドルピックアップに効き、リアはトーンなし、という配線です。リア単体ではキャリッキャリな音ですが、ミドルとのハーフトーン時にトーンを使用できます。
現代の感覚では、リアにトーンが効いたほうが便利だと考えられています。そこでモダン・スタイルのストラトでは、トーン1でフロント&ミドル、トーン2でリア、という配線が標準的です。また、サウンドバリエーションを拡充させる「S-1スイッチ」、ツマミを絞ったときの音を良好に響かせる「トレブル・ブリード回路(ボリューム)」、「グリースバケット回路(トーン)」といった特殊配線が採用されるモデルもあります。
左:ロートマチック・タイプ、右:クルーソン・タイプギターの性能にかかわる重要な金属パーツは「ペグ」と「ブリッジ」、そして「サドル」です。
ヴィンテージ・スタイルでは、ペグに軽量な「クルーソンタイプ」、ブリッジは「6点留め」、サドルは鉄板を曲げて作った「ベントサドル」という組み合わせが普通です。軽量で倍音豊かな響きと、弦振動の気持ち良い減衰が持ち味。これらのパーツは現代の音楽シーンにおいても充分に通用する性能があります。
ヴィンテージ・スタイル(左)とモダン・スタイル(右)のシンクロナイズド・トレモロユニット。
モダン・スタイルの金属パーツは、よりスムーズな作動、より高い精度、より高い剛性、より長いサスティン、そしてよりクリアなサウンドを目指して進化していきました。モダン・スタイルのさまざまな仕様を見ていきましょう。カッコ内はカタログでの表示です。こうしたパーツは後から交換することも比較的容易ですから、好奇心で試してみるのもお勧めです。
以上、いろいろなポイントでフェンダーのストラトをチェックしていきました。ライブや録音で頼りになる道具として、また音楽を楽しむ相棒として、納得ができる一本をぜひ見つけてください。
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