エレキギターの総合情報サイト
1954年にデビューした「フェンダー・ストラトキャスター」は、フェンダー・テレキャスター、ギブソン・レスポールと並び「エレキギターの王道」といわれる多機能でとても便利なギターです。60年以上の歴史があり、すべてのジャンルに対応する音作りの幅広さ、ハイポジションが弾きやすくアーミングができる演奏性、ピックアップなど交換用パーツの多さなど、多くのギタリストを今なお惹きつけて止まない魅力を放っています。
世に数多のストラトあれど、「ストラトの本家」はフェンダーであり、フェンダーブランドだけが「ストラトキャスター」を名乗ることができます(それ以外のものは「ストラトタイプ」)。しかし検索すると、次々と出てくるあれもストラト、これもストラト。いったいどれを選べばいいのでしょうか。
そこで今回は、フェンダーブランドからリリースされているストラトキャスターを選ぶポイントを考えていきましょう。
Kenny Wayne Shepherd Band – Never Lookin’ Back [OFFICIAL VIDEO]
ケニー・ウェイン・シェファード氏は、高校在学中にリリースしたアルバムがゴールドディスクになるという鮮烈なデビューを飾ったブルース・ロックギタリストです。氏のシグネイチャーモデルは太めのネックに平滑な指板、ジャンボフレットを備えた男気あふれる仕様で、シグネイチャーピックアップ、社外ブロックサドルなど随所に深いこだわりが反映されています。
フェンダーは、最高品質の「フェンダー・カスタムショップ(FCS)」、王道の「フェンダー(レギュラーライン)」、求めやすい「スクワイア(Squier)」の3つのブランドでラインナップを展開しています。このうちフェンダーは米国(USA)、メキシコ(MEX)、日本(MIJ)の3カ国で生産されており、この3つを区別する考え方もあります。そこで当サイトでは「フェンダー5分類」と銘打ち、フェンダーブランドを「カスタムショップ、USA、MEX、MIJ、スクワイア」の5つに分類して考えます。
フェンダー・ストラト5分類価格帯分布図(アーティストモデルを除く。2022年5月時点)
まずは、それぞれの価格帯からフェンダー5分類の全体像を見てみましょう。スクワイアは、2万円台から8万円近辺です。MEXは、そのすぐ上から15万円近辺くらい、MIJは10~17万円近辺あたりです。USAはMIJのすぐ上から30万円オーバー、カスタムショップは55万円から青天井です。MEXとMIJの価格帯はかなり接近していますが、それ以外の価格帯はキレイに分化しているのが分かります。5分類のうちどれをセレクトするかは予算でだいたい絞られますが、価格帯が被っているところは悩みどころです。それぞれどのように作られるかを、ざっと見ていきましょう。
スクワイヤーのストラトキャスターをギター博士が弾いてみた!!
「これからギターを始める人が、最初の一本として手に入れやすい価格」を実現させるブランドで、製品は中国やマレーシアなど、アジア諸国のメーカーでOEM生産されます。フェンダーの下位ブランドという位置づけですが、フェンダーの設計によるピックアップが使われるなど、フェンダー社がしっかりプロデュースしています。エントリークラスという位置づけですが、調整やカスタマイズによってはプロミュージシャンの使用にも十分耐えることができます。
フェンダー・ジャパン製ストラトキャスターをギター博士が弾いてみた!
日本製は、モデル名に「MADE IN JAPAN」が添えられ(除アーティストモデル)、カスタムショップ出身スタッフ監修のもと、日本の提携工場にてOEM生産されます。提携工場は長らく「フェンダー・ジャパン」の生産にたずさわった経歴もあり、価格に不釣り合いな高いクオリティが世界的に評価されています。
メイドインジャパンのフェンダー・ストラトキャスター徹底分析!
メキシコにあるフェンダー直営の工場で生産されます。木材の調達先、工作機械や製造ノウハウなどはUSA工場と同じで、工員にはカスタムショップのマスタービルダーによる技術指導が定期的に行われています。そのため低価格のものでもちゃんと「フェンダーの音がする」と言われます。なお、アメリカとも日本とも表示されないギター(除アーティストモデル)は、メキシコ製です。
カリフォルニア州のコロナ工場で、「アメリカンシリーズ」とアーティストモデルを生産しています。モデル名に「American」がついていたら、USAです。工員たちはマスタービルダーの技術指導を受け、技術の向上と伝承に努めています。そのままプロの酷使に耐える品質とサウンドがあり、リセールバリュー(下取り価格)が高いのが特徴です。
《更に磨かれたプロ仕様》American Professional II Stratocaster
《最強最新鋭》Fender American Ultra Stratocaster
《新発想のヴィンテージ・スタイル》Fender American Original Stratocaster
《使いやすく、弾きやすい》Fender American Performer Stratocaster
60 Stratocaster Heavy Relic Built by Kyle Mcmillin
FCSはコロナ工場の一角に構える独立したセクションで、フェンダーのラインナップ中最も高いグレードの製品を手作りしています。技術の高い限られた職人たちが仕事をしていますが、そのトップに位置するマスタービルダーたちによってフェンダーの品質管理が行われています。ヴィンテージギター独特である「バイト感」のあるサウンドまで再現する品質の高さで、世界中のギタリストのあこがれのブランドになっています。
ストラトキャスターのギターケース:3種類の比較
オレンジのハードケースがFCS、ブラックのハードケースがUSAアメリカンシリーズ、ギグバッグはメイド・イン・ジャパン
付属品については、特に「どんなケースが付くか」に注目するべきでしょう。FCSとUSAはハードケース、MEXとMIJはギグバッグ、スクワイアはソフトケースが付属します。
FCSとUSAについては、ケースだけでなくストラップやシールドまで同梱されるものがあります。ギグバッグとソフトケースは一見同じもののようにも思えますが、ギグバッグはクッションで楽器を覆うので、ギターを保護する性能がソフトケースより優れています。
ただしこれらの付属品は「おまけ」ではありません。ギター本体とケースのセットで一つの商品になっていますから、「ケースはいらないから安くしろ」といった交渉の余地はなく、「ギターはMEXで、ギグバッグをハードケースに変更」といったわがままな買い方もできません。付属のものと異なるタイプのケースが欲しければ、新たにケースを手に入れる必要があります。
こだわりのない目で見れば、ストラトキャスターはどれも同じように見えます。しかしながら実際には、グレードのほかにもいろいろなところの違いから、大きく2つのスタイルに分けられます。こんどはココに注目していきましょう。
「ヴィンテージ・スタイル」はストラトキャスターの原点であり、ヴィンテージギターの人気も手伝って、今なお厚く支持されています。旧式な設計ではあってもデビュー当時は最新の設計であり、音楽の第一線に登板できる音と性能がまだまだあります。全身がヴィンテージ・スタイルで仕上がっているモデルばかりでなく、一部現代仕様にアレンジされているものもあります。ヴィンテージ・スタイルの代表例を見てみましょう。
Squier Classic Vibe 70s Stratocaster
スクワイアの「クラシック・ヴァイブ」シリーズは、現代的な弾きやすいネックにヴィンテージ・スタイルのパーツを載せて仕上げています。価格が許す範囲内でできる限りの雰囲気を再現しているほか、フェンダー設計によるアルニコピックアップを備えており、本格的なサウンドが得られます。
Classic Vibe Stratocasterを…
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Vintera ’70s Stratocaster
「Vintera(ヴィンテラ)」は、各年代の特徴や仕様を価格帯の許す限り再現したシリーズです。各年代のサウンドを再現するピックアップがそれぞれ開発されているほか、ネックグリップ、指板R、フレットサイズ、ブリッジ仕様など、全身ヴィンテージ・スタイルですが、塗装はラッカーではないため扱いはラクです。一方で同シリーズの「Modified」モデルは、演奏性やサウンドバリエーションなど、現代的なアレンジをふんだんに盛り込んでいます。
Vintera Stratocasterを…
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日本製上位機種 Made in Japan Heritage Stratocaster は、50年代/60年代/70年代それぞれの仕様をしっかり再現し、各年代に合わせたピックアップを載せています。指板やフレットに至るまで、余すところなくヴィンテージ・スタイルです。ネックもボディもニトロセルロースラッカー塗装が施され、触った感触までもヴィンテージ・スタイルです。
MIJ Heritage Stratocasterを…
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「アメリカン・ヴィンテージ」シリーズは、特定の年式へのこだわりをいったん脇に置いて、50年代、60年代といった大まかな分け方で特徴をまとめています。ピックアップには年式の特徴を追求したモデルが使用され、全身にラッカー塗装が施されるなど、グレードにふさわしい高級仕様です。これに対し、指板をやや平らに、またフレットをやや高いものにすることで、現代的な弾きやすさも備わっています。
Fender American Vintage II Stratrocaster徹底分析
1956 Stratocaster Relic
FCSの「タイムマシン」シリーズは、当時と同じ技術と道具を使い、細心の注意を払って作り上げられる、ヴィンテージ・ギターのレプリカです。ネックシェイプやピックアップなどでオリジナルの姿をしっかり再現しつつ、指板はやや控えめな9.5″R、ナロートールフレット採用、リアにトーンがかかるなど、現役のギターとして使える現代的なアレンジが施されています。
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ヴィンテージ・スタイルをスタート地点とし、もっと弾きやすく、もっと調整しやすく、さらなるサウンドバリエーションを、と改善を積み重ねてきたのが「モダン・スタイル」です。ただしモダン・スタイルはどれもが「全身モダン仕様」とは限らず、「ココだけモダン」や「ココだけヴィンテージ・スタイル」というように、新旧の設計を織り交ぜているモデルが多数見られます。
Player Plus Stratocaster HSS(Belair Blue)
「プレイヤー・プラス(Player Plus)」は、フェンダーのエントリークラス「Player」シリーズをアップデートした、これまでにない鮮やかなルックスがあり、ワンランク上の演奏体験ができるシリーズです。演奏性や各部品の性能がグレードアップし、特殊配線の増設によりサウンドバリエーションが増強されています。
《鮮やかなルックスと特殊配線》Fender Player Plusシリーズ
Made in Japan Hybrid 60s Stratocaster
「伝統と進化の融合」をテーマにしたMade in Japan Hybrid Stratocasterは、ヴィンテージ系のサウンドとルックスに、モダンなプレイアビリティを持たせたギターです。やや平たい指板に大きめのフレットという現代標準の演奏性に、ロック式ペグと2点支持トレモロを備えた、高機能なギターに仕上がっています。
MIJ Hybrid Stratocasterを…
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フェンダーUSAのモダン系上位機種、現在では「アメリカン・ウルトラ」が、最も新しいモダン・スタイルのストラトキャスターです。ストラト本来のルックスをしっかり残しながら、サウンドバリエーションを増強する「S-1スイッチ」、ハイポジションの演奏性をフェンダー史上最高まで引き上げたヒール形状など、随所にモダンな設計が採用され、また最新式のノイズレス・ピックアップが搭載されます。
《最強最新鋭》Fender American Ultra Stratocaster
フェンダーのストラトは、ヴィンテージ・スタイルとモダン・スタイルに大別できることが分かりました。それでは、どちらを選べばいいのでしょうか。迷ったら、モダン・スタイルを選びましょう。モダン・スタイルの設計は、ストラトが弾きやすさ、部品の機能や性能、ルックス、サウンドを時代に合わせてきた結果だからです。
一方でヴィンテージ・スタイルには、名曲や名演を支えてきた由緒ある設計であること、当時のアーティストが使っていたギターに近いこと、ヴィンテージ・ギターに近いことなど、別の魅力があります。敢えてこっちを選ぶ、こだわりのある人にお勧めです。
では次に、このようなスタイルの違いがどんな設計から生じるのかを見ていきましょう。
ストラトタイプの売れ筋を…
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