Gibson Les Paul Traditional 2012
ギブソン・レスポールは、ジャズギタリストのレス・ポールさんのために開発された、世界で最も有名なシグネイチャーモデルです。1952年のデビュー以来、不遇の時代もありましたがいろいろなプレイヤーに愛用され、現在ではフェンダー・ストラトキャスター、フェンダー・テレキャスターに並ぶエレキギターの定番機になっています。ここでは本家ギブソンのレスポールはもちろん、他社製のレスポールタイプ、また派生モデルも含めたギターにもスポットを当て、その特徴や魅力に迫っていきましょう。
備考:「レスポール」という名称はギブソンの登録商標であり、ギブソンもしくはエピフォンの製品でなければ使用できません。他のものは全て「レスポールタイプのギター」や「レスポールのコピーモデル」などと言わなければなりませんが、それでは余りにも不便ですから、本家もコピーモデルもひっくるめて便宜上「レスポール」と呼びます。
- レスポールの特徴
- レスポールの種類と選び方
- 《部門別》おすすめレスポールのラインナップ
レスポールの特徴

Gibson Custom Shop 1959 Les Paul Standard Reissue
レスポールには様々なさまざまな特徴がありますが、はじめに以下の4つから、レスポールとはだいたいどういうものなのかをチェックしていきましょう。
- 弦長24.75インチ(ミディアムスケール)を基本とした、握りがいのあるネック
- シングルカッタウェイを基本とする、かわいいとも堂々としているとも言えるボディ
- ハムバッカーとP-90を基本とする、太いサウンドの出るピックアップ
- ミュートプレイに有利な、堅牢なブリッジ
弦長24.75インチ(ミディアムスケール)を基本とした、握りがいのあるネック

Gibson Les Paul Custom Lefty – Neck
レスポールの弦長(スケールとも。ナットからブリッジまで)は24.75インチが基本で、ミディアムスケールまたはギブソンスケールと呼ばれます。これはフェンダーの25.5インチ(フェンダースケール、又はロングスケール)より約2センチ短く、演奏面ではコードの押弦などで指が届きやすく、また弦張力が抑えられて押弦しやすく、また音響面では太く甘みのある弦振動が得られます。
「43ミリ」という標準的なナット幅は一般的なアコギとだいたい同じで、標準的なストラトキャスターよりやや幅広です。ネックグリップは丸みを残しながらもスリムで握り込みやすいあたりが標準的ですが、1950年代を意識したモデルでは肉厚なグリップが採用されます。
ネック材はマホガニーが基本です。充分に硬い木材ではありますがメイプルには及ばず、倒したり落としたりすると折れてしまうので、大切に扱いましょう。ネックをボディに接着する「セットネック」工法は、アコギやバイオリンなどにも採用される、伝統的な接続法です。
シングルカッタウェイを基本とするボディ

Gibson Les Paul Traditional 2012
レスポールのボディはアコギの形をコンパクトに引き締めたシルエットを持ち、丸くてかわいらしいとも、堂々としていてかっこいいとも見えます。指が届くように高音弦側をカットしたシングルカッタウェイも、ルックス上の大きなポイントです。
ボディ本体は、メイプルトップ&マホガニーバックの2層構造が基本です。二つの木材の音響特性をブレンドすることで、明瞭かつ力強い弦振動が得られます。
ハムバッカーとP-90を基本とする、太いサウンドの出るピックアップ

レスポールでは、出力が大きくて太い音が出せる「ハムバッカーピックアップ」が2基搭載されているのが基本です。またジュニア/スペシャルなどでは、「P-90」と呼ばれるラージサイズのシングルコイルが搭載されます。こちらもシングルコイルながら、存在感のある太いサウンドが得られます。
操作系はピックアップそれぞれにボリュームとトーンを持つ「2V2T」構成が基本で、各ピックアップの音量と音色を設定しておき、セレクタースイッチで切り替えます。両ピックアップのミックスでは、音量のブレンドで無段階にさまざまな音色が得られます。
ミュートプレイに有利な、堅牢なブリッジ

レスポール特有のTOM(チューン・O・マチック)ブリッジは、シンプルな構造でしっかりと安定しており、信頼のおけるパーツです。弦ごとの高さ調節こそできませんが、ブリッジ本体の高さや傾きの調節と、弦ごとのオクターブ調整が可能です。
ある程度の高さがあること、またサドル部で弦が緩やかな山形に折れることから、ブリッジミュートがやりやすいと感じるギタリストが多くいます。
サウンドの特徴
太く明瞭な弦振動の得られる本体とハムバッカーの出力にものを言わせた、力強いオーバードライブ・サウンドはレスポールの得意分野だと言って良いでしょう。トーンノブやトレブルの調整しだいで、叫ぶような鋭い音色にも愛をささやくような甘い音色にもなります。クリーンは甘く艶やかで暖かく、大人の色気を感じさせます。
ギブソンのレスポールをギター博士が弾いてみた!!
ストラトキャスターとの違い
ライバルのストラトキャスターと比較すると、レスポールのサウンドをより深く理解することができます。ストラトの音色は軽やかで涼しさを感じさせ、「鈴の音のようだ」と表現されることもあります。これに対してレスポールの音色は肉厚で、春の日差しを浴びているかのような暖かさがあります。
フェンダーストラトキャスターとギブソンレスポールを比べてみた!
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レスポールの種類と選び方
レスポールの種類
ラインナップを見ていく前に、本家ギブソンの主だったレスポールの特徴をざっと見していきましょう。どれも等しくレスポールですが、それぞれに違いがあり、使われる場面や選ぶプレイヤーに一定の傾向が見られます。
Les Paul Standard

レスポール・スタンダードは木目の見えるサンバーストカラーが定番で、3フレットからの皿型の指板インレイが特徴。全てのレスポールの原点であり、ロックを中心にポップスやジャズ、フュージョンなどあらゆるジャンルで活躍します。
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Les Paul Custom

レスポール・カスタムはブラックとホワイトが定番色で、ゴールドパーツと1フレットからのブロックインレイが目印。レスポールの高級機という立ち位置で、ロケンローからメタルまで、特にロック系に愛用者が集中します。
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Les Paul Jr.

レスポール・ジュニアは、フラットなボディ、リアに1基のドッグイヤー型P-90、ドットインレイが特徴。コードの響きが良く、サイドギターでの使用例が目立ちます。ストレートなサウンドのバンドで、ボーカリストがストラップを長くして構えるのが様式美です。ピックアップ本体の高さ調節はできませんが、ポールピースの高さ調節で弦ごとの出力を微調整できます。
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Les Paul Special

レスポール・スペシャルは、フラットなボディ、2基のソープバー型P-90、ドットインレイが目印。やはりロックバンドのボーカリストが持つイメージが濃厚です。そこを逆手に取り、あえてジャズやソウルで使用するプレイヤーも散見します。ソープバーはドッグイヤーと異なり、ピックアップ本体の高さ調節が可能です。
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Les Paul Deluxe

レスポール・デラックスは2基のミニハムバッカーが特徴で、レスポール・スタンダードより引き締まった音色が持ち味です。多くのギタリストが一時的に一軍起用したものの、このギターをトレードマークにする名手の出現は未来に託されています。レスポール・デラックスならこの人。それは、未来のあなたかもしれない!
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レスポールの選び方
レスポールに迷ったら、レスポール・スタンダードもしくはそれに限りなく近いモデルから検討しましょう。どんなジャンルにも通用する、定番機の称号は伊達ではありません。それでも価格やルックスなど気になるポイントは多くありますが、ここでは機能面に注目して、レスポールのチェックポイントを二つ見ていきましょう。
ピックアップと配線

ハムバッカー(左)とP-90(右)
レスポールのピックアップはPAF型ハムバッカーとP-90が基本ですが、これ以外にもメーカーや開発コンセプトによってさまざまなピックアップが採用されます。現代仕様のレスポールではコイルタップを代表とする特殊配線が仕込まれることもあり、従来のレスポールが苦手としてきた細く鋭い音を放つことができます。
本体の演奏性や抱え心地

ギブソン・レスポール・カスタムの背面(上)と、バックコンター&ヒールカットを持つAria Pro II PE-AE200。
レスポールのネックは50年代式が丸く肉厚で、60年代以降では比較的スリムになります。ネックプロフィールに「Round(丸い)」などと表記されているものは、50年代を意識した太めのネックです。
また従来のレスポールは、バックコンターもヒールカットも非採用です。レスポールとは元来そういうものであり、だからこそのしっかりとした弦振動だという考えが一般的です。とはいえ現代仕様のレスポールでは、ヒールカットを採用して異次元のハイポジション演奏性を達成させたり、バックコンターを施して抱え心地を向上させたりしています。
《部門別》おすすめレスポールのラインナップ
ではここから、初心者さんをはじめとするいろいろな人におすすめのレスポールをチェックしていきましょう。これからギターを始める人におすすめの手に入れやすい価格帯のモデル、2本目以降におすすめの本格的なモデル、泣く子も黙る強力なモデル、品質と性能に優れる日本製ハイエンドモデルの順に見ていきます。
《ネットショップでも買いやすい》初心者さんにおすすめのレスポール
これからギターを始める人の最初の一本は、手に入れやすい価格帯からルックスで決めてしまって大丈夫です。まずはギタリストとしてのキャリアをスタートさせることが、何よりも重要なのです。さすがに有名プロミュージシャンがこのクラスの楽器を使用することはありませんが、「これから始める人が選ぶ最初の一本目」としては充分です。
ここで紹介するモデルは、有名ブランドが多くの人のためにリリースしています。弾き心地やサウンドなどへの特定のこだわりや偏りを抑えた設計になっているため、ルックスや価格で選んでネットショッピングで買っても大丈夫です。必要なものが全て揃えられた「セット」で販売されることも多く、ギタリストとしてのスタートを切るための強い味方になっています。
《脱初心者》2本目以降におすすめの本格派レスポール・タイプ
こちらは1段階グレードを上げたラインナップです。品質もサウンドも良好で、初心者を脱して上達してからも長期的に使用できます。特定のジャンルやプレイスタイルに特化したモデルもあり、なりたいギタリストに一歩でも二歩でも近づく可能性を秘めています。
泣く子も黙る強力なレスポール
レスポールの王道は、やはりギブソンで間違いありません。ギブソンを前にしては、他社のレスポールはレスポール・タイプに過ぎません。とはいえギブソンは歴史と実績がありすぎて、これまでのスタイルを逸脱しにくいのも事実ではあります。そんなわけで、本家だけでなく本家に比肩するレスポール・タイプも合わせて見ていきましょう。
品質と性能に優れる日本製ハイエンドモデル
海外からの支持も厚い日本製のギターは、厳しい厳しい出荷基準をクリアした確かな品質が最大の強みです。また独自の柔軟な設計が積極的に採用されたモデルが多く、ルックス、プレイアビリティ、サウンドともにアイデンティティを感じさせます。
以上、レスポールに注目して、特徴や選び方、おすすめモデルをチェックしていきました。モデルによってはレスポールを大きく逸脱したものもありますが、ギブソン・レスポールがなかったら誕生しえなかったギターであることに間違いはありません。ぜひお気に入りの1台を探し当ててください。
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