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ジョン・マクラフリン(John McLaughlin)

ジョン・マクラフリン(John McLaughlin)氏は、イギリス出身のギタリストです。右に並ぶ者のない「ウマさ」と「センスの良さ」、かつ「誰とも似ていない」ことで知られ、かのジェフ・ベック氏とパット・メセニー氏は「存命中最高のギタリスト(The Best Guitarist Alive)」と称賛、マイルス・デイヴィス氏はその演奏を「深い(Far in)」と高く評価しました。

スティーヴ・モーズ氏、エリック・ジョンソン氏、マイク・スターン氏、アル・ディ・メオラ氏、ショーン・レーン氏、スコット・ヘンダーソン氏など、特に70年代~80年代に台頭した凄腕プレイヤーに多大な影響を及ぼし、音楽誌のギタリストランキングではいつも好位置につくほか、グラミー賞の受賞歴もあり、一言でまとめたら「すごい人」です。

今回は、そんなジョン・マクラフリン氏をチェックしてみましょう。


Carlos Santana, John McLaughlin – The Life Divine2013年に行われたモントルー・ジャズフェスティバルにて、カルロス・サンタナ氏との共演。マクラフリン氏の使用ギターはゴダン社の「Freeway SA」とみられます。「ギターは身体の一部」と豪語するだけあって、プレイ中に手を見ることがほとんどありません。

ジョン・マクラフリン氏の足跡

出生とスタジオワーク (1942~)

マクラフリン氏は、1942年1月4日、イングランドサウスヨークシャー州に生まれます。母親がバイオリニストであることから幼少期にバイオリンとピアノを学び、11歳でギターを始め、フラメンコやジプシー・ジャズを学んでいきます。

マクラフリン少年はすくすくと育ち、成人する1960年代初めには、ロンドンにてスタジオミュージシャンとして働き始めます。レッスンの仕事もしており、若き日のジミー・ペイジ氏に指南したと伝えられます。ところがはじめは仕事をより好みしていたようで、気に入らない仕事を断り、そのかわり楽器のリペアやトラックの運転手、キャビアの売り子など、いろいろなバイトをしていたようです。後になって「最終的には、生きるためならどんな音楽でも録音の仕事をした」と語ったように、やがて仕事を選ばずスタジオワークにいそしむようになりました。マクラフリン氏にとって好みに合わない音楽を演奏するのは、音楽の仕事のないバイト生活より辛い選択だったのだ、とうかがえます。

ソロデビューアルバム「Extrapolation」は「ハードバップの次世代となるポストバップ・スタイル」と呼ばれるジャズ作品で、非凡なテクニックとセンスがすでに完成の域に達していました。この作品の発表以降、マクラフリン氏の人生は一気に動き出します。

激動の1969年

1969年、トニー・ウィリアムス氏(ドラマー。「マイルスの黄金カルテット」の一員)のバンド「ライフタイム」に加入していたマクラフリン氏は、その活動のためアメリカに移ります。氏のNY到着は2月3日で、バンドはさっそく始動、初めてのライブを行います。

2月18日に行われたマイルス・デイヴィス氏のレコーディングには、すでにマクラフリン氏の姿がありました。「ライフタイム」のライブを観たマイルス氏がマクラフリン氏を気に入って、声をかけたのだと言われています。またこの年、3月25日にはジミ・ヘンドリックス氏と朝までジャムセッションを楽しんだことが伝説となっています。

この年の8月に録音された「Bitches Brew(ビッチェズ・ブリュー)」ではグラミー賞を受賞し、名盤「カインド・オブ・ブルー」に並ぶマイルス氏のヒット作になりました。マクラフリン氏が参加していた時期はいわゆる「エレクトリック・マイルス期」と呼ばれ、生楽器を中心とした編成から電気楽器を積極的に導入する編成に移行するところでした。氏は70年代前半まで何枚ものアルバムに参加し、ハービー・ハンコック氏、チック・コリア氏、ウェイン・ショーター氏、トニー・ウィリアムス氏ら、その後70年代のフュージョンシーンを牽引していくプレイヤーたちと共演します。

この時期に発表されたマイルス氏のアルバムでは、いろいろなプレイヤーが入れ替わり立ち替わり参加するなかで、エレキギターはいつもマクラフリン氏が起用されています。さすがにライブ皆勤とまではいきませんでしたが、マイルス氏がマクラフリン氏をそうとう気に入っていたのは間違いなく、そのためマクラフリン氏は「エレクトリック・マイルスの重要人物」とみなされています。

マイルス氏と共演したキャリアによりマクラフリン氏は「ファーストコール(最初に電話がかかる)」として名をあげ、さまざまなアーティストのレコーディングに起用されます。

インド音楽に傾倒

1970年代に入ると、マクラフリン氏はインドへの興味が高じ、インドの音楽へと傾倒します。ヒンドゥー教の指導者シュリ・チンモイ師に感化されヒンドゥー教に改宗し、自らを「マハビシュヌ」と名乗るようになります。カルロス・サンタナ氏もチンモイ師の弟子となったこともあり、兄弟弟子のコラボレーションが行われることもありました。

マクラフリン氏のバンド「マハビシュヌ・オーケストラ」はジャズ・ロックのサウンドにインド音楽のテイストを織り込んだ新しい音楽を提唱しました。この活動は現代でいう「フュージョン」の発展に貢献し、1970年代のジャズ・ロックシーンに重要な地位を占めます。このバンドでマクラフリン氏はギブソンEDS-1275(6弦と12弦のダブルネック)をメインに使用、二つのネックを巧みに使い分けました。

別バンド「シャクティ」はアコギとバイオリン、そしてインドの民族楽器という編成で、インドの伝統にのっとった音楽を展開します。ここで使用するアコースティックギターは特別仕様で、6本の弦に交差するように何本も共鳴弦を張り、指板には深いスキャロップ加工を施して、シタールやハープのようなサウンドを奏でていました。

その後もマクラフリン氏は自身のさまざまなバンドやいろいろなプレイヤーとの共演を積極的に展開、70歳を越えた今なお衰えることなく活動を続けています。

ジョン・マクラフリン氏のプレイスタイル


Paco De Lucia, Al Di Meola and John McLaughlin – Mediterranian Sun Dance Live
パコ・デ・ルシア氏、アル・ディ・メオラ氏との夢の競演「スーパー・ギタートリオ」。どんどん割り込んでくる壮絶なアドリブ合戦ですが、アンサンブルが破綻するどころかむしろどん盛り上がっていきます。いったいどれだけ練習したらこれほどのギターバトルが展開できるのか。本人たちはこのライブを心から楽しんでいる様子で、もはや「神々の遊戯」とも呼べる内容です。

ジョン・マクラフリン氏は、インド古典音楽 、 西洋のクラシック音楽 、 フラメンコ 、 ブルースといったさまざまな要素を吸収した独自のプレイスタイルを持っています。その中で8分の7拍子などの変拍子、ホールトーンスケールに代表される「非西洋的」な音階を多く駆使しますが、ピッキング、フィンガリングともに高精度かつ高速で、エレキでもアコギでもお構いなく速いフレーズをバリエーション豊かに演奏します。

注目すべきは氏の視線で、プレイ中はほとんど自分の手を見ることがありません。自分のプレイに対するメンバーの反応を楽しんでいるとも、メンバーや観客、自分の周りの状況からアドリブのヒントをキャッチしているとも見えますが、これほどのことができるのはギターを完全に自分の一部にしてしまっているからです。

ジョン・マクラフリン氏の使用機材

ジョン・マクラフリン氏は、バンドやプロジェクトごとにさまざまなギターを使い分けています。ストラトもレスポールも、フルアコもアコギもガットも使い、ギターシンセサイザーまで使いますが、氏だからこそ使いこなすことができたであろう特別なギターをいくつか見ていきましょう。
使用機材については全て氏の公式サイトで確認することができます。

いわゆる「シャクティ・ギター」

インド伝統音楽のサウンドを展開したバンド「シャクティ」におけるメインギターで、インドの伝統楽器「シタール」に近い印象のサウンドを持っています。ギター職人エイブラハム・ウェックラー(Abraham Wechter)作。メイン弦に45度の角度で交差する共鳴弦は、ハープのように使用することもあります。指板にスキャロップ加工が施されたのは、シタールに指板がないことに由来します。

PRSカスタム22ダブルネック

PRS社長ポール・リード・スミス氏本人による作。2017年のツアーで使用するために作られたものですが、ツアー終了後にオークションにかけられ、収益金は全額「非営利団体Al-Mada」に寄付、音楽療法を通じて傷ついた子供を癒す活動を後押ししました。

マイク・セイバー作、マクラフリンモデル

パリのギター職人マイク・セイバー(Mike Saber)氏による特別仕様。弦長は普通ながら、飛行機の客席に持参できるコンパクトなサイズで、シンセを操作する機能が付いています。

PRS Custom 22特別仕様

これもPRS社長ポール・リード・スミス氏による、PRS プライベートストックをしのぐグレードの特別なギター。リアピックアップとブリッジの間にはシンセドライバーが組み込まれています。マクラフリン氏はこのギターに対して、「宝石のようだ」とコメントしています。

Godin Fretless Nylon SA

ナイロン(ガット)弦のフレットレスにシンセドライバー内蔵というギター。これ自体は製品化されたレギュラー品ですが、これをライブでメインとして平然と使用するあたり、マクラフリン氏の尋常でないスキルがうかがえます。

使用エフェクター

マクラフリン氏は機材やテクノロジーにも造詣が深く、長いキャリアの間にさまざまなアンプやエフェクターを使用してきました。現在の機材はかなりコンパクトなボードで、ギターアンプを使用せず、ペダル式のプリアンプからPAに直接信号を送ります。プリアンプはセイモア・ダンカン社製、フィッシュマン社製、メサ・ブギー社製の3つを待機させていますが、ライブごとにそのうち一つを気分で選んでいるのだとか。

ジョン・マクラフリン氏の関連作品

Bitches Brew / Miles Davis(1969)

Bitches Brew

「ビッチェズ・ブリュー」は、「ジャズに新しい変化をもたらした歴史的名盤」と呼ばれ、ジャズ・ロックアルバムの金字塔、エレクトリック・マイルスの頂点などともいわれています。しかしその反面、つかみにくい曲調からジャズではないと言われることも、フュージョンの先駆けだと言われることも、むしろファンクだと言われることもある、通好みの作品です。

10分を越える長い曲ばかりですが、それは予定調和を感じさせないジャムセッションから始まるからで、どうすればいいのかがわからない不安と緊張でいっぱいながら手探りで進行させる冒頭から、じわじわと歯車がかみ合って大きなうねりを生むまでを収録しているからです。録音の現場では、マイルス氏だけがその全てを見通し、楽曲の向かう先をイメージしていたそうですが、マクラフリン氏はその緊張感の中、ロック的なアプローチで攻めた演奏を披露しています。

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Tribute to Jack Johnson / Miles Davis(1971)

Tribute to Jack Johnson

「トリビュート・トゥ・ジャック・ジョンソン」は、黒人で初めて世界ヘビー級王者になったボクサーの映画「ジャック・ジョンソン」のサウンドトラックです。25分超えの2曲のみというたいへん思い切った作品ですが、マイルス氏にとっては最も気に入っているアルバムなのだとか。たっぷりと時間をかけて展開していくグルーヴの中で、マクラフリン氏のロック的なプレイと全盛期バリバリのマイルス氏のトランペットの絡み合いが存分に味わえます。

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「Extrapolation」John Mclaughlin(1969)

Extrapolation

マクラフリン氏の初リーダー作「エクストラポレーション」は、サックス/ギター/ドラム/ベースの4人編成で繰り広げる4ビートジャズのアルバムです。サックスをメインに据えた楽曲が多いですが、ここでマクラフリン氏は主役を遊ばせている間にギターのカッティングやオブリガートを巧い具合に挿しこんでいます。ちなみにタイトルに使用されている「extrapolation(外挿。がいそう)」とは、「ある既知の数値データを基にして、そのデータの範囲の外側で予想される数値を求めること(Wikipedia)」だそうです。

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Friday Night In San Francisco(1981)

Friday Night In San Francisco

「フライデイ・ナイト・イン・サンフランシスコ〜スーパー・ギター・トリオ・ライヴ!」は、日本国内ではいわゆる「スーパー・ギター・トリオ」として知られるアル・ディ・メオラ氏、ジョン・マクラフリン氏、パコ・デ・ルシア氏の3人による公演の模様を収録した作品です。どの曲にもサポートメンバーはおらず、2人または3人のギターのみで演奏されています。ここではマクラフリン氏の、フラメンコに造詣が深いところをしっかり聴くことができます。

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Birds of Fire / The Mahavishnu Orchestra(1973)

火の鳥

「マハビシュヌ・オーケストラ」では、6弦と12弦のダブルネックがメインとして使用されています。「火の鳥(バーズ・オブ・ファイア)」はロック的な楽器とサウンドでジャズが苦手な人にも聞きやすく、それでいて演奏がやたらウマい、現代でいうフュージョンの古典として最も重要なアルバムです。8分の9など変拍子をさんざん多用しつつもノリがしっかり保たれている、達人なればこそなし得たバンドアンサンブルを楽しむことができます。

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A handful of beauty /Shakti (1976)

A handful of beauty Shakti

「美しき創造 ( A Handful of Beauty)」は、マクラフリン氏がインドの伝統音楽にどっぷりと浸かり、その道を追求するユニット「シャクティ」のセカンドアルバムです。ザキール・フセイン氏の奏でる「タブラ」の豊かさと、なぜかいるけど妙に馴染んでいるバイオリンが印象的ですが、いわゆる「シャクティ・ギター」を駆使したマクラフリン氏のプレイは、これをギターと呼んでよいものか悩んでしまうくらい超絶です。

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