《シカゴ・ブルースの第一人者》バディ・ガイ(Buddy Guy)

[記事公開日]2022/2/8 [最終更新日]2022/3/12
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

バディ・ガイ(Buddy Guy)

バディ・ガイ(Buddy Guy)はシカゴ・ブルースの第一人者的存在となった大御所、マディ・ウォーターズのチェス・レコード時代、バッキング・ギターを担当した第2世代ブルース・ギタリスト、ボーカリストです。
彼のギター・プレイは、ジミ・ヘンドリックスジェフ・ベックエリック・クラプトンスティーヴィー・レイ・ヴォーンらのギタリストに直接大きな影響を及ぼしました。

150フィートのシールドでアンプとギターを繋ぎ、ステージから客席に降りていったり、そのままクラブの外へ出ていったりといった意表を突く圧倒的なパフォーマンスは現代のロック・ギタリストにも通じる過激なものでした。

Biography

1936年7月30日 生 米ルイジアナ州レッツワース
地元のミュージシャン、ビッグ・パパ・ティリーのバンドで活動していたバディは、シカゴのチェス・レコードと契約すべく、ラジオ局WXOKのDJだったレイ・メドウズの協力を得て、1957年に2曲のデモ・レコーディングをします。
翌1958年、シカゴへ移住、コブラ・レコードと契約。シングル”Sit And Cry (The Blues)” でデビューします。

1959年にチェス・レコードと契約、1968年、ファースト・ソロ・アルバム『A Man & The Blues』リリース。1970年、ストーンズのツアーに前座として参加。映画『Chicago Blues』にマディ・ウォーターズとともに出演。

現在もブルース・クラブ「バディ・ガイズ・レジェンズ」を経営しています。


Buddy Guy “Damn Right, I’ve Got the Blues” on Guitar Center Sessions

ギター・プレイの特徴

長3度の域まで達するチョーキングを、スタッカートでピッキングしながらゆっくりとチョーク・ダウンさせ、独特のビビリ音を得る。また異なった音やコードをピッキングせずにグリッサンドさせて得るレガート・スライド。またプリング・パターンの速い3連符などオリジナル技を多く持っており、他のブルース・プレイヤーのみならずジミー・ペイジ、ジェフ・ベック他、現代のロックギタリストにも影響を与えています。


Jeff Beck ft. Buddy Guy – Let Me Love You (Live At The Hollywood Bowl)
ライブでのガイ氏の音はいつも鋭く、また澄んでいます。0:16あたりでさっそくチョーキングを使った、敢えてピッチを外してくるフレーズが見られます。ブルージーなフレーズに速いのが放り込まれるのは、ガイ氏の通常運転です(0:50)。
ひとしきり歌った後のアドリブ冒頭(2:00)の連続チョーキングは、海外ではガイ氏の得意技「Milking the Bends(搾乳チョーキング)」と呼ばれています。2:23あたりからのトレモロ・ピッキングは、盛り上がりどころのお約束です。

バディ・ガイの使用機材

バディ・ガイ(Buddy Guy)の使用エレキギター

使用エレキギター

Fender Custom Shop Stratocaster(1989)


Buddy Guy – I’m Your Hoochie Coochie Man (Carlos Santana Tribute) – 2013 Kennedy Center Honors
ブルースの大家による熱演に、サンタナさんもご満悦の様子。

長いキャリアの中でストラトを中心に様々なギターを使ってきたバディ・ガイ氏ですが、現在のメイン機は1989年にフェンダー・カスタムショップが作ったハニーブロンドのストラトキャスターです。ガイ氏のために作られた個体ですがシグネイチャーモデルとして作られてはいないため、正確には「バディ・ガイモデル」ではありません。
基本的な設計は、エリック・クラプトン氏のシグネイチャーモデルに準じています。ソフトVシェイプのネック、21フレットの音域、プリアンプ内蔵、3基のゴールドレースセンサーピックアップ搭載、という仕様です。弦はアーニーボール「パワー・スリンキー(11-48)」です。
トレードマークになっている水玉模様の入ったフェンダー・ストラトキャスターは、色違いで7本お使いです。そのうちの4本はフェンダーカスタムショップ製で、プリアンプが内蔵されており、ピックアップはレースセンサー、テキサススペシャルなどバリエーションがあります。残り3本は、シグネイチャーモデルとして販売されている現行モデルです。

シグネイチャー・モデル「Buddy Guy Standard Stratocaster」

Buddy Guy Standard Stratocaster Buddy Guy Standard Stratocaster

絶大なインパクトを誇る水玉模様のストラトキャスターは、若かりしガイ氏がシカゴに発つ時、母親に「がっつり稼いで、水玉模様のキャディラックで帰ってくる」と約束したことに起因します。残念ながらその約束を果たす前に、母親は亡くなりました。そのことへの想いがあったがため、ガイ氏はフェンダー社に自身のストラトを依頼する際、水玉模様をオーダーしたのだと伝えられています。

メキシコにあるフェンダー直営工場(いわゆるフェンダー・メキシコ)で作られるシグネイチャー・ストラトキャスター「Buddy Guy Standard Stratocaster」は、ブラックカラーのボディに白玉模様のデザインが特徴的なモデルです。
アルダーボディ、メイプルネックはソフトVシェイプ、フレットはミデュアムジャンボ、ピックアップに Standard Single-Coil Strat を3基、ピックアップはブラックカラーというスペックです。強烈なルックスに反し、内容はいたってオーソドックスなストラトキャスターとしてまとまっています。

Buddy Guy Standard Stratocasterを…
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Guild「Nightingale」


Buddy Guy and Stevie Ray Vaughan – Champagne and Reefer
愛用のストラトが盗難された70年代からしばらく、ガイ氏はギルドのギターを多く使いました。動画のギターは1980年代に作られたギルド「Nightingale(ナイチンゲール)」で、セミホロウ構造のボディに2基のEMGピックアップを備えています。

Jerry Jones「Coral Sitar re-issue」


Skin Deep featuring Buddy Guy | Playing For Change | Song Across the USA
この動画ではご自身の経営するブルース・クラブ「バディ・ガイズ・レジェンズ」にて、エレクトリックシタールを演奏しています。エフェクターに頼らないかわりに音色のバリエーションとしてシタールを重宝しているようで、ツアーにも携行してます。客演しているトム・モレロ氏が普通のフレーズを弾いている(!)のも注目すべきポイントです。

使用ギター・アンプ

バディ・ガイ氏ご愛用のアンプとしてはフェンダー製「4×10ベースマン」が最も有名ですが、このほかギルド・サンダーバード、JCM800モデル2210アンプ・ヘッド&マーシャル1982A 4×12キャビネット等、さまざまな使用例があります。

Chicago Blues Box Buddy Guy Signature

現在のメイン機は、長らく愛用した1959年製フェンダー・ベースマンをバトラーカスタムサウンド社が「シカゴ・ブルースボックス」のブランド名で再現した、50台限定生産のシグネイチャーモデルです。ガイ氏ご愛用の実機の変圧器、抵抗器を全て分析し、その測定値をもって部品メーカーに発注したほど開発に深くこだわり、回路の複製にとどまらずトーンの再現に成功しています。
なお、ガイ氏の設定は、低域を思いきりカットし、他のEQはほぼフルアップです。

使用エフェクター
Jim Dunlop「BG95: Buddy Guy Signature Wah」

エフェクターを使うことがほとんどないガイ氏ですが、ジミ・ヘンドリクス氏の演目では積極的にワウを使用します。シグネイチャー・ストラトと同じ水玉模様のワウペダルは本体側面のスイッチにより、ディープなワウワウモード「DEEP」と、ガイ氏のために設計されたウォームなベルトーンが得られるモード「BG」が切り替えられます。


Buddy Guy Imitates Jimi Hendrix
柔軟な発想で、変わった手つきで演奏するのもお約束。

Discography

I Was Walking Thorugh the Woods

バディ・ガイ(Buddy Guy)

ブルースってなんてカッコいいのだろう。バディ・ガイのギター・プレイはそう思わせるものがあります。60年から64年のチェス録音を集めたこのアルバムは、モダン・シカゴブルースの1つの頂点といえる作品です。

1990年リリース作品


Damn Right, I’ve Got the Blues

I’ve Got the Blues

いろいろと苦労させられた70~80年代、そこから状況を一変させた会心作。全編濃いブルースの作品で、母国アメリカでは自身初のBillboard 200入りを果たしています。マーク・ノップラー氏、ジェフ・ベック氏、エリック・クラプトン氏ら超豪華ゲストとの共演も見ものです。
1991年作品

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