B.C. Rich(BCリッチ)のエレキギターについて
「B.C.リッチ」は、鋭角に尖った攻撃的なルックスの変形ギターで知られる、アメリカのギターメーカー/ブランドです。その悪魔的とも言われる禍々しいスタイルと凶暴なサウンドから、一号機であるシーガル発表以来、40年以上に渡って一貫してスラッシュメタルやデスメタルなど、ヘヴィ系でもダークなイメージのアーティストに支持されています。
B.C. Rich の歴史
フラメンコギター職人の父親を持つB.C.リッチ創始者のベルナルド・チャベス・リコ氏(Bernard Chavez Rico、1941-1999)は、12歳の頃からコア材でウクレレを作るなど家業を手伝いました。現在のブランド名になったのは1966年頃で、エレキギターの生産は1969年頃から開始されます。オリジナルシェイプの発表は1972年からで、この時発表されたSeagullによってスルーネック、アクティブ回路のB.C.リッチが確立します。
現在では現在は息子のBernie Rico Jr.氏がビルダーとして会社に残り、シェイプ、仕様、価格帯などで多様なラインナップを展開しています。
B.C. Rich ギターの特徴
見る者を威圧する「異形」のボディシェイプ
KERRY KING WARTRIBE ONE
世界初のヒールレス・スルーネック構造や丁寧な塗装ではなく、攻撃的なボディシェイプのみがメディアでも取りざたされる状況に、創始者ベルナルド氏は心底参っていたようです。しかしB.C.リッチのギターを語る上では、その独特のボディシェイプを第一に語らない訳には行きません。極めてデザイン性の高いボディシェイプはヘヴィメタルのイメージにぴったりで、多くのバンドの鋼鉄サウンドを支えています。
国内では故hide氏(X JAPAN)が愛用したイメージの強いモッキンバードを筆頭に、ワーロックやアイアンバードなど様々な変形ギターを発表しています。どれもインパクトの強いルックスですが、変形ギターのパイオニアであるギブソンの各モデルに比べ、重量バランスとプレイアビリティについてきっちり考慮されており、ヘッドがやたら重く感じたり座って演奏することが困難だったりということがありません。むしろ異形のイメージからは想定しがたい弾きやすさのある設計で、アグレッシブなルックスとは裏腹にプレイヤーにはとても優しいギターです。
世界初のスルーネック構造
ネック材がボディの末端まで達する「スルーネック」構造は、B.C.リッチが世界で初めて発表しました。それ以前にあった弦楽器の構造における常識を覆す、極めて斬新な設計です。左手を遮るものがなくハイポジションのプレイアビリティが極めて高い上に、中音域が豊かに響くサスティンのたっぷりある独特なサウンドも実現しています。現在では価格や人気を考慮し、ボルトオンやセットネックのモデルもリリースするなど、ネックジョイントは多様化しています。
24フレットのモデルであっても19フレット以降のポジションマークが無い、というのが本来の姿で、この仕様に慣れきっていた故hide氏は、他のギターに持ち替える際に21フレットと24フレットのポジションマークを油性ペンで塗りつぶしていたといいます。
多機能なコントロール系
MOCKINGBIRD ST のコントロール系統
人気や流行からシンプルなコントロール系のモデルも多数リリースされていますが、ミニスイッチやロータリースイッチが立ち並ぶ多機能な回路は、一目でB.C.リッチのものだと分かる大変特徴的なものです。
かつてはブースター回路などもあり10個ものスイッチが搭載されていたモデルもありましたが、
現在の基本では
基本的な操作系
- 各ピックアップのボリューム
- マスタートーン
- ピックアップセレクタスイッチ
というスタンダードな回路に、
追加機能
- 各ピックアップのコイルタップ
- フェイズスイッチ
- 低音の出方を操作する5点ロータリースイッチ
が追加されるという構成にまとめられています。ライブで使いこなすことのできるプレイヤーはなかなかいないと考えられますが、レコーディングにおいてはそのサウンドバリエーションが強みになります。しかし何と言っても、スイッチが整然と並んでいる姿はとてもかっこいいアピールポイントになるでしょう。
B.C. Rich ギターのサウンド
全モデル一貫してパワフルなハムバッカー2基をマウントした、ハードロック/ヘヴィメタル仕様になっています。操作系のシンプルなモデルではコイルタップもありませんが、その分回路がシンプルになるためストレートなサウンドになります。ピックアップはEMGやセイモアダンカン、オリジナルなどヴァリエーションがありますが、ハイパワーかつストレートなものがセレクトされています。
変形ギターとはいえ、ボディは弦の振動を受ける本来の機能も考慮して設計されているので、クセがなく均一、かつクリアな鳴りが得られます。
B.C. Rich ギターのラインナップ
かつてB.C.リッチと言えば、
- スルーネック
- ディマジオピックアップ
- アクティブサーキット
- バダスブリッジ
という仕様が看板でしたが、現在では流行や指向性に合わせて仕様も変化しており、ブリッジについてはチューン・O・マチックブリッジかフロイドローズが主流、ピックアップはダンカンかEMGが主に使用されます。ボディトップに張りつけたメイプルの模様、またボディエッジの加工やカーブドトップ仕様など、同じボディシェイプでも様々な印象になります。
Eagle
B.C.リッチの歴史を拓いた歴史的にも意義のあるSeagullをアレンジして完成させたモデル。B.C.リッチのラインナップではやや大人しいデザインで、ちょっとレスポールっぽい違う楽器としても使用できます。
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Mockingbird
現代のB.C.リッチを象徴するボディシェイプで、緩やかなアーチトップ仕様を始めボディの仕上げ、ブリッジやピックアップなどにいくつもバリエーションが存在します。24フレットまでポジションマークのあるモデルもありますが、グレードの高いモデルではやはり伝統的な仕様を守っています。
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Bich
「Eagle(鷲)」「Mockingbird(物まね鳥)」とは違い、モデル名が造語のギターですが、あまりに斬新なギターだったため、象徴する言葉が無かったのかもしれません。1〜4弦が2本ある「10弦ギター」として歴史上意義深いモデルですが、現在ではスタンダードな6弦のモデルが主流になっています。
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Warlock
1980年発表。83年にデビューしたIronbirdと並び、この時代のヘヴィーメタルを象徴するギターのひとつです。ところどころ刺さりそうな悪辣なボディデザインですが、立っても座っても右腕のポジションがいい具合に治まる、設計者の「いい仕事」ぶりがわかるギターです。
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その他
上記シリーズの他、ストラト・シェイプの ASM ASSASSIN、ディンキー・シェイプの VILLAIN、Vシェイプの V、Vシェイプに竜のモチーフを施した DRACO、IRONBIRD、STEALTH など数多くのラインナップが存在します。
愛用するギタリスト
ケリー・キング(Kerry Ray King, 1964-)
SLAYER – Repentless (OFFICIAL MUSIC VIDEO)
いわゆる「スラッシュメタル御三家」のひとつ、スレイヤー(他にはメタリカ、メガデス)においてジェフ・ハンネマンと双璧をなすギタリストで、大柄な体躯にスキンヘッド、全身のタトゥーと長いヒゲがトレードマーク。極悪人のイメージですが人懐っこい性格で、「軽いピッキングでヘヴィな音を作る」のが信条。極度の野菜嫌いで野菜はポテトしか食べないのだとか。長年V型のギターを愛用しシグネイチャーモデルをリリースしていますが、ケリー氏はボルトオンジョイントがお好みのようです。
ちなみにジャクソンの「ケリー」「キングV」は、いずれもこの人のモデルではありません。
スラッシュ (Slash, 1965-)
音楽的環境の整った裕福な家庭で育ちながら、ハイスクールを中退してからというものヒモやドラッグの売人で生活していたといいます。ガンズアンド・ローゼスでデビューしたことが転機で、エモーショナルなプレイと個性的なルックスでその時代に最も注目されるギタリストにまでなり、故マイケル・ジャクソン氏との共演も果たしました。
レスポールスタンダードのイメージが非常に強いプレイヤーですが、アーミングが必要な曲を演奏するためにフロイドローズのついた赤いモッキンバードを使用していた時期がありました。ドラッグを買うために手放してしまったことを後悔していたそうです。
スラッシュ
その他
その他の並み居る愛用者も、総じてハードロック/ヘヴィメタル系のアーティストです。
- マシュー・タック(ブレット・フォー・マイ・ヴァレンタイン)
- フィル・キャンベル(モーターヘッド)
- エリック・ルータン(ヘイト・エターナル、元モービッド・エンジェル)
- チャック・シュルディナー(デス、コントロール・ディナイド)
- パット・オブライエン(カンニバル・コープス)
- パオロ・グレゴレット(トリヴィアム)
- ロード・アーリマン(ダーク・フューネラル)
- チャック・モル(ダーク・フューネラル)
- トニー・ラザロ(ヴァイタル・リメインス)
- デイブ・スズキ(ヴァイタル・リメインス、元ディーサイド)
- アレックス・カマルゴ(クリジウン)
- モーセス・コレスネ(クリジウン)
- スティーブ・スミス(ネヴァーモア)
- テランス・ホブス(サフォケイション)
- ガイ・マーケイス(サフォケイション)
- トレイシー・ガンズ(ブライズ・オブ・デストラクション)
- エリック・グリフィン(マーダードールズ)
- ヴォーテクス(ディム・ボガー)
- ニクラス・エンゲリン (イン・フレイムス、エンゲル、元ガーデニアン)
- 鈴木研一 (人間椅子)

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[最終更新日]2017/08/15