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壁のようにそびえ立つアンプヘッドとキャビネット。ロック・ギタリストなら、一度はこのようなスタックアンプを並べて爆音を出してみたいと思うものです
キャビネットは「スピーカーユニット」と「スピーカーボックス」を組み合わせた物のことで、エレキギターの「出音を決める」重要な機材です。最終的な出音は「ギター+アンプ+キャビネット」といった3つの機材を組み合わせて構成されますが、割合としてギターは「10%」、アンプは「40%」、キャビネットは「50%」の影響があると言われています。
キャビネットは、「スピーカーユニット」とユニットを収める枠「スピーカーボックス」で構成されます。
スピーカーユニットはスピーカー本体のこと。音の出力における最終段階であり、かなり出音への影響が大きい部分です。スピーカーには製品ごとに音のキャラクターや対応できる出力などが異なっており、音作りにこだわるギタリストは、手持ちのアンプのスピーカーだけを交換したりすることも珍しくありません。
ギターアンプ用スピーカーのメーカーとしてはCelestion(セレッション)、Eminence(エミネンス)、Jensen(ジェンセン)などが有名で、それぞれ得意とするサウンドの傾向が違います。なかにはMesa-Boogie Mk1などに使われたJBLの前身とも言えるAltec、あるいは60年代フェンダーアンプに使われたOxfordなど、ややマニアックな立ち位置のものもありますが、この3社のものは交換用としても手に入りやすく、やはり主流となるでしょう。
Celestionはイギリス発だけあり、同じく英国製のVOX、Marshallアンプなどに搭載され、Jensenは50年代などのヴィンテージFenderに搭載されました。音の傾向はそのアンプそのもののイメージと直結しており、ざらついた歪みにベルのような高域、そしてやや湿った音色を信条とするCelstionに比べ、Jensenはよりヴィンテージに近く、レンジが広くパンチのあるナチュラルな歪みを得意とします。また、Eminenceはハリのある中域が特徴のモダンな音をイメージするとわかりやすいでしょう。もちろん各社共に様々な製品が揃っているので、これはあくまで一つの傾向として見られるというだけの話であり、実際に選ぶ際には下記にあるようにマグネットの違いなどを念頭に置くとイメージしやすいはずです。
スピーカーに使われる磁石にはアルニコ、セラミック、ネオジウムの3種があります。
アルニコはアルミニウム、ニッケル、コバルトの合金を表す名前で、主にヴィンテージ系のスピーカーやピックアップに使われているので、音色の傾向もヴィンテージ系をイメージするのが最も適当です。セラミックはそれに比べると高域がしっかりと伸びており、よりモダンなサウンドになります。ネオジウムは強力な磁力を備えた比較的新しい製品で、軽量かつハイパワーなものが多いのが特徴です。
許容入力値はどのぐらいの音量まで再生可能かをしめす数値で、15Wのアンプには許容値30Wなど、アンプ側の最大出力が十分賄えるものを選ぶのが基本です。また、抵抗値はアンプ側と同値のものを選びます。16Ωのアンプには16Ωのスピーカーを使うのが基本で、アンプ側の値の方が高い場合は、最悪アンプの故障に繋がるので絶対にやめましょう。
口径は商品名にもインチ数で示されているものが多く、もっともわかりやすい値です。大きいほど低音が豊かで音圧があり、許容入力値が高く重量が重いという傾向にあります。大きければ良いというわけではなく、コロコロしたかわいい高音は小さなスピーカーの方が出やすいなど、いずれも個性といえるものです。重量が大幅に変わるのも見逃せない部分です。
スピーカーボックスはスピーカーを収めるための枠のことですが、一般的にキャビネットと言ってこれを指す場合もあります。四角い木の枠にスピーカー取り付け用の穴が空いている構造になっており、ギターアンプではほとんどの製品でサランネットという網が前面に施されています。単なる枠でありながら、スピーカーと共に振動するため音に及ぼす影響はかなり大きく、材質や構造によって音が劇的に変わる要因となります。
左から:
密閉型 Bugera 412H-BK 4×12
後面開放型 Roland Blues Cube Artist
バスレフ型 Hartke 410XL
構造については、
などがあります。
密閉型とは本体後面を塞ぐことで、スピーカーボックスの内部を完全に密閉しているキャビネットのことです。内部には吸音材が取り付けられており、ユニットの裏側から出力される「逆相」の音を外部に漏らさないために密閉されています。密閉型は「太く」、「箱鳴り」のするサウンドが特徴です。別名「クローズバック」とも呼ばれ、マーシャルのキャビネットに多く採用されています。
後面開放型は「オープンバック」と呼ばれる構造で、本体後面が完全に開いているキャビネットのことを指します。スピーカーユニット正面から出力される「正相」の音だけでなく、逆相も同時に出力されるため、正相と逆相が混ざったサウンドが最終的な出音となります。「音抜けの良いサウンド」であり、突き抜けるような高音が特徴です。
最も有名なトランジスタアンプであるローランドの「JC120」や、フェンダーの「Twin Reverb」などに採用されてる構造です。
バスレフ型は主にベースアンプのキャビネットに採用される構造です。密閉型スピーカーボックスの正面に「ダクト」と呼ばれる穴を空け、そこから内部で増幅した「低音成分」をスピーカーと同時に出力することで、低音の効いた「迫力あるサウンド」を鳴らすことができます。
左から:Marshall 1960A、Marshall 1960B
世界で最も有名なキャビネットといえば、12インチスピーカーユニットを4基積載しているマーシャルの「1960シリーズ」ですが、このモデルには「1960A」と「1960B」の2種類が存在します。
1960Aは「スラント」と呼ばれるタイプであり、「上部2基が上向き、下部2基が正面」となっています。上部を上向きにすることで、出音に広がりを持たせることが狙いです。
1960Bは「ストレート」というタイプで、「4基全てが正面」を向いているのが特徴です。そのため、スラントよりもパワーのあるサウンドになりやすく、ロックをメインとするギタリストがストレートを好む傾向にあります。
実際にはそこまで顕著な差はないので、好みで選んで問題ありません。ただ、プロレベルになるとレコーディングに影響してくるため、人によってはどちらを使用するか検討するようです。
ギターアンプのキャビネットには「合板」が使用されることが多いです。合板は低コストかつ音のバランスが良いことが挙げられ、木目には「合成皮革」などを貼り付けてカバーしています。
高級アンプには「ホワイトパイン」などの「単板」が使用され、合板のキャビネットよりも「中高音域の鳴り」と「音の艶」が出やすいという特徴があります。反り返りやすい単板を職人の手作業によって組み立てられることから、単板のキャビネットは非常に高価なモデルが多いです。
また、メサ・ブギーのキャビネットには「側面に鉄板を取り付けた」モデルもあります。鉄板が入ることで音の輪郭がハッキリし、「硬い音」になる傾向があります。ハードロックやメタルをメインとするギタリストに好まれています。
キャビネットは用途、ジャンルなどによって選ぶのが一般的。キャビネット本体の材質、構造、そして積載できるスピーカーの口径、許容入力、数などの点によってサウンドキャラクターが決まります。一般的に重く大きくなると、音量、低音、音圧が上がり、軽く小さくなると低音が減退する分、中高域の抜けがよくなり、得られる最大音量も下がります。
基本的に小型のものを選びたいのが自宅練習用。8インチから12インチのスピーカー1基、多くても2基程度のものが望ましいでしょう。許容入力は30Wぐらいまで可能であれば十二分であることがほとんど。最近では小型の低出力アンプヘッドの製品も多くの種類があるので、自宅用として、このようなヘッドと合わせて適当なサイズのものを導入するのもおすすめです。
ライブ本番でも使いたいという場合、大出力にも対応した大型のキャビネットを選ぶことで、強烈な音圧を得ることができます。マーシャルなどに代表されるような、12インチスピーカーが4基入る大型キャビネットは運搬が困難を極めますが、得られる音圧は小型キャビネットには逆立ちしても真似できない強烈なものです。また、相反するようですが、ライブで頻繁に使う場合には運搬を考えないわけにはいかないため、一定以上の出力を確保した上で、できる限り小型のものにするという選択もあります。この場合、低域の迫力と重量とのトレードオフになるでしょう。
ギターアンプ・ブランドのほとんどはキャビネットも製造しています。ここでは数多くのキャビネットをリリースしているブランドを一部紹介していきたいとおもいます。
ロックギターの象徴マーシャルアンプのもっとも有名なキャビネットが「Marshall 1960」です。Celestion G12T-75を4発搭載した、このサイズのキャビネットこそはマーシャルが初めて作り出したもので、今やグローバルスタンダードとなっています。1960にはそれぞれスラント型の1960Aとストレート型の1960Bの二種が展開。許容入力値は余裕の300Wで、あらゆるアンプに合わせることができるでしょう。このシリーズはスピーカーを取り替えたヴィンテージ指向の派生モデルがいくつか存在するので、好みが合うならそちらを試すのも良さそうです。
1960以外にも多数の製品があり、ハイファイな音に特徴のある、スピーカー2基の1936、1922などは特に高い人気を誇り、数多くのプレイヤーに愛用されています。昨今では廉価価格帯のMXシリーズやCODEシリーズなど、さらに展開する製品に幅が出てきており、多彩なラインナップは数あるアンプメーカー中でも随一です。
Marshall 1960を…
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Rectifier Standard ARMOR
マーシャルと並ぶアメリカの巨人Mesa/Boogieもキャビネットのラインナップが豊富。もっとも有名なのはRectifier Guitar Cabinetのシリーズで、アンプのRectifierに合わせたものとして作られています。よくある中国製ではなく、イギリスの工場に専用で発注したCelestion Vintage 30スピーカーを搭載し、バーチ材を全面に使い、密閉度を十二分に確保するための綿密な製作工程を経て出荷されます。このこだわりの仕様のため、価格は他社に比べても倍近くにもなり、「高価だが音が良い」という評価で定着しています。
サウンドの傾向としては、極めてレンジが広く、特に高域側に落ちがない独特の音色になっており、この部分こそが「これぞメサブギー」というサウンドの一翼を担っています。スピーカーの数の違いで多数がラインナップされているほか、側面を鉄板で覆ったArmor仕様のものなど、同社ならではのユニークなモデルも目を引きます。
他にもオープンバック構造を採用し、Jensenスピーカー搭載のヴィンテージ指向モデルのLonestarなどがあり、各カテゴリごとに明確なキャラクターの差を付けた多彩なラインナップを誇ります。
Rectifier Guitar Cabinetを…
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Tiny Terrorなどの小型アンプの充実とともに、小型から大型までの多彩なキャビネットをラインナップに加えているOrange。フルスタック型に見合う大型モデルとしてはPPC-412がはじめに挙がるでしょう。Celestion Vintage 30を4基搭載しており、許容入力値も240Wと十二分。Orangeのアンプのチリチリとした暴れ気味な高域や、幅広い再生レンジといった特徴を最大限活かせるキャビネットであり、特徴的なカラーリングも相まって、存在感を発揮する一台です。
スピーカー2発の212や、212のオープンバック版など、その他の製品についても、種類は少ないながらも、選択の幅は狭くありません。
212を…
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HT-112
マーシャル以上に多数のキャビネットのラインナップを誇るBlackstar。日本で手に入りやすいものはその中の一部ですが、定番はSeries One 412。マーシャルと同じく、スラントのAタイプとストレートのBタイプに分かれています。サウンドの傾向もマーシャルの延長上にあり、よりハイゲインに合わせつつ、中域をあまり膨らませずにフラットな音像を指向することで、抜群の音圧を獲得しています。Blackstarのアンプのために特別開発されたCelstion Vintage 30を4発搭載。
他にもCelestion Seventy 80を搭載したHT-112、HT-212などがあり、自宅用としても魅力的な製品がいくつかラインナップされています。
HT-112を…
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ドイツの名アンプメーカーであるヒュース&ケトナー。TriAmp Mk2というアンプの銘機とともに有名であったモデルと言えばCC412で、こちらはCelestion Vintage 30を4基搭載したモデルです。その後Triamp Mk3の登場とともに生産されたTC412には、Celestionがこのアンプのために製作したRockdriver Classicというスピーカーが搭載されました。そんなCC412も現在販売終了しており、TC412は日本では手に入りにくい状況になっています。
同社のキャビネットは現在Tube Meisterシリーズに集約されており、自宅練習用といってよい小型のTM110から大型のTM412までの数種のラインナップにとどまりますが、ハイゲインを良く受け止め、タイトなローエンドでしっかりとした音像は、往年のHughes & Kettnerの良さを受け継いでいます。特にハードロック以上のハイゲインを多用するギタリストにとっては使いやすく、世界中に愛好家が多いのも納得の品質です。
Hughes & Kettner TubeMeister 110 Cabinet – Supernice!ギターアンプ
サウンドハウスが代理店を務める英国のLaney。かつてはポール・ギルバートの使用などで有名なメーカーでしたが、現在では良質ながらも安価な製品をいくつも開発しています。
ヴィンテージ指向の強いLTシリーズ、トランジスタアンプ用の廉価モデルLX412や、Celestion Vintage 30を搭載した同社の看板キャビネットGSシリーズなど、多彩なラインナップであらゆるシチュエーションに合わせた選択ができます。
もともとハイゲインに定評のあるメーカーではありますが、出音は素直でピュアな印象が強く、アンプをあまり選ばないクセのなさや、その価格の安さからくる導入のしやすさはあらゆるアンプメーカーでも群を抜いており、あらゆるギタリストにとって嬉しい存在と言えるでしょう。
ギターアンプ キャビネット一覧 – Supernice!ギターアンプ
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