ギターアンプのキャビネットの種類や音の違い・選び方

[記事公開日]2025/7/26 [最終更新日]2025/9/2
[ライター]森多健司 [編集者]神崎聡

ギターアンプのキャビネット

エレキギターを始めてしばらくすると、「ギターアンプとキャビネットってどう違うの?」「1×12や4×12って何を意味しているの?」と疑問に思う人もいるでしょう。キャビネットは一見するとただの箱のようですが、材質や構造、スピーカーの口径、サイズや構造、搭載するスピーカーの数によって、ギターの出音は大きく変化します。

本記事では「キャビネットの選び方」をテーマに、種類ごとの特徴や音の違いを初心者にも分かりやすく解説します。キャビネットの知識を深めていきましょう。


  1. キャビネットとは?
  2. キャビネットの構成
  3. キャビネットの音の違い
  4. キャビネットの定番ブランドと代表モデル
  5. 自宅演奏に最適な小型キャビネットおすすめモデル

キャビネットとは?

ギターアンプには「アンプヘッド」と「キャビネット」を分けて使うタイプがあります。アンプヘッドは音を作ったり増幅したりする部分で、つまみやスイッチが集まっています。一方、キャビネットはスピーカーが入っている箱で、実際に音を鳴らす役割を持ちます。

キャビネット
スタックタイプのキャビネット

一般的に、アンプヘッドとキャビネットが分離していて上下に積み重ねて使う形を「スタック(stack)タイプ」と呼びます。スタック・タイプはライブハウスやスタジオでよく見かける形式で、大音量やハイゲイン・サウンドを求める人に選ばれます。

キャビネットの重要性

キャビネットはエレキギターの出音を決める機材です。最終的な出音は「ギター+アンプ+キャビネット」といった3つの機材を組み合わせて構成されますが、割合としてギターは「10%」、アンプは「40%」、キャビネットは「50%」の影響があると言われています。

キャビネットの構成

キャビネットは「スピーカーユニット」とユニットを収める枠「スピーカーボックス」で構成されます。

スピーカーボックス(キャビネット)の種類

スピーカーボックスはスピーカーを収めるための枠のことですが、一般的にキャビネットと言ってこれを指す場合もあります。四角い木の枠にスピーカー取り付け用の穴が空いている構造になっており、ギターアンプではほとんどの製品でサランネットという網が前面に施されています。

単なる枠でありながら、スピーカーと共に振動するため音に及ぼす影響はかなり大きく、材質や構造によって音が劇的に変わる要因となります。

スピーカー数による違い

スピーカー数
左から:スピーカー1基、2基、4基のイラスト

キャビネットは、スピーカーの数で音の広がり方や迫力が変わります。スピーカー1基のアンプはサイズが小さく、自宅練習や小規模ライブに最適です。2基搭載モデルになると音の厚みが増し、バンド練習や中規模ライブで扱いやすくなります。スピーカー4基搭載はロックの定番で、迫力ある音圧と低音を得られますが、その分重量もかなり重くなります。

1基搭載・2基搭載モデルはコンボアンプ/キャビネット単体の両方が存在しますが、4基搭載モデルはほとんどがキャビネット単体です。

密閉型(クローズドバック)、開放型(オープンバック)、バスレフ型の違い

キャビネットは背面の構造によって以下のように分類されます。

  • 密閉型(クローズドバック):背面が閉じている
  • 後面開放型(オープンバック):背面部分が開いている
  • バスレフ型:密閉型にダクト状の穴を開ける

密閉型

密閉型(クローズバック)は、本体後面を塞ぐことでスピーカーボックスの内部を完全に密閉しているキャビネットのことです。内部には吸音材が取り付けられており、ユニットの裏側から出力される「逆相」の音を外部に漏らさないために密閉されています。密閉型は「太く」、「箱鳴り」のするサウンドが特徴です。Marshall(マーシャル)のキャビネットに多く採用されています。

後面開放型

後面開放型(オープンバック)は、本体後面が完全に開いているキャビネットです。スピーカーユニット正面から出力される「正相」の音だけでなく、逆相も同時に出力されるため、正相と逆相が混ざったサウンドが最終的な出音となります。「音抜けの良いサウンド」であり、突き抜けるような高音が特徴です。Roland(ローランド)「JC120」や、Fender(フェンダー)「Twin Reverb」などに採用されています。

バスレフ型

バスレフ型は主にベースアンプのキャビネットに採用される構造です。密閉型スピーカーボックスの正面に「ダクト」と呼ばれる穴を空け、そこから内部で増幅した「低音成分」をスピーカーと同時に出力することで、低音の効いた「迫力あるサウンド」を鳴らすことができます。

ストレート、スラントの違い

Marshall 1960A、Marshall 1960B 左から:Marshall 1960A、Marshall 1960B

世界で最も有名なキャビネットといえば、12インチスピーカーユニットを4基積載しているマーシャルの「1960シリーズ」ですが、このモデルには「1960A」と「1960B」の2種類が存在します。

1960Aは「スラント」と呼ばれるタイプであり、「上部2基が上向き、下部2基が正面」となっています。上部を上向きにすることで、出音に広がりを持たせることが狙いです。

1960Bは「ストレート」というタイプで、「4基全てが正面」を向いているのが特徴です。そのため、スラントよりもパワーのあるサウンドになりやすく、ロックをメインとするギタリストがストレートを好む傾向にあります。

実際にはそこまで顕著な差はないので、好みで選んで問題ありません。ただ、プロレベルになるとレコーディングに影響してくるため、人によってはどちらを使用するか検討するようです。

スピーカーユニット

スピーカーユニット

スピーカーユニットはスピーカー本体のこと。音の出力における最終段階であり、かなり出音への影響が大きい部分です。スピーカーには製品ごとに音のキャラクターや対応できる出力などが異なっており、音作りにこだわるギタリストは、手持ちのアンプのスピーカーだけを交換したりすることも珍しくありません。

スピーカーユニットの構成要素

口径 8インチ/10インチ/12インチなど
口径が大きいほど低音の再生能力が上がり、迫力のある音が得られ、小さいほど高域がはっきり聞こえやすくなる
許容入力 60W/100Wなど
アンプに組み合わせる際に、そのスピーカーがどのぐらいの入力レベルまでを許容できるのかを表す指針
インピーダンス 4Ω/8Ω/16Ωなど
「抵抗」のことで、アンプから受ける電流量に応じて、スピーカーを最も効率よく動作させるための値

インピーダンスの注意点

仮にアンプ側の方がインピーダンス値が小さい場合(アンプ:8Ω → スピーカー:16Ω)、適正値に比べると出力が落ち、性能がフルに発揮できません。
また、逆にアンプ側のインピーダンス値が大きい場合(アンプ:8Ω → スピーカー:4Ω)、アンプに負荷がかかり故障の原因となります。
アンプとキャビネット接続時、インピーダンスの取り扱いには細心の注意を払う必要があります。

キャビネットの音の違い

キャビネットは本体の材質、構造、そして積載できるスピーカーの口径、許容入力、数などの点によってサウンドキャラクターが決まります。一般的に重く大きくなると音量・低音・音圧が上がり、軽く小さくなると低音が減退するぶん中高域の抜けがよくなり得られる最大音量も下がります。

小型キャビネット(自宅練習向け)

小型キャビネットMarshall Studio Classic SC112

8インチ/12インチ・スピーカー1基程度の小型キャビネットは、自宅練習や小規模なスタジオで使いやすいサイズです。音量が控えめで扱いやすく、レスポンス(音の反応)が速いため、コードの響きやアルペジオがクリアに聞こえます。低音はやや薄めですが、その分まとまりがあり、狭い部屋でもバランスよく鳴ります。

許容入力は30Wぐらいまで可能であれば十二分であることがほとんど。最近では小型の低出力アンプヘッドの製品も多くの種類があるので、自宅用として、このようなヘッドと合わせて適当なサイズのものを導入するのもおすすめです。

大型キャビネット(ライブ・スタジオ向け)

大型キャビネット

ライブで大音量で鳴らしたいという場合、大型のキャビネットを選ぶことで強烈な音圧を得ることができます。マーシャルなどに代表される大型キャビネットで得られる音圧は、小型キャビネットには逆立ちしても真似できない強烈なものです。特に4×12(12インチスピーカーx4基)はロックやメタルの象徴的な存在で、分厚い低音と迫力ある音圧を生み出します。

しかしライブで頻繁に使う場合には運搬を考えないわけにはいかないため、一定以上の出力を確保した上で、できる限り小型のものにするという選択もあります。この場合、低域の迫力と重量とのトレードオフになるでしょう。

材質(合板、バーチ材など)による音の変化

キャビネットの音は、スピーカーの数だけでなく箱自体の材質にも左右されます。材には「合板」や「単板」が使用されます。
合板はコストを抑えられ、軽量で扱いやすく音のバランスが良いとされますが、響きはややドライでタイトな傾向です。一方、ホワイトパインやバーチ材(白樺)といった単板は丈夫で共鳴感が強く、”中高音域の鳴り”と”音の艶”が出やすいという特徴があります。反り返りやすい単板を職人の手作業によって組み立てられることから、高級キャビネットに使われます。

また、Messa Boogie(メサ・ブギー)のキャビネットには側面に鉄板を取り付けたモデルもあります。鉄板が入ることで音の輪郭がハッキリし、”硬い音”になる傾向があります。このモデルはハードロックやメタルをメインとするギタリストに好まれています。

キャビネットの定番ブランドと代表モデル

ギターアンプ・ブランドのほとんどはキャビネットも製造しています。ここでは数多くのキャビネットをリリースしているブランドを一部紹介していきます。

Marshall 1960

Marshall 1960

ロックギターの象徴マーシャルアンプのもっとも有名なキャビネットが「Marshall 1960」です。このサイズのキャビネットこそはマーシャルが初めて作り出したもので、今やグローバルスタンダードとなっています。
スラント型の「1960A」とストレート型の「1960B」の2種類が展開。許容入力値は余裕の300Wで、あらゆるアンプに合わせることができます。このシリーズはスピーカーを取り替えたヴィンテージ指向の派生モデルがいくつか存在するので、好みが合うならそちらを試すのも良さそうです。

1960以外にも多数の製品があり、ハイファイな音に特徴のある、スピーカー2基の「1936」、「1922」などは特に高い人気を誇り、数多くのプレイヤーに愛用されています。昨今では廉価価格帯のMXシリーズやCODEシリーズなど、さらに展開する製品に幅が出てきており、多彩なラインナップは数あるアンプメーカー中でも随一です。

Marshall 1960 – Supernice!ギターアンプ

Mesa/Boogie Rectifier Guitar Cabinet

Rectifier Guitar Cabinet Rectifier Standard ARMOR

マーシャルと並ぶアメリカの巨人Mesa/Boogieもキャビネットのラインナップが豊富。もっとも有名なのはRectifier Guitar Cabinetのシリーズで、アンプのRectifierに合わせたものとして作られています。
よくある中国製ではなく、イギリスの工場に専用で発注したCelestion Vintage 30スピーカーを搭載し、バーチ材を全面に使い、密閉度を十二分に確保するための綿密な製作工程を経て出荷されます。このこだわりの仕様のため、価格は他社に比べても倍近くにもなり、「高価だが音が良い」という評価で定着しています。

サウンドの傾向としては、極めてレンジが広く、特に高域側に落ちがない独特の音色になっており、この部分こそが「これぞメサブギー」というサウンドの一翼を担っています。スピーカーの数の違いで多数がラインナップされているほか、側面を鉄板で覆ったArmor仕様のものなど、同社ならではのユニークなモデルも目を引きます。

Orange PPC-412

Orange

Tiny Terrorなどの小型アンプの充実とともに、小型から大型までの多彩なキャビネットをラインナップに加えているOrange。フルスタック型に見合う大型モデルとしてはPPC-412がはじめに挙がるでしょう。Celestion Vintage 30を4基搭載しており、許容入力値も240Wと十二分。Orangeのアンプのチリチリとした暴れ気味な高域や、幅広い再生レンジといった特徴を最大限活かせるキャビネットであり、特徴的なカラーリングも相まって、存在感を発揮する一台です。

スピーカー2発の212や、212のオープンバック版など、その他の製品についても、種類は少ないながらも、選択の幅は狭くありません。

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BLACKSTAR Series One 412

BLACKSTAR

マーシャル以上に多数のキャビネットのラインナップを誇るBlackstar。日本で手に入りやすいものはその中の一部ですが、定番はSeries One 412。

マーシャルと同じく、スラントのAタイプとストレートのBタイプに分かれています。サウンドの傾向もマーシャルの延長上にあり、よりハイゲインに合わせつつ、中域をあまり膨らませずにフラットな音像を指向することで、抜群の音圧を獲得しています。Blackstarのアンプのために特別開発されたCelstion Vintage 30を4発搭載。
他にもCelestion Seventy 80を搭載したHT-112、HT-212などがあり、自宅用としても魅力的な製品がいくつかラインナップされています。

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Hughes & Kettner CC412

TubeMeister 110 Cabinet

ドイツの名アンプメーカーであるヒュース&ケトナー。TriAmp Mk2というアンプの銘機とともに有名であったモデルと言えばCC412で、こちらはCelestion Vintage 30を4基搭載したモデルです。その後Triamp Mk3の登場とともに生産されたTC412には、Celestionがこのアンプのために製作したRockdriver Classicというスピーカーが搭載されました。そんなCC412も現在販売終了しており、TC412は日本では手に入りにくい状況になっています。

同社のキャビネットは現在Tube Meisterシリーズに集約されており、自宅練習用といってよい小型のTM110から大型のTM412までの数種のラインナップにとどまりますが、ハイゲインを良く受け止め、タイトなローエンドでしっかりとした音像は、往年のHughes & Kettnerの良さを受け継いでいます。特にハードロック以上のハイゲインを多用するギタリストにとっては使いやすく、世界中に愛好家が多いのも納得の品質です。

自宅演奏に最適な小型キャビネットおすすめモデル

ここから先は小型アンプヘッドとマッチする、自宅演奏に適した小型キャビネットの人気モデルを紹介していきます。

VOX BC108

VOX BC108

VOX BC108は、自宅練習や小規模なリハーサルに最適なコンパクト・ギターキャビネット。8インチのVOXオリジナルスピーカーを搭載、VOX「MV50シリーズ」など小型アンプヘッドと組み合わせて使用することを想定して設計されており、軽量ながらもしっかりとした低域と明瞭な中高域を再生します。
小さいため部屋に置いても邪魔にならず、手軽に持ち運べます。価格も手頃な部類で、初心者にとってコストパフォーマンスの高い選択肢となっています。

スピーカー 1 x 8” VOX オリジナル 8ohm
許容入力 25W
寸法 260(W) x 280(D) x 200(H) mm
重量 3.9kg

VOX BC108 – Supernice!ギターアンプ

ORANGE PPC108

ORANGE PPC108

ORANGE PPC108は、オレンジアンプの定番「PPC」シリーズの中で最小サイズとなるコンパクトなギターキャビネット。8インチのカスタムスピーカーを搭載し、小型ながらもオレンジらしい温かみと存在感のあるサウンドを実現しています。同ブランドのMicro TerrorやMicro Darkといった小型アンプヘッドと組み合わせることで、手軽に本格的なロックサウンドを楽しめます。
コストパフォーマンスにも優れ、クラシックなオレンジのデザインも魅力的です。

スピーカー 1 x 8”
許容入力 20W
インピーダンス
寸法 26Wx25.5Hx16Dcm
重量 4kg

ORANGE PPC108 – Supernice!ギターアンプ

Hughes&Kettner TubeMeister 110 Cabinet

Hughes&Kettner TubeMeister 110 Cabinet

Hughes & Kettner TubeMeister 110 Cabinetは、コンパクトながら高品質なサウンドを実現するギターキャビネットです。10インチCelestion TEN 30スピーカーを搭載し、クリアでパンチのある音像を再生。特に同ブランドのTubeMeisterシリーズのアンプヘッドと組み合わせることで、統一感のある音作りが可能です。

小型ながらHughes&Kettnerらしいレンジ感のあるトーンが得られ、初心者から経験豊富なプレイヤーまで満足できる仕上がりです。デザイン面でもHughes & Kettnerらしいスタイリッシュさを備え、見た目とサウンドの両面で魅力を放ちます。

スピーカー 1 x 10″ Celestion TEN30 Speaker
許容入力 30W
インピーダンス
寸法 400 x 350 x 255mm
重量 6,6 kg

Hughes & Kettner TubeMeister 110 Cabinet – Supernice!ギターアンプ

Marshall MX112

Marshall MX112

Marshall MX112は、低コストなMarshallのキャビネット「MXシリーズ」の中で最もコンパクトで扱いやすい1×12ギター用キャビネット。12インチCelestion Seventy 80スピーカーを搭載、オープンバック構造により音の広がりが自然で、クリーンからクランチ、ハイゲインまでアンプのキャラクターを活かしたサウンドを再生可能です。

Marshallのチューブヘッドはもちろん、先述のVOX MV50シリーズとの相性も良好。ハイゲインアンプやKEMPER、最新デジタルアンプ・プロセッサーとの相性も良いです。

スピーカー 1 x 12″ Celestion Seventy-80
許容入力 80W
インピーダンス 16Ω
寸法 H470xW500xD290mm
重量 13.5kg

Marshall SV112

Marshall SV112

Marshall SV112は、ヴィンテージ感あふれるSilver Jubileeシリーズの1×12インチ・ギターキャビネット。Celestion G12 V-Typeスピーカーを搭載、Marshall SV20Hなど同シリーズのアンプヘッドとの組み合わせに最適化されており、クラシックなブリティッシュサウンドをコンパクトに再生。ロックやブルースに適した豊かなトーンを得られます。

シルバーの外装と特有のクラシックなルックスは、ステージ映えするデザイン性の高さも魅力。スタジオや自宅での使用はもちろん、小規模なライブでも十分な存在感を発揮。本格派の選択肢となるキャビネットです。

スピーカー 1×12″ Celestion V-Type
許容入力 70W
インピーダンス 16Ω
寸法 H480 x W500 x D245 mm
重量 12.25 kg

以上、キャビネットについて見ていきました。
リハーサルやライブを行うギタリストが避けては通れないキャビネット、その取り扱いや基礎知識についての一助になれば幸いです。

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