
トレモロは音量を周期的に上下させて独特のうねりを生み出すエフェクターです。コーラスなどと同じモジュレーション系に分類され、歴史上初めてのエフェクターと言われることもあります。音量が上下するため、音が断続的に聞こえるのが特徴で、軽めに掛けることで緩やかな雰囲気を出したり、強烈に掛けることでマシンガンのようなサウンドを作り出したりと、単純ゆえに奥の深いエフェクターです。
Sonomaic のエフェクターをギター博士が弾いてみた
6:02〜:トレモロ・ペダル「Palmetto 3」の演奏
トレモロ・エフェクターの基本操作
トレモロのコントロールツマミは、
- RATE (SPEED):周期の速さを調整するツマミ
- DEPTH (WIDTH):変化する音量を調整するツマミ
- WAVE (SHAPE):掛かり方を調整
主にこの3種類が挙げられます。特にRATEとDEPTHについては定番のコントロールで、これらが付いていないものはまずありません。
トレモロエフェクトと波形
ダイヤルやスイッチにこのような絵柄で表されていることもあります。
トレモロエフェクトは、三角波・サイン波・矩形波など、音量の”波”の部分を波形によってコントロールしていますが、WAVEはそれらを選択しコントロールするためのものです。このつまみは付いていないモデルも多いですが、エフェクトの掛かり方を調整する重要なものです。
三角波(Triangle Wave)
音量が直線的に上がったり下がったりするタイプ。サイン波より少し硬質で、スクエア波ほど極端ではない中間的なキャラクターを持っています。リズムの輪郭を強調しながらも、自然さを保てるのが特徴です。
サイン波(Sine Wave)
なめらかに音量が上下するタイプ。自然で耳に優しく、クリーントーンにかけると水のようにゆらぐ印象になります。アンプ内蔵のクラシックなトレモロにも多く使われている方式です。
矩形波(Square Wave)
音量が「オン・オフ」で急に切り替わるタイプ。ザクザクと切り刻むようなリズミカルな効果が得られ、オルタナティブな音楽や実験的なサウンドでよく使われます。扱いを間違えると不自然に聴こえるので、バンド全体のリズムと合わせる意識が大切です。
トレモロペダルの接続順

トレモロはモジュレーション系エフェクターなので、歪み系エフェクターと空間系エフェクターの間に繋ぐようにします。オーバードライブの後段、ディレイの前段と覚えておきましょう。
関連記事:
エフェクターのつなぎ方・接続の順番について – Supernice!エフェクター
トレモロはどんな時使うペダル?
トレモロは主に単音弾きのソロ、コードストローク、アルペジオなどで使うのが効果的です。音量が周期的に上下するため、カッティングのような細かいプレイには向きません。コードストロークにも16ビートのような細かいものよりも、ゆったりとしたリズムでの演奏の方が相性が良いです。
トレモロ搭載のギターアンプ
コーラスなどと同様、単独でエフェクターとして登場する以前から、一つの機能としてアンプに搭載されていました。とくにヴィンテージ系のアンプに多く、60年代の音楽などで比較的多く聴かれるのはそのためです。トレモロ搭載アンプはフェンダーの機種が有名です。
Fender Tremolux (Tweed)
フェンダー最初期のラインナップを彩るツイードアンプ。その中でも”Deluxe”にトレモロ回路を増設することで開発されたのが、こちらのTremoluxです。SpeedとDepthで掛かり具合を調整します。オリジナル機は稀少で、現在ではエリック・クラプトン氏のシグネイチャーアンプとしてリイシューされたものを手に入れることができます。
Fender Twin Reverb
Fender Twin Reverb
1963年に登場以来、その透き通ったクリーントーンでフェンダーアンプの代名詞となっているTwin Reverbにもトレモロが搭載されています。インプットが”Normal”と”Vibrato”の二系統になっており、Vibratoの方に入力するとトレモロエフェクト付きのサウンドを得ることができます。こちらのチャンネルにはSPEEDとINTENSITYというコントロールが付いており、これで調整できます。また、同時期に生産されたDeluxe Reverb、Super Reverbなどにも同じ回路が搭載されています。
その他
他にはVOXの代表的機種、「VOX AC30」にもトレモロが標準搭載されています。VOX特有の中音域に癖があるブリティッシュトーンが好きで、尚且つアンプのトレモロを使いたいという方にオススメです。
トレモロとビブラートの違い
トレモロは音楽的に言うと同じ音の反復を指します。ギターでのトレモロピッキングは同じ音を高速で連打することを指し、ヴァイオリンでも弓を高速で上下し、同じ音を連続的に出し続けます。音量を上下するエフェクトとしてのトレモロも、同音の反復というイメージから付いたものでしょう。
対してヴィブラートは音程の変化を伴います。ギターではチョーキングとチョークダウンの繰り返し、ヴァイオリンでは左手のフィンガリングを上下に素早く動かします。いずれも音量ではなく音程が上下しているのが想像できるでしょう。
ストラトキャスターのトレモロアーム
フェンダーの製品はこの辺りが曖昧です。例えば上記のTwin Reverbのトレモロ側チャンネルはVibratoという表記で、同じくトレモロが付いているのにVibroverbと名付けられたアンプもあります。また、ストラトキャスターのアームを伴うヴィブラートユニットはシンクロナイズド・トレモロと呼ばれます。これらは名称としては逆にするのが妥当かもしれません。
ケヴィン・シールズ
My bloody Valentine「Sometimes」
シューゲイザーというジャンルを世に広めたバンドといえばマイブラッディバレンタインです。同バンドのギタリストであるケヴィン・シールズ氏は、深いリバーブとディストーションにトレモロを加え、「浮遊感のある轟音サウンド」を作り出します。
不安定で強烈なノイズサウンドがシューゲイザーというジャンルの代名詞にもなり、後続バンドに多大な影響を与えています。ちなみに、ケヴィンはジャズマスターやジャガーに搭載されているトレモロアームを主に使いますが、楽曲によってはトレモロ・ペダル「BOSS TR-2」を使っているようです。
おすすめのトレモロ・エフェクター
トレモロには種類がありませんが、強いて言えば「トレモロ+α」の機能を搭載しているモデルがあります。例えば、「トレモロ+リバーブ」、「トレモロ+コーラス」といった具合に、トレモロ以外のエフェクトを搭載し、それぞれ独立したコントロールを持ったペダルも販売されています。
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