はじめての歪みエフェクター、どれを選ぶ?

[記事公開日]2020/6/15 [最終更新日]2025/8/19
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

歪みエフェクター

「かっこいいエレキギターの音」を語る時、どうしても切り離せないのが「歪み(ひずみ)」です。ロックの探求は、歪みの探求でもあります。この歪みをエレキギターに加えるもの、それが「歪みエフェクター」です(近年では「ドライブペダル」とも呼ばれます)。今回は、歪みエフェクターとは何か、記念すべき最初の一個に何を選ぶか、こうしたところをチェックしていきましょう。


  1. そもそも、「歪み」って何?
  2. 「最初の一台」にお勧めの歪みエフェクター
  3. まだまだあるぞ!最初の一台にお勧めの歪みエフェクター

そもそも、「歪み」って何?

エレキギターの音を思い浮かべてみてください。「ジャーン!」「ズムズム」「ギュイーン!」「ザクザク」「ギシャー!」といったイメージの音は、歪んでいます。歪みのほか、「ドライブサウンド」とも呼ばれます。「シャリーン」「チャカチャカ」「サクサク」といった感じのものは、たいがい歪んでいないクリーンサウンドです。

歪んだギターサウンドの魅力は、1940年代にはすでに発見されていました。歪みエフェクターが開発されるまでは、ギタリストはアンプの音量をやたら大きくしたり、真空管を1個外したり、スピーカーに穴をあけたりと、かなり無茶をして歪んだ音を獲得していました。
こうした状況から、電気的な作用によって歪みを発生させるために発明された装置が「歪みエフェクター」です。この発明によってギタリストは簡単に歪んだ音を手に入れることができるようになりました。

歪みエフェクターには3種類ある

回路の組み込み方によってさまざまな歪みが生まれますが、歪みエフェクターは、オーバードライブ、ディストーション、ファズの3種類に大きく分類されます。しかし、その境界はあいまいです。定番のサウンドを狙ったものばかりではなく、「ディストーション並に歪むオーバードライブ」や「ディストーションっぽいファズ」など、中間的なものも多くリリースされています。まずは博士の動画から、3種類それぞれのイメージを掴んでいきましょう。

オーバードライブ


はじめてのオーバードライブ・エフェクター【ギター博士】

「アンプの歪み」を再現することから発明された「オーバードライブ」は、ほとんど歪んでいないところから、かなり歪んでいるところまでをカバーします。ちょっとだけ歪んでいる音は、「クランチサウンド」と呼ばれます。後段の歪みエフェクターやアンプの歪みを増強する「ブースター」としても、盛んに使われます。第一号は、BOSSの「OD-1(1977)」です。

六弦かなで

「ブースター」って何?

歪みエフェクターは単体で歪ませるだけでなく、後段のエフェクターやアンプへ送る音量を持ち上げるのにも使われます。この使い方を「ブースター」と言います。「ブースト(boost)」は「押し上げる、上乗せする」という意味です。歪みエフェクターで音量が上げられることで、後段のエフェクターやアンプの歪みがアップします。ゲイン(歪み量)を「0」にして音量だけ大きくするのを、特別に「クリーンブースト」と言います。

ディストーション


はじめてのディストーション・エフェクター【ギター博士】

オーバードライブ以上の烈しい歪みを作る「ディストーション」は、ほどほどに歪んでいるところから物凄く歪んでいるところまで、またモデルによってはその遥か彼方までをカバーします。第一号は、MXRの「Distortion+(1973)」です。

ファズ


はじめてのファズ・エフェクター【ギター博士】

ファズ」は、オーバードライブともディストーションとも違う、毛羽立った(=fuzzy)ような独特の歪み方です。故障したアンプから出る歪んだ音が認められ、これを再現すべく開発されたファズ第一号が、ギブソンの「Maestro FZ-1 Fuzz-Tone(1962)」です。音が物凄く太くなることから、特にシングルコイルとの相性が良いと考えられています。

アンプの使い方には2種類ある

歪みエフェクターを挿すギターアンプには、「若干歪ませて使う」「クリーンで使う」の2種類があります。

アンプを若干歪ませて使う場合、歪みエフェクターの音にアンプの歪みが加わり、強力な歪みが得られます。反面、練習スタジオやライブ会場のアンプで同じ音が出せるとは限らないので、いつものフィーリングで弾きたければアンプも持ち運ぶ必要があります。

アンプをクリーンで使う場合、サウンドがアンプに依存しにくいことがメリットですが、単体ではじゅうぶんな歪みが得られない場合があります。がっつり歪ませたいなら、歪みエフェクターを二つ並べるか、あるいは単体でも満足な歪みが得られるハイゲインなモデルを選びましょう。

六弦かなで

アンプの歪みとはどう違うの?

アンプで歪ませる音は、オーバードライブやディストーションと同じ原理で作られます。オーバードライブやディストーションに似た音は、アンプでも作ることができるわけです。いっぽうファズは原理が違うので、故障のないアンプで同じ音を鳴らすことはできません。

現代ではアンプの切り替え機能やエフェクターを内蔵した多機能アンプも一般化していますが、歪みエフェクターは足元で操作できるほか、アンプをブーストでき、また持ち運びや買い足し、買い替えのハードルが低いというメリットがあります。

「最初の一台」にお勧めの歪みエフェクター

さてこの先、いろんなメーカーのいろんな歪みエフェクターが紹介されます。しかしその前に、お勧めの超定番機種をいくつかピックアップしていきましょう。膨大なラインナップを前に迷いたくないという人は、ぜひこの中から選んでください。選定基準は、個性と歴史のある定番機種であることのほかに

  • ツマミは3つまで
  • 電池でもACアダプターでも駆動できる

という扱いやすさを特に重視しています。
なおエフェクターは多くの場合、本体のルックスがサウンドのイメージを象徴します。だから、本体の色で選んでしまってもだいたい大丈夫です。黄色やオレンジはだいたいオーバードライブやディストーションだし、黒っぽいものはたいがい単体でハイゲインな歪みが得られます。

最初の一台にお勧めのオーバードライブ

最初の一台にお勧めのディストーション

最初の一台にお勧めのファズ

以上、最初の一台にお勧めの歪みエフェクターを7モデル紹介しました。これらは王道であるばかりではなく、現在さまざまリリースされている歪みエフェクターの出発点と呼べるものです。マルチエフェクターなどでモデリングされることも大変多い定番機種ですが、本物を手にすること、実物のツマミをいじることの意義は、今なお重要だと考えられています。

さて次は選ぶ範囲をもっと拡大して、さまざまな歪みエフェクターを見ていきましょう。

まだまだあるぞ!最初の一台にお勧めの歪みエフェクター

ではここからはブランドごとに、お勧めの歪みエフェクターをチェックしていきましょう。やや多めかもしれませんが、世界の歪みエフェクター総数から言えばほんの一握りです。歪んだサウンドはギタリストのアイデンティティと呼べるほど重要であり、ギターやアンプ、弾き手のタッチなどさまざまな要素に影響される分野なので、さまざまな選択肢が必要なわけです。

ここで紹介する歪みエフェクターは、高人気で、べらぼうに高いわけではなく、かつ激安というわけでもない「手に入れやすく長期的に大事にできるもの」、という基準で選定しています。ツマミが多いものも、電池では駆動しないものも含まれています。

備考:「小さければ持ち運びに有利」とは限らない

先述した7台は、「電池でも駆動できる」ことに注目していました。エフェクターの電源には電池とACアダプターの2種類がありますが、どちらも使えるもの、どちらかしか使えないもの、どちらも使えず電源ケーブルが伸びているものがあります。ACアダプターも、汎用品で良いものと専用しか受け付けないものがあります。

特にさいきん流行している超小型エフェクターは、電池を収められずACアダプターでしか駆動しないものがほとんどです。単体で持ち運ぶ時には、エフェクター本体とACアダプターが必須となります。

もはやエフェクター界のインフラ「BOSS」

BOSS(ボス)は、世界中で愛されている日本のブランドです。サウンドや性能の良さや頑丈さに定評がありますが、それに加えて供給が安定していることも大きなポイントです。BOSSを置いていない楽器店はほぼ無く、水道や電気のように安定的に手に入れられます。もし何かのトラブルがあってもすぐ買い替えられるのは、ミュージシャンにとって大きな安心要素です。

ブースターの王道 Ibanez「Tube Screamer」

アイバニーズの「チューブスクリーマー」はブースターとして使った時、最高の結果を出せるよう設計されています。使い勝手に応じてさまざまなバリエーションがありますが、こちらではコンパクトな「TSMINI」をチェックしましょう。

変態さんご満悦、NYの老舗「Electro Harmonix」

「エレハモ」の愛称で知られるエレクトロ・ハーモニックス社は、1968年創業の老舗メーカーです。代表機種「ビッグマフ」をはじめエンベロープフィルター「Qトロン」、アナログシンセ「マイクロ・シンセサイザー」、もはやエフェクターですらない「RTG」など、スタンダード路線から超マニアック路線まで、たいへん幅の広いラインナップを特徴としています。

ジャムやバターを塗るように、組み合わせを楽しむ「Effects Bakery」

「エフェクツ・ベーカリー」は、パン屋のイメージで可愛らしさを演出しつつ、本格的なサウンドを低価格で実現するブランドです。今や強豪がひしめく「ミニサイズ、低価格」市場において同社は、ユルい外観、本格的で個性あるサウンド、使い勝手の良さの3つで存在感を発揮しています。ミニサイズの本体から若干はみ出すほどの大きめのツマミは扱いやすく、電源をトップに配することでボードへの収まりも良好です。

可愛らしいけどマニアック「Animals Pedal」

ほんわかとした可愛らしいイラストが目を引く「アニマルズ・ペダル(旧称ナインボルト・ペダル)」は、1万円前後の手に入れやすい価格帯ながら全製品でトゥルーバイパスを採用、伝統的なサウンドをベースに現代的なテイストを加えた、使いやすいエフェクターをリリースしています。ミニスイッチによるモード切り替えを備えたモデルもあり、マニアックな作りを楽しむことができます。

シンプルな中に、驚きの性能「One Control」

「ワン・コントロール」はスウェーデンのビルダーBJFことBjorn Juhl(ビヨン・ユール)氏とのコラボレーションで高品位なエフェクターをリリースするブランドです。カラーリングをイメージしたモデル名と尖ったサウンドコンセプト、ミニサイズの本体ながら電池を内蔵できる驚きの設計が特徴です。このほか18Vまでの高電圧駆動ができるなど、中上級者にとっても有用な機能が盛り込まれています。

ディストーションは、ここから始まった「MXR」

ニューヨークに本社を構える「MXR]は、1973年に世界初のディストーションペダル「ディストーション+」を世に放ったブランドです。「ダイナコンプ(コンプレッサー)」や「フェイズ90(フェイザー)」など、歪み意外にも歴史的な名機を数々リリースしています。

「TS系」の生みの親「MAXON」

「マクソン」を展開する株式会社日伸音波製作所は、アイバニーズのチューブスクリーマーを初号機から生産してきました。その歴史を今に伝えるODシリーズは国内生産の高品質がサウンドにも寄与し、音にこだわるギタリストを虜にしています。

これを知ってからファズを語れ Jim Dunlop「FUZZ FACE」

かのジミ・ヘンドリクス氏がこれまでの常識を覆すのに使われた伝説的ファズ、それが「ファズフェイス」です。円盤状の本体はエフェクターボードへの組み込みにう若干の工夫が必要ですが、これから成長していくギタリストがファズを学ぶためには、こうした本物のデバイスを使用するのが重要です。

最初の一台として歪みエフェクターを手に入れたら、次に何を調達するべきでしょうか。ブースターとしてのもう一台、またはいろいろな表現のためのディレイ、コーラス、ワウあたりが妥当だと考えられていますが、これからギターを弾いていく上で、必要性を感じたものを手に入れてください。最初の一台とまったく違ったキャラクターを持つ歪みエフェクターを探しても良いでしょう。

エフェクターのサウンドは練習でカバーできず、持っていなければその音が出せません。またエフェクターを使いこなすには、その特徴をしっかり心得る必要があります。ここは経験の蓄積がものを言う分野ですから、さまざまなエフェクターに実際に触れてみてください。

※当サイトではアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています。