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「フェンダー・ストラトキャスター」は、ギブソン・レスポールに並び「エレキギターの王道」と称される定番中の定番エレキギターです。「IBanez RG」シリーズはこのストラトを進化させた「スーパーストラト」の、ひとつの完成形として知られています。ストラトはストラトで時代とともに進化していますが、スーパーストラトはまた別方向の進化を遂げていきました。今回は、この二台を比べてみましょう。
1954年、テレキャスターに大幅なカスタマイズを施し、全くの別物となった「ストラトキャスター」が発表されました。ストラトの機能/演奏性/サウンドは多いに支持され、のちにライバルとなっていく「ギブソン・レスポール」を一時は生産終了に追い込むほどでした。
1980年代に入ると、ブラッド・ギルズ氏(ナイトレンジャー所属)、エドワード・ヴァン・ヘイレン氏(ヴァン・ヘイレン所属)を筆頭に、ストラトにハムバッカー・ピックアップとフロイドローズ・トレモロシステムを載せた改造ストラト、「スーパーストラト」を愛用するギタリストが続々登場、ハードロック/ヘヴィメタル・シーンを牽引していきます。
そんな中1987年、スティーヴ・ヴァイ氏のシグネイチャーモデル「JEM」のスタイルがレギュラーモデルに伝承され、アイバニーズ・RGのスタイルが確立します。RGはそこから独自の進化を重ね、現在の姿になっていきました。ボディに立体的な加工を施した「RGA」、ダウンチューニングに特化させた「RGD」といった派生モデルも生まれています。
上:Fender Made in Japan Hybrid 60s Stratocaster
下:Ibanez Prestige RG2770QZA-WPB
ではさっそく、二つのギターの違いを比べてみましょう。「エレキギターの王道」と称されるストラトキャスター、これを出発点に進化したRG、二つのギターには、具体的にどんな違いがあるのでしょうか。
本体の形状の違いについては、こちらで図解しています。
「ストラトとの比較」(ハード/ヘヴィ・ロックの王道「Ibanez RG」徹底分析!より)
RGは一見スリムですが決してコンパクトなギターではなく、むしろストラトよりちょっと大きいギターです。ストラトはボディのエッジ(外周部分)を丸く仕上げ、つるんとした可愛らしい印象を持たせています。定番カラーはサンバーストや白、黒、赤などですが、新色は発表のたびに話題になります。
RGのボディエッジは角を立たせた仕上げになっており、精悍さが演出されています。ボディカラーについては白や黒が多い印象ですが定番色というほどではなく、トップ材の木目を主張するナチュラルや新しいカラーリングなど、さまざまなものが採用されます。
ストラトキャスターにはふつうピックガードが付きます。現在のRGでは非採用が普通で、ピックガード搭載機もあります。ピックガードの有無はルックス上のポイントである以上に、その厚みのぶん「ボディからの弦高」を上下させるポイントになります。ボディからの弦高が低い方が、ピックを握り込んだりボディに指を置いてピッキングしたりするスタイルのギタリストに好まれる傾向にあるようです。
ボディに使用される木材については、両者の「ギターとしての存在意義の違い」のようなものが見られます。ストラトでは、ボディ材を年代でざっくり見ると、50年代にスワンプアッシュ(軽量なアッシュ)、60年代にアルダー、70年代にホワイトアッシュ(重いアッシュ)が、また日本製ではバスウッドが使用されてきました。ストラトは「王道」としての歴史を背負っているため、やはりアッシュとアルダーが基本で、低価格なものにバスウッドが使用されます。他の木材を試したり化粧板でドレスアップしたりするのは、ほんの一部に過ぎません。
RGはこうした歴史から比較的自由な立場にいること、モデルごとにコンセプトを立てて開発されること、「現代のサウンド」を追求していることなどから、現在ではマホガニーを主体としつつもバスウッドやアッシュなどさまざまなボディ材が使用され、トップ面を彩る化粧板にもいろいろなバリエーションがあります。
両者の弦長は25.5″(648mm)で共通していますが、それ以外はさまざまな違いが確認できます。プレイアビリティを大きく左右する「ネック」について、その違いを比較してみましょう。
フェンダー・ストラトキャスター | アイバニーズ・RG | |
ナット幅 | 40.5mm、42mm、42.5mm、42.8mmなどさまざま | 6弦モデルなら一律43mm |
ネックグリップ | CやU、モダンCなど丸みのある握り | グレードに応じた「ウィザード」ネックタイプがあり、基本的に薄い |
指板R | 丸みがある。旧式では184.1mm、現代版は241mm、日本製は250mmなど | ほぼ真っ平らの400mm。上位機種では430mm |
フレット | 旧式では細く低い。現代版では太さや高さが増す。 | ジャンボフレット一択 |
フレット数 | 旧式なら21、現代版なら22 | 24 |
ヘッド角 | なし | あり |
表:ストラトVS RG、ネック仕様比較(2019年現行モデル)
ストラトは歴史があるぶんだけさまざまなネックが採用されますが、基本的にはネックグリップ、指板ともに丸みを帯びています。対するRGは、やや幅広で平たいネック&指板が採用されています。フレットについても同様で、ストラトでは細く低いヴィンテージ・スタイルからミディアムジャンボまで、アーティストモデルではスーパージャンボまでさまざまですが、RGはジャンボフレットで統一されています。RGのような幅広で平たくフレットの大きいネックは、一般的にはテクニカル志向のプレイヤーに支持されますが、どちらのネックに弾き心地の良さを感じるかは、好みが分かれるところです。
ヘッド角はサウンドを決めるややマニアックなポイントです(後述)。しかしそれより、ヘッド角のあるギターを床に寝かせると「ヘッドの先とボディの末端の二点のみで本体の重量を支える」ことになるのはあまり気分が良くないため、面倒くさがらずにギタースタンドを使うのがお勧めです。
ストラトのカッタウェイは21あるいは22フレットまで、十分に手が届く程度に切削されています。対するRGは24フレットまで楽勝で届くよう、ガバっとカットされています。ネックヒール(ネックジョイントの出っ張り部分)については、ストラトでは大きく四角い形状なのが標準で、ハイポジション演奏時には掌にネックヒールの出っ張りを感じながら弾くことになります。RGではジョイントプレートを廃し、またネックヒールを大胆にカットしており、ゴツゴツした感触はほぼありません。
最強最新鋭「アメリカン・エリート・ストラトキャスター(2019年生産完了)」ですら、ストラトはヒール部のカットに消極的です。これは「ヒール部の体積がサウンドのコシを作る」という考えがあるからで、ココをあまり大胆にカットしてしまうとストラトの音ではなくなってしまうとされているからです。ではヒールをバッサリ切ってしまったRGのようなギターはダメな音なのかというと、そうでもありません。「大胆にカットしたヒールだからこそ、ラウド感のある音になる」という考えもあり、それぞれがそれぞれのサウンドになるわけです。
ストラトキャスターは「SSS(3Sとも。シングルコイル3基)配列」で、それぞれのピックアップ単体と、となり同士のミックス(ハーフトーン)が得られます。特に「ハーフトーンの美しさ」は、ストラトのたいへん大きな魅力のひとつです。
RGはそこからフロントとリアをハムバッカーにした「HSH配列」を基本に、ハムバッカーのみの「HH配列」もあり、
このように細い音から太い音までの幅広いサウンドバリエーションを持っています。RGはストラトのハーフトーンのポジションでコード弾きに有用な細い音が得られる設計になっており、ストラトに慣れた人がRGに持ち替えても違和感なく、使いやすく感じられるようになっています。ただしRGはフロント/リア共に「コイルタップ単体」は無いのが主流で、「フロントシングル単体」、「リアシングル単体」を欲するならストラトの出番になります。
ストラトキャスターは電気系を一枚のピックガードにまとめて載せる設計で、ピックアップも同様に「ピックガード・マウント」されます。RGはピックガード・マウントのもの、エスカッション(枠)を使用するもの(エスカッション・マウント)、そしてボディに直接設置する「ダイレクト・マウント」の3種があります。ピックガード・マウント及びエスカッション・マウントでは太く軟らかめなサウンドに、ダイレクト・マウントでは鋭く硬質なサウンドになると考えられています。
ストラトキャスターは「1V2T」と言われる、「マスターボリューム、フロントトーン、センタートーン」で、現代的なストラトではリアにもセンタートーンが効きます。演奏中にボリュームを操作することを想定した設計なので、ボリュームポットはリアピックアップのすぐ近くにあります。
いっぽうRGは「1V1T(マスターボリューム、マスタートーン)」を基本に、トーンポットを持たない機種もあります。ボリュームポットはリアピックアップのすぐ近くですが、ストラトほど近くはありません。演奏の邪魔になりにくい、それでいて演奏中に操作もでき、ボリューム奏法(バイオリン奏法)もできる、という位置になっています。
ブリッジにおいても仕様は大きく異なり、歴史の結果として多様性を持ったストラト、目指す方向がほぼ決まっているRG、という様相です。
ストラトのシンクロナイズド・トレモロユニットは、設置用ネジの本数(6本か2本か)、サドル形式(板か塊か)などさまざまありますが、だいたいコンパクトにまとまっている設計です。セッティングはボディからやや浮かせる「フローティング」とボディに密着させる「ベタ付け」のどちらかに選択でき、音程変化は基本的に下方向です。
これと比べるとRGの「エッジ」シリーズは大型でゴツいイメージがあり、チューニングが狂いにくいので大胆なアーミングができます。ボディと接する部分が彫ってあるため「ベタ付け」設定はできませんが、引き換えにストラトにはできない上げ幅の「アームアップ」が可能です。トレモロレス仕様のブリッジでもゴツい印象は同じで、弦振動をがっちりと受け止めます。
定番ど真ん中のストラトキャスターと、そこから進化したRG、音の違いはどうなんでしょうか。ギター博士の動画でチェックしていきましょう。
フェンダー・トラトキャスターとアイバニーズ・RGを比べてみた!
より正確にサウンドを聴き比べるため、それぞれアンプやエフェクターの設定は同じものを使用しています。博士はそれぞれのギターでほぼ同じフレーズを弾いていますから、音の違いを比べやすいのではないでしょうか。博士は「シングルコイルとハムバッカーで歪み始めのニュアンスが違う」、「シングルコイルは鋭く、ハムバッカーは壁のよう」のように評しています。博士の演奏を観て、あなたはこの二つの違いをどう感じましたか?
動画をご覧になった皆様から、いろいろなコメントをいただきました。そのうちのいくつかを紹介させていただきながら、二つの違いを考えてみましょう。
どちらか派
- フェンダーのシャープな音が好きだなぁ。うまい人が弾いたときに表現される豊かな音が感じられるのは断然フェンダーストラトだと思う。
- Ibanezの方が好みかなあと思いました
- ストラトのネックピックアップの音がだ~い好き!
- アイバニーズの甘いクリーンも有り寄りの有りだな。
ご自身の経験から「どちらが良い」という意見をお持ちの人が多い一方で、予備知識なしで動画を見たところどちらかが好きと感じた人、あるいはどちらかの新しい魅力を発見した、という人が多くいました。
使い分けたい派
- ストラストにしか出せない音、見た目にも魅力はありますね。ただ、ハムならではの甘く深みのある音、ノイズの少なさ等考慮するとRGの方が使いやすいイメージがあります。
- クリーンと強い歪みの音はストラト、程ほどの歪みの音はハムが好きだなぁ 聞き比べると結構違うのがわかる
- クランチは断然ストラトだけど強い歪みで弾くのはRGが似合うぜ…
ライブでは曲ごとに、録音ではフレーズごとにギターを持ち替えるのは普通に行われます。正反対の意見が並んでいますが、ご自身の目的や好みで自由に選択してください。
どっちも派
- ストラトは奥行きとピッキングのニュアンスが感じられる音な気がする。Ibanezの芯のある強い音も捨てがたい。
- 結局シングルとハムのギター2本とも買うことになる。w
RGにシングルコイルの音を出す機能があったにしても、やはりシングルのみのギターの良さを感じることもあるわけです。どちらにも他にはない深い魅力がありますね。
比較大喜利
- ストラトはとぅーんって感じで、RGはぽぅーんって感じ(適当
- フェンダーがレコードでRGがCDって感じ
まさに「いい得て妙」の、なかなかにとんちの効いた表現です。「とぅーん」「ぽぅーん」はパワー感の違いを表現しているのでしょうか。「レコード(アナログ盤)」「CD(デジタル盤)」という比喩には、深みを感じさせます。
博士への評価
- どうじゃ!のキレが増してますね!博士!
わかってくれましたか。博士はあらゆる面で、常に進化を続けています。
フェンダー・ストラトキャスターの種類と選び方
ハード/ヘヴィ・ロックの王道「Ibanez RG」徹底分析!
ここまでいろいろと分かりやすいところでの違いをチェックしていきました。ここからはもう一歩突っ込んで、ちょっと深いところの違いも見ていきましょう。
ヘッド角の有無はペグからナットにかかる弦の角度を決めるポイントで、無ければ角度にばらつきがあり、有れば角度はある程度まとまります(下図参照)。
ヘッド角なし(ストラト)、あり(RG)の模式図(ストラトではストリングガイドが使われますが、それでも弦角度がばらつくことに変わりはありません)
弦の角度は弦がナットに押し付けられる力を決め、角度がきついとタイトなサウンドに、ゆるいと柔らかく伸びるサウンドになります。RGは全弦の角度が揃いますが、ストラトでは6弦の角度が一番きつく、1&2弦の角度がゆるくなります(リバースヘッドではその逆)。
ですからストラトでは各弦のサウンドにばらつきがある、という結論になりますが、だからといって劣っているという話にはなりません。「そもそもストラトとはそういうものだ」と世界的に認知されており、長らく愛されてきた経緯があるからです。RGは各弦のサウンドが揃う設計であり、この均一さはストラトが楽器として進化を遂げた結果であり、大きなアドバンテージであるのは間違いありません。しかしながら、フェンダースタイルのギターに親しんできた人にとっては無機質に感じられることがあり、敬遠されることもあります。
ストラトキャスターは全て同じタイプのピックアップを並べており、それぞれだいたい同じ音量です。HSHのRGはハムバッカーとシングルコイルという、音量差のあるピックアップが混在しています。がっつりと歪ませている時には、各ピックアップの音量差はそれほど問題になりません。
しかし、クリーンやクランチといったサウンドの場合には、ちょっと勝手が違ってきます。ストラトではどのポジションでもだいたい同じ音量ですが、HSHの場合シングルコイルからハムバッカーに替えると音量がどーんと上がり、逆だとシュン、と小さくなります。その意味でストラトはクリーン/クランチが使いやすく、RGではそこんところをわきまえて使う必要がある、と言えるでしょう。
「ストラトキャスターのネック材は、メイプル一択」と相場が決まっています。それも、他ブランドのハイエンドモデルでは「柾目材(クォーター・ソーン)」が使われる現状において、フェンダーではよほどのことがない限り、年輪の模様が視認できる「板目材」が使われます。ここには深いこだわりがあるようで、フェンダーでは弦張力に対抗するじゅうぶんな剛性があればそれ以上は求めず、トラスロッド以外の補強には頼らず、3Pや5Pといった積層構造も採用しません。これは一説に、ネックも弦振動に共鳴する「ネック鳴り」を求めていると言われます。
対するRGは3P、5Pといった積層ネックが基本で、メイプルを主としながらもウェンジやウォルナットなど異なる木材を貼り合わせる例が目立ちます。積層ネックはネックの剛性を飛躍的に向上させ、またネック本体が硬くなることから、振動伝達の速度がやや上がると考えられています。
ストラトのアームはもともと挿しっぱなしで使用することを想定しており、ボディエンド方向へ回したアームがうまくボディ付近に収まる設計です。アームはくるくると回していくことで内部バネの圧力をコントロールし、アームを回すときの堅さ(トルク)を調節できます。シールドを挿したままだと、プラグが邪魔でうまく回しきれない、ということが起きます(アメリカン・エリートの「ポップイン・アーム」は、いろいろとまた別)。
RGのアームは使用時に押し込み、収納する時には引っこ抜く設計です。アームのトルクはアームについている「ポリキャップ」の摩擦に頼りますが、これは消耗したら交換する必要があります。こちらはアームの回転を邪魔するものがなにもありませんから、グワングワン回しても大丈夫です。
以上、ストラトキャスターとアイバニーズRGの違いをチェックしていきました。ストラトにもSSHやHH、HSHといったピックアップ配列のものがありますし、RGでもかつてはSSH配列モデルがありました。その意味で、両者の比較は「シングルコイルとハムバッカー」というシンプルな比較ではありません。ストラトを持ったらどんな曲を弾きたいか、RGならどんなプレイがしたいか、ある程度ギターをたしなんでいる人ならきっとインスピレーションが湧いてくることでしょう。これから始める人も、ぜひその違いを楽しんでください。
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