《ケーブル不要!》ギター用ワイヤレスシステム特集

[記事公開日]2023/4/20 [最終更新日]2024/4/18
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

日常で気軽に使える低価格モデル

1万円台の低価格なワイヤレスシステムが登場したことで、ワイヤレス市場は一気に湧きあがり、ユーザーの関心が高まりました。低価格モデルとはいえ音質は良く、日常的な使用以外にもちょっとした規模ならライブで使うこともできます。

Xvive「U2」シリーズ

Xviveの「U2」シリーズは、市場的には地味な存在だったワイヤレスシステムに光を当てた画期的な製品です。「送信機と受信機が同じルックス」、「送信機も受信機も、ギターやアンプに挿すだけ」という低価格ワイヤレスのひとつの「お約束」は、このモデルが定着させたと言っても過言ではありません。

  • 最大伝送距離:30m
  • 駆動時間:約5時間
  • 周波数特性:20Hz~20KHz
  • ダイナミックレンジ:103db以上
  • レイテンシー:6ms未満

というスペックはやはり後発モデルや上位機種にはかないませんが、日常的な使用やちょっとしたライブで「じゅうぶん使用に耐える」と判断する声が多く上がっています。曲線で構成される独特のルックス、豊富なカラーバリエーションも手伝い(それでも「黒」が一番人気)、下記BOSSと二分する高い支持を誇っています。


Wireless Guitar – Yes or No? (Xvive U2 Demo)
自宅での練習がとっても楽しくなる感じのレビュー動画です。

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NUX「B-5RC」

NUX B-5RCは、コンパクトで軽量、低遅延・高音質のワイヤレス・システムです。連続使用可能時間も4時間と十分な長さを備えるほか、付属のケースは充電機能が装備されており、Bluetoothイヤホンのような感覚で持ち運びながらの充電が可能となっています。
ワイヤレス接続は自動で行われるため煩わしさもなく、音質も24bit/44.1kHzのハイレゾ音源です。また遅延は5ms以下と非常に低遅延で、伝達距離も約30mと申し分ありません。本体も非常に小型で軽く、エレキギター以外の楽器にも広く対応するデザインを採用しています。
連続使用可能時間は最大4時間と、長いステージにも耐えうる仕様です。10分間信号が入力されない場合自動で電源が落ちるため、消し忘れによるバッテリー切れも怖くありません。
付属のケースは充電機能も装備しており、持ち運びながらの充電ができるのも魅力的です。

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BOSS「WL」シリーズ

BOSS WL-20

Xviveが開拓してNUXが対抗した「低価格ワイヤレス」市場に、満を持して大きく上を行くモデルを投入したのがBOSSです。

  • 最大伝送距離:見通し15m
  • 駆動時間:約10時間
  • 周波数特性:20Hz~20KHz
  • ダイナミックレンジ:110db以上
  • レイテンシー:2.3ms

最大伝送距離こそ短めですが、注目すべきは高額な上位モデルにも迫ろうという「際立った超低レイテンシー」です。二つ直列で使ってもまだ上記「B2」より速いことから、「ギター/エフェクトボード間」だけでなく「エフェクトボード/アンプ間」までもワイヤレス化させる猛者が現れました。

《BOSS WL-20レビュー》小型で高品質なギターワイヤレスシステム

Line 6 「RELAY G10S」

RELAY G10S

ペダル型ワイヤレス「G10S」は、Line 6のワイヤレスシステム「Relay」シリーズの中でもエフェクターボードに組み込みやすくなったモデル。送信機はG10と同様の「G10T」を使用しますが、受信機はボードに組み込みやすい様々な工夫が凝らされています。

  • 最大伝送距離:見通し40m
  • 駆動時間:約8時間
  • 周波数特性:10Hz~20KHz
  • ダイナミックレンジ:112dB
  • レイテンシー:2.9ms

G10と比べて最大伝送距離が大幅に改善され、一つ上のグレードにあたる「G30」よりも良好な数字です。注目すべきはライブやリハーサルでの使い勝手の良さで、受信機と送信機をドッキングするだけで充電できるため、ライブの長い待ち時間の間に充電が切れてしまうといった心配事がありません。また受信機には電池残量と電波状況を確認できるインジケーターが点灯し、残りの電池残量などがひと目見ただけで確認できます。手軽に、だけどより本格的な使用を考えた場合、「G10S」は最適です。

《レビュー》リハやライブに最適!ペダル型ワイヤレス「Line 6 Relay G10S」

Ibanez「WS-1」

Ibanez WS-1

WS-1は、プロクオリティの高い音質と超低ノイズのサウンドをコンパクトなサイズと簡単な操作で使用することができるワイヤレス・システム。黒衣をイメージしたブラックカラーを基調とするシンプルなデザインで、どんなシチュエーションにも馴染みます。
ハイグレードな電子部品を使用することにより、高い音質とローノイズを実現。音質の高さとは裏腹に、複雑な操作や設定をせず、楽器にプラグインするだけですぐに使用できる気軽さが魅力です。3mの高品質なシールドケーブルを使用した際のナチュラルな高音域の減衰を再現する「cable tone シミュレート・モード」を搭載しており、ボタンでON/OFFを簡単に切り替えられます。

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「ワイヤレスアンプ」という新しい選択

各社が低価格のワイヤレスシステムを発表していく中、練習用アンプに受信機を仕込んだ「ワイヤレスアンプ」が頭角を現しています。自宅でスッキリとギターを楽しむなら、かなり理想的なデバイスです。ただしアンプ自体が受信機になっているので、エフェクターをつないで使いたい時にはワイヤレス機能は使えません。

YAMAHA「THR-II」シリーズ

YAMAHA THR-II

2011年に登場し「ステージやスタジオ以外でもいつまでも弾いていたくなるようなアンプ」というコンセプトでベストセラーを博したデスクトップアンプ、THRシリーズ。2019年に登場したTHR-IIシリーズでは音質UPやアンプモデルが増やされただけでなく

  • ギターとアンプを(Line 6 G10の使用によって)ワイヤレス接続
  • 充電式バッテリーで電源もワイヤレス
  • Bluetoothスピーカーでリスニングもワイヤレス(しかも同時にアンプとしても使用可能)
  • アプリで音作りもワイヤレス

という4つのワイヤレスによる無上の解放感を実現した、次世代の家庭用小型ギターアンプです。フルワイヤレスは快適というほかなく、「ギターの自宅練習」という概念をひっくり返してくれます。

《進化を遂げたデスクトップアンプ》YAMAHA「THR-II」レビュー!

BOSS「KATANA-AIR」

BOSS「KATANA-AIR」

BOSS KATANAシリーズ」の高品位小型アンプとワイヤレスシステム「WL」とを融合させたワイヤレスアンプが、世界初となる「完全ワイヤレス」を実現した小型の家庭用ギターアンプ「KATANA-AIR」です。電池駆動ができるため「コードレス」でもあり、音楽再生はBluetoothで行うのでオーディオケーブルも使いません。

アンプ自体が受信機/充電器となっており、送信機をアンプに差し込むだけで充電できます。アンプとしてはほかの「KATANA」シリーズ同様に高品位なサウンドを楽しむことができますが、普通のインプットジャックもついているため、普通のアンプとしても使用できます。

BOSS KATANA-AIR – Supernice!ギターアンプ

NuX Mighty Air

NuX Mighty Air

2020年6月に登場したNuxの「Mighty Air」。スマートフォンと同程度の小型軽量の本体に、Bluetooth機能、ワイヤレス機能、充電バッテリーといった機能を搭載し、自宅練習やライブ前のウォーミングアップに最適な小型のモデリングアンプです。上述の2機種に比べると性能面ではまずまずといった印象ですが、2機種に比べてリーズナブルな価格帯を実現しているため、予算を抑えながらもワイヤレスな環境を手に入れたいというギタリスtにはオススメの製品です。

NuX Mighty Air – Supernice!ギターアンプ

高品位な上位モデル

現在のワイヤレス上位機種は、

  • SHURE(シュアー):永らくヴォーカル用ワイヤレスで培った信頼により、「現代の主流派」として君臨
  • Line 6:デジタル技術と開発力を武器に、猛烈に追い上げ

という二社がしのぎを削っている情勢です。プロの現場に耐える上位機種は、本体が頑丈で、音質が良く、また伝達距離が長くなります。またそれだけの性能を持たせるため、送信機は低価格モデルより大きめになります。プロ用の送信機は電源に乾電池やリチウム電池を使用するのも心強いポイントです。ライブの現場で「電池交換すれば一瞬でフルパワーにできる」というメリットは、かなり大きいと言えるでしょう。

SHURE「GLXD」シリーズ

BOSS WL-20 GLXD6

シュアーのワイヤレスシステム「GLXD」シリーズは、

  • ギター/ベースに特化した受信機「GLXD6
  • ヴォーカルマイクにも対応している「GLXD4」とラックマウント型の「GLXD4R
  • 送信機「GLXD1

の組み合わせで構成され、それぞれ個別でもセットでも販売されています。GXLDシリーズは音の良さでプロに選ばれる音質があり、「インテリジェント周波数管理機能(LINKFREQ)」により、常にベストな送受信ができる周波数に自動調整します。「GXLD6」はエフェクタボードに組み込まれることを想定した作りになっており、フットスイッチの操作でチューナーとしても使用できます。専用の充電式リチウム電池に対しては、送信機から外して充電できる充電器や自動車のシガーライターから充電できる装置もリリースされています。

  • 最大伝送距離:最大60m
  • 駆動時間:最長16時間
  • 周波数特性:20Hz~20KHz
  • ダイナミックレンジ:120db
  • レイテンシー:仕様書に記載なし


How to Set Up a Shure GLXD6 Wireless Guitar Pedal System
スイッチポンで良い感じのチャンネルを利用したペアリングができます。プロ用だからと言って、決して難しいものではありません。

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AKG WMS40 PRO MINI INSTRUMENTAL SET(JP1)/(JP2)
AKG WMS40 PRO MINI2 INSTRUMENTAL SET DUAL

レコーディング用マイクの分野で世界中の信頼を集めているAKGから、シンプル設計で低価格、高品位なワイヤレスシステムがリリースされています。最大の特徴は「B帯(800MHz帯)を使用」、「周波数固定」の2点です。現代の主流である「2.4GHz帯」を使用するシステムと全く干渉することがありません。また、「JP1」と「JP2」それぞれに周波数が設定してあり、チャンネルを設定する必要がありません。「DUAL」では、JP1とJP2を同時に使用できます。アナログ方式のため送信機から音量調整できるのと、電池がやたら長生きするのも大きな特徴です。

  • 最大伝送距離:20m
  • 駆動時間:30時間
  • 周波数特性:40Hz~20KHz
  • S/N比:110dB
  • レイテンシー:仕様書に記載なし


AKG WMS40 MINI NSTRUMENTAL SET, MINI 2 INSTRUMENTAL SET, MINI 2 MIX SET
シンプルかつ高性能、ボーカル用ワイヤレスマイクとのセットも可能です。

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Line 6「RELAY G70/G75」

RELAY G70 RELAY G70

ギター用に特化した「RELAY G70」の受信機は、「ABボックス」、「チューナー」、「ゲインブースター」、「ダイレクトボックス」という4つの機能を持っており、エフェクタボードをスッキリと整理できます。アンプトップ型の「RELAY G75」は、普通のケーブルに加えてキャノン出力端子も備えています。

この「RELAY G70」および「G75」の性能は以下の通りで、

  • 最大伝送距離:最大60m
  • 駆動時間:約8時間
  • 周波数特性:10Hz~20KHz
  • ダイナミックレンジ:120dB
  • レイテンシー:1.5ms

どのスペックもじゅうぶんなクオリティですが、特にLine 6最新の「第5世代デジタルオーディオ伝送」で実現した「1.5ms」という「超低レイテンシー」は、メカに最高の性能を求める人にはたまりません。


Switching Multiple Instruments With Relay G70 | Line 6
フットスイッチの操作だけで楽器を切り替えられるという機能は、非常にありがたいですね。

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難しい用語のお勉強

さて、「メカの性能」というものはなかなか奥ゆかしい問題でして、良く分からない用語を何となく理解したつもりで通過してしまう、ということもあります。ここからは「資料編」ということで、ワイヤレスシステムを語る上で高確率で遭遇するであろうキーワードをピックアップしていきます。

周波数帯

ワイヤレスシステムにおける「周波数帯」は、飛ばす電波がどんな範囲に収まるのかを示しています。今回ピックアップしたワイヤレスシステムはすべて「2.4GHz帯」になりますが、これは「2401MHzから2483MHz」までの範囲になります。ヴォーカルのワイヤレスで使われることの多い「800MHz帯」は「806MHzから810MHz」です。

チャンネル

「チャンネル」は「1~4」などのように数字で表し、周波数帯の中のどこを使用するのかを選択します。たとえば「あなたは2402MHz、わたしは2404MHz」などのように無線通信で使用する周波数を割り振ることで、いくつものワイヤレスシステムを混線させずに共存させることができるのです。多くのメカが2.4GHz帯にひしめき合っている状態で、人の手でチャンネル設定をやろうとするのはかなり大変です。そのため上位モデルでは問題なく使えるチャンネルを自動的に検出できる機能が付いています。

最大伝送距離

「最大伝送距離」は、「電波が最長でどこまで届くか」を表します。「最大」というところがポイントで、これは送信機と受信機の「間に何もない状態」でならばどれだけ離れても大丈夫か、という数値です。ですから間に遮蔽物があったり、他の電波が邪魔したりすると、この数値は達成できなくなります。

周波数特性

オーディオ製品における「周波数特性」は、どこまでの範囲の音を再生できるかを表します。人間の可聴範囲は「20Hzから20KHz」ですからここまで再生できれば充分のようですが、この範囲に収まらない周波数の音を私たち人間は耳以外から感じることができます。耳では聞こえてない「10Hz」も、肌で感じる振動などから迫力として感じることができるのです。今回ピックアップしたワイヤレスシステムの周波数特性は

  • 20Hzから20KHz
  • 10Hzから20KHz

のどちらかになり、このうち10Hzまで再生できるほうが音に迫力がある感じに聞こえます。

ダイナミックレンジ

「ダイナミックレンジ」は最小の信号と最大の信号との比率を表し、「デシベル(dB)」で表します。この数値が大きいほど、音の強弱をキレイに再生することができます。

人間の聴覚が持つダイナミックレンジは、個人差はあるもののおよそ120dBといわれる。これは知覚できる最小の音圧と、苦痛を感じる最大音圧の比率である(Wikipedia「ダイナミックレンジ」より)。

レイテンシー

「レイテンシー」とは「遅れ(late)」を語源とする用語で、ワイヤレスシステムでは「音を電波にするのに、どれだけ待たされるか」を「ms(1000分の1秒)」で表します。この数字が小さければ小さいほど、送信機の処理が速いことになります。「低レイテンシーのメカを使用する気持ちよさ」を好むユーザーは多いので、メーカーは血眼でこの数値を少しでも下げようと努力しています。こうした性能を表す数値は残酷にも簡単に比較できてしまい、数値が少しでも劣っているものは性能が劣っているかのように思えてしまうものです。しかしこれについて、ちょっと落ち着いて考えてみましょう。

  • RELAY G70のレイテンシー「1.5ms」
  • NUX「B-2」のレイテンシー「5ms」

の差を見ると、「B2」は「G70」より「3.5ms(0.0035秒)」遅いわけですが、「3.5もあるのか。そんなに待つことは出来ぬ」という気の短い人はあまりいないのではないでしょうか。その聞こえ方はどうかというと、約120センチ遠ざけたアンプから聞こえるのと同じです(音速が秒速34029センチメートル。これを1000で割って、3.5を掛ける)。「B2」を使う時には、アンプを120センチだけ耳に近づければ、RELAY G70と同じ聞こえ方になる、ということでもあります。その差はあまりにも小さくて、とても認識できるものではありません。レイテンシーは性能を比較しやすい数値ですが、あまり気にしすぎなくても大丈夫なのです。

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