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ハムバッカーのピックアップのカバーを外したら、どういう効果が得られますか? – (2011/9/13)10~19歳(高校生・中学生・小学生)
レスポールはピックアップカバー外すのをよく聞きますが、ストラトは外しても問題ないですか? – (2015/8/27)14歳 けんたろうさん(男性)
ハムバッカーではサウンドが変化しますが、シングルコイルでは理論上変化がありません。シングルコイルのカバーが通常プラスチック製なのに対し、ハムバッカーのカバーは金属製であることに秘密があります。
今回は、ハムバッカーピックアップのカバーについて考えてみましょう。カバーの有無でサウンドもルックスも変わりますから、ギターのカスタマイズに興味がある人にとってはしっかりチェックしておきたいポイントです。
ハムバッカー本来の姿は、ピックアップカバーのある状態でした。カバー付きを「カバード」、カバーなしを「オープン」と呼ぶのは、カバーを外すという改造が流行してからです。外してしまうくらいなら付けなくてもいいのに、なぜピックアップカバーは付けられたのでしょうか。
左:シングルコイルピックアップ、右はカバーを外したもの(細い銅線がぐるぐる巻きつけられている)
左:カバード・ハムバッカー、右:オープン・ハムバッカー(テープが巻かれている)
ハムバッカーのピックアップカバーは、「コイルの保護」と「ノイズの除去」を目指して付けられました。第一にコイルの線が切れてしまってはいけないので、カバーをかぶせて保護しようというわけです。
第二に、ノイズ除去のためカバーは金属製である必要がありました。金属製ベースプレートに固定したピックアップを金属のカバーで覆う事で、外部の電界を遮蔽する金属製シールド「ファラデーケージ」が完成するのです。
Led Zeppelin – “Whole Lotta Love (Rough Mix With Vocal)” (Official Music Video)
いわゆるレスポールの太く甘いサウンドは、カバードのハムバッカーによるものです。1957年のデビューから現代にいたるまで、カバードのハムバッカーはロックの歴史に重要な役割を担っています。シンプルに「カバードのルックスが好き」というギタリストも多くいますが、50年代や60年代をリスペクトしてカバードを愛用する、というギタリストも多くいます。
ピックアップカバーの有無によって、激的とまではいかないにしても、確かに音の違いが現れます。カバードのサウンドを基準にすると、オープンはより自然で派手な、明るいサウンドに聞こえます。直感的な弾き心地が得られ、ミックスでの抜けも良くなります。高周波を豊かに拾うようになるため、現代的なバンドサウンドに求められやすい引き締まり感やブライト感が得られます。
反対にオープンを基準にすると、カバードは滑らかで豊かな、暖かく、またダークに聞こえます。カバーによって磁場が歪むことで、ピックアップの受信する高周波数が減少し、暖かみの増した、または響きが暗くなったように聞こえるわけです。
カバードはまた、カバーのメッキ材によってカットされる高周波が異なると言われ、このほかワックス・ポッティングをしたりしなかったりの違いによってフィードバックやマイクロフォニック効果が起きたり起きなかったりするという、独特のディープさがあります。
Steve Vai – “Frank”
ピックアップカバーを外すという改造が流行し出したのは、70年代からだと言われています。パワーと鋭さを併せ持つオープンタイプのピックアップは、時代と共に激しくなっていくロックのサウンドには無くてはならないものになっています。スティーヴ・ヴァイ氏はフロントピックアップの端にテープを貼ることがありますが、これにはアームダウンやハードなピッキングが原因で弦がフロントピックアップに引っかかってしまうのを防ぐ狙いがあります。
ピックアップカバーは自分の手で付けたり外したりできます。しかしピックアップは本来、製造時の状態のままで使用されることを前提に作られています。カバーの外しやすさを考慮して設計されることはほぼありませんから、失敗もあり得ます。また、EMGなど樹脂でがっちりと固められているピックアップのカバーを外すことはできません。設備や技術に自信のない人は、プロのリペアマンに相談してください。
また、交換用ピックアップの中にはカバードとオープンの両面でリリースするものもあります。カバー着脱よりピックアップ交換の方が作業は遥かにカンタンなので、いっそのことピックアップごと交換してしまう、というのも一つの方法です。
Avenged Sevenfold – The Stage
「アヴェンジド・セヴンフォールド」に所属するシニスター・ゲイツ氏のシグネイチャー・ピックアップ「Synyster Gates INVADER」は、オープンタイプの本体に二列輝く特大ポールピースが目印です。ダンカンのインヴェーダーは分厚い重低音と凄まじいパワーが持ち味で、とにかくパワーが欲しいというギタリストにはうってつけです。ヘヴィメタル/ハードロックといった分野では、パッシブのハムバッカーにはオープンタイプが選ばれるのがほとんどです。
ピックアップカバーはベースプレートにハンダ付けされていますので、外すにはまずこのハンダを除去します。このハンダがハンダごてで簡単に溶けてしまえば良いのですが、なかなか溶けてくれないものもあるようです。あまり長時間ハンダを熱するとカバーやピックアップ本体にダメージを加えてしまうことがあるので、作業は手早く行う必要があります。またハンダがピックアップとカバーの隙間に入り込んでしまっている場合には、少々荒っぽいですが「金ノコによる切断」という手段が有効です。
カバードのハムバッカーは多くの場合、ピックアップ本体とカバーの隙間が蝋(=パラフィン、ワックス)で埋められています。加熱して蝋を溶かしたり、また軽く叩いたりするとカバーは外れます。コイルにテープを巻いて保護したら、作業完了です。
古い国産のフルアコから摘出したPAF型ハムバッカー・ピックアップ。こいつのカバーを外してみよう。
裏返すと、2か所でしっかりとハンダ付けされているのが分かる。これを除去すると、簡単にカバーを外すことができる。とはいえこの個体はハンダがなかなか溶けてくれず、少々苦労した。
ハンダを除去すると、カバーはスルっと外れた。この個体はポッティングされていなかったようで、ロウを除去する作業も不要だった。
買ってきたピックアップカバーは汚れが付きにくいように塗装されているのが普通なので、まずハンダを付ける部分にヤスリがけを行い、ハンダを付けやすくします。
カバーが付いたら、「蝋付け(ポッティング)」しましょう。熱して溶かした蝋(=パラフィン、ワックス)にカバードピックアップを浸し、内部の隙間に蝋を浸透させます。これを冷やして蝋を固化させ、余分な蝋を除去して完成です。
KURT ROSENWINKEL TRIO JAPAN TOUR 2016 : LIVE @ COTTON CLUB JAPAN (July.2,2016)
「現代ジャズギターの頂点」と言われるカート・ローゼンウィンケル氏。ジャズで使用されるフルアコやセミアコのハムバッカーは、カバードが基本となっています。この分野で求められる甘いトーンには、やはりカバードが必須です。
現在では各ブランドから純正のピックアップカバーがリリースされているほか、いろいろなブランドからピックアップカバーがリリースされています。カバードのサウンドを求めたりドレスアップをしたりと、こうしたカバーには一定の需要がありますが、ピックアップカバーを買う時に注意しなければならないのが、「弦間ピッチ」というキーワードです。
ポールピースの中心から隣のポールピースの中心までの距離を「弦間ピッチ」といい、メーカーによって違いがあるのです。
ギブソン・ピックアップ | 57Classic / Classic Plus / Burst Buckerではフロント/リア共に9.8㎜だが、490T/498T/500Tのブリッジ用は約10.5mm。いずれのカバーも純正パーツとして販売されている。ヴィンテージギターのハムバッカーには9.91mmのものも |
セイモアダンカン | 多くのモデルでフロント/リア共に9.8㎜だが、トレムバッカーは広くなっている。カバーは同社製品を取り扱うESPからリリースされている |
ディマジオ | 弦間ピッチ9.7mmを基本とするが、フェンダーの弦間ピッチに合わせた「Fスペース」のものは10.2mm。ノーマル、Fスペース共に純正ピックアップカバーがリリースされている |
ヴァンザント・ピックアップ | ヴィンテージギブソンと同じ9.91mm。純正カバーは販売されていない |
各メーカーで異なる、ピックアップの弦間ピッチ例
標準的なピックアップカバーが「SCUD」や「YJB PARTS」などから、ヴィンテージピックアップのカバーを再現したりエイジド加工を施したりしたドレスアップ効果の高いものが「MONTREUX(モントルー)」や「VINTAGE CLONE PARTS」などからリリースされています。
ピックアップカバーを…
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手持ちのギターの弦間ピッチが判らない場合には実際に計測してみるのが一番ですが、普通の物差しでは9.91mmと9.8mmと9.7mmの違いなど、ミクロの寸法なんて判りませんね。自分で弦間ピッチを測定するには隣の弦との距離ではなく、1弦ポールピースの中心と6弦ポールピースの中心との距離を測ってみましょう。この長さを5分の1にした値が、そのピックアップの弦間ピッチです。
図:自分で弦間ピッチを割り出す方法
1~6弦の距離 | 弦間ピッチ |
49mm | 9.8mm |
48.5mm | 9.7mm |
49.55mm | 9.91mm |
51.5mm | 10.5mm |
51mm | 10.2mm |
表:1弦~6弦の距離から弦間ピッチを算出
以上、ハムバッカーのピックアップカバーについていろいろ見てきました。サウンドの変化もルックスも、ギタリストならばこだわりたいポイントではないでしょうか。大雑把ながら、使用されるジャンルにも関係しているというのが面白いところですね。
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