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「フルアコ(フルアコースティックギター)」とは、「ボディ内部が完全に空洞になっているエレキギター」のことで、特に日本国内でボディ中央に木部(センターブロック)を配した「セミアコ」と区別する名前として使われます。フルアコ、セミアコをあわせて「ハコモノ」と言いますが、ジャズギター、ボックスギターと呼ばれることもあります。世界的にフルアコ(full acoustic)という言葉が使われるということはなく、どちらもボディトップがアーチを描いていることから「アーチトップ」と総称されます。
フルアコを代表する二大ブランドといえばギブソンとグレッチで、後に続く多くのブランドの手本になっています。永らくシェアを競っていた両ブランドですが、現代ではギブソンのフルアコはジャズ/ブルーズに、グレッチはカントリー/ロックに特にフィットしていると見られています。
とはいえ、プログレやオルタナ、パンクなどのジャンルで使用される例も見られますから、フルアコだからと言って特定のジャンルにしか使用できないというわけではありません。あまりゲインを上げるとハウリングが起こりやすくなるため、ヘヴィメタルなどエクストリーム・ミュージックでの使用は極めて限定的ではありますが、どんなジャンルであれ好きな時に使えば良いのです。
Gretsch 6120SH Brian Setzer Green Sparkle Hot Rod
YesSongs #7: YES – Roundabout
オーバードライブを効かせるロック系のサウンドでは、ギブソンのフルアコが使われる例はかなり珍しいのですが、それでもスティーヴ・ハウ氏といえばフルアコのメロウなトーンでロックを弾きまくるイメージが定着しています。
Ken Yokoyama -Brand New Cadillac(OFFICIAL VIDEO)
現代のグレッチは、パンクスの定番ギターになりつつあります。サウンドはもちろん、デカい、ゴツい、というグレッチの個性がこうしたジャンルに受け入れられているようです。
フルアコは基本的に高級感と、どっしりとした風格があります。ビシっとスーツを着てフルアコを構えるギタリストの姿は、一幅の絵のようですらあります。また大きなボディに由来するふくよかなトーンは「エアー感」があると表現され、スウィートで艶やかです。同じエレキギターでも、ストラトやレスポールのようなソリッドギターではなかなか出せない「くつろぎ」や「安らぎ」のある、味わい深い音色を持っています。
フルアコは名前に「アコ」が付いていますが、セミアコ同様にれっきとしたエレキギターです。ではエレアコと何が違うのでしょうか。違いを知るには実際に触ってみるのが一番ですが、ここでちょっと「アコ」のつくギターの呼称をチェックしてみましょう。
こちらはマグネット(磁石)を使用したピックアップをボディトップにマウントし、弦の音を拾います。電気回路の影響を大きく受けたエレキギター独特のサウンドになりますが、ボディの空洞により甘さと空気感がトーンに付加されます。
エレアコではピエゾ(圧力素子)を使用したピックアップが楽器内部に埋め込まれます。スピーカーからの音は回路の影響を受けますが、できるだけ楽器そのままの音を出そうとします。
ソリッドギター/フルアコ/セミアコをギター博士が比較してみた!
日本国内では一般的に、
というようにボディの内部構造で呼び方を変えています。よって一見セミアコに見えそうなエピフォンカジノでも、ボディ内部が空洞なのでフルアコという解釈です。
いっぽう世界的にはフルアコと呼ばれることはなく(フルにアコースティックなら、それはアコギですよね)、ざっくり「アーチトップギター」とくくっていますが、アコギとしても使用できるボディサイズがその条件のようです。よって内部が完全に空洞でも、「シンライン」の名で生産されたボディ厚を抑えたモデルや先述のカジノなどが「セミアコースティック・ギター」と呼ばれているようです。またES-175などボディ厚がありながらボディが全面合板のギターも、セミアコと呼ばれています。
出典:Archtop guitar From Wikipedia, the free encyclopedia
フルアコの歴史は、ヴァイオリンのスタイルをベースにしたアーチトップのアコースティックギター(=ピックギター)を作っていたギブソンが、電気的に音量を増大させるべく楽器にマイクを付けたことに始まります。鉄弦のアコースティックギターは
の二つに大別されますが、ジャズのアンサンブルにアーチトップのサウンドがマッチするというのが当時の考え方だったようです。しかしアコースティックギターではリズムプレイはできこそすれ、音量に限度がありリードプレイ(ソロやメロディ弾き)には不向きでした。ギターを大音量化してリードプレイができるようにしたい、というのはギタリストの積年の夢だったのですが、アコースティックのアプローチではどうしても超えられない壁があり、電気的に音を増幅する試みが重ねられました。
フロントにシングルコイルを1基マウントしたフルアコ第一号「ES-150」は1936年にデビューします。このとき初めてギターはジャズバンドでリードが取れるようになり、伴奏楽器という脇役から脱却することができました。ES-150は「ジャズギターの開祖」と言われるチャーリー・クリスチャン(Charlie Christian。1916-1942)氏の愛用で有名になり、「チャーリー・クリスチャンモデル」と呼ばれます。「ES」は「エレクトリック・スパニッシュ(横に構えて弾く)」の略です。
1940年代後半になると、ハイポジションでの演奏性を向上させるため、カッタウェイのついたモデルが、またリアピックアップが付いてトーンのバリエーションが増えたものが登場します。名機ES-175の登場は1949年で、ジョー・パス氏(Joe pass。1929-1994)を始めとする多くのジャズプレイヤーに今なお愛用されています。
1951年には「最も代表的なフルアコ」といわれる「L-5 CES」、最高グレードの「Super 400 CES」がリリースされます。これらはもともと1930年代からアコギとして生産されてきましたが、このとき初めて電化し、ウェス・モンゴメリー氏(Wes Montgomery。1923-1968)らに愛用されました。「CES」は「カッタウェイのあるES」の略です。
これ以後グレッチがチェット・アトキンス氏(Chet Atkins。1924-2001)とのコラボレーションで「カントリージェントルマン」など独自のフルアコを発表、カントリーやロックンロールというジャンルで支持を伸ばしていく他、かねてよりピックギターを製作していたディ・アンジェリコがL-5をモデルとしたギターでエレクトリックの分野に参戦するなど、多くのフルアコが輩出していきました。
これ以後ボディの幅や厚み、弦長などに変更を加えたモデルが登場しますが、現在手に入るフルアコの多くがこの時代のスタイルをベースにしていることから、フルアコは1950年代にほぼ完成したと見られています。
ではここで、フルアコのざっくりとした特徴をチェックしてみましょう。いろいろな特徴を心得ておくと、お気に入りの一本を選び出す判断基準ができてきます。
フルアコは、「ヴァイオリン→ピックギター→フルアコ」という順で進化してきました。フルアコ定番の木材構成が
というようにヴァイオリンと同じなのは、その名残です。「定番ど真ん中で間違いのないフルアコ」を探すなら、この木材構成が必須条件となります。
フルアコのボディは普通のアコースティックギターのように板を貼り合わせて作り、内側には補強や振動伝達を目的とした「ブレーシング」が張り付けられます。セミアコで見られるブロック状の内部構造(センターブロック)はありません。
ボディトップとバックは「単板削り出し」が良いとされ、サイドまで単板のものは「総単板」と言って重宝されます。しかし鳴りの良さが逆に仇となり、音量を上げすぎたり歪ませたりするとハウリングに悩まされることがあります。いっぽうボディ材の一部や全てに「合板(ラミネート、べニア)」を用いたものはハウリングをある程度予防でき、バンドアンサンブルに有利です。
「ボディの大きさ」は、サウンドだけでなく演奏性にも大きく影響します。特に「ボディ幅」は「ピッキングのしやすさ」を左右しますから、ギタリストがもっと重視するポイントです。それゆえ博士の「Sweet 16」のように、モデル名にボディ幅が入れられる例も多くあります。フルアコの世界では、
さっくりこのように考えておいて大丈夫です。アコギで言うなら、定番機「ドレッドノート」が16インチ近辺です。サウンド的には、ボディサイズが大きくなるにつれ生鳴りが豊かになり、出音の丸さや深さを作ります。標準的な「大型」はボディ幅17インチで、18インチとなるとかなりのでかさです。
Heritage Sweet 16ではフロント1基のみのピックアップとなっている
フロントピックアップのみ、若しくはフロント&リアの2基が搭載されるのが基本的なスタイルです。搭載されるのはハムバッカーもしくはP-90タイプ(ドッグイヤー)が普通です。リアピックアップの鋭いサウンドはブルーズ/ロックンロールやソウル/ファンクには良好なトーンで、グレッチなどでは必須になっています。しかしこうした音を使用しないジャズプレイヤーは、フロントのみのモデルを選ぶことも多いようです。またフロントのみのモデルはボディに載せる電気系パーツが少なく済むので、そのぶんボディの振動を大事にできるというメリットがあります。
可能な限りボディの振動を大事にしたい、という考えで考案されたのが、ディ・アンジェリコのギターに代表される「フローティング(浮いている)・ピックアップ」です。これはピックアップ本体をネックの端に固定することでボディから浮かし、振動を妨げないようにする設計になっています。ヴォリューム/トーンもピックガードにマウントすることで、ボディ鳴りを可能な限り保持しています。
以上、フルアコには
という3種類が使われますが、このうち「標準的なハムバッカー」が圧倒的な多数派です。これはサウンドだけでなく使い勝手にも起因します。ドッグイヤーP-90はボディトップに直接、フローティング・ピックアップはネックエンドにネジ止めしてしまうため、ポールピースの高さ調節はできてもピックアップ本体の高さを調節することができないのです。特に二つ以上のピックアップを使用する場合、ハムバッカーでなければフロント/リアの音量バランスを整えるのは至難です。
ジャズ志向のフルアコに欠かせないのが「フラットワウンド弦(フラット弦)」です。1、2弦はプレーン(裸)弦ですが、3弦以降は文字通り平ら(フラット)な線を巻いて(ワウンド)おり、つるつるで滑らかな触り心地になり、フィンガリングノイズ(「キュッ」というやつです)がほとんど出ません。これによりフィンガリングが滑らかになるとともに、パンチが適度に抑えられた甘いジャズトーンが得られるようになります。一般的なゲージ(太さ)は普通のアコギ弦とほぼ同じで太いため、フラットワウンド弦でチョーキングをすることはほとんどありません。そのためブリッジも伝統的なスタイルを維持しており、弦の圧力のみで安定させています。
いっぽうロックンロール/ブルーズなどを志向するプレイヤーはラウンドワウンド弦(ラウンド弦)」を使用します。これは一般的なギター弦のスタイルで、巻弦には円形の線が巻かれます。こちらはフィンガリングノイズが鳴りやすい代わりにアタックが鋭く立ち、歪みも良好です。ジャンル上チョーキングを多用しますが、伝統的なスタイルのブリッジではチョーキングの勢いで位置が動いてしまうことがあります。これを防ぐために、エピフォン・カジノなどではボディトップにネジで固定するチューン・O・マチックブリッジが採用されるほか、伝統的なルックスを維持したいグレッチでは移動防止用の突起を設けています。
「1950年代に完成した」と言われるフルアコの定番機種は、工法や材料などの進歩こそあれ、今でもほぼそのままの姿で愛用されます。ソリッドギターのようにヴィンテージ系/モダン系といったカテゴリーもありません。まずは半世紀以上を経てなお愛される定番機種をチェックしていきましょう。
フルアコの売れ筋を…
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