As I Lay Dying ギタリスト兼 Fishman Fluence ブランドマネージャー:Ken Susi インタビュー

[記事公開日]2024/2/4 [最終更新日]2024/3/8
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

Ken Susi

Ken Susiさんは、ロックバンド「Unearth」創立メンバーとして長らくご活躍したのち、現在ではロックバンド「As I Lay Dying」に所属する、特にメタルコアの分野で活躍するギタリストです。

またアーティストとしての活動と並行して、Fishman Fluence ピックアップのブランドマネージャーを務めるビジネスマンでもあります。Fluenceピックアップは、音色を切り替えられる革新的な構造と音の良さ、そして強靭なノイズ対策が持ち味で、特にメタル系ギタリストに厚く支持されています。

このたび当サイトは、このKen Susiさんにインタビューする機会に恵まれました。ヨーロッパツアーを控えるお忙しい中でしたが、Susiさんはご自身についてはもちろん、Fluenceピックアップについても興味深いご回答を届けてくださいました。プロミュージシャンがどんな音作りをしているのか、アーティストとしての活動とビジネスマンとしての業務をどのように両立させているのか、またFishman「Fluence」ピックアップがどんなものなのか、ぜひチェックしてください!


Fluence Modern Humbuckers | Deep Dive
Ken Susi(ケン・スーシー):As I Lay Dying所属ギタリスト兼Fishman「Fluence」ブランドマネージャー
音楽が盛んなマサチューセッツ州に生まれ育ち、少年時代からバンドで精進を重ねた。いろいろなバンドを経て立ち上げたUnearth(アンアース)在籍中には7枚のアルバムをリリースし、リズムギターとソングライターとして名を上げ、来日も何度か果たしている。ツアーをサポートしたAs I Lay Dying(アズ・アイ・レイ・ダイイング)には、2023年に正式加入。Fishmanでは、アーティストとのインタビューや製品紹介などの動画に多数出演している。

「Fluenceブランドマネージャー」とプロのバンド、どう両立させる?

──Fluenceのブランドマネージャーとは、どんなお仕事なのでしょうか。製品PR動画やライブ配信など情報発信のほか、市場調査やマーケティング、製品企画、アーティストリレーションも含まれますか?また、このお仕事にはどんな事が重要ですか?

Ken Susiさん(以下、Ken):ブランドマネージャーは、基本的にはプロダクトの発案からリリースまでを担当します。仕事内容はダイナミックと表現できるほどさまざまで、計画立案から文書作成、開発、市場調査、マーケティングなどいろいろなことをしています。Fishman社には優秀な人材が多く、チームは団結しています。エンジニアはみな一流で、マーケティング部門も非常に有能です。彼らの力を借りることができるおかげで、私は着任当初からずっとストレスなく仕事ができます。

また私は、FluenceのA&R(Artists and Repertoire:アーティストのスカウトや会社との橋渡し)の責任者でもあります。フィッシュマン入社前の25年間、音楽を通して築いた人脈のおかげで、こちらは非常にうまくいっています。

──「As I Lay Dying」は、3月からEUでのツアーが予定されていますね。そのための準備やバンドのリハーサルなど、大変お忙しいと思います。これに加えてブランドマネージャーの業務もこなさなければなりませんが、二つの業務はどのようにスケジュール調整していますか?


As I Lay Dying – TOUR RECAP: Europe Summer 2023

Ken:仕事をこなすのと同時にバンドとのバランスをとること、この二つを重要視するのが秘訣だと思っています。
私はいつも、As I Lay Dyingツアーのセットリストを最初から最後まで、クリックトラックに合わせて練習しています。長時間ギターを弾いている間に、業務の優先事項を考えることができるようになります。この習慣によって私はFishmanで働く能力を獲得すると同時に、ツアーに出る準備を十分に整えることができるんです。バンドメンバー全員がそれぞれの練習に取り組んでいるので、ツアーに出るのにバンドのリハーサルは2日間で十分です。

ツアー中はフィッシュマンの通常業務時間を守りながら、リモートで勤務します。ラリー(Fishman社長、ラリー・フィッシュマン)と上層部は、リモートで働きながらプロのミュージシャンでいることの重要性を理解してくれているんです

ギターを始めたきっかけは?

──ギタープレイヤーとしてのKenさんにも質問させてください。何がきっかけでギターを始めましたか?影響を受けたアーティストやバンドは誰でしょうか?メタルコアとの出会いは、UMass Boston(マサチューセッツ大学ボストン校。Susiさんの地元校)に入学したことと関係がありますか?

Ken:5歳年上の兄は、素晴らしいギタリストでした。彼を見て学ぶことがたくさんあったし、彼が聴いていたヘアメタルのギタリストに刺激を受けました。ヘビーメタルに本格的に興味を持ち始めたのは、9歳ころからです。アイアンメイデン、メタリカ、メガデス、パンテラ、そして地元のメタル/ハードコアバンドらの音楽的影響が、私の作曲の礎になりました。

マサチューセッツ州ボストンは音楽をやるには素晴らしい街で、メタルやハードコアの素晴らしい才能が集まりました。90年代中ごろ、メタルコアに傾倒するバンドはあまりいませんでしたが、Cave-Inというバンドが私のお気に入りでした。彼らは私と同年代で、彼らのライブを観にメリマック・バレーのVFWホールへ何度も行ったものです。

私がかつて所属していたUnearthは、アイアンメイデンのような本物のメタルにNYCスタイルのハードコアを融合させた最初のバンドでした。1999年、楽曲「One Step Away」のブレイクダウンにスウィープアルペジオを導入しましたが、そのようなスタイルはその時までになかったものだと思います。

音楽が激動する時代、私はそのような素晴らしいシーンからデビューする幸運に恵まれました。最初のレコード契約を結ぶ直前、私はUMassをビジネス/ファイナンスの学位で卒業しました。地元にいたことが私の成功の鍵でした。もしよその大学に行っていたら、Unearthというバンドを始めることもプロのミュージシャンになることもなかったと思います。


Unearth “One Step Away”
ヘヴィミュージックでの「ブレイクダウン」は、楽曲の中で極端にBPMを落とす場面のこと。Susiさんのおっしゃるブレイクダウンでのスウィープは、2分24秒あたりから。しかし背面弾きでスウィープとは、なんと豪快な。

サウンドメイキングの秘訣は?

──メタル・ギタリストとして理想とするトーンを、どのように作り上げていますか?Susiさんはこれまでいろいろなギターアンプをお使いですが、いつも足元にはMaxonのオーバードライブがあるようです。アンプで基本の音を作り、リードプレイの時にMaxonをON、という使い方でしょうか。

Ken:私はもうトーンを追い求める人間(tone chaser)ではありませんが、こう言えますね。私の音は弾き方によって作られ、それに比べればアンプやエフェクターはあくまでも基本にすぎません。

とはいえ機材に関して私は、音的にスポンジのような側面を持つモダンなアンプが好きです。オリジナル5150やEVH 5150III、Soldano SLO、Rhodes、REVVなどのアンプです。そのようなアンプに対してコンプが少しかかる感じにMaxon OD808を追加すると、その音が生まれます。エフェクトはほとんど使いませんが、リードをブーストするためにループ経由でディレイやコーラスをかけるのは好きです。

設定に関しては、どのアンプでもつまみを12時から始め、良い音になるまで動かします。また、ゲインを下げてピッキングのダイナミクスを活かすのも好きです。

ライブへの取り組み

──最も充実感が得られるのはどんな時ですか?また、キャリアの中で特に印象に残っているライブパフォーマンスやエピソードはありますか?何度か来日していらっしゃいますが、日本の音楽シーンやメタルシーンをどのように見ていますか?

Ken:私は数々の記念碑的なショーに恵まれてきました。どれも素晴らしいものでしたから、特に印象に残っているものを挙げることはできません。ただ、大小にかかわらず、エネルギーのあるショーには刺激されます。会場のサイズは気にしませんが、ショーがエキサイティングであれば、私は全力で取り組みます。

日本には何度も行きました。日本が大好きです!人々、ショー、文化、すべてが素晴らしいと思います。アンダーグラウンドのシーンについてはあまり詳しくありませんが、日本には多くの才能があることを知っています。今、私はOtoboke Beaverの大ファンです。彼女らのパンクロックなところが好きです。


おとぼけビ~バ~Otoboke Beaver – Don’t Light My Fire ハートに火をつけたならばちゃんと消して帰って [Official Music Video]
立命館大学のサークル「ロックコミューン」で結成。イギリスやアメリカなど海外でのライブも行い、活動の幅を拡げている。

Fishman「Fluence」について

──あなたはこれまでのキャリアで、優秀なピックアップをいろいろ使ってきたことと思います。今の自分が信頼するピックアップとして、Fishman「Fluence」を採用する決め手は何でしょうか。Fishman「Fluence」はこれまでのピックアップと比べて、どんなところが優れていると感じていますか?

Ken:かつてはEMG 81/85を使っていましたし、Seymour Duncanとも付き合いがありました。どれも素晴らしいピックアップですが、Fluenceのセットを弾いた瞬間、それらのピックアップは過去のものとなってしまいました。80年前の原始的なテクノロジーに頼っているそれらの製品より、Fluenceははるかに多才でダイナミックで、位相整合が取れ、ノイズがなく、とにかく優れています。

ラリーとピックアップをA/B比較したときには、その違いに笑えるほどでした。この時のセッションで、私は彼が特別以上の存在で、彼のもとであれば私はFluenceを世に広めることができると確信しました。数日後、私は彼に電話して、歴史の一部になりたい、彼のために無償で働きたいと伝えました。それ以来、私たちは素晴らしい旅を続けてきました。


KenSusi Signature Model LTD「KS M-6 EVERTUNE」
シグネイチャーモデルのピックアップは、Fishman 「Fluence Modern Humbucker Alnico/Ceramic」。

音の違いはどのようにして作るのか?

──Fluenceピックアップはどのモデルも、各Voiceに対してピーク周波数が明示されています。これは他に見たことのない独自の表示であると同時に、数値でサウンドのイメージを伝える有効な手段だと思います。このピーク周波数は、各モデルの企画段階で設定し、開発を通して達成させたものでしょうか。それとも、良い音を模索した結果として到着したものでしょうか。

Ken:これに回答するにはピーク周波数以上のいろいろな解説が必要ですが、秘密を開示するわけにもいきません。私が言えるのは、「世界中でこれ以上優れた音はないと開発陣全員が同意したとき、トーンは完成する」ということです。

ご存知の通り、「Fluence Core」の非常に洗練され個体差もない48層の精密コイルという構造により、Fishmanはピックアップを電子的に巻き上げることができます。磁石の素材と配置に依存するところもありますが、これにより私たちはピックアップのトーンをピンポイントで調整することができます。ひとつのFluenceピックアップには最大で3つのVoiceがあるため、私たちは長い時間をかけて、周波数を移動したりEQを追加/削除したりしてサウンドを調整しています。非常に興味深く、高度に洗練されたプロセスです。

「Fluence Modern Humbucker」について

Fluence Modern Humbucker
Fishman「Fluence Modern Humbucker(左)」、「Fluence Open Core Modern Humbucker(右)」

──Modern Humbuckerはルックス、サウンド共に「Modern」を感じさせる、素晴らしいピックアップだと思います。特にサウンドをモダンに感じさせる決め手は、どこにあるでしょうか。ピーク周波数だけでは説明しきれない、きらめくような高音域やタイトなキレの良さを感じています。

Ken:80年間、ピックアップという分野には変化が起きませんでした。Fluenceはこのピックアップ開発の未来に対し、新鮮な外観と新しいサウンドを提供しています。また私たちには「誰が何を使ってワイヤリングした新しいピックアップだ」なんて不誠実なマーケティングを展開する必要がなく、自由に何でも作ることができます。

Fluence Moderns とOpen Core Modernsには、ルックスとサウンドの両方にモダンな美学があります。これほどの深みとクリアさは他に誰も提供できませんし、3分割された内部構造で3つのサウンドが得られるということも忘れてはなりません。ユーザーは何台もギターを持ち出すことなく、音色を切り替えられるようになります。

「Fluence Classic Humbucker」について

Fluence Classic Humbucker
Fishman「Fluence Classic 6-String Humbucker Pickups」

──Classic Humbuckerはトラッドなスタイルのギターに装着しても違和感がなく、保守的なギタリストにも訴求できる魅力的な製品ですね。サウンドには何かのお手本があったのでしょうか。それともコンセプトから具現化させたのでしょうか。

Ken:Voice 1はまさに、人々が何年も再現できなかったピックアップです。全てのアーティストが求めた、ターン数の多いカバードのオリジナルPAFを目指しました。歴史上、人々はオリジナルPAFにターン数を追加した音を求めてきました。しかし実際に追加すると、そのキャラクターまで大幅に変化させてしまいます。そんな中でフィッシュマンはその憧れのサウンドを手に入れ、ゲインだけを増加させることができました。ピックアップ製造において、本当に革命的なことです。

Voice 2は特定のピックアップを基にしているわけではなく、私たちが最高のヴィンテージ・ホットロッドサウンドだと考えたものです。多くのプレイヤーやギターメーカーが、クラシックセットのVoice 2に魅了されました。

「Fluence Single Width 6-String Pickup Set for Strat」について

Fluence Pickup for Strat
Fishman「Fluence Single Width 6-String Pickup Set for Strat」

──個人的に、ストラト用のセットが最も素晴らしい製品だと感じています。Voice 1 / Voice 2がヴィンテージ / モダンでもなく、アクティブ / パッシブでもない、ヴィンテージ / ホットというセレクトが最高にクールです。

Ken:それには完全に同意します。もしストラトプレイヤーであれば、このセットはあなたを驚かせるでしょう。シルキーなVoice 1、ホットロッドされたVoice 2は完全に調整されています。アンプを10にしてギターを近づけても60サイクルのハムが発生しない、という単純な事実だけでも驚くべきです。

私のお気に入りの機能の一つはHF-tiltです。Fluenceはバッファーされているので、30フィートのケーブルを使用したとしても高域を損ないません。しかし高域の減衰した昔ながらのサウンドへ、スイッチで移行できます。また、演奏中にボリュームノブを戻しても、他の銅巻きピックアップとは違ってトーンの喪失がありません。

──ありがとうございました!!


以上、As I Lay Dying所属ギタリスト兼Fishman「Fluence」ブランドマネージャー、Ken Susiさんのインタビューをお届けしました。Fishman「Fluence」の記事をきっかけに頂いたご縁だったのですが、Fluenceのこと以外の質問にも詳しくお答えいただきました。Susiさんの活躍するAs I Dying、そしてSusiさんが自信をもってお勧めするFishman「Fluence」ピックアップ、ぜひチェックしてみてください。

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