エレキギターの総合情報サイト
弦の振動を受け止め、それをボディまで伝達させるのがネックの機能です。それゆえ「ネックで7割決まる!」と豪語する人もいるくらい、エレキギターのネックは重視されます。このページでは「ネックの材質の種類と特徴」「ネックの形状」「ジョイント方法」など、さまざまなことについて見ていきましょう。
エレキギターに使われるネック材として使われるのは主にメイプルとマホガニーで、ほとんどのギターがこのどちらかを採用しています。
メイプルは強度に優れ、ちょっとやそっとでは折れません。またアタックとサスティンに優れ、「エレキギターのネック材に必要な条件を全て満たしている」とまで言われます。フェンダーが採用している材であり、このほか多くのブランドでもデタッチャブル(ネジ止め)ネックで盛んに使われます。
植樹が進んでおり安定的に入手できる木材ですが、杢(もく)や玉目の入った高級材はどんどん入手困難になっています。そのかわり近年では、熱処理によって熟成された「ローステッド・メイプル」が普及しつつあります。もともと硬いメイプルの硬さがもう一段押し上げられ、高い安定性と明るいサウンドを持つ「新たなネック材」として注目されています。
マホガニーはギブソンが伝統的に採用しており、セットネックモデルのギターで使用される事の多い木材です。かつては潤沢に入手できましたが、今では希少な高級木材という扱いです。アタック感が丸いのでシングルコイルよりもハムバッカーやP-90向けで、中域が豊かで愛好者の多い材ですが、強度はメイプルに劣り、倒せばほぼ確実に折れます。
幻のキューバ産、高級なホンジュラス産、標準的なアフリカ産、と産地によってグレードが分かれます。しかし入手が困難になっていく現状から、サペリやナトーなど代替材、または法律上マホガニーと呼んでも問題ない木材も使用されます。
「ウェンジ」や「パンガパンガ」などエキゾチックな木材が使用されることもありますが、これらの木材は総じて、個性的な質感と超絶な硬さを持っています。普段なら指板に使用するローズウッドをネックに使ってしまうこともありますが、これはかなりの高級機に限られます。このほかアルミやグラファイトなど、木材以外の材料が使われることもあります。
ネック形状(ネックグリップ、ネックシェイプ)は、ギターの弾きやすさにおいて重要なポイントです。「Cシェイプ」が一般的と言いながらも、時代の流行やブランドごとの基準があり、それぞれにちょっとずつ違いがあります。多くのアーティストモデルで、ご自身こだわりのネック形状も多く見られます。
カマボコ状の最もスタンダードな万能グリップですが、ブランド、モデルや年式ごとに細かな違いがあります。デューセンバーグではブランドの頭文字から「Dシェイプ」と呼ばれます。また厚みのあるグリップには「Uシェイプ」と名付けられる事もあります。
「三角ネック」とも呼ばれる、ネック裏の両サイドの肉を削り落として三角系に近い断面に仕上げたグリップです。親指が出しやすく握り込みやすい事から、つまむ感じではなく握る感じの弾き方に特に良好です。チョーキングにも良好で、エリック・クラプトン氏が愛用している事でも知られています。
特にキャラの立ったグリップを見ていきましょう。こうした特徴的なネックは、そのギターで想定されるプレイスタイルに合わせて設計されています。そのため、弾き手によって好き嫌いが分かれることがあります。
左:サラサラのサテン仕上げ、右:ツヤツヤのグロス仕上げ
塗装はふつう、どんな塗料を使うかで別れます。しかしネック裏については、その仕上げ法こそが重要です。ツヤツヤの仕上げに高級感を覚えるのが従来の感覚ですが、昨今ではツヤを抑えて鈍く光る仕上げにも高級感が認められています。一般に、ツヤがあればあるほどグリップ感が得られ、逆の場合では滑りが良くなります。
ネックを語る上で、ジョイント法はひじょうに重要なテーマです。ハイポジションの演奏性に大きく関わるほか、振動の伝わり方に違いが出ることから、サウンドにも大きく影響します。
フェンダー社が楽器製造に革命を起こしたジョイント法で、「デタッチャブル(detachable)」は「取り外し可能」、「ボルトオン(bolt on)」は「ネジ留め」を意味します。着脱が可能なので、万が一ネックが寿命を迎えても、そのネックごと交換してしまうこともできます。
ジョイント部分に金属が埋まっていることから、サウンド面では特にアタックが立つ傾向にあります。伝統的な「プレートジョイント」のほか、プレートに頼らない「ブッシュジョイント」も普及しています。プレートジョイントは、プレートの厚さや材料でサウンドを操作できます。ブッシュジョイントは、ヒール部の形状に自由が利きます。また3つのジョイント法のうち唯一、ネックの根元側にトラスロッドを開口できる構造でもあります。
「セットイン」とも呼ばれます。ボディとネックをニカワなどで接着する伝統的なジョイント法で、フェンダーが出現する以前の弦楽器は、全てこの方式でした。接着剤を介しているとはいえ、木材が一体化していることから振動の伝達効率は良く、程よいアタックとサスティンが得られます。ハードルはかなり高めですが、最悪の場合はネック交換も可能です。
レスポールの工法に代表される、ネック幅より細い「ほぞ」を使用するのが一般的です。ネックの幅のままボディに挿入する「ボックスジョイント」も、レスポールJr.やスペシャル、またPRSやゼマイティスなどで見られます。
Firebird V 2015
ネックがボディを貫通(through)している設計です。ネックの先端からボディの末端までが完全に一体化しており、振動伝達を妨げるものがなにもありません。、ジョイント部分がスッキリしておりハイポジションでの演奏性に優れるほか、サスティンが豊かに響きます。多くのブランドで採用例がありますが、この構造ではB.C.リッチとジャクソンが特に有名です。
スルーネックはネック交換が不可能なので、3Pや5P、またはそれ以上という「多層ネック構造」、あるいはカーボンやチタンなどの補強材を埋設するなど、万が一にもねじれてしまわないような工夫が施されるのが普通です。
木製の楽器ではなかなか困難な設計ですが、かつてのスタインバーガーのように特殊素材でネックとボディを一体成形しているギターも、あるにはあります。
「トラスロッド」は、ネジを回すことでネックの反りを調節する重要な部品です。ネックの内部に埋まっているため直に見る機会は少ないですが、ギターと長く付き合う上で、ある程度は心得ておいたほうが良いポイントです。
第一にトラスロッドには、順ぞり状態を修正するための「シングルアクション(片効き)」、順ぞり/逆ぞりの両方を修正できる「ダブルアクション(両効き)」の2種類があります。シングルアクションで逆ぞりが発生した時には、ロッドをやや緩め、弦の張力に期待します。部品の性能ではダブルアクションが優位ですが、こちらは鉄芯を2本使用するので、重くなるのが注意点です。
なお、木材の個体差などにより、ロッドを回した影響がやや遅れて、まれに1週間ほどしてから、反映されるネックもあります。ロッド調整を施す際には、回した分だけ素直に動くネックなのかどうか、慎重に見極めていきましょう。
ヘッド側から調整するか、根元側から調整するか、トラスロッドの設置法も二つに分かれます。セットネック、スルーネックのギターは総て、ヘッド側から調整します。根元側に比べ、自分でも調整しやすいのがメリットです。ロッドの開口部を覆う「ロッドカバー」が、デザイン上のアクセントにもなります。
ボルトオンジョイントのギターは、各モデルのコンセプトによりヘッド側からのものと根元側からのものとに分かれます。根元側から調整する場合、いったんネックを取り外す必要があります。ここに「ホイールナット」が装着されれば、ネックを付けたままロッド調整が可能です。
根元側から調整する設計はなかなかに厄介ですが、鉄芯がネックの末端にまで達している、ネックの最も細い部分に穴を貫通させない、という剛性上のメリットがあります。
通常のトラスロッドは鉄製ですが、軽量かつ高額なチタン製のものもあります。またミリ規格/インチ規格があり、鉄芯自体の太さに違いがあります。このほか「鳴き止め」のためにチューブを被せることもあり、メーカーやモデルごとに様々な違いがあります。
の2点で持ち主の主観に左右されやすいところなので、「コレこそが究極の良ネック!」と断定することはできませんが、この道のプロフェッショナルのお言葉が、大いに参考になることでしょう。
「弦の張力に負けない剛性を持つこと」はギターのネックに求められる最低限の品質で、ごく稀にある不運な「ハズレ」ネックを除き、全てのネックがこれを満たしています。保管の際に弦を緩める必要も基本的にはなく、弦張力に負けて過度に順ぞりしてしまうようなネックは、残念ながら不良品です。
とはいえ木材の宿命として、環境の変化を受けてもシビアな調整を維持できるほどの強度までは期待できません。季節の変化や長年の使用により、ネックのコンディションは変化します。調整が崩れた時にきちんと直すことができるのが、良いネックです。
メイプルの板目(左)と柾目(右)。ヴィンテージ・スタイルなら板目、モダン・スタイルなら柾目、とコンセプトによって使い分けるメーカーもある。
追柾目(おいまさめ)は、木目がナナメに走る。
丸太から切り出す方法により、木材は「板目」と「柾目(まさめ)」に大別されます。木材の平面に対してヨコに木目が走るのが板目で、グレードの高いモデルでは、タケノコのように見える木目の頂点が中央に来るように木取り(きどり)します。タテに走るのが柾目で、木目が整然と並んでいるのが最も良いと考えられています。
メイプルでは板目も柾目も使用されますが、マホガニーでは柾目のみ使用されます。メイプルの板目は柾目と比べて柔らかく、「ネック鳴り」がします。いっぽうメイプルの柾目は硬くて弦振動に動じにくく、モダン系ハイエンドモデルに多く採用されます。
ネック本体を1本の木材から削り出すのが「ワンピース・ネック」です。伝統に根付いた工法ですが、木材のロスが多く、また削ってから生じる狂いを修正しながらの加工(狂い出し)が求められます。製造のスケジュールが木材の都合に左右されることから、低価格なモデルでは狂いを出し尽くせないこともあります。
これに対し、3枚とか5枚とか、木材を貼り合わせて作るネックを総称して「多層ネック」と言います。貼り合わせることで木材の狂いを相殺させられるので、狂い出しの工程をいくらか軽減できます。貼り合わせる枚数が多いほど強度が稼げると言われ、木材のロスを軽減することもできます。
いずれの場合でも、ネックの強度をさらに上げるべく、チタンやカーボンの補強を埋め込むことがあります。
ネックでは、「木材が安定する」ことを第一に据えています。新品の出荷時からネックが安定している、季節の変わり目である程度は動いても一般的な手入れで十分、そんな安定性を目指しています。
安定感のあるネックというと、何層も貼り合せる多層ネック、またカーボンやチタンのサポートロッドを思い出す人もいるでしょう。しかし、いろいろやってデータを集めた結果、時間をかけてちょっとずつ木材の狂いを出していく「狂い出し」をちゃんと実施するのが、一番効果的でした。狂いを出し切ったワンピースネックのほうが、そんじょそこらの多層ネックより強いんです。
―Altero Custom Guitars代表 安田圭佑氏
《オーダーで作るタフなギター》Altero Custom Guitars訪問インタビュー
個体差も含めてネック材を何にするかで、楽器のトーンに違いができます。極めて簡潔な言い方ですが、ネックの硬度とトーンの硬さは比例します。硬いネックからは硬い音、柔らかいネックからは柔らかい音がします。目がぎっしり詰まった頑丈な木材であればあるほど、トーンは硬く鋭く、またくっきりとした印象になっていきます。また、このネックの個性とボディや金属パーツとの関係も、重要になってきます。
タイトな鳴りのギターを作ろうと思ったら、ネックもカチンカチンに詰まったメイプルを選んで、ボディもそれに合わせて詰まったもの、トップもメイプルにして、パーツも選定すれば必ずそうなります。
逆にふっくらした音のギターを作ろうと思ったら、ネックはマホガニーにして、指板もそんなに詰まっていないローズウッドにして、ボディにアルダーやバスウッドを使って、ゆるめで考えると必ずおおらかな音色を持った楽器になります。
– T’s Guitars 社長:高橋謙次
《一人ひとりに届けたい》T’s Guitars訪問インタビュー
エレキギターではネックがまず音を作り、ボディはその受け皿だと思っています。ボディ&ネックがマホガニーだと、アタック感はそれほど立たないけれど、全体が弦振動を受けて振動します。SGやフライングVがその代表ですが、弦振動がそれだけ木部に逃げるから、ドライブ感が生まれます。ドライブ感は本体のところでクリアに出ないところから生じると考えられていて、前に飛ばすのをやや引っ込めたぶん、良く歪む音になります。
ボディが硬ければネックにプラスアルファとなるし、金属パーツの硬いイメージに対しては柔らかいボディを当てて、打ち消しあうことができます。金属製のごつくて重いFRTと、軽くて柔らかいバスウッドの組み合わせには、そういう意味があるんです。
木材の特性にはいろいろあり、小さな要素がたくさん積み上がってギターの個性になります。弊社はいろいろなコンセプトを打ち立て、木材やパーツや設計などのベストな組み合わせを模索しています。
– Kino FACTORY 代表:木下勇
《今までにないものを作りたい》Kino FACTORY訪問インタビュー
ネックの「扱いやすさ、弾きやすさ」は、ネック形状と手触り(ネック塗装)、そしてヒール(ジョイント部分)の形状で評価されます。「だいたいこんな感じが一般的に弾きやすい」という状態はありますが、これについては弾き手の好みが大いに反映されます。かつては古いレスポールの太いネックを細くする(ネックリシェイプ)という改造が流行しましたが、あまり細くしてしまうと今度はネックの強度が足りなくなってしまいます。細ければ弾きやすいかというと必ずではなく、人間工学的には「ある程度の厚みがあったほうが握りやすい」とされています。
リードギターを担当するなら、弾きやすいヒールの形状は重要な問題です。そのため斜めにカットしたり角を落としたりして、多くのブランドが出っ張りを押さえた弾きやすいヒールを工夫しています。このような加工がされていると「弾きやすい」と感じますが、ヒールは邪魔者ではないんです。
ネックを受け止めるのがヒールの役目ですが、ネックから伝わる振動をボディで受け止める役割も担っています。ストラトやレスポールのようなしっかりしたヒールだと、ボディは弦振動をしっかり受け止めます。ヒールの体積が不足するとボディへの振動伝達が不足しますから、張りのないサウンドになってしまいます。ヒールの形状は「弾きやすさ」と「音の良さ」とのバランスを考慮して設計されているのです。
(自社製品「FL」に対して)ヒールカットを施すと弾きやすくなりすが、削れば削るほど「低音の明瞭度を損なう」というデメリットがあります。それに対処するため、ヒール部分の厚みを増やし、また深くジョイントすることで、遜色ない明瞭な低音を実現しています。個人的にはレスポールより良いとまで思っています。
ギターの「音」を決めるのは、ピックアップではないんです。ピックアップの仕事は「弦振動を拾う」ことだけで、その「弦振動をどうするか」が最も重要です。
― フジゲン株式会社MI事業部 今福三郎氏
《職人の手は、速い》フジゲン大町工場訪問インタビュー
ずっと使ってきた愛着のあるギターの眠たくなったサウンドを、何とかシャキッと目覚めさせたい。トラスロッドを回し切ってしまった、だけどまだ使いたい。そんな悩みはネック交換で解消されるかもしれません。以下のリンク先ページは、依頼主の許可の元ネック交換の一部始終を密着した記事となります。ネック交換を少しでも検討している人は是非チェックしてみてください。
《愛機復活!!》Red Houseにネック交換を依頼してみた!
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