ディレイエフェクターとは?初心者のための使い方、設定方法、おすすめの一台

[記事公開日]2024/12/12 [最終更新日]2025/4/27
[編集者]神崎聡

やや遅れてギターの音が返ってくる「ディレイ」は、ポピュラーミュージックにおいては、レスポールの生みの親レス・ポール氏が初めて使用したと伝えられます。もともと「山びこ効果」によって音に広がりを持たせるために開発されましたが、人類のたゆまぬ研究によりさまざまな特殊効果が発明されました。今回はこのディレイに注目し、基礎的な知識や定番機種を見ていきましょう。


  1. ディレイの使い方
  2. ディレイには、「デジタル」と「アナログ」の2種類がある
  3. おすすめのディレイ・ペダル

ディレイの使い方


ディレイには、工夫次第でさまざまな使い道があります。「遅れてやってくるディレイ音が、今弾いているギターの音にハモる(2分近辺)」という技は、ブライアン・メイ氏(QUEEN所属)が有名です。「付点8分音符のディレ・イタイムでアルペジオを飛ばす(2分50秒近辺)」という技は、ジ・エッジ氏(U2所属)が世に広めました。

ディレイにはさまざまな使い方がありますが、基本的な使い方はだいたい以下の3つです。

  • ショート・ディレイ:短い間隔で鳴る。アルペジオで特に効果的。音符的に鳴らしたり、きわめて短い間隔に設定して疑似リヴァーブを作ったりもする。
  • ロング・ディレイ:長い間隔で鳴る。ギターソロなどリードプレイに効果的だが、包み込むようなアルペジオでも使える。曲のテンポに対してだいたい2拍3連や1拍3連に設定するのが良好とされる。
  • ダブラー:きわめて短い間隔で1回だけ鳴らすことで、2本のギターがユニゾンしているように聞こえさせる。設定次第でコーラスのように聞こえさせる技もあり、すべてのギタープレイに有効。

主なコントロールと働き

操作系についてはシンプルなものも複雑なものも、鬼のように複雑なものもあります。でもひとまず「タイム」、「フィードバック」、「レベル」の3つだけ把握しておけば、ディレイはだいたい設定できます。ディレイの基本的な操作を見ていきましょう。

タイム(Delay Time)

「タイム(ディレイ・タイム)」は、ディレイ音を遅らせる「時間的な長さ」です。短い間隔で返ってくるのが「ショート・ディレイ」、長い間隔で返ってくるのが「ロング・ディレイ」で、ツマミを回して感覚的に設定したり、数値を確認しながら設定したりします。多機能なモデルでは4分音符や付点8分音符のように、音符的な設定もできます。なお、ディレイ音を鳴らしている間にこのツマミをぐりぐり回すと、ギュワンギュワンと全てをぶっ壊す音が出ます。

フィードバック(Feedback)

フィードバック(リピートとも)は、ディレイの「返ってくる回数」を操作します。目いっぱい絞ったらディレイ音は1回、上げていくにつれて2回、3回、と増えていきます。モデルによっては、目いっぱい持ち上げることで無限のディレイを作ることができます。

レベル(Level)

レベルは「音量」を意味しますが、ディレイの音量には、ドライ(原音)とウェット(ディレイ音)の二つがあります。この二つをどうやって操作するのかはモデルによって違いますから、ディレイの使い勝手を考える時、ちょっとしたポイントになってきます。コンパクトエフェクターのレベル調整は、以下の2種類が主流です。

  • エフェクトレベル:原音はそのままでディレイ音だけ上下させるので、全体の音量は上がる。
  • ミックス/ブレンド:ドライとウェットの配分を決め、全体の音量は変化しない。絞り切るとドライのみ、目いっぱい上げるとディレイのみになる。

タップ(TAP)テンポ

フットスイッチを踏む間隔でタイムを設定できるのが「タップテンポ」機能です。一台で楽曲にあわせてさまざまなタイムのディレイを使うことができるほか、ベストなディレイタイムをリアルタイムで設定できます。

ディレイ・ペダルの接続順

シンプルにつなぐ場合、ディレイは「コンプレッサーや歪み、またコーラスなどモジュレーション系の後」、そして「リヴァーブの前」に接続するのが王道です。アンプで歪ませる場合には、エフェクトループを使いましょう。ボリュームペダルをディレイの前段に配置すると、二つの組み合わせでトリッキーな演奏ができます。

エフェクトループ ディレイペダルをアンプのセンド・リターン(エフェクトループ)端子に繋いだ様子

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エフェクターのつなぎ方・接続の順番について

ディレイには、「デジタル」と「アナログ」の2種類がある

ディレイは設計により「アナログ」と「デジタル」に大別でき、性能やサウンドに違いが出ます。

歴史的には、磁気テープを使ったテープエコー、BBDを使ったアナログ・ディレイ、DSPを採用したデジタル・ディレイの順に発明されました。道具としての利便性が圧倒的に優れていることから、1980年代以降はデジタルディレイが主流です。
現在ではどちらも気軽に選ぶことができますから、多機能で頼れる道具が欲しい人はデジタル・ディレイを、古い感じのかっこ良さが欲しい人はアナログ・ディレイを選びましょう。

アナログ・ディレイの特徴

アナログ・ディレイでは磁気テープなどの磁性体や「BBD(Bucket Brigade Device。直訳すると「バケツリレー素子」)」を使用します。劣化で高音域が削れたディレイ音は自然と暖かみを帯び、バンドアンサンブルに良く馴染みます。味わい深いサウンドが得られますが、タイムの数値を細かく設定することはできません。

かつて「エコーマシン」と呼ばれたアナログディレイは、磁性体が劣化したり信号が次々と電気回路を通過したりすることで音質が劣化してしまい、原音まで痩せてしまうことがありました。その打開策として、プリアンプ内蔵させた「エコープレックス」やローランド「RE-201」のような名機が生まれました。
ギターの音作りには「アナログこそ至高」という生き様もあり、エリック・ジョンソン氏は「エコープレックス」を、デビッド・ギルモア氏は「エコーレック」を愛用するなど、今なおヴィンテージのアナログ・ディレイを大事に使っているアーティストもいます。

Maestro「Echoplex」

マエストロ「エコープレックス」は、1959年に第一号機を発表した、プリアンプ付きテープエコーです。「オリジナル」と称される真空管プリアンプを採用した設計は、1960年代にはトランジスタを使用したソリッドステートに改められ、エリック・ジョンソン氏、ブライアン・メイ氏、エドワード・ヴァン・ヘイレン氏、アンディ・サマーズ氏ら、名だたるアーティストが愛用しました。現代ではデジタル技術でサウンドを再現した「EP103M Echoplex Delay」のほか、プリアンプ部のみ抽出した「EP101 ECHOPLEX」がリリースされています。

Binson「Echorec」

ビンソン「エコーレック」は、50年代半ばに発表されたエコーマシンです。テープではなく円盤を回転させることで、高い安定性を実現しました。ハンク・マーヴィン氏(シャドウズ所属)が長らく愛用したほか、初期ピンクフロイドにおいてはデビッド・ギルモア氏ら3人が愛用、サウンドメイキングの中核を務めました。

Roland「RE-201」

Roland RE-201 使い込まれてイイ感じに育った「RE-201」。プリアンプ内蔵でマイクをつなげることもできるため、本来はギター用ではなくPAとして開発されたようです。

ローランド「RE-201」は1974年から1990年まで生産された、日本製テープエコーの名機です。ダイヤルでディレイのパターンを選択できるほか、リヴァーブも備わっています。入力は3系統あり、ギター1本とボーカルマイク2本を挿すことができ、PAに似た性能を持っていました。
比較的新しい製品で、ブライアン・セッツアー氏をはじめ多くのアーティストが今でも現役で活用しています。現在では、TAPなど便利機能を追加した「RE-20」に、そのサウンドは受け継がれています。

関連記事:
《名機紹介》テープエコーの世界的な定番機種「Roland RE-201 Space Echo」

デジタル・ディレイの特徴

デジタル・ディレイでは「DSP(Digital Signal Processor)」チップを使用します。原音をそのまま繰り返すことができるほど音質の劣化を抑えられ、ノイズの少ないクリアな音質が得られます。モデルによっては各パラメータの設定を細かくセッティングする事が可能です。近年ではデジタルの技術でアナログ・ディレイのサウンドをシミュレートするものが登場しています。

多機能なモデルは、設定次第で何でもできます。しかし「あまりツマミやスイッチが多くても、それはそれで使いにくい」と感じる人のために、ツマミの少ないシンプルなモデルも多くリリースされています。またデジタル・ディレイは消費電力が大きいものが多く、電池駆動では使わない方が良いでしょう。

アナログを再現「アナログモデリングディレイ」

アナログモデリングディレイ

独特の減衰音や幽玄なサウンド、また数々の名演を支えた実績から、ヴィンテージ・アナログディレイのサウンドは今なお高く支持されています。しかし実物の入手不はほぼ可能と言っていいでしょう。運良く入手したとしても、そこから先の修理と調整に要求されるハードルは極めて高いのが現実です。

これに対し、アナログのモードを選択できるデジタルディレイや、アナログをデジタルで再現した「アナログモデリングディレイ」が多くリリースされています。本物のアナログサウンドが欲しいという人も、デジタルの多機能なところが嫌でなければぜひチェックしてみてください。

関連記事:
アナログ・モデリング(テープエコー)ディレイ特集 – Supernice!エフェクター

おすすめのディレイ・ペダル

探してみると、ディレイには予想以上のバリエーションがあるのがわかります。いったいどれを選べばいいんだ。そんなわけで、定番機種からこだわりのハイエンドモデルまで、注目すべきディレイをチェックしていきましょう。

画像 製品名 発売時期 電池駆動 回路 消費電流 特徴
BEHRINGER
VD400 Vintage Delay
2010年頃 アナログ 30mA 1960年代のサウンドを再現、コスパ抜群のアナログディレイ
Effects Bakery
French Bread Delay
2018年 x デジタル 35mA アナログライクな使い心地、暖かみのあるディレイ
TC Electronic
The Prophet Digital Delay
2016年 デジタル 100mA 高いコストパフォーマンスを実現、ディレイ入門機に最適
BOSS
DD-8 Digital Delay
2019年 デジタル 65mA 伝統のルックスを継承、かつてない多彩なサウンド
tc electronic
Flashback 2 Delay
2017年 デジタル 300mA 定評あるTC Electronicの伝説的ディレイを9種類搭載したディレイ/ルーパー
Ibanez
ADMINI
2016年 x アナログ 23mA 王道・クラシックなサウンドをミニサイズで
MXR
M169 Carbon Copy Analog Delay
2008年 アナログ 26mA BBD遅延素子を採用、コンパクト・アナログ・ディレイの決定版
MXR
M299 Carbon Copy Mini
2019年 x アナログ 26mA 名機「M169 Carbon Copy」のミニサイズ・バージョン
BOSS
DM-2W Delay
2014年 アナログ 40mA アナログの暖かみと、クリアーさを両立した革新的なディレイ
Walrus Audio
ARP-87 Multi-Function Delay
2017年 x デジタル 100mA タップテンポ&4モード+モジュレーションを搭載したコンパクト多機能ディレイ
Universal Audio
UAFX Orion Tape Echo
2023年 x デジタル 250mA Maestro Echoplex EP-III テープエコーの本格的なエミュレーション
BOSS
DD-200 Digital Delay
2019年 デジタル 225mA 12種類のディレイ、ルーパー、プリセット機能搭載の多機能マルチディレイ
BOSS
DD-500 Digital Delay
2015年 デジタル 200mA ギタリストがディレイに求めるすべてを究めたディレイ・マシン
BOSS
RE-202 Space Echo
2022年 x デジタル 140mA テープ・エコーの名機「RE-201 Space Echo」のサウンドを再現
Walrus Audio
D1 High-Fidelity Delay
2022年 x デジタル 300mA 9つのプリセット、ステレオレンジコントロール搭載。リバースディレイ搭載のマルチ・ディレイ
Line 6
DL4 MkII
2022年 x デジタル 500mA 伝説的名機「DL4」を現代的なニーズに応えてブラッシュアップ
Empress
Echosystem
2017年 x デジタル 300mA 圧倒的な高音質を誇る多機能ディレイ
strymon
TIMELINE
2011年 x デジタル 300mA 12種類のスタジオクラスのディレイ・マシン
strymon
El Capistan V2
2022年 x デジタル 300mA テープエコー、スプリング・リバーブのサウンドを搭載した多機能ディレイ
strymon
DECO V2
2022年 x デジタル 300mA 50〜60年代テープ・エコーのサウンドを再現
strymon
VOLANTE
2019年 x デジタル 300mA ヴィンテージエコー3種類/スプリングリバーブ/ルーパーを搭載した多機能マルチタップ・ディレイ
Universal Audio
UAFX Starlight Echo Station
2021年 x デジタル 400mA 新旧含む3種類のテープエコーユニットをエミュレートした、ステレオディレイペダル

はじめてのディレイにおすすめのモデル

ハイコストパフォーマンスなエフェクター群は、安価なコピーモデルばかりではありません。基本的な機能に絞ったシンプルな設計で価格を抑えつつ、サウンドでは上位機種を脅かしかねないモデルもいくつか見られます。入門機としてばかりでなく、気楽に使えるシンプルな一軍のディレイとして、こうしたモデルも検討してみてください。

定番/人気モデル

定番とされるディレイは、総じて操作がシンプルで、それでいて十分な機能と性能を持っており、欲しいサウンドにいち早くアクセスすることができます。現在では基本性能だけでなく、ちょっとした追加機能でバリエーションが得られる面白さのあるモデルが目立ちます。

ハイエンド/多機能ディレイ

レコーディングにおいては、ディレイは録音してからスタジオの機材でかけることも多く行なわれています。そのスタジオ機材なみの機能と音質を持ったディレイペダルも多くリリースされており、スタジオレベルの効果をライブで出すことができます。

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