ヤマハ(YAMAHA)のエレキギターについて

[記事公開日]2024/2/19 [最終更新日]2024/3/8
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

YAMAHAのエレキギター

ヤマハの歴史は1887(明治20)年、山葉寅楠がリードオルガンを製作した事から始まり、以後ピアノを中心とした楽器製造を展開。エレキギターの製作を開始したのは1965(昭和40)年、ビートルズやベンチャーズが一世を風靡した「第一次エレキブーム」も最高潮という時代で、加山雄三主演映画「エレキの若大将」で使用するために作られたものが試作第一号でした。

現在ではギターやベース、「THR-II」シリーズを代表とするギターアンプ、「Line6」ブランドで展開するエフェクターはもちろんその他各種楽器製造、社会現象にもなっている「ボーカロイド」の開発、日本中に展開する音楽教室事業やライブイベントなど、巨大企業ならではの事業展開をしています。


Cardinal Black – Tell Me How It Feels (Official Video)
海外のミュージシャンにも愛用者は多く、カリフォルニアのYGD(Yamaha Guitar Development)では各種モデル開発のほか、アーティスト向けに特別仕様機も製作している。

YAMAHAエレキギターの特徴


カミツキ – DPS – Official Music Video
ヤマハのエレキギターは、多様性が要求される現代の音楽において頼もしい相棒になれる。

「トラッド」と「モダン」が融合する、個性的かつ無駄のない設計

YAMAHA RSP20
YAMAHA Revstar Professional Series「RSP20」
海外でも厚く支持されるRevstarは、高いデザイン性も評価されている。

ヤマハの特徴は、デザインや操作系に無駄がなく、どの音楽でも扱いやすく、それでいてオリジナリティーを持っているところにあります。全世界への製品供給を前提とするヤマハの製品開発は、基本的に堅実です。本体にも操作系にも音色にも、誰もが受け入れやすいトラッドかつオーソドックス、かつシンプルな設計を重視しています。その上で、現代の楽器に要求されるモダン要素を積極的に取り入れ、またブランドとしての個性をしっかり立たせています。

たいがいヤマハのエレキギターは一目でそれとわかり、また明瞭な音色を持っています。コストパフォーマンスは高く、比較的安価なモデルであってもサウンド的に十分なクオリティーを持っています。長年蓄積させてきた木工のノウハウだけでなく、業界でも古参の大手である事から、良質な材木を優先的に仕入れる事ができるところも強み。特に日本で作っているものは良質な材木が使われています。色々な分野に手を広げて積み上げた独自技術も強みです。

高い演奏性とサウンドバリエーションにより、ジャンル横断的に使用可能

セレクタースイッチ
Revstarの5WAYセレクタースイッチ。特殊配線の採用により、振り幅の広いサウンドバリエーションが得られる。

ヤマハのエレキギターは総じて演奏性が高く、特定のジャンルや奏法に偏らないところを非常に重視しています。ほとんどの奏法にストレスがなく、ハイポジションのアクセスが良く、また適切に重量バランスがとられています。コイルタップなど特殊配線を用いたサウンドバリエーションもあり、あらゆるジャンルでの演奏が可能です。

歴史ある大企業ならではの独自技術

IRA
ヤマハの独自技術「IRA」は、日本製モデルすべてに採用。

「音のYAMAHA」の名に恥じることなく、音響に対するヤマハの研究はどこよりも進んでいます。エンジンやオーディオなど楽器以外の分野も含め、各分野で積み上げた解析技術や研究成果を製品開発に利用できるのがヤマハの強みです。エレキギターで注目されるのは、日本製の全モデルで採用される「IRA」と近年の製品開発で採用されている「アコースティック・デザイン」です。

ギターの鳴りを向上させる「I.R.A.」

「IRA(イニシャル・レスポンス・アクセラレーション)」は、「新品の状態から、既に弾き込まれたかのような反応をする」ことを可能にした技術です。固有の振動を与える事で木材と塗装、また木材と金属パーツとの間に生じるストレスを緩和させ、馴染んだ状態にさせます。この処理によって12Khz以上の倍音成分がたくさん発せられるようになり、楽器の鳴り、音の抜けが向上する事が確認されています。

大胆な開発を可能にする「アコースティック・デザイン」

「アコースティック・デザイン」は、設計に音響解析や3Dモデリングを活用する、YAMAHA独自の手法です。音響シミュレーション技術やレーザーによる振動の測定など、科学的なアプローチはすでにピアノやアコギの開発で高い成果を収めていますが、いよいよエレキギターにもその波が来た、というわけです。最終的な良い音の判断は人間が下しこそすれ、良い音の理由を可視化できるので、大胆かつ自由な発想を活かした的確な製品開発ができます。

YAMAHA Pacifica:ボディ
「アコースティック・デザイン」で完成した、パシフィカ「Professional」「Standard Plus」両シリーズのボディ。高音弦側のルーティングには、最小限の加工で振動伝達を整理し、音響性能を高める効果がある。

YAMAHAエレキギターのラインナップ

Pacificaシリーズ

YAMAHA Pacifica
左から:PACP12、612VⅡFMX、311H、212VQM、112V

「太平洋」を意味する「パシフィカ(Pacifica)」は、「ヴァーサタイル(=何でもこなせる)」であることをコンセプトとしたシリーズ。ストラトタイプを基調としたデザインにアルダーボディ、メイプルネック、指板350Rが基本で、指板にローズもしくはメイプル、ボディトップにフレイムメイプルやキルテッドメイプルをあしらったもの、トレモロの有る無しなど、豊富なバリエーションがあります。

これからギターを始める人向けには、基本モデルの「112」、またはボディトップの美しい「212」がお勧めです。中級以上のプレイヤーには上位機種「Professional」シリーズや「Standard Plus」シリーズがお勧めですが、比較的手に入れやすい価格帯の「600」シリーズや「300」シリーズにも、プロフェッショナルの仕事に使えるポテンシャルがあります。

YAMAHA Pacifica PACP12
YAMAHA Pacifica Professional Series「PACP12」
パシフィカの上位機種は、量産機の常識を覆すほどの音の良さが最大の持ち味。

世界中で愛されるYAMAHA「PACIFICA」シリーズの魅力
YAMAHA PACIFICA 600 シリーズ:豊かなサウンドバリエーションと高いコストパフォーマンスを両立させたギター
YAMAHA 定番機種の上位モデル Pacifica Professional / Pacifica Standard Plus

PACIFICA1611MS(Mike Stern Signature Model)


Mike Stern – Chromazone
マイク・スターンさんは、マイルス・デイヴィス・バンドに抜擢されて注目を集めた達人プレイヤー。長らくフェンダーを愛用していたが、パシフィカができて以来ご自身のシグネイチャーモデルを愛用している。スピード感あふれるスリリングなインプロヴィゼーションは、圧巻の一言。

達人ジャズギタリスト、マイク・スターンさんのシグネイチャーモデルは、パシフィカ唯一のテレキャスタータイプです。基本モデルとは大きく異なる仕様で、ピックアップはセイモア・ダンカン社製、リアにシングルコイルサイズのハムバッカーが採用された、HH配列です。ライトアッシュボディ、メイプル1Pネックなどオールドフェンダーを意識した基本設計ですが、控えめながらボディトップにコンター加工が施され、抱え心地は良好です。184mmRの指板にミディアムジャンボフレットを備え、トラッドなフィーリングがありながらテクニカルな演奏もスイスイできます。

REVSTAR

YAMAHA REVSTAR
左から、REVSTAR「RSP20」、「RSP20T」、「RSS20」、「RSS20L」

2016年6月に発表された「 レヴスター(REVSTAR)」は、他とは一味違う独自性を持ちながら、必ずしも伝統的な影響から根本的には逸脱しない、クラシックとモダンのバランスが巧妙に取られたギターです。数多くの試作を経て完成した独自開発のオリジナル・ハムバッカーやP-90タイプのピックアップを備えるほか、特殊配線によるサウンドバリエーションが得られます。また、新開発のセットネック・ジョイントとコンターボディで高い演奏性を達成しています。


エルスウェア紀行「無添加」MusicVideo / Elsewhere Kikou- As it is

《シンプルかつ高性能、滲み出る個性》YAMAHA「REVSTAR」 シリーズ

SGシリーズ

YAMAHA SGシリーズ 左から:SG1820、SG1820A、SG1802
指板インレイとコントロールノブにも、各モデルのコンセプトが反映される。

「SG」は原型のできあがった1972年以来、40年以上生産されているヤマハの代名詞とも言えるモデルで、左右対称のダブルカッタウェイが特徴的です。現在のSGはメイプルトップ・アフリカンマホガニーバックボディの日本製で、ボディ背面を敢えてフラットにすることでマホガニーの質量を増やし、ローミッドのレスポンスを高めています。このほかグローバー製ロック式ペグ、トーンプロス製ブリッジ、グラフテック製タスク材ナットといったパーツ類を共通にしながら、ピックアップ構成の異なる3種類がリリースされています。

  • SG1820:セイモアダンカン「’59」を2基マウントした基本モデル
  • SG1820A:フロントにEMG85、リアにEMG81をマウントしたヘヴィ仕様
  • SG1802:ハムバッカーサイズのシングルコイル、セイモアダンカン「SP90-3」をマウントした、ややレトロ感のあるモデル


TAKANAKA SUPER BEST LIVE 2023 ULTRASEVEN-T DIGEST
フュージョン界の偉人、高中正義さんは、YAMAHAの蒼いSGをトレードマークに活躍した。

YAMAHA SGシリーズを…
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SA2200

YAMAHA SA2200
上:バイオリンサンバースト(VS)、下:ブラウンサンバースト(BS)

ヤマハのセミアコの歴史は古く、第一号機の発表は1966年にさかのぼります。その歴史を受け継ぐセミアコ「SA2200」は、ナット幅43㎜のマホガニー製ネック、ミディアムジャンボフレットを打ち込んだ350Rのエボニー製指板、ボディトップ&バックにメイプル、サイドにバーチ、センターブロックにメイプル&スプルース、これに加えてボディ全面にフレイムの美しいシカモアをあしらうというこだわりの木材構成で、木の鳴りを活かした音色と木目の美しさを追及しています。ゴールドパーツやバインディング、インレイの意匠も相まって、ただならぬ高級感を漂わせます。専用ハムバッカー・ピックアップは、トーンノブのプッシュ/プルで各個にコイルタップ可能です。


YAMAHA SA2200 – ROBBIE CALVO – MUSIC DEMO


以上、世界最大級の楽器メーカー、ヤマハのエレキギターについて、その全体像を見ていきました。歴史の長さに加え、音響に関する研究成果を活用した製品開発力が強みです。世界中の人が手に取ることのできるシンプルさを守りながら、幅広いジャンルをカバーできる汎用性を持たせ、いちブランドとしての個性もしっかり立たせています。ぜひ実際にチェックしてみてください。

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