《シンプルかつ高性能、滲み出る個性》YAMAHA「REVSTAR」 シリーズ[記事公開日]2021年3月26日
[最終更新日]2021年3月28日

YAMAHA REVSTAR

YAMAHAの「REVSTAR(レヴスター)」は、同社のギター製造50周年となる2016年に発表された、半世紀の集大成と呼べるギターです。その設計理念には、今だからこそ大切にしたい日本のものづくり精神に加え、バイクの改造思想「カフェレーサー」が採り入れらました。これによってREVSTARシリーズには、特定のジャンルやスタイルに縛られない、キャラクターの立ったラインナップが展開されています。今回は、このREVSTARに注目していきましょう。

そもそも「カフェレーサー」って何?

「カフェレーサー」とは、YAMAHAがギターを作り始めた1960年代、ロンドンにて始まったバイクの改造スタイルです。当時はロケンローなファッションのライダーが、自慢の改造バイクでカフェに集まり、公道レースに熱中していました。彼らのバイクはそれぞれに個性がありつつも、虚飾を排して走りに特化しており、60年代の魅力的な雰囲気を帯びていました。発生から半世紀を経た今でも、カフェレーサーはクラシックなレース仕様として愛され続けています。

REVSTARの特徴を見てみよう

カフェレーサーを開発コンセプトに据えた「REVSTAR」の名は、エンジンの吹き上がりを意味する「rev」に由来します。REVSTAR各モデルはそれぞれの個性を持ちながら、いらないものをそぎ落とした、基本性能にこだわった設計で作られています。新しいギターですが、どこか懐かしい雰囲気を帯びているのもポイントです。まずはギター博士が下記掲載の動画で使用した「RS420」「RS320」をじろじろとチェックし、REVSTARがだいたいどういうギターなのかを見ていきましょう。


YAMAHA PACIFICA vs REVSTAR:万能なPACIFICA 112V/112VM、滲み出る個性のREVSTAR RS420/RS320、4機種を比較してみた!

受け入れやすい基本仕様と、歴史を踏まえた新しいデザイン

REVSTAR RS420 RS420 FRD

REVSTARの基本仕様は、ダブルカッタウェイのマホガニーボディ、Rを大きくとったローズ指板と大きめのフレット、ミディアムスケール、マホガニーセットネック、ハムバッカーもしくはP-90タイプ2基のシンプルな電気系、という王道系の受け入れやすいところに収まっています。経験者ならばサウンドや演奏性をイメージしやすく、初心者ならギター歴のスタート地点としてたいへん良好です。

考え抜かれたギター本体

ヘッドとボディのデザインは、YAMAHAがこれまで生産してきたギターを出発点としながら、アイデンティティを主張する新しさを帯びています。レトロとモダン、クールさと可愛らしさを両立させる多面的なデザインは、YAMAHAが得意とするところです。特にこのREVSTARのデザインは各方面で高く評価されており、2017年のグッドデザイン賞をはじめ、数々の賞を受けています。

ルックスだけではありません。最終フレットまでストレスなく使えるハイポジション、ヘッド落ちに悩まされることのない、抱えやすい位置に収まるボディバランスなど、現代のギター本体に求められる高い基本性能もしっかり持ちあわせています。

シリーズ名を冠する、ヘッド裏のハンコ

レヴスター

REVSTARのヘッド裏には、カタカナで「レヴスタ」と捺印されます。ハンコは日本人になじみ深い、非常に日本的な意匠です。ヘッドの表側は、家紋のようにも見えるYAMAHAの紋章のみ、というシンプルさです。こうした意匠は私たち日本人には親しみやすく、欧米人にとってはエキゾチックで最高にクールだと感じられます。

また、ヘッドの根元にはボリュート(膨らみ)が設けられ、その部分での振動を調整しています。エレキギターでは1970年代から見られたボリュート付きヘッドは、サウンドにタイトな引き締まり感と豊かなサスティンを加える効果があります。また明瞭な響きが得られ、エフェクターとの相性も良好です。

各モデルのために、専用ピックアップを開発

REVSTAR:ピックアップ

サウンドの心臓部ピックアップについては、各モデルそれぞれ専用に開発するという気合いの入り方です。試作品を50種類以上も作り、線材の種類、巻き方、磁石とボビンの組み合わせ、ベースプレートの種類などの組み合わせを検証、それぞれのモデルに最適なサウンドを達成しています。

RS420のピックアップ「YGD VH3」は、アルニコV磁石を使った王道系のハムバッカーサウンドを志向しつつ、ピッキングのタッチがサウンドに反映されやすく設計されています。このようなギターは中上級者が弾いても楽しめますが、これからギターを始める人の上達を促進するのにもうってつけです。

RS320のピックアップ「YGD HH3」は、REVSTARラインナップ内で唯一、セラミック磁石を使ったオープンタイプです。高出力で、ザラつき感があり、高音の抜けが良いモダンなキャラクターを持っていて、しっかり歪ませてザクザク弾くのにたいへん良好です。

サウンドバリエーションを拡充させる「ドライスイッチ」装備

ドライスイッチ

トーンポットには、電池を使わないパッシブタイプの「ドライスイッチ」が仕込まれます。トーンノブを引き上げて回路を起動させると、ピックアップの配線はそのままに中低域が削られ、繊細なタッチを活かす鋭い音が得られます。一般的なコイルタップと異なり、ノイズに強いハムバッカー状態のままで切り替えられるのがメリットです。またピックアップの仕様を問わないため、P-90タイプを備えたモデルにも装備できます。

REVSTARは太く力強いサウンドを持ち味とするギターですが、同等のクオリティで細く鋭い、真逆のサウンドバリエーションも持っているわけです(RS320には非採用)。

フラッグシップ「RSP20CR」は、ココが凄い!

REVSTAR RSP20CR 色は「ラスティラット」。最高グレードにしてテカらず華美な装飾のない、慎み深く美しい正面。

RSP20CR:ボディバック 背面はツヤあり。ヘッド裏のハンコは、このモデルだけ「日本製」。

こんどはシリーズ最上位モデル「RSP20CR」に注目していきましょう。エレキギターとしての高い基本性能に加え、日本的な奥ゆかしい美しさを持ったギターです。

王道系の専用ハムバッカー

RSP20CR:ピックアップ

出典:YAMAHA REVSTAR

RSP20CRに搭載されている「YGD VH7+」は、ヴィンテージ系の王道ハムバッカーサウンドを狙いつつ、ウォームでスムースなトーンを実現しています。このタイプのハムバッカーでは定番のアルニコV磁石を使い、ジャーマンシルバー製ベースプレートと組み合わせています。なお、ピックアップ型番に付けられる「+」は、時間が経過した風合いの金属製カバーでドレスアップされていることを意味します。

「鳴り」を良くするYAMAHAの独自技術

RSP20CRはREVSTAシリーズで唯一、YAMAHAの独自技術「IRA」処理が施されます。新品の状態からすでに長年弾き込まれてきたかのような、豊かな生鳴りが得られます。

「IRA」とは?

YAMAHAの独自技術「IRA (イニシャル・レスポンス・アクセラレーション)」は、完成した楽器に適切な振動を与えることで、木材間あるいは木材と塗装膜などにあるストレスを解消する技術です。これは、実際にギターが長期間弾きこまれて育っていくプロセスを再現しています。IRAの処理を受けて育ったギターはしっかり育った状態となり、生音が大きく響き、倍音の豊かな立体的なサウンドを放つようになります。

IRA処理

出典:YAMAHA REVSTAR

色が明るいほど、豊かに鳴っていることを現している。IRA処理を受けたギターは、8kHz以上の倍音成分が特に豊かに鳴っていることが分かる。

渋くかもし出す、日本的な高級感

カラーバリエーションの「ラスティラット」は、着物に使われる錆鼠(さびねず)色です。RSP20CRは、この日本的な色調にレーシングストライプをマッチさせる、和洋折衷の絶妙なデザインとなっています。

シックな高級感を帯びるハードウェアと、ヘアライン仕上げのボディトップ

RSP20CRの金属パーツは鈍く光るサテン仕上げ、ボディトップはスチールウールで研磨したヘアライン仕上げ、ピックガードもヘアライン仕上げです。

金属パーツとボディトップが共通してテカらず、鈍く光るよう仕上げられることで、慎み深い日本的な高級感が演出されています。

RSP20CR:ピックガード

出典:YAMAHA REVSTAR

持ち主とともに育っていく

このRSP20CRのみ、カッパー(銅製)ピックガードが採用されています。銅は時間とともに色調や表情を変えていく金属です。乗りこなしたバイクのように、経年変化による「育ち」を楽しむことができます。演奏中に触れるところと触れないところがまばらにできるピックガードには、オーナーと歩んだ歴史が現れます。ボディトップとヘッド正面のヘアラインも、使っていくうちに育っていきます。長く弾いていくことで、同じものが二つとしてない、自分だけのルックスになっていくわけです。

YAMAHA「REVSTAR」シリーズのラインナップ

ではREVSTARのラインナップを、まず全体像から見ていきましょう。REVSTARはRSP20CRを頂点に、以下は番号順にグレード分けされています。また、それぞれのバイクにアイデンティティのあるカフェレーサーのコンセプトに従い、それぞれのREVSTARにもグレード差から独立したキャラクターが与えられています。

最高グレードの「RSP20CR」のみ日本製で、これ以外のモデルはインドネシアにあるYAMAHA直営工場で生産されます。インドネシア製最高グレード「RS820CR」は、インドネシア生産のフォーマットでRSP20CRを再現しています。

500番台~700番台が中堅クラスです。ビグスビー搭載機「RS720B」と「RS620」の両機は、フレイムメイプルトップとパール柄のオリジナル指板インレイでドレスアップし、「RS502T」「RS502」はP-90タイプのピックアップを備えます。ここまでのグレードに共通して、このタイプのギターを選ぶギタリストが受け入れやすい、やや厚みを残した肉厚のネックグリップが採用されています。

剛性の高い3層構造のネック

RSP20CRはじめ500番台~800番台までのネックは、3列のマホガニー材を接着した3層構造です。これによって木材1本の状態よりも強度が上がり、反りやねじれが起きにくくなります。また弦振動の減衰を食い止める働きがあり、サスティンが良く伸びます。

エントリーモデルという立ち位置の「RS420」と「RS320」は、スリムなネックグリップを採用した、より幅広いギタリスト層にフィットしやすいモデルです。もっとも求めやすい価格設定のRS320はマホガニーボディ、これ以外のモデルはすべて、メイプルトップ&マホガニーバックのボディ構造が採用されています。それでは、今度はそれぞれについて見ていきましょう。

REVSTARフラッグシップ「RSP20CR」

RSP20CR RRT ラスティラット(RRT)

RSP20CR BBL ブラッシュドブラック(BBL)

REVSTAR最高グレード「RSP20CR」は前出のIRA処理によって、工場から出荷されたばかりの新品の状態ですでに反応が良く、かつ深みのある豊かなサウンドが得られるギターです。モデル名の末尾にある「CR」はもちろんカフェレーサーを意味し、ボディ中央をまっすぐ走るレーシングストライプによって、より強力にバイクのイメージを演出しています。

虚飾を排した機能性重視というコンセプト、また高級感をひけらかさない日本人的な奥ゆかしい感性で仕上げられているため、最高級なのに外観はキラキラしません。敢えて指板はドットインレイで、バインディングもシンプルに単層、ボディトップはスチールウール仕上げの塗りつぶしです。

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インドネシア製最高グレード「RS820CR」

RS820CR BTB ブラッシュドティールブルー(BTB)

RS820CR ブラッシュドブラック(BBL)

意匠やパーツでモデルごとの個性を主張するインドネシア製REVSTARにおいて、最高グレードに位置する「RS820CR」は敢えて、RSP20CRの仕様とルックスを継承しています。ピックガードはアルミ製です。尖った個性を主張するのではなく、RS820CRは最高グレードとして他モデルより高い基準で厳選された木材を使用する、まさに中身で勝負のギターなのです。

専用ピックアップ「YGD VH5+」は、上位機種VH7+と同じ王道のハムバッカーサウンドを目指しながら、低域から高域までバランスを調整することで全体的な明瞭度を持ち上げた、骨太のサウンドを持っています。

なお、「ブラッシュドティールブルー」はもともとマガモの頭の色で、万葉集には青緑を表現するためカモの羽の色を使っている短歌が2首、詠まれています。

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ビグスビー装備「RS720B」

RS720B WLF ウォールフェイド(WLF)

RS720B AGR アッシュグレイ(AGR)

ビグスビー「B50」の存在感が目を引く「RS720B」は、低出力のハムバッカーを搭載することでロックンロールやブルースに最適な、上質のクリーン/クランチサウンドが出せるモデルです。フレイムメイプルトップとパール柄のオリジナル指板インレイという豪華な意匠も、このタイプのギターには欠かせない要素です。チューニング安定のため、REVSTARラインナップの中でこのモデルだけ、ロック式ペグが採用されています。

レトロな外観の専用ピックアップ「YGD VT5+」は、もともと高出力のアルニコVマグネットを採用しながら低出力に設計されたピックアップ本体と、ブラス製ベースプレートとの組み合わせです。豊かな低域を持ち、分離の良いクリアな明るいサウンドを持っています。

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ドレスアップモデル「RS620」

RS620 BCC バーントチャコール(BCC)

RS620 BRB ブリックバースト(BRB)

中堅機種「RS620」は、フレイムメイプルとパール柄のオリジナル指板インレイによる外観で、アメリカンな雰囲気を醸し出すドレスアップモデルです。ヘアラインでサテンに仕上げられたフレイムメイプルトップは、経年変化したラッカー塗装のような雰囲気を帯びます。

ピックアップは上位機種RS820CRと同じ「YGD VH5+」で、エッジの立った高域と分厚い中低域、ヴィンテージ感とモダン感をバランスよく配合したサウンドを持っています。

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レトロ感を演出する異色モデル「RS502T」

RS502T BGR ボーデングリーン(BGR)

RS502T BLブラック(BL)

ソープバーP-90タイプのピックアップとインパクトのあるアルミ製テールピースでレトロ感を演出する「RS502T」は、ツヤツヤのグロス塗装とクリーム色のピックガード、またこれに合わせたボディバインディングもあいまって、他モデルとまた異なる方向性を感じさせるモデルです。テールピースを使うことによってサドルからボディエンドへの弦角度と弦張力が抑えられ、独特なテンション感が得られるほか、倍音成分が豊かに広がります。

シングルコイルならではの伸びのよい高域に豊かな中低域が加わる、このタイプのギターならではのサウンドキャラクターを持っていますが、ドライスイッチでサウンドバリエーションが追加される設計は、全世界のP-90タイプ搭載機の中で一線を画す特徴です。

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P-90タイプの新解釈「RS502」

RS502 BLG ビレットグリーン(BLG)

RS502 SPB ショップブラック(SPB)

もう一つのP-90タイプ搭載機「RS502」は、モノトーンの色調とサテン仕上げの金属製ピックアップカバーで、前出のRS502Tから一転してモダンな雰囲気を演出する、新しいタイプのギターです。ルックスとピックアップ以外はRS620とほぼ同じですから、弾き比べるとハムバッカーとP-90タイプの違いを確認できます。

やはりドライスイッチによる多用途性が特徴で、通常のP-90タイプでは得られなかったサウンドバリエーションが手に入ります。

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良いギターでスタートを切れ「RS420」

RS420 上から、ブラックスティール(BST)、ファイヤードレッド(FRD)、マヤゴールド(MYG)

エントリーモデルという立ち位置の「RS420」は、ボディトップも金属パーツもツヤツヤのルックス、ストップテールピースを備えたTOMブリッジ、という構成です。バックコンターこそ備えますが、ボディトップは真っ平らで潔い雰囲気を持っています。下記RS320共にスリムなネックグリップが採用されており、ドライスイッチのサウンドバリエーションもあいまって、あらゆるスタイル、あらゆるジャンルの演奏に良好です。

品質と性能、そして価格とのバランスが良く、これからギターを始める人の最初の一本として、たいへん良好です。

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ドライヴサウンドと相性が抜群「RS320」

RS320 上から、ブラックスティール(BST)、レッドカッパー(RCP)、ヴィンテージホワイト(VW)、アイスブルー(ICB)

もっとも求めやすい価格設定の「RS320」は、ドライスイッチを排したシンプルな設計が特徴です。マホガニーボディは表も裏も平らで、前出RS420同様にボディトップも金属パーツもグロス仕上げです。シンプル設計といえど基本性能はしっかりしており、ちょうどよい位置で構えられる良好なボディバランスは、このモデルでもしっかり実現させています。

マホガニー1枚のボディはドライヴサウンドと相性が良く、特にロック系の音作りに良好です。ストップテールピース&TOMブリッジという仕様がブリッジミュートの感覚を掴みやすいこともあり、ザクザク言わせたりズムズム言わせたりといったハイゲインサウンドには、REVSTARラインナップ中で本機が最も向いていると言えるでしょう。

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以上、YAMAHA「REVSTAR」に注目していきました。弾きやすくバランスの良い本体に、王道系の使えるサウンドにはドライスイッチでバリエーションを追加できる、高性能なギターです。かわいらしくもクールでもある個性的なルックスも、大きなポイントです。ショップや展示会など、見かけたらぜひチェックしてみてください。