ピッチシフター・エフェクターについて

[記事公開日]2025/7/9 [最終更新日]2025/8/7
[編集者]神崎聡

ピッチシフター・エフェクター

ピッチシフターは「音程を自由に変えることができる」エフェクターです。音程(Pitch)を変化(Shift)させることから、Pitch Shifter(ピッチシフター)と呼ばれます。


  1. ピッチシフターの仕組みと原理
  2. ピッチシフターの種類と使い方の例
  3. ピッチシフターのおすすめモデル


Rage Against The Machine – Know Your Enemy
Tom Morello氏による冒頭のトリッキーなフレーズ、3:25〜からのトリッキーなソロは、いずれもピッチシフトさせての演奏。使用しているのはDigitech「Whammy」

ピッチシフターの仕組みと原理

ピッチシフターは、「入力された音をリアルタイムで検出し、その音程を上または下にシフトした信号を出力する」という原理で動作します。
ただし、その裏ではなかなか複雑な処理が行われています。

デジタル処理による音程変化

多くのピッチシフターはデジタル信号処理によってピッチ変更を実現しています。ざっくり言えば、原音をサンプリングして細かく切り刻み、音程を保ったまま再生速度や波形を操作します。これにより、ピッチを変えても音色が崩れないように制御しているわけです。

位相の干渉による”音ヤセ”とレイテンシー

ピッチシフターをペダルで使う際に注意したいのが「位相の干渉」と「レイテンシー(遅延)」で、これは無視できない問題です。

ピッチシフターは原音とピッチシフトした音の位相が微妙にズレて干渉し合い、音が痩せて聞こえることがあります。
これは「エフェクターのせい」ではなく物理的な波の干渉現象です。

またハードウェアのピッチシフターでは、ほんのわずかなレイテンシーは必ず存在します。特に旧世代のピッチシフターや安価なモデルでは、レイテンシーが大きく感じられることがあります。
近年のモデルでは改善されてはいますが、現状どんなペダルであっても“まったくのゼロ遅延”は不可能です。多少の遅れも活かした活用方法を想定しておきましょう。
とはいえ、現行の高品質なペダル(例:BOSS PS-6、Eventide H9など)では1ms前後に抑えられており、ライブでも問題のないレベルに仕上がっています。

六弦かなで

六弦かなで「う〜ん、じゃあリフの時はOFFにして、使いたい時だけON、これだね、ハカセェ!」

ギター博士

エレキギター博士「ウム、そうじゃな。タイトなリズムが求められるフレーズの時は使いにくいかもしれんが、ある程度ルーズに弾いても大丈夫なセクションとかだと全然大丈夫だと思うゾ!!」

音ヤセ対策

音痩せ対策としては、前段に「高品質なバッファ」を接続するのが良いでしょう。ピッチシフターを繋げても芯のある太い音になります。トゥルーバイパス仕様のハイエンドモデルを買うのも良いでしょう。

関連記事:
バッファー・ペダルについて

ピッチシフターの基本操作

ピッチシフターのコントロールは主に以下のようになっています。

  • Pitch:音程を決めます。度数が併記されていたり、”+1”や”-2”など原音との音程差で表記されます。
  • Level、Balance:原音とエフェクト音のバランスを調整します。”Dry-Wet”などとなっていることも。
  • Key:ハーモナイザーのみ。曲のキーを設定します。12のキーすべてに対応できるのが普通です。
  • Scale:ハーモナイザーのみ。ハーモニーを付けるためのスケールを設定。
  • Latch / Momentary:通常使用の際は”Latch”、踏んだときだけオンになる仕様が”Momentary”です。


Steve Vai – For The Love Of God Live
ピッチシフターを使っている有名ギタリストといえば、ほぼすべての楽曲にピッチシフターを使ったというアルバムもあるくらい音程変化系エフェクターを多用するギタリスト「スティーブ・ヴァイ」氏に他なりません。氏が使用しているのはTC Electoronic「G System」。マルチエフェクターではありますが、高品位なエフェクトが多数搭載され、内蔵するピッチシフトを使用しています。

ピッチシフターの接続順

ピッチシフターは「歪み系の前段」に繋ぐことをオススメします。
特にハーモナイザー系ペダル(ハモりなどを出力できるペダル)はノイズが比較的多いので、必ず歪み系ペダルの前段に繋ぐようにしましょう。

ピッチシフターの種類と使い方の例

一言でピッチシフターと言っても色々な役割のものが存在します。どんなものがあるかみていきましょう。

ピッチシフター

ピッチを+1、-1など数値で決めてそれだけ離れた度数の音を機械的に出力します。

  • 4度ハーモニーなどでアルペジオする
  • 5度ハーモニーで単音弾きをパワーコードのようにする
  • オクターブ上の音を重ねてオクターバーに近い利用法で使う

など、使い方は様々です。

エフェクト音だけを出力して、チューニングをそのままに半音下げの曲を弾くとか、カポを付けずに転調に対応するなどという離れ業も可能です。

オクターバーとの違いは?

ピッチシフターと混同されやすいエフェクターにオクターバーがありますが、両者は似て非なる存在です。
ピッチシフターは±半音単位でのシフトが可能ですが、オクターバーは原音に対して±1オクターブ上下の音を足すことに特化しており、半音単位のシフトには非対応です。

そのかわりオクターバーはレイテンシーや音ヤセといった”ピッチシフターが抱える問題”から解放され、スピード感のあるオクターブサウンドを音ヤセなく演奏できます。
オクターバーは「低音強化」や「分厚いソロ音作り」などに向いています。

関連記事:
オクターバー・エフェクターについて

ハーモナイザー/ハーモニー機能

曲のキーに合わせて、シフトさせる間隔を調整してくれるピッチシフター。
”+3rd”など、度数で間隔を決めて、”C major”などキーを併せて設定することで、そのキーに合わせたハーモニーを自動で生成してくれる優れものです。

いわゆる一人ハモリが可能で、ツインリードを一人で弾いたり、単音弾きのお供として無類の存在感を発揮します。”Harmonizer”はEventideの商標となっており、DigitechではIntelligent Pitch Shifter、BOSSではHarmonistなど、それぞれメーカーによって異なる名前が付いていますが、各々ほぼ同じものです。

ボーカリストが使うケースも増えてきており、入力される演奏から自動でキーを読み取るものもあります。

ワーミーペダル

ワーミーペダルはペダルの踏み込み度合いに連動して、ピッチを連続的に可変させるもの。
一気に2オクターブものピッチを上げたり下げたりがペダルの可変で演奏でき、実際に試すとかなり面白いペダルです。

連続可変がペダル型の特徴ですが、ペダルを固定しておいて通常のピッチシフターのように使うこともできます。「ワーミー(Whammy)」はDigitechの商品名になっており、似た効果を持つものが、各社別名で主にマルチエフェクターに内蔵されています。

ピッチシフターのおすすめモデル

普通のピッチシフターなのか、ハーモニーを付けるためのものなのか、ワーミーなのか、上で記載した3種類の違いを念頭に置いて選ぶ必要はあります。ただ、インテリジェント・ピッチシフターは通常のピッチシフターとしても使えるのが普通です。

ワーミータイプ

ワーミーはDigitechが商標を持つ製品で、ワーミータイプの製品はDigitechのものか、マルチエフェクターに搭載しているものに限られます。
ワーミーはその仕様上、他の製品での代替は難しいものがあります。

その他おすすめのピッチシフター・ペダル

ピッチシフターのハイエンドモデル

※当サイトではアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています。