ピッチシフターは「音程を自由に変えることができる」エフェクターです。音程(Pitch)を変化(Shift)させることから、Pitch Shifter(ピッチシフター)と呼ばれます。
MENU
ピッチシフターの仕組みと原理
ピッチシフターの種類と使い方の例
ピッチシフターのおすすめモデル
Rage Against The Machine – Know Your Enemy
Tom Morello氏による冒頭のトリッキーなフレーズ、3:25〜からのトリッキーなソロは、いずれもピッチシフトさせての演奏。使用しているのはDigitech「Whammy」
ピッチシフターの仕組みと原理
ピッチシフターは、「入力された音をリアルタイムで検出し、その音程を上または下にシフトした信号を出力する」という原理で動作します。
ただし、その裏ではなかなか複雑な処理が行われています。
デジタル処理による音程変化
多くのピッチシフターはデジタル信号処理によってピッチ変更を実現しています。ざっくり言えば、原音をサンプリングして細かく切り刻み、音程を保ったまま再生速度や波形を操作します。これにより、ピッチを変えても音色が崩れないように制御しているわけです。
位相の干渉による”音ヤセ”とレイテンシー
ピッチシフターをペダルで使う際に注意したいのが「位相の干渉」と「レイテンシー(遅延)」で、これは無視できない問題です。
ピッチシフターは原音とピッチシフトした音の位相が微妙にズレて干渉し合い、音が痩せて聞こえることがあります。
これは「エフェクターのせい」ではなく物理的な波の干渉現象です。
またハードウェアのピッチシフターでは、ほんのわずかなレイテンシーは必ず存在します。特に旧世代のピッチシフターや安価なモデルでは、レイテンシーが大きく感じられることがあります。
近年のモデルでは改善されてはいますが、現状どんなペダルであっても“まったくのゼロ遅延”は不可能です。多少の遅れも活かした活用方法を想定しておきましょう。
とはいえ、現行の高品質なペダル(例:BOSS PS-6、Eventide H9など)では1ms前後に抑えられており、ライブでも問題のないレベルに仕上がっています。
六弦かなで 「う〜ん、じゃあリフの時はOFFにして、使いたい時だけON、これだね、ハカセェ!」
エレキギター博士 「ウム、そうじゃな。タイトなリズムが求められるフレーズの時は使いにくいかもしれんが、ある程度ルーズに弾いても大丈夫なセクションとかだと全然大丈夫だと思うゾ!!」
音ヤセ対策
音痩せ対策としては、前段に「高品質なバッファ」を接続するのが良いでしょう。ピッチシフターを繋げても芯のある太い音になります。トゥルーバイパス仕様のハイエンドモデルを買うのも良いでしょう。
関連記事:
バッファー・ペダルについて
ピッチシフターの基本操作
ピッチシフターのコントロールは主に以下のようになっています。
Pitch :音程を決めます。度数が併記されていたり、”+1”や”-2”など原音との音程差で表記されます。
Level、Balance :原音とエフェクト音のバランスを調整します。”Dry-Wet”などとなっていることも。
Key :ハーモナイザーのみ。曲のキーを設定します。12のキーすべてに対応できるのが普通です。
Scale :ハーモナイザーのみ。ハーモニーを付けるためのスケールを設定。
Latch / Momentary :通常使用の際は”Latch”、踏んだときだけオンになる仕様が”Momentary”です。
VIDEO
Steve Vai – For The Love Of God Live
ピッチシフターを使っている有名ギタリストといえば、ほぼすべての楽曲にピッチシフターを使ったというアルバムもあるくらい音程変化系エフェクターを多用するギタリスト「スティーブ・ヴァイ 」氏に他なりません。氏が使用しているのはTC Electoronic「G System」。マルチエフェクターではありますが、高品位なエフェクトが多数搭載され、内蔵するピッチシフトを使用しています。
ピッチシフターの接続順
ピッチシフターは「歪み系の前段」に繋ぐことをオススメします。
特にハーモナイザー系ペダル(ハモりなどを出力できるペダル)はノイズが比較的多いので、必ず歪み系ペダルの前段に繋ぐようにしましょう。
ピッチシフターの種類と使い方の例
一言でピッチシフターと言っても色々な役割のものが存在します。どんなものがあるかみていきましょう。
ピッチシフター
ピッチを+1、-1など数値で決めてそれだけ離れた度数の音を機械的に出力します。
4度ハーモニーなどでアルペジオする
5度ハーモニーで単音弾きをパワーコードのようにする
オクターブ上の音を重ねてオクターバーに近い利用法で使う
など、使い方は様々です。
エフェクト音だけを出力して、チューニングをそのままに半音下げの曲を弾くとか、カポを付けずに転調に対応するなどという離れ業も可能です。
オクターバーとの違いは?
ピッチシフターと混同されやすいエフェクターにオクターバーがありますが、両者は似て非なる存在です。
ピッチシフターは±半音単位でのシフトが可能ですが、オクターバーは原音に対して±1オクターブ上下の音を足すことに特化しており、半音単位のシフトには非対応です。
そのかわりオクターバーはレイテンシーや音ヤセといった”ピッチシフターが抱える問題”から解放され、スピード感のあるオクターブサウンドを音ヤセなく演奏できます。
オクターバーは「低音強化」や「分厚いソロ音作り」などに向いています。
関連記事:
オクターバー・エフェクターについて
ハーモナイザー/ハーモニー機能
曲のキーに合わせて、シフトさせる間隔を調整してくれるピッチシフター。
”+3rd”など、度数で間隔を決めて、”C major”などキーを併せて設定することで、そのキーに合わせたハーモニーを自動で生成してくれる優れものです。
いわゆる一人ハモリが可能で、ツインリードを一人で弾いたり、単音弾きのお供として無類の存在感を発揮します。”Harmonizer”はEventideの商標となっており、DigitechではIntelligent Pitch Shifter、BOSSではHarmonistなど、それぞれメーカーによって異なる名前が付いていますが、各々ほぼ同じものです。
ボーカリストが使うケースも増えてきており、入力される演奏から自動でキーを読み取るものもあります。
ワーミーペダル
ワーミーペダルはペダルの踏み込み度合いに連動して、ピッチを連続的に可変させるもの。
一気に2オクターブものピッチを上げたり下げたりがペダルの可変で演奏でき、実際に試すとかなり面白いペダルです。
連続可変がペダル型の特徴ですが、ペダルを固定しておいて通常のピッチシフターのように使うこともできます。「ワーミー(Whammy)」はDigitechの商品名になっており、似た効果を持つものが、各社別名で主にマルチエフェクターに内蔵されています。
ピッチシフターのおすすめモデル
普通のピッチシフターなのか、ハーモニーを付けるためのものなのか、ワーミーなのか、上で記載した3種類の違いを念頭に置いて選ぶ必要はあります。ただ、インテリジェント・ピッチシフターは通常のピッチシフターとしても使えるのが普通です。
ワーミータイプ
ワーミーはDigitechが商標を持つ製品で、ワーミータイプの製品はDigitechのものか、マルチエフェクターに搭載しているものに限られます。
ワーミーはその仕様上、他の製品での代替は難しいものがあります。
Digitech Whammy 5
デジテックの定番ワーミーペダル5世代目。通常の単音の音程変化はもちろんのこと、和音の響きを保ったままの音程変化や、デチューンの掛かり具合をペダルで制御するなど、多彩な表現力を備えたペダルとなりました。
4度や5度でのピッチシフト音を加えながらのペダル操作は独特の美しさを持ち、一度取り入れてしまうと病みつきになりそうな面白さがあります。
詳しく見る:
Digitech Whammy 5 – Supernice!エフェクター
DIGITECH Whammy DT
通常のピッチシフターとワーミーが一体になった最強のワーミーペダル。通常のワーミーでできること全てのほか、別途ドロップチューニングに対応し、専用のスイッチまで搭載しています。
ドロップチューニングも1オクターブまで対応し、持ち替えやチューニングの手間なしに半音下げが一瞬で実現します。
また、ペダル部分はそれとは別枠で搭載され、通常のワーミーペダルと同じく、単音での強烈な音程変化から、度数を設定してのピッチシフトまで、多彩な表現が可能です。
詳しく見る:
DIGITECH Whammy DT – Supernice!エフェクター
DIGITECH Whammy Ricochet
ワーミーペダルからペダル部分を排除して、普通のフットスイッチを取り付けたもの。
ペダルの踏み込み具合に応じた連続的な可変はできませんが、スイッチでワーミーを掛けることができ、エフェクトボードの省スペース化にもつながります。
可変するスピードはつまみで決めることができるので、速さを調整することで、ペダルっぽい挙動も可能。
追従が素早い単音モードと、和音を保ったままの移動に対応するコードモードを設定でき、踏んだときだけオンになるモーメンタリーモードも選択可能です。
詳しく見る:
DIGITECH Whammy Ricochet – Supernice!エフェクター
その他おすすめのピッチシフター・ペダル
BOSS PS-6 Harmonist
BOSSの定番ピッチシフター。通常のピッチシフターの他、3声までに対応したハーモナイザーとしても、エクスプレッションペダルを接続することでワーミーペダルのような使い方も可能。スーパー・ベンド・モードでは4オクターブアップまでの凄まじい可変域を誇ります。
デチューンモードを使うと、微妙にずれた音を重ねてコーラスのようなモジュレーションを掛けることもでき、一台で何でもこなせるピッチシフターの代表製品です。
詳しく見る:
BOSS PS-6 Harmonist – Supernice!エフェクター
Digitech Drop
Dropは、Digitech「Whammy」ファミリーの中でも連続可変機能を排したモデル。ダウン方向のピッチシフトのみに特化しています。
近年メタル界隈だけでなく通常のロックにおいてもダウンチューニングは頻出します。1つのバンドで異なるダウンチューニングの楽曲があるケースも稀でなく、チューニング毎にステージ上で頻繁にギターを変えたりチューニングを変更するというわけにもいきません。
そんな時に活躍するのがこのDrop。
最大1オクターブ下まで半音ずつ、7段階のピッチシフトが可能で、例えばノーマルチューニングから1音下げの状態にセットしてONにすればドロップDに、ドロップDにチューニングした状態でONにすればドロップCに到達。低音域を拡張したいギタリストが積極的に採用しているペダルです。ダウンチューニング目的で使うならこのDrop一択でしょう。
詳しく見る:
Digitech Drop – Supernice!エフェクター
TC Electronic Quintessence Harmonizer
TonePrintに対応したハーモナイザー。キーに合わせてハーモニーのスケールも選べる独自のコントロールに加え、感圧型のスイッチを使ったMASH機能では、エフェクト音だけを1音上げることでペダルスティールのような効果を得ることもできます。
フットスイッチモードをモーメンタリーモードに設定することで、踏んでいる間だけハーモニーが付けられる機能は地味ながらかなり重宝します。
そんな中でも最大の機能はやはりTonePrint。ハーモニーを生成するための度数からスケールまでを、文字通り自由自在に設定することができ、自分だけの設定に基づくハーモナイザーが作れます。
小さな筐体ながらできることが非常に多く、同価格帯では屈指の多機能モデルです。
詳しく見る:
TC Electronic QUINTESSENCE HARMONY – Supernice!エフェクター
TC ELECTRONIC BRAINWAVES PITCH SHIFTER
多彩なピッチシフター機能とワーミーのようなオクターブ・アップ/ダウン機能を備える、コスト・パフォーマンスに優れた一台です。
TC ELECTRONICと言えば、の「TonePrint」機能ももちろん搭載しており、著名なアーティストのサウンドをインポートしたり、エディターを使用して細かな音色の調節を行うことも可能です。
さらにフットスイッチは「MASH」機能を搭載しており、踏み込む強さでパラメーターを変化させることのできる優れもの。
一般的なコンパクト・エフェクターと同等のサイズでありながら、エクスプレッション・ペダルを使用しているような感覚で扱うことができます。
詳しく見る:
TC ELECTRONIC BRAINWAVES PITCH SHIFTER – Supernice!エフェクター
Earth Quaker Device Rainbow Machine
「ディレイとピッチシフターを融合させたペダル」が Rainbow Machine です。
ピンク色のボディが可愛らしい本機ですが、エレキギターとは思えないカオスなサウンドを作り出すことができる、いわゆる「変態系ペダル」です。
モジュレーションディレイとピッチシフターを同時に鳴らしているようなサウンドで、ありそうでなかったユニークなペダルです。
もちろん設定次第で通常のピッチシフターとして使用することもできます。
詳しく見る:
Earth Quaker Device Rainbow Machine – Supernice!エフェクター
ピッチシフターのハイエンドモデル
Eventide PITCH FACTOR
Eventideが誇るピッチ系の代表的製品にして、全てのピッチシフターの最高峰に位置するモデル。
元々はラックシステムに使われていたものがコンパクトエフェクターとしてリリースされたもので、通常のピッチシフターのほか、キーを自動検知してハーモニーを生成してくれるDiatonicモード、シンセサイザーのように自動アルペジオを出力するアルペジエイター機能や、それを応用したきらめくようなCrystalモードなど、スタジオユースから譲り受けた数々の機能は実に多彩。
デチューン機能では本家のコーラスエフェクターを凌駕する美しさを誇り、内部にはディレイやチューナーも内蔵し、軽くマルチエフェクター的な機能も持ち合わせています。
詳しく見る:
Eventide PITCH FACTOR – Supernice!エフェクター
Gamechanger Audio BIGSBY PEDAL
野心的でありながらも「使える」製品を多くラインナップするラトヴィアのGamechanger Audioがリリースするポリフォニック・ピッチシフター。
ギターのビグスビー・ユニットをそのままペダルにしてしまうというGamechanger Audioらしい発想で、見た目はもちろんのこと、サウンドについてもギター本体にビグスビーを取り付けたかのような滑らかでナチュラルなものに仕上がっています。
パラメーターや駆動方式の変更、外部機器によるコントロールにも対応しており、実機のビグスビーでは設計上出すことが難しい音、ビグスビーを超えた音に挑戦するのもいいかもしれません。
詳しく見る:
Gamechanger Audio BIGSBY PEDAL – Supernice!エフェクター
Meris HEDRA
高い技術力と創造力の結実により、音楽シーンの最前線に立つプロフェッショナルも満足させうる素晴らしいペダルを製作するMerisの送る3ボイス・ピッチシフターです。
各ボイスのピッチシフトは±2オクターブの範囲で個別に調節することができ、OFFにしてボイスを減らすことも可能です。
これらのボイスにディレイ、フィードバックを適用することも可能で、ディレイのモードは3種類用意されています。
またALTスイッチを長押しすることで各ノブのオルタネイト・ファンクションにアクセスすることができ、見た目以上にコントロールできるパラメーターは多く、かなり細かく音作りを追い込める一台です。
詳しく見る:
Meris HEDRA – Supernice!エフェクター
※当サイトではアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています。