最新のエクストリーム・ギターサウンド「Djent」特集[記事公開日]2022年4月26日
[最終更新日]2022年4月26日

Djent

メタル・ミュージックは時代と共に多様化/凶暴化/高度化していますが、2022年現在もっともヘヴィでアツいのが「Djent(ジェント)」です。多弦ギターとダウンチューニングを駆使し、複雑なリズムを高度な技巧で演奏する暴力的なサウンドが特徴と言われますが、実際にどんなサウンドで、どのように生まれ、またどんなアーティストが採用しているのか、Djentについていろいろチェックしていきましょう。


PERIPHERY – Make Total Destroy (Official Music Video)
Djentを語る上で非常に重要な存在、プログレッシブメタルバンド「Periphery」。メタルコアに重低音の複雑なグルーヴを添加した轟音を主体に、美しいアルペジオやメロディアスな歌唱が華を添える、現代のDjentにおけるお手本のようなサウンドです。ギター奏者ミーシャ・マンスール氏は、特にDjentの立役者と目されています。

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1: 「Djent」って、どんなサウンド? 2: 「Djentleman」の使用機材 3: さまざまな表情を見せるDjent  3-1: 天才的なギタリストを擁するバンド  3-2: キーボーディストが所属するバンド  3-3: 日本勢に見られるDjentシーン  3-4: 表現技法としてのDjent

「Djent」って、どんなサウンド?


MESHUGGAH – Bleed (OFFICIAL MUSIC VIDEO) | ATOMIC FIRE RECORDS
スウェーデンのメタルレジェンド「MESHUGGAH」。Djentのサウンドは、このバンドから始まりました。30年以上のキャリアを持つ大御所でありながら今なお衰えを知らず、サウンドはますます重く、速く、そして凶暴であり続けています。なお、定期的にスネアが打たれるこのような演目は、Djentの中ではかなりキャッチーな部類です。

Djentのサウンドはさまざまに表現されますが、本記事では「多弦ギターやダウンチューニングを駆使した、プログレッシヴかつヘヴィなグルーヴ」と定義づけます。グルーヴは複雑に構築されるため、初めて聞く曲ではノるだけでも困難で、ただ茫然と立ち尽くして轟音に撃たれるままになることもあります。ギターリフは旋律よりも、シンコペーションやポリリズム、または変拍子を駆使したリズム的なアプローチに重点を置かれます。

では、Djentの源流をたどり、拡散していくまでを見ながら、そのサウンドを確認してみましょう。

Djentの源流「MESHUGGAH」の萌芽(1990年代)

Djentの起源や定義についてはさまざまな意見がありますが、その源流がスウェーデンの雄「MESHUGGAH(メシュガー)」であることに論争はありません。1980年代に結成されたMESHUGGAHはスラッシュメタル、デスメタル、グルーヴメタルを背景にジャズの要素も取り入れ、数学的に組まれたグルーヴからアインシュタインメタルと呼ばれたこともあります。なお、MESHUGGAHはイディッシュ語で「Crazy」を意味します。イディッシュ語は東欧のユダヤ人の間で話されていたドイツ語に近い言語で、ユダヤ語とも呼ばれます。


Paralyzing Ignorance
デビューアルバム「Contradictions Collapse(1991)」の1曲目、「Paralyzing Ignorance」。7弦ギターの低音を駆使した、プログレッシブかつテクニカルな楽曲。しかし鋭く切り裂くようなキレのあるグルーヴは非常にノりやすく、メタリカやスレイヤーなどスラッシュメタルの色濃い影響がうかがえる。

MESHUGGAHがメジャーデビューした1991年は、メタリカが名盤「METALLICA(通称「ブラックアルバム」)を発表するなど、スラッシュメタル界隈では重さを重視したミドルテンポの演目が支持された時代です。その時流に逆らうかのように、MESHUGGAHはテンポが速くて極端に攻撃的という、メタルの特徴をより研ぎ澄ました「エクストリームメタル」にアイデンティティを置いていました。


Future Breed Machine
メシュガーのスタイルを確立させ、ひいてはDjentの源流となった2ndアルバム「Destroy Erase Improve(1995)」の1曲目「Future Breed Machine」。前作と比べると、ギターの音程感が思いきり下に逝っているのが分かる。しかしピッチの低さと裏腹に、抜けの良いジャリジャリした高域が豊かに響く。また、中間部にキレイ系の響きを挿入して耳をリセットさせ、落ち着いたところで轟音の再開、というニクい演出も見られる。

第2作ではさらなるヘヴィサウンドを目指し、7弦から8弦へとギターを持ち替えます。これを契機に、MESHUGGAHは全く新しいメタルを世に放ちます。

前作を越えた重さと暴力性は大いに好評を博し、MESHUGGAHのサウンドは後に続く多くのバンドの手本となりました。しかし当時、このサウンドはまだ「Djent」とは呼ばれませんでした。代わりに「メシュガーのアレ」のように言われていたものと考えられます。

この音に、「Djent」の呼称が定着する(2000年代~)

特別な呼称のなかった「メシュガーのアレ」は、プログレッシブメタルバンド「Periphery(ペリフェリー)」所属、ミーシャ・マンスール氏の何気ない発言により、「Djent」の名が拡散/定着しました。そこまでのいきさつを、順番に見ていきましょう。

  • 1: MESHUGGAHのギター奏者フレデリック・トーデンタル氏が、自身の理想とするブリッジミュートのサウンドをDjentと表現する。このとき「Djent」は、日本語ならば「ズンズン」とか「ゴリゴリ」のような擬音語としての用語だった。
  • 2: MESHUGGAHのファンフォーラムにて、ファンから寄せられた機材の質問に対してトーデンタル氏が「これを使うとズンズンって音がする」みたいな言い方でDjentという用語を使用する。
  • 3: ミーシャ・マンスール氏がそれを見て、自身も理想のブリッジミュートの音をDjentと呼びだす。
  • 4: マンスール氏の参加するミュージシャンのオンラインコミュニティにて、Djentの呼び方が流行、他のSNSに拡散される。はじめブリッジミュートの音を意味していたDjentが、拡散していくにつれてその起源であるMESHUGGAHやPeripheryのイメージと結びつく。
  • 5: 2010年代からこの音を取り入れるバンドがいくつも台頭し、「Djent」がバンドサウンドやジャンルの名称として使われるようになる。


Periphery – Icarus Lives!
デビューアルバム「Periphery(2010)」の1曲目「Icarus Lives!」。Peripheryはギタリスト3人による分厚いアンサンブルと硬軟歌い分けるボーカルを特徴とします。なお3人のギタリストはそれぞれ、ミーシャ・マンスール氏はJacksonから、ジェイク・ボウエン氏はIbanezから、マーク・ホルコム氏はPRSから、それぞれシグネイチャーモデルをリリースしています。

「Djentleman」の使用機材

Djentのアーティストは「ジェントルマン(Djentleman)」と呼ばれます。ジェントルマンの方々はどんなギターを使うのか、代表的なジェントルマンの機材を見てみましょう。

Fredrik Thordendal & Mårten Hagström(MESHUGGAH)

Ibanez「M8M」

Ibanez M8M

アイバニーズ「M8M」は、MESHUGGAHのギター奏者フレドリック・トーデンタル、マルテン・ハグストローム両氏のシグネイチャーモデルです。メイプル/ジャトバの5層ネックにアルダー製ウィングを付けたスルーネック構造、ファインチューナーを備える固定式ブリッジ、スウェーデンのラングレン社製シグネイチャー・ピックアップをリアに1基という構成です。

最大の特徴は「29.4インチ」という常識外の弦長で、Gibson「EB-3(弦長30インチ)」などショートスケールのベースに匹敵します。標準のチューニングは半音下げ(8弦からF、Bb、Eb、Ab、C#、F#、Bb、Eb)ですが、普通のギターのネックをヘッド方向に2フレット延長したくらいの弦長なので、弦張力は普通のギターで全ての弦を半音上げてチューニングした状態に相当します。これにより、ベースを侵すほどの低音を張りのあるサウンドで演奏できるという、他のギターではほぼ実現不可能なサウンドが得られます。

Ibanez「FTM33」

Ibanez FTM33

「Stoneman(ストーンマン)」の異名を持つアイバニーズ「FTM33」は、フレドリック・トーデンタル氏が自らデザインしたという第2のシグネイチャーモデルです。チタンロッドで補強したメイプル/ウォルナット7層構造のネックにアッシュ製ウィングを付けたスルーネック構造、ファインチューナーを備える固定式ブリッジ、ラングレン社製シグネイチャー・ピックアップを2基という構成で、2V1Tの操作系はフライングVと同じ配置になっています。リードプレイを弾きやすくするため弦長は27インチに短縮されていますが、そのぶん第8弦と第7弦を太くしたゲージでセットアップされます。

Amp & Effector

アンプやエフェクターについてはレコーディングやツアーごとにアップデートを繰り返していますが、ライブでは二人ともFractal Audio社のギタープロセッサー「Axe-FX II XL」を中心にサウンドメイクを完了させ、キャビネット(スピーカー)を使わずにそのままPAに送ります。サウンドの切り替えはPCのDAWソフト「Cubase(キューベース)」にプログラミングしており、演奏中は曲の進行に合わせて自動的に切り替わります。

Misha Mansoor(Periphery)

Jackson「USA Signature Misha Mansoor Juggernaut」

Misha Mansoor Juggernaut USA Signature Misha Mansoor Juggernaut HT6FM/HT6/HT7FM/HT7

Periphery所属、ミーシャ・マンスール氏のシグネイチャーモデル「ジャガーノート(Juggernaut)」は、ジャクソンの代表機種ディンキーを出発点としてホーン部とヒール部を大胆にカット、20R指板とステンレス製ジャンボフレットを採用した、テクニカル路線での高い演奏性が特徴です。

弦数とボディ材の組み合わせで4タイプがリリースされているUSAモデルは、均一性と安定性を目指してボディ/ネック/指板にロースト材を採用、コンセプトに合わせてピックアップを2タイプ開発するという気合の入り方で、マンスール氏ご自身が「自分の求める条件をすべて満たす完璧なギター」だと賞賛する仕上がりです。

Jackson Misha Mansoor Juggernaut HT6FM USA Signature Misha Mansoor Juggernaut HT6FM(Satin Amber Tiger Eye)

フレイムメイプルトップ仕様の「HT6FM」「HT7FM」は、ボディにキャラメライズド・マホガニーを使用、汎用性を重視したベアナックル社製「ジャガーノート」ピックアップを2基備えます。

Misha Mansoor Juggernaut HT7 USA Signature Misha Mansoor Juggernaut HT7(Satin Silver)

ソリッドカラーの「HT6」「HT7」は、ボディにキャラメライイズド・バスウッドを使用、コンプレッション感の強い過激な音に方向づけたベアナックル社製「ラグナロク」ピックアップを備えます。

マンスール氏は「HT6FM」「HT7FM」と「HT6」「HT7」を曲のイメージで使い分けているようで、6弦は弦長25.5インチでドロップC(6弦からCGCFAD)チューニング、7弦は弦長26.5インチでドロップG#(G#D#G#C#F#A#D#)チューニングで使用します。

Jackson「Pro Series Signature Misha Mansoor Juggernaut」

Misha Mansoor Juggernaut Proシリーズ  Pro Series Signature Misha Mansoor Juggernaut HT6/HT6QM/HT7/HT7P/ET6/ET7

「Pro」シリーズからリリースされるジャガーノートは、ボディ形状や弦長などの基本寸法、オイルフィニッシュしたキャラメライズドメイプル製ネック&指板といった仕様をUSAモデルから引き継いでおり、USAモデル同様に高い演奏性を持っています。Jackson「MM1」ピックアップはマンスール氏がジャクソン社と共同開発、ボディにダイレクトマウントされることを前提にした設計で、全機種共通で搭載されます。

ボディ材はバスウッドで統一されており、「HT6QM」はキルテッドメイプルの、「HT7P」はポプラバールのトップ材が貼られます。「ET6」「ET7」はEVERTUNEブリッジ搭載機で、特殊機構によりジャストなチューニングがビシっと維持されます。

Misha Mansoorシグネチャーモデルを…
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PEAVEY「invective.120 HEAD」

PEAVEY invective.120 HEAD

Peavey「invective.120 HEAD」は、マンスール氏が愛してやまないPeaveyの名機「5150(現在の6505)」を出発点に、ゴリゴリのハイゲインから透き通ったクリーンまで幅広くカバーする、氏のシグネイチャーモデルです。

2系統のエフェクトループ、ヘヴィリフの演奏で重宝するゲート、チャンネルごとに高価の異なるブースト、アンプ後段から音量を持ち上げるマスターブーストといった各種機能を付属のフットスイッチで操作できるほか、120Wの出力を半減させるハーフ・パワー・スイッチ、外部エフェクターなどに給電できる2基ののDC端子、MIDI IN/OUT端子、オーディオインターフェースやミキサーに直接出力できるMSDI(マイク・シミュレート・ダイレクト・インターフェース)端子など、ゴリゴリに多機能です。

Peavey invective.120 HEAD – Supernice!ギターアンプ

Peavey「invective MH」

Peavey invective MH

Peavey「invective MH」は、上記「invective.120 HEAD」を出発点とした、20Wの小型アンプヘッドです。エフェクターとの相性が良い、癖のないピュアなサウンドが得られるクリーンチャンネル、名機「5150」ゆずりのモダンかつ重厚なサウンドが得られるリードチャンネルがあり、このほかブースト、ゲート、ループにくわえ、パワー管の状態がひと目でわかる「T.S.I.回路」、USB端子、MSDI端子など、自宅用アンプとして駆使できる機能が満載です。

Peavey invective MH – Supernice!ギターアンプ

さまざまな表情を見せるDjent

ではここから、Djentを表現の手法として取り入れたアーティストを見ていきましょう。これ以上ないほどヘヴィかつプログレッシブなグルーヴは、いろいろな要素と融合して新しい音楽を作っています。MESHUGGAHとPeripheryによって注目されたDjentは、今や現代のエクストリーム・ミュージックになくてはならない表現方法になっています。