新しい扉が開くかも?!オープンチューニングに挑戦!

[記事公開日]2016/10/18 [最終更新日]2024/6/23
[編集者]神崎聡

開放弦を全て鳴らした音がコードになるようなチューニングを「オープンチューニング」と言います。普通のチューニング(レギュラーチューニング)も開放弦を全て鳴らすとEm7(11)というコードになりますから、ものすごく広い意味ではオープンチューニングの仲間だと言うことができますが、ここではレギュラーチューニングとは全く異なるサウンドを持ったさまざまなオープンチューニングをチェックし、どんな音がするのかを検証してみましょう。

さまざまなチューニングを試すためには、弦を検出する「ギターチューナー」よりも、音程を検出する「クロマチックチューナー」の方が便利です。モード切り替えができるチューナーの場合には、クロマチックモードに設定しておきましょう。
初級/中級/上級別、オススメのクリップチューナー


  1. スライド奏法と相性の良いオープンチューニング
  2. 民族系など、特殊なチューニング
  3. ナッシュビルチューニング

スライド奏法と相性の良いオープンチューニング

まずは、比較的シンプルなコードに設定しているオープンチューニングを見てみましょう。こうしたチューニングは通常の演奏に使用されることもありますが、スライド奏法との相性がとてもよく、ブルースを起源としたジャンルの音楽で頻繁に使用されます。こうしたチューニングの愛用者としては、ザ・ローリング・ストーンズのキース・リチャーズ氏、マディ・ウォーターズ氏、サン・ハウス氏など、名だたるプレイヤーが知られています。


Son House – Scary Delta Blues (Live)
サン・ハウス氏は、かのエリック・クラプトン氏が敬愛するロバート・ジョンソン氏の師匠だと言われている、元牧師のブルースギタリスト。スライドバーを駆使し、ギターをぶっ叩きながら、味わい深い歌を聞かせてくれます。

メジャー系

開放弦を鳴らすとメジャーコードになるオープンチューニングはロック/ブルースとの相性が良いことから、多くのプレイヤーに使用されています。スライド奏法にチャレンジするならぜひ試してみてほしいチューニングです。

オープンG (DGDGBD)

オープンGチューニング

オープンGチューニングは、クラッシックピアノなどをギターに置きかえる時に重宝するチューニングだとされており、「Spanish Tuning」や「Taro Patch Tuning」とも呼ばれています。キース・リチャーズ氏は、オープンGを使用する際に6弦を外してしまうそうです。

オープンA (EAEAC#E)

オープンAチューニング

オープンAチューニングは、オープンGを全弦1音上げたものです。エレキギターはアコギに比べて弦が細いので、レギュラーチューニングから下げて作るオープンGよりも、上げて作るオープンAの方が弦高の張りが強くなってスライド奏法がやりやすくなります。

オープンE (EBEG#BE)

オープンEチューニング

オープンEチューニングは開放弦でEを鳴らすので、特にブルース系で使いやすいチューニングです。名手デレク・トラックス氏は、ほとんどの曲をこのチューニングで演奏すると言われています。


The Derek Trucks Band – Get What You Deserve (Live In Studio)
スライド奏法の若き達人デレク・トラックス氏。オルガンのいるバンドでこの一体感。トラックス氏のスライドギターの音程、恐ろしく正確なのがわかりますね。

オープンD (DADF#AD)

オープンDチューニング

「オープンDチューニング」は19世紀からの歴史があり、「セバストポール・チューニング」や「ベスタポール・チューニング」とも呼ばれています。ロバート・ジョンソン氏、エリック・クラプトン氏、ジョニ・ミッチェル氏、ブライアン・ウィリー・ジョンソン氏らが愛用したと伝えられていますが、ブルースギタリストがスライドで使用するのはもとより、3弦を半音上げれば「DADGADチューニング(後述)」に、一音下げれば「DADEADチューニング(後述)」になる、応用の範囲が広いチューニングでもあります。また、全ての弦を1音上げるとオープンEチューニングになります。

マイナー系

メジャー系のオープンチューニングに比べれば、このマイナー系オープンチューニングはかなりマニアックな存在だと言えるでしょう。しかしながらマイナーペンタトニックスケールとの相性がよいこともあって、メジャー系をモノにした上でもっとエグい世界を知りたいギタリストには、是非トライしてほしいチューニングです。

オープンGm (DGDGBbD)

オープンGmチューニング

「オープンGmチューニング」は、オープンGチューニングから2弦を半音下げたチューニングで、開放弦を全て弾くとGmが響きます。このチューニングは、英国の音楽家、ジョン・レンボーン氏が愛用したと伝えられています。

オープンAm (EAEACE)

オープンAmチューニング

「オープンAmチューニング」は、オープンGmチューニングから全弦1音ずつ上げたチューニングで、オープンGmと近い感覚でプレイできます。

オープンEm (EBEGBE)

オープンEmチューニング

「オープンEmチューニング」は、レギュラーチューニングから4弦と5弦を1音ずつ上げたチューニングです。弦の張力がかなり上がるためアコースティクギターではあまり用いらず、エレキギター特有のチューニングとされています。このチューニングは鋭いテレキャスターサウンドから「アイスマン」の異名をとるアルバート・コリンズ氏が愛用したと伝えられています。氏はほとんど開放弦からのマイナーペンタトニックスケール「のみ」でプレイすることで知られており、違うキーには全てカポタストで対応しています。Dのキーでは当然驚異の「10カポ」になるわけです。

オープンDm (DADAFAD)

オープンDmチューニング

「オープンDmチューニング」は、オープンEmチューニングを全弦1音下げたもので、スキップ・ジェームス氏、ヘンリー・タウンゼント氏が使用したと伝えられています。

スライド奏法と相性の良いオープンチューニングの総括

Tuning 6弦 5弦 4弦 3弦 2弦 1弦
Open G D↓ G↓ D G B D↓
Open A E A E↑ A↑ C#↑ E
Open E E B↑ E↑ G#↑ B E
Open D D↓ A D F#↓ A↓ D↓
Open Gm D↓ G↓ D G Bb↓ D↓
Open Am E A E↑ A↑ C↑ E
Open Em E B↑ E↑ G B E
Open Dm D↓ A D F↓ A↓ D↓

オープンチューニングのチューニング法まとめ
矢印は、レギュラーチューニングからの上げ下げ。

  • オープンGやオープンGmは、オープンAやオープンAmの1音下
  • オープンDやオープンDmは、オープンEやオープンEmの1音下

と覚えておきましょう。スライド奏法にフィットしたオープンチューニングは、実質この2タイプに分けられるわけです。

チューニングを上げることに抵抗を感じる人は、カポタストで全体を一旦上げてから、目的のピッチまで下げるようにするといいでしょう。これらのチューニングは後述するオープンC6やGBDGBDのように弦を交換する必要がないため、比較的気軽に試すことができるのが大きなメリットです。
これまで紹介したオープンチューニングは、あくまで一般的なものを紹介しているにすぎません。他にはたとえばオール開放弦で7thコードを響かせるものがありますが、この場合ブルースのフィーリングがぐっと増強されます。
スライド奏法の大家であるライ・クーダー氏は、自由な発想でオープンGM7やオープンF#m7といったチューニングでも演奏することがあると伝えられています。これらを参考にして、自分なりの、また自分だけのオープンチューニングを探してみてください。
こうしたオープンチューニングはスライド奏法に大変良好にフィットしますが、「メジャーコードとマイナーコードがおりまざる楽曲で使用するのがなかなか難しい」というデメリットがあり、使われるジャンルを選ぶチューニングでもあります。

各オープンチューニング、および主要なフレットごとのコード

Tuning 0F(12F) 3F 5F 7F 8F 10F
Degree I bIII IV V bVI bVII
Open G G Bb C D Eb F
Open A A C D E F G
Open E E G A B C D
Open D D F G A Bb C
Open Gm Gm Bbm Cm Dm Ebm Fm
Open Am Am Cm Dm Em Fm Gm
Open Em Em Gm Am Bm Cm Dm
Open Dm Dm Fm Gm Am Bbm Cm

オープンチューニングにおける、主要なフレットごとのコード
「Degree」は「度数」。キーに関わらずコード進行を考えるのに便利。

「それぞれのフレットを全部押さえて鳴らすと、そのコードになる」という表です。オープンチューニングを使用すると、指一本でロックやブルースで使われる主だったコードを網羅することができます。楽曲のキーに合わせたオープンチューニングを選ぶのがもっとも演奏しやすく、他のキーで演奏する際にはカポタストを使用するか、そのキーに合わせたギターに持ち替えます。

オープンチューニングでスライド奏法の練習

オープンチューニングを使って、T.REXの代表曲「Get It On」風のコード進行で遊んでみましょう。 SuperJam 2013: Billy Idol sings T. Rex's "Bang A Gong (Get It On)" | Ep. 8 | Bonnaroo Get It OnのキーはEですが、コードを弾く練習であれば、どんなオープンチューニングでも構いません。 get-it-on T-REX「Get It On」風のコード進行 4拍子を感じながら、指定されたフレットにスライドバーを当てて演奏します。弦は全部弾いても、一本だけでも、何本かでも構いません。移動するときの滑らかな音程変化がスライド奏法のだいご味です。あわてて移動してしまわず、じっくりと上昇/下降のカーブを描いてみてください。

スチールギターのチューニング

ここで、スライド奏法を前提として作られたギター「スチールギター」のチューニングに注目してみましょう。
スチールギターで現在もっとも使われているのが、「C6チューニング」です。これは「C、E、G、A」の組み合わせでできており、開放弦をすべて鳴らすと「C6」に聞こえるチューニングです。ギターを利用した一般的なC6チューニングは6弦から「C、E、G、A、C、E」ですが、8弦スチールギターを意識して高音を増強した「E、G、A、C、E、G」というチューニングも多く使用されます。
このチューニングの最大のメリットは、スライドバーを使っていながら「メジャーコードもマイナーコードも演奏できる」ということです。これによりロック/ブルースにとどまらず、さまざまなジャンルの音楽に参入することができるのです。

c6_tuning C6チューンングでの音の配置

キーCで頻繁に使用されるコードが網羅されているのが分かりますね。

このチューニングの場合、6弦のCはレギュラーチューニングにおける5弦3フレットのCと同じ高さになります。普通のギターの弦ではここまで上げることができないため、細い弦に張り替えるか、スチールギター用の弦に張り替える必要があります。


続いてはアイリッシュ/ケルトなど民族系の特殊チューニングについて紹介していきます。

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