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《フリースタイル・ロックギア》Ibanez「FR」シリーズ

Ibanez FR FRIX6FDQM

アイバニーズのシングルカッタウェイモデル「FR」シリーズは、2008年に「Freestyle Rock Gear」を標榜して発表されました。そのスタイルはテレキャスターを出発点としながらも完全にオリジナルデザインであり、伝統的なエレキギターを現代のロックギターへと昇華させています。ストラト派生のギターをメインとするアイバニーズのラインナップにおいて異彩を放つFRに、今回は注目していきましょう。


Ibanez Prestige: Mario and Erick from CHON play “Story”
クリーントーンでのフィンガーピッキングに個性が光るインストゥルメンタルバンド「CHON」。FRはシングルカッタウェイながら、20フレット以上の超高音アルペジオも無理なく押弦できるプレイアビリティを持っています。

Ibanez「FR」の特徴

現行で最新機種の「FRIX6FDQM」を例に、FRシリーズの特徴を追ってみましょう。

1) Ibanezを象徴するヘッド部

現在のアイバニーズを象徴する「グース・ビーク(ガチョウの嘴)」ヘッド形状が、FRにも採用されています。ブリッジからナット、そしてペグまで一直線に弦が通るように設計されており、またヘッド角によりナットからペグまでの弦角度が揃えられており、各弦にかかるストレスは均一化されています。ヘッドに角度が付いていますが、ネックの途中からヘッドを接着する工法ではなく、ネックの根元からヘッドの先にまで達する木材を三本張り合わせた構造です。

2) 握りやすく頑丈なネック

Ibanez FR:ネック

「アイアン・レーベル」の基本仕様である「ナイトロ・ウィザード3pcネック」は、従来のワンピースネックに比べて遥かに頑丈な設計です。ヘッドも含めたネック全体の長さのメイプルとパープルハートを貼り合わせた上で削り出す、という工法で作られますが、ネックの途中からヘッドを貼りつける「スカーフジョイント」よりも大量に木材を使用する、ある意味非合理的な作り方ではあります。しかしこの工法だからこそ、ネック全体の美しい「しなり」を作ることができ、また自然かつストレートな振動伝達ができるのです。

細すぎないナット幅に薄めのグリップ、というネック形状はテクニカルなフレーズをバリバリ演奏するスタイルに大変良好です。また握り込みやすくもあるので、シンプルにコードを弾くなど、おおよそギターでできる演奏はどれも良好に演奏できます。

3) ボディで作る演奏性

一見するとテレキャスターっぽく見えるボディですが、

  • エルボーカット&コンター加工により、構えた時のフィット感がかなり良好
  • くびれ位置をずらした「オフセット・ウェスト」は、立奏/座奏ともに良好な抱え心地になる
  • ネックヒール(ジョイント部)の大胆なカットによって、ハイポジションでの演奏性がかなり良い
  • 低音側のボディエッジが18フレットでネックに接する(18フレット接続)のは、実はRGと同じ
  • 高音側のカッタウェイは深く、24フレットまで指を届かせることができる
  • ストラップピンが15フレット近辺にあり、立奏時のストラップのフィット感が良い
  • 操作しやすい位置にあるボリュームポット

というように、演奏性を向上させる数々の特徴を持っています。ボディ材はナトーで、中高音が豊かに響く明るい音響特性を持っています。

Ibanez FR:ボディの特徴
図:FRボディの特徴

4) 信頼性の高い金属部品

ペグはゴトー(GOTOH)製のロック式ペグで、ダウンチューニングにも耐える安定性を持っています。また、背面の「サムホイール」の操作で、弦交換が驚くほどスピーディーに進みます。

ブリッジに採用されている「ジブラルタル・スタンダードII」はアイバニーズ伝統のユニットで、かつてさまざまなタイプのブリッジに「ジブラルタル」の名がつけられました。ベースプレートを低くすることでかつてないロープロファイル化(ボディからの弦高を下げる)を達成していますが、そのぶんオクターブ調整用のネジは通常のドライバーでは回しにくいため、6角レンチで調整するようになっています。

5) メタルを意識した電気系

FR6UCSのピックアップ配列 FR6UCSのピックアップ配列

ピックアップはディマジオ社と共同開発した「フュージョン・エッジ」がボディにダイレクトマウント(直付け)されます。「ハムバッカーのボディ直付け」は現代のロック仕様としてはもはや常識となっており、低音が引き締まったタイトなサウンドが得られます。

フュージョン・エッジは現代のメタルシーンを意識し、

  • シングルコイルに匹敵するほど、高音域が豊かに響く
  • 無駄に強力すぎない、適度にハイパワーな出力

といったキャラクターを持っています。

操作系はいたってシンプルで、ボリュームポット、ピックアップセレクター、タップスイッチのみです。タップスイッチの操作でコイルタップが使え、FRはHH配列としてもSS配列としても使用することができます。また「アイアン・レーベル」の共通仕様として、トーン回路は最初からついていません。


Ibanez IronLabel FR with Sven Aprill of DIE! SHE SAID
FRはテレキャスターを出発点にしながらも、随分と遠くまで来てしまっているギターです。EMGを搭載したモデルは、特にスラッシュ系のメタルにフィットします。それにしてもこのヒト、デカい手ですね。

Ibanez「FR」のラインナップ

ではFRのラインナップを見ていきましょう。今のところ国産上位グレード「Prestige」で1モデル、メタルミュージック志向「アイアン・レーベル」で3モデルがリリースされています。

FR6UCS Prestige

Ibanez FR6UCS

FRの上位機種「FR6UCS」は、カッチカチのネック、抱えやすいボディ、パワフルなピックアップと強固なブリッジといった仕様を、日本の熟練工がキッチリとまとめたハイエンドモデルです。ヘヴィミュージック向けに、「全弦1音下げチューニング」でセットアップされます。

5層構造ネック

「ウィザードHP」シェイプのネックは、薄いと言いつつも同クラスのRGなどより全体的に1mmほど厚みがあります。3本のメイプルの間に薄くウォルナットを挿しこんだ5層構造で、ヘッド裏にはボリュート(出っ張り)を設け、この部分の剛性をさらに上げています。ステンレス製ジャンボフレットの両端は、プレスティジ・シリーズの共通仕様に準拠して球面に整えられます。触り心地が良く、ポジション移動で引っかかることのないスムースな運指ができます。

現代メタルシーンで注目度の高い「アフターマス」ピックアップ

アフリカンマホガニー製のボディにベアナックル社製「アフターマス」ハムバッカーピックアップがダイレクトマウントされます。現代メタルシーンで注目度の高いアフターマス・ピックアップは、ハイパワーでありながらクリーントーンも美しく響く性能があり、ジャズミュージシャンに愛用されることもあります。二つのハムバッカーは5Wayセレクタースイッチで操作し、各ハムバッカー単体、シングルコイル単体に加え、シングルコイル同士のミックスが使えます。

「タイトエンド」ブリッジ

現在このモデルにのみ採用されている「タイトエンド」ブリッジは、各弦のサドルをネジでしっかりと固定する機能が備わっており、通常のブリッジよりもがっちりと弦振動を受け止めます。通常のサドルは弦によって押しつけられますが、サドルに対して垂直方向の弦振動はサドルへの押しつけを軽くしてしまう可能性があります。「タイトエンド」ブリッジは、そのわずかな隙も許さない強固さを備えているわけです。

FR6UCSを…
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Jen Majura – Tiny Little Metal Riff (Live) | Ibanez Guitar Festival 2016
6弦をCまで下げたダウンチューニングでも、しっかり明瞭に鳴っていますね。ズムズムのヘヴィリフを聞かせてくれるジェン・マジュラ女史は、ベーシストとしての顔も持っています。

FRIX6FDQM / FRIX6FEAH / FRIX7FEAH Iron Label

Ibanez FRIX6FDQM FRIX6FDQM

IBanez FRIX6FEAH FRIX6FEAH

IBanez FRIX7FEAH FRIX7FEAH

メタルミュージックを演奏することのみを想定して設計される「アイアン・レーベル」からは、

  • FRIX6FDQM:6弦、ディマジオ製ピックアップ、コイルタップ装備
  • FRIX6FEAH:6弦、EMG製ピックアップ、キルスイッチ装備
  • FRIX7FEAH:7弦、EMG製ピックアップ、キルスイッチ装備

という3タイプのFRがリリースされています。こちらについてはアイアン・レーベルの記事で紹介しています。
ただメタル・ミュージックのために。アイバニーズ「Iron Label」

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以上、テレキャスターを出発点にしつつも、まったく違った新しい方向へ進化を遂げたギター「FR」をチェックしていきました。ヘヴィミュージックで定番のRGやSなどストラト派生のギターとは異なる雰囲気を帯びているギターですから、他の人とはちょっと違う、しかし変形ではないギターで勝負したいワガママな個性派のギタリストにぴったりのギターだと言えるでしょう。もちろんそうでない人も、ぜひチェックしてみてくださいね。