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ローランド「RE-201」は、磁気テープを用いるアナログディレイ「テープエコー」の世界的な定番機種です。スプリングリバーブも内蔵しており、この一台でディレイ&リバーブの効果が得られます。1974年から1990年まで四半世紀にわたって生産され、ギターのみならずさまざまな音響効果に使用されました。古いものでは半世紀近く昔の電気製品ですが、本物のアナログ製品だけが帯びる独特の雰囲気、そして幽玄なエコー効果に愛好家は多く、今なお現役で使用されます。特にテープやモーターの劣化によって生まれる不規則な「ゆらぎ」は、デジタル機器ではなかなか味わえません。音楽制作に対する多大な貢献が評価され、NAMM2016にて「テクノロジー殿堂」入りを果たしました。今回はこの「RE-201」に注目していきましょう。
Brian Setzer Orchestra – Full Concert – 07/25/99 – Woodstock 99 East Stage (OFFICIAL)
ライブの定番曲「スリープ・ウォーク」にたっぷりとかかったエコー。ブライアン・セッツアー氏はRE-201を愛用していることで知られていますが、このライブでは上位機種のRE-301を使用しているようです。
今回チェックした「RE-201」の実機。使い込まれてイイ感じに育っている。サイズは185mm(高)、415mm(幅)、275mm(奥行)で、家庭用プリンタくらいのでかさ。コレとギターを持って電車に乗るのは、なかなかに根性が必要。
上面のパネルは取り外し可能。パネルの内側に説明書がカラー印刷されている。
上面パネルを取り去った。黒っぽいパネルで塞がれているのが、磁気テープの入っている「テープチャンバー」。
真上から見たところ。テープチャンバーの右側に接するように配置されている金属部品は、テープエコーの心臓部である「5連ヘッド」。長い一本のテープは大きな輪を形成しており「エンドレステープ」と名付けられている。
本体の上面パネルは取り外せるようになっており、5連ヘッドのクリーニングやエンドレステープの交換と言った、基本的なケアがしやすくなっています。テープとヘッドはテープエコーの命で、特にテープは消耗品です。RE-201のテープチャンバーは長いテープを収納でき、内部を自由にうにょうにょとランダムに走らせる(フリーランニングシステム)ことで、テープ本体にかかる負担を軽減してテープ寿命を延ばします。
5連ヘッドのアップ。テープは写真左側から右側へと送られる。いちばん左から、消去ヘッド、録音ヘッド、3つの再生ヘッド。
【エレキギター博士】本物のアナログ製品だけが帯びる独特の雰囲気、そして幽玄なエコー効果に愛好家は多く、今なお現役で使用されます。
《名機紹介》テープエコーの世界的な定番機種「Roland RE-201 Space Echo」https://t.co/f7RvOHl3P6 pic.twitter.com/FWtz2eRzWh
— Supernice! (@supernice_music) October 15, 2020
テープを再生している様子
再生ヘッドが3つしかないんだったら、3回しか繰り返すことのできないさびしいエコーマシンなのか?というと、そうではありません。再生ヘッドで読みこんだ音を録音ヘッドに送る機能があるので、ヘッドの数に縛られない沢山のリピート数が得られます。「インテンシティ(フィードバック。後述)」を操作すれば、発振のようなエンドレスディレイも作ることが可能です。
そもそもRE-201は、ギター専用デバイスではなくボーカル用に設計されたようです。今度はその機能をチェックしてみましょう。
RE-201の正面。知らない人が見たら、映画なんかで見かけるスパイの通信機に見えなくもない。各種のツマミ、インプット、アウトプットがすべて正面に配される。背面は電源コードが伸びているだけ。
左側は、プリアンプ部。入力レベルを針の動きで表示する「VUメーター」は、エコーON時に点灯する。その直下には、ボーカルマイク入力2系統、ギターなど楽器用入力1系統が並ぶ。3つの入力は、ツマミで音量だけ調節できる。
入力はマイク2本と楽器1本の3系統です。操作できるのは音量のみで、原音を加工することはできません。楽器用インプットに添えられているスイッチは「エコー/ノーマル切替スイッチ」で、エコーの有無を選択できます。ボーカルにだけエコーをかけたくて、ギターには必要ない、といった場面を想定しています。
中央部の大きなツマミは「モードセレクター」で、エコーのみの4タイプ、エコー&リバーブの7タイプ、そしてリバーブのみの合計12タイプを選択できます。モードセレクター直下にある「フロムPA」入力端子は、ミキサーのAUXから送られる信号を受けるためのものです。
右側は、エフェクトの操作系。上段のツマミはエコーのみにかかるトレブルとベース、そしてリバーブの音量。下段のツマミは、左から「リピート・レート(ディレイタイム)」、「インテンシティ(フィードバック)」、「エコーボリューム」。
リピート・レート(ディレイタイム)は、磁気テープの走るスピードを上下させて設定します。インテンシティ(フィードバック)については、説明書に「6や7以上では発振する。発振しない範囲で使うこと」のような記述があります。インプットに何も指していなくても、インテンシティを上げるとRE-201自体の発するノイズがリピートされ、発振が始まります。このときリピート・レートを上下させると発振のピッチを上下させることができます。
エコーボリュームは文字通りの機能で、原音に被せるエコーの音量を操作します。
エコーボリューム直下の「アウトプット」は、隣のスイッチで3種類の出力を選ぶことができます。出力はモノラルです。
その隣にはフットスイッチの入力端子が備えられます。RE-201は、電源を入れるとテープは回りっぱなしでエコーもかかりっぱなしになります。ここにフットスイッチを増設することで、エコーのON / OFFを操作することができます。エコーを切るとテープの回転が止まり、スタンバイ状態になります。これによってさらにテープ寿命を延ばすことができます。スタンバイを解除すると、それまで止まっていたテープが回転を始め、エコーがかかります。
ゆらゆら帝国 『2005年世界旅行』(2005nen Sekai Ryokou)
これはRE-201ではありませんが、テープエコーによる発振からスタートする楽曲です。「発振」とは何かがとってもよく分かります。曲の最初から最後まで、ずっと発振しています。
背面。電源コードを内部に収納できる。コードを伸ばした状態でもフタを閉めることができる。漂う昭和感。
視力を試すかのようなプレート。白いところにシリアルナンバーが刻印されているが、読めるか読めないかのギリギリ。
ローランド「スペースエコー」の名は、RE-201に始まりました。エコー黎明期から現在までの、スペースエコーの歩みを見ていきましょう。
2022年3月に登場した「RE-2 Space Echo」は、BOSSサイズのコンパクトな筐体に Roland RE-201 Space Echo のサウンドや挙動を落とし込んだペダル・タイプのテープ・エコー。4つのツマミのうち3つが2軸ノブとなっており、9つのモードを選択可能、6つのパラメータを使って音作りができるほか、フット・ペダル長押しで他の機能にアクセスできるなど、多彩な音作りが可能となっています。
BOSS RE-2 Space Echo – Supernice!エフェクター
上述「RE-2 Space Echo」とほぼ同時期に発売となったこちら「RE-202 Space Echo」は 3フットスイッチ搭載モデル。REPEAT RATE は最大オリジナルの2倍にまで伸ばすことができるほか、オリジナル機には搭載されていない4つ目の再生ヘッドを搭載、エコーが5種類追加されるなど、新たな機能を多数搭載。サウンドがより実機に肉薄したのはもちろん、最新の技術が盛り込まれています。より本格的な使い方を望んでいる人はこちらを選択すると良いでしょう。
BOSS RE-202 Space Echo – Supernice!エフェクター
現在でもRE-201は入手可能です。世界中に普及した名機だけあって、修理や調整のできる業者もまだまだあります。しかし肝心のテープの生産が終了しているため、いつかは使えなくなってしまいます。桜のようなその儚さに胸を撃たれた人は、ぜひ実物を手に入れてみてください。えもいわれぬ暖かなエコーサウンドだけ欲しい人は、ぜひRE-20を使ってみてくださいね。
アナログ・モデリング(テープエコー)ディレイ特集 – Supernice!エフェクター
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