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アイバニーズの「ジオ(Gio)」シリーズは、特にこれからギターを始める人に向けて開発された、いわゆる「エントリーモデル」です。低価格のとっつきやすさは大きな魅力ですが、「ステージへ最速」のコンセプトが示すように、ライブに耐える充分な性能、そのままステージに上がれる面構えの良さも併せ持っているギターです。今回は、このGioシリーズに注目していきましょう。すでにバリバリ弾けるという人も、友達がギターを始めるなら何を勧めるか、と想像しながら読んでみてくださいね。
Product Spotlight – Ibanez GRG120BDX Electric Guitar
旧モデルではありますが、エントリークラスとはとても思えない本格的なサウンドです。0分53秒でいったん全ての音を止めていますが、「ジー」っていうノイズが鳴っていません。安いだけのギターでは到底実現できないレベルで、内部配線がしっかりしているのだということがわかります。
Gioシリーズのギターは、記念すべき「生涯一本目のギター」に必要な要素をしっかり持っています。これからギターを始める人のギターには何がいるのか、Gioシリーズの特徴を見ながら考えていきましょう。
これから苦楽を共にしていく相棒としても、ステージを意識するにしても、SNS用の写真を撮影するにしても、ギター本体のルックスの良さは非常に重要なポイントです。ギターを始めたばかりのうちは、音や弾きやすさといった専門的なことはなかなか判断できません。しかし見た目が気に入るかどうかは、その段階でも判断できるのです。はじめてのギターは、見た目だけで選んでしまってもいいくらいです。
現在のGioシリーズは、アイバニーズの代表機種「RG」をベースとした3タイプ(小型ギターについては別途後述)リリースされています。スタイリッシュなヘッドデザインやボディシェイプもポイントですが、それぞれが持っている外観上の特徴をチェックしていきましょう。
GRX70QA-TBB Transparent Blue Burst
「GRX70QA」のルックスとして最も目を引くのは、銘木「キルテッド・メイプル」の美しい模様をあしらったボディトップです。規則的複雑かつ有機的な模様は「杢(もく)」と呼ばれるもので、木目と垂直方向に走ります。ここまではっきりと均一な杢の出たキルテッド・メイプルは、本物ならかなり高額です。GRX70QAではこの模様を人工的に作り、美しさと手ごろな価格を両立させています。なお、ボディカラーは4色から選ぶことができます。
「GRG170DX」は、今のところブラック一択のカラーリングですが、指板のポジションマークが強力に存在感を主張しています。尖ったギザギザのこのポジションマークは「シャーク・トゥース(サメの歯)・インレイ」と呼ばれる、アイバニーズ伝統のデザインです。また指板の周囲を白いセルロイドでぐるっと縁取り(バインディング)しているのもポイントです。「オリジナルデザインのポジションマーク」と「各部のバインディング」は、高級なギターならたいがい備わっている意匠です。
GRX40-TFB
「GRX40」はボディトップに「ピックガード」が備わっているのがポイントです。ピックガードはシビアな演奏性や改造/修理のしやすさといったマニアックなところにも有意義ですが、今のところは「ボディカラーとの対比で特有の雰囲気を帯びる」という外観上の特徴を把握しておきましょう。ボディカラーは5種類あります。また、ボディ・エッジ(ボディの外周)が丸みを帯びた仕上げになっています。これと比べると、前出2モデルのボディ・エッジは角が立っているのが分かりますね。
Gioシリーズのギターは、調整や弦交換の手間をある程度省けるように設計されています。あれこれギターの手入れにガチャガチャやる時間を練習に回すことで、生涯初ステージまでの期間を少しでも短くすることができるわけです。
GRX70QAのピックアップ配列
Gioシリーズは上位モデル同様、フロント、センター、リアの3つのピックアップを5Wayセレクタースイッチで切り替えることで、
という5種類の音色を出すことができます。「フロント+センター」及び「センター+リア」(ハーフトーン)の時は、ハムバッカー内にある二つのシングルコイルのうち片方だけを鳴らす「コイルタップ」が自動的に起動し、コードの演奏や味のあるプレイで重宝される美しいサウンドが得られます。
アイバニーズは「現代的な弾きやすさ」を追求するブランドであり、その精神はGioシリーズにも受け継がれています。
Ibanez アイバニーズ GRX70QA TEB エレキギター マーシャルアンプ付 初心者 入門 15点セット
Gioシリーズにはギター本体用ソフトケースのほかに「アクセサリー・セット」が付属し、
が一気に揃います。あとはギターアンプさえ手に入れれば、エレキギターの練習をスタートすることができるわけです。これにアンプやギタースタンドなどのグッズを追加した「初心者セット」も有力な選択肢です。
エレキギター初心者セットから始めよう!
ではここから、Gioシリーズのラインナップを見ていきましょう。標準的なサイズで3モデル、小型のモデルで2タイプそれぞれが、シリーズに共通する仕様の中でひとつのキャラクターを持ったギターとして仕上げられています。
まずはその共通仕様から見ていきましょう。分かりやすいところで、使用される木材、ピックアップ、操作系が共通しています。
共通仕様 | 内容 |
木材構成 | ボディ材:ポプラ ネック材:メイプル 指板材:トリーテッド・ニュージーランド・パインもしくはローズウッド |
ピックアップ | シングルコイル、ハムバッカー共に「インフィニティ(Infinity、INF)」の名で統一。現在ではGioシリーズでのみ採用されている。 |
操作系 | 1Vol、1Tone、5Way セレクタ―スイッチ&自動コイルタップ(標準サイズ機のみ) |
金属パーツ | 強固なロトマチックタイプのペグとブロックサドル |
表:Gioシリーズの共通仕様
「入門機はなるべく高額にはしたくない」という考えで、比較的手に入れやすい木材が使用されます。とはいえボディのポプラは高額なギターに使用される例がないわけではない、認知度が高く由緒正しい木材です。ネックには「ギターのネックのためにある」とまで言われるメイプルが使用されます。指板のニュージーランド・パインは本来なら柔らかい木材ですが、特殊な工程を経てじゅうぶんな硬さを達成しています。
ピックアップの「インフィニティ(INF)」は、もともと一個上のグレード「スタンダード・シリーズ」に搭載されていたものです。しっかり歪む出力があり、ピッキングハーモニクスもギコギコ鳴ります。これが現在の「クォンタム(Quantom)」へ切り替わる際、Gioシリーズへと受け継がれました。そんなわけで、Gioは「かつて10万円近いギターに使っていたピックアップを搭載している」ということが言えるでしょう。
弦を受け止めるパーツに金属量の多い強固なものが採用されているのは、現代的な仕様のギターに多く見られる特徴です。ペグやサドルががっちりしていると、弦振動が引き締まり、サスティン(音の伸び)が増えます。
「GRX70QA」は、
という仕様でまとめたギターです。ボディカラーや電機系に現代的な雰囲気を帯びつつ、ミディアムサイズのフレット、6点留めトレモロ、というところでエレキギターの伝統を継承した仕様が採用されています。
GRX70QAを…
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上記GRX70QAと対をなす「GRX40」は、
という仕様でまとめた、エレキギターの王道「ストラトキャスター」の名残を感じさせるギターです。ネック仕様はGRX70QAと共通ながら、こちらはフロントピックアップがシングルコイルになっています。コントロール・ノブが樹脂製なのもストラトの名残です。
GRX40を…
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上記2モデルとはちょっと違った雰囲気を持つ「GRG170DX]は、
という、上位モデル「RG」をより強く意識したギターになっています。やや幅が広い、フレットの大きい、平たい(指板Rの数字が大きい)ネックは、テクニカルなプレイを得意とするギタリストに特に好まれます。2点支持のトレモロは作動が軽く、大胆なアーミングに有利です。コントロール・ノブ(つまみ)は、ギターデザインのワンポイントとしてなかなか無視できない力があります。
「ルックスのアピールポイントに違いがある」ということは前述しましたが、楽器としての最も大きな違いは「フレット数」にあります。24フレットまで使用する曲を練習したいなら、あるいはコピーしたいアーティストが24フレット仕様のギターを使っているのなら、24フレットまであるGRXを選択した方がいいでしょう。
しかしそうでなければ、「24フレットの方が良い」とは断言できません。22フレットと24フレットでは、「フロントピックアップの位置」が違い、またそれに連動してセンターピックアップの位置も違うので、たとえ同じ木材、同じピックアップを装備したGRXとGRGであっても、フロント及びセンターピックアップのサウンドが違います。
伝統的な、あるいは標準的なエレキギターは22フレットが基本で、ピックアップのサウンドも22フレットが標準です。24フレットのギターはフロント&センターピックアップが若干リア寄りになるため、若干硬質な、引き締まったサウンドになります。
GRG170DXを…
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Gio名義でリリースされている「マイクロ」シリーズは、小ぶりなギターのかわいらしさを持ちながら、しっかり演奏できることを目指した「トイギター」です。通常25.5インチの弦長を22.2インチにまで、約23%のサイズダウンをしています。
このような小型のギターはお子様向けのギターとしても、書斎の隅に置く場所をとらない趣味ギターとしても有用です。しかしアイバニーズが公式に表明しているように、弦長の短いギターは両手の力加減次第で音程を崩しやすいこと、また低価格モデルのため上級者が求めるシビアなセッティングに耐えうるものではないことを心得ておく必要があります。
とはいえ、こちらのマイクロシリーズはペグやブリッジといったパーツはふつうサイズのギターと同じものを使い、ピックアップはGioシリーズ共通仕様の「インフィニティ」が搭載され、またほかのGioシリーズと同じ生産ラインで作られており、小型ながら本格的なギターに仕上がっています。なお、こちらのトイギターには専用ソフトケースが付属しますが、アクセサリー・セットは同梱されません。
GRGM21
ブラックの「21」、キルテッド・メイプルの模様をあしらった「22QA」の両機は、カラーリング以外の詳細が共通しています。また、木材構成とピックアップが前出のGioシリーズと共通しています。その他、
といった仕様で、小型のエレキギターとしてはかなりガチなモデルとなっています。
また、このような低価格帯モデルの開発でも手を抜かないのが、アイバニーズの矜持のようです。この短いネックにあわせて専用弦(Ibanez IEGS61MK)を開発、ボディ背面から弦を通しますが、ボールエンドを受け止める専用の金属部品を埋め込んでいます。この「金属製の弦留め」は近年のハイエンドモデルでちらほら見られる設計で、弦振動をボディに伝達させる効率を向上させる効果があると考えられています。
以上、「ステージへ最速」を標榜する、アイバニーズ「Gio」シリーズをチェックしていきました。いわゆる初心者向けの低価格なギターではありますが、最も安いエレキギターと比べると倍以上の価格設定になっている、この分野での高級モデルだと言っていいでしょう。
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