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「コピーからある程度脱却して、自分のギターソロを作る」という段階に到達すると、「ギターソロの中に速弾きを入れて、ソロを華やかに、またはアツく演出したい」と思う人も多いことでしょう。しかし、自分で考えた速弾きのフレーズが、どうにもしっくり来ない、あるいは憧れのギタリストみたいにかっこよくならない、ということに悩んでいる人もいるかもしれません。
そこで!今回は、ギター博士流の「速弾きの表現方法」を、
という3つの視点から見ていきます。こちらの動画と連動した内容になっていますから、ぜひ動画を見ながら読み進めていってください。
《ギター博士流》速弾きの表現方法を紹介するゾ!
今回は、「速弾きのフレーズを作るヒント」が中心です。速いだけじゃない速い表現(?)の秘密が、ちょっと明らかになります。
まずは技術的な側面から考える、速弾きの表現方法です。今回は、
という基礎的、そして代表的なテクニックを使った表現と、その違いについて考えていきましょう。
オルタネイトピッキングはピックを往復させ、「毎回ピッキングする」ので、
という特徴があります。
まずはじめに、16分音符で4つずつ演奏する速弾きフレーズを見てみましょう(動画2分04秒)。
譜例:オルタネイトピッキングを使った速弾き:その1
このフレーズでは、音が変わるタイミングが必ずダウンピッキングになるので、比較的弾きやすく感じることでしょう。
ではその次に、「1音につき1ピッキング」、ピッキングごとに音を変えていくフレーズを見てみましょう(動画2分37秒)。フィンガリングの難易度も少し上がりますが、ぜひ挑戦してみてください。
譜例:オルタネイトピッキングを使った速弾き:その2
6連符の連続ピッキングはかなり速いですが、これを弾きこなすには、「筋肉と根性」よりも「フォームの研究とリラックス」が必要です。1拍ごとにフレーズが区切れるので分かりやすく、練習しやすいフレーズです。
やや速い「その1」と、かなり速い「その2」で、博士のピックは「弦に対しての角度」が違います。弦に向かうピックの角度を操作することで、
という二つのバランスをとることができます。ピッキングフォームの参考にしてみてください。
図:ピックの角度とメリット
続いて、ハンマリング・オンとプリング・オフを駆使した速弾きフレーズです(動画3分06秒)。さきほどの「オルタネイトピッキングを使った速弾き:その2」と音遣いは同じですが、フィンガリング技を駆使して演奏すると、どうなるでしょうか。
譜例:ハンマリング/プリングを駆使した速弾き
フィンガリング技は音数に対してピッキングの数が少なくなるため、
という特徴があります。
博士の指先は常に、「フレットぎりぎり」のポイントに着地しています。フレットぎりぎりの位置で弦を押さえると、
というメリットがあり、スピードに必須の「脱力」をしながら、美しい音を奏でることができます。
図:フレットと指の関係
ピッキング技を中心とした速弾き、フィンガリング技を中心とした速弾き、この二つを聞き比べてみましょう(動画3分47秒)。
二つのフレーズは、同じ音遣い、同じ速さで、使っているテクニックが違います。この二つを聞き比べて、あなたはどう感じましたか?
ギター博士「オルタネイトピッキング、ハンマリング/プリングと聴き比べてみて、いかがだったかな?
オルタネイトピッキングには、独特の力強さを感じるのう。掘り進んでいくような、スリリングなフィーリングがあるじゃろ?
また、ハンマリングとプリングを駆使してできる、流れるようなレガート感、とても美しいじゃろ?
同じ音遣い、同じ速さなのかもしれないが、フィーリングはずいぶん違ったものに聞こえたと思うんじゃ。だから、曲やフレーズによって使い分けたり、ミックスして使ったりして、自分の流れを作ってみてほしいぞ。」
速弾きで伝わるのは、スピード感や勢いだけではありません。「この速弾きには、密度を感じる」「この速弾きには、広がりを感じる」といった、速さ以外のイメージも表現することができます。こうした表現の秘密の一つに「音の選び方」があります。ここでは、
の二つに絞って、速弾きにおける音の選び方を考えていきましょう。
まずは、「スケール的な速弾き」で、階段を上り下りするように、音階の隣の音を順番に次々と進んで行きます(順次進行。動画5分26秒)。博士は「直線的で、勢いのあるサウンド」だと感じているようです。あなたは、どう感じましたか?
譜例:スケール的な速弾き
使用するのは1弦のみ、オルタネイトピッキングで演奏します。前半の上昇は完全な順次進行、後半の下降は4音の下降フレーズが順番に下りてくる順次進行です。これは今のところ無伴奏で演奏しているので、使っているスケール名はBbメジャースケールもしくはGナチュラルマイナースケールそのほか、一つに絞りにくくなっています(答えはのちほど明らかになります)。
次に、「コード的な速弾き」を見ていきましょう(動画6分16秒)。「ド、ミ、ソ」や「レ、ファ、ラ」というように、スケールの音を一個飛ばした音遣いです(跳躍進行)。博士は「サウンドに少し広がりが出る。そして、コードが進行しているようにも聞こえる」と感じているようです。あなたは、どう感じましたか?
譜例:コード的な速弾き
2弦にルート音がある、コード分解フレーズです。前半の上昇は
Eb、F、Gm、Am(b5)、Bb、Cm、Dm、Eb
のコードトーン(構成音)をばらばらに弾いており、「Bbキーのダイアトニック・コードを4番目から順番に弾いて」いると解釈できます。後半の下降は、これをFからさかのぼっていきます。
スケール的な速弾き、コード的な速弾き、この二つを聞き比べてみましょう(動画6分55秒)。
ここではベースが「C」を鳴らしているので、「スケールはCドリアンだ」ということがここでようやくわかります(もちろんこれをBbメジャーやGナチュラルマイナーと解釈してもOK)。
コードについては、ある程度のお勉強が必要になります。「ギタリストはコードと共にあるものだ」という考えがポップスやロック、ジャズ、ブルースなどでは一般的ですから、コードが苦手な人もこの機会にぜひ勉強してみてください
ギターで学ぶ!音楽理論
ギター博士「どちらもグッドフィーリングじゃから、
ワンコードでテンポの速い曲なら、スケールライクに直線的に攻める、
複雑なコード進行を表現したいなら、コードライクに演奏する
みたいに、自分の好みで使い分けておくれ。」
三つ目は「リズムに対してのアプローチ」です。これも非常に深いテーマで、それはそれはさまざまなアプローチがあるのですが、今回は「ピッキングの位置」に注目します。ハンマリングやプリングを多用したフレーズでは、ピッキングがリズムのアクセントになります。「いつピッキングするか」により、フレーズのノリが変わってくる、というわけです。
ここでは、
という二つにどのような違いがあるのかを見ていきましょう。
まずは、「奇数拍(リズムの表)でピッキング、偶数拍でハンマリング/プリング」というコンセプトで演奏した速弾きフレーズを見てみましょう(動画8分27秒)。
譜例:奇数拍ピッキングフレーズ
Cマイナーペンタトニックスケールでの下降/上昇です。フレーズが「ルート音(トニック)に始まりルート音に終わる」というところを意識しているため、前半と後半でスケールのポジションが違います。
規則的なオルタネイトピッキングで考えると、奇数拍はすべてダウンピッキングになります。ダウンピッキングからのハンマリング/プリングは比較的弾きやすいため、練習しやすくスピードアップもしやすいと感じる人が多いでしょう。
このフレーズをリズム的に別の視点で分析すると、
「6音フレーズの連続」
だと考えることができます。4拍子に16分音符でこれを演奏すると、6音フレーズは1拍目に収まらずに次の拍の途中まで及び、次の6音フレーズはその拍の途中から始まります。これを「拍をまたぐ」と言い、同じように1小節に収まらずに次の小節にまでフレーズが及ぶのを「小節をまたぐ」と言います。
譜例:6音フレーズが小節をまたいでいる
また、この6音フレーズは、ふたつ続けると4分音符3つ分、すなわち「3拍」にちょうど収まり、「3拍子で弾いているような雰囲気」を帯びます(上の譜例、青)。
このように、このフレーズは「1拍」「1小節」「4拍子」というリズムの区切りを崩した、分かりやすさとリズム的な面白みを兼ね備えたフレーズなのです。
さて次は、「偶数拍(リズムの裏)でピッキング、奇数拍で『主に』ハンマリング/プリング」というコンセプトで演奏した速弾きフレーズを見てみましょう(動画9分51秒)。
譜例:偶数拍ピッキングフレーズ
これもさきほどの「奇数拍ピッキング」と同様、Cマイナーペンタトニックスケールを使った下降/上昇フレーズですが、フィンガリング技の関係でポジションの使い方が異なっています。ポジションの違いはTAB譜の数字から明らかですが、実は「音の上下としては全く同じフレーズ」なんです。
このフレーズは、ピッキングに悩む人も多いのではないでしょうか。博士はオルタネイトピッキングのルールに従って、「ダウン、アップ、アップ、アップ」の連続という順番でピッキングしています。人によってはこの逆で「アップ、ダウン、ダウン、ダウン」の連続で弾いた方がしっくりくることもあるでしょう。
このような偶数拍アクセントのフレーズは、注意していないと弾いているうちにリズムが分からなくなってしまうことがあります。これは「拍の頭でピッキングしない」ことから、「拍の頭を自分で感じにくくなってしまう」のが原因です。このフレーズでは「プリングで拍の頭を感じる」ことを意識すれば、自力で4拍子もキープでき、バンドのグルーブに合わせてしっかり弾き切れるようになります。
譜例:プリングで拍の頭を感じる
奇数拍でピッキングするフレーズ、偶数拍でピッキングするフレーズ、この二つを聞き比べてみましょう(動画10分21秒)。
音の上下に違いのない二つのフレーズが、ピッキングの位置を操作することによってどのように聞こえたでしょうか。
ギター博士「わしは『偶数拍ピッキング』で演奏することが多いんじゃ。奇数拍にピッキングすることもあるんじゃが、『リズムのアクセント』という意味では、偶数拍にアクセントが入るように狙っておるぞ。
このリズムのうねりを操作できると、『絶対的な速さ』とは別の『体感的な速さ』のあるスピード感を表現できるようになるんじゃ。」
以上、
という3つの視点から、速弾きの表現方法を見ていきました。もちろん表現方法はこれがすべてではなく、ほかにさまざまなものがあります。また、ミュージシャンそれぞれがいろいろなアプローチを編み出して、新しい速弾きを作りだしています。今回の内容について、博士にまとめてもらいましょう。
速弾きというのはな、初めは
こうしたものに注目してしまいがちなんじゃが、やはり音楽であるので、そのまえにしーっかりと「音」を、「音楽」をイメージしてほしいんじゃ。
たとえばわしだったら、自分の速さでどんなに早く弾いている時でも、頭のかたすみに
こういったものが常にあって、こうした視点から「速さ」の中に違ったうまみをイロイロと込めようとしておるんじゃ。これが正しいというわけじゃなくてな、みんなも自分なりの「うまみ成分の込め方」を探し出してほしいんじゃ。
今回わしが紹介した3つのポイントが、みんなの参考に少しでもなってくれると、わしはとっても嬉しいぞ。
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