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Deluxe Player’s Stratocaster Sapphire Blue Transparent
フェンダー社は
この二つの直営工場でギターを生産しています。
メキシコのエンセナダ工場は「コロナ工場以上」とも言われる生産体制を持ち、昔ながらのスタイルを受け継いだ「クラシック・シリーズ」、現代的なテイストを盛り込んだ「デラックス・シリーズ」、またアーティストモデルなどクオリティの高い製品を生産しています。今回は、このエンセナダ工場で生産されるいわゆる「フェンダー・メキシコ」のストラトキャスターに注目してみましょう。
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1: メキシコ・エンセナダ工場の沿革 1.1: メキシコにあるフェンダー直営工場の今 1.2: エンセナダ工場立ち上げまでの歴史 2: 「メキシコ製」ストラトの特徴 2.1: 「フェンダーメキシコ」というブランドは、無い。 2.2: よくある質問「メキシコ製の品質ってどうなの?」 2.3: 「メキシコ製」のサウンド 3: メキシコとUSAの比較検証 3.1: 1)ネック周り 3.2: 2)ボディ関連 3.3: 3)パーツ関連 4: 「メキシコ製」フェンダー・ストラトキャスターのラインナップ 4.1: Player シリーズ 4.2: Vintera シリーズ 4.3: Deluxe シリーズ 4.4: Classic シリーズ 4.5: Road Worn シリーズ 4.6: Artist モデル 4.7: 生産完了モデル
Road Worn™ Guitars and Basses
「45分のライブをするために、450マイルを突っ走る価値はある。」エンセナダ工場で生産される「ロード・ウォーン(=ツアーでやたら使った)」シリーズのイメージ映像です。酷使に耐えたキズだらけの楽器って、カッコイイですよね。
「スタッフの勤勉さ」では、コロナ工場よりもエンセナダ工場の方が上回っていると言われています。国内の他の職業に比べて遥かに収入が良く豊かな生活ができるので、「フェンダー工場勤務」はメキシコ人にとって一つのステイタスとなっており、誰もがそのプライドを持って仕事をしています。
ギター/ベース弦の工場からスタートしたエンセナダ工場には、今やコロナ工場を超えるほどの最新設備が整えられており「理想的な生産体制が実現している」と評されています。またコロナ工場から車で5時間ほどという(アメリカの感覚では)近さから、フェンダー・カスタムショップのマスタービルダーが現場に赴き直々に技術指導をするのが伝統になっており、「物つくりの前の人つくり」の努力も続けられています。
1965年にフェンダー社を買収したCBSは、効率化に腐心するあまり製品の質を下げてしまい、売り上げを落としてしまいます。このピンチを乗り切るため1971年に迎えられたのが、「フェンダーの救世主」と称されるビル・シュルツ(1926 -2006)氏です。
シュルツ氏は
などいろいろ頑張りましたが、当時のフラートン工場はCBSの方針で職人のリストラが行われたことから生産技術が追い付かず、うまくいきませんでした。このリストラでは給料の高いアングロサクソン系の職人が退社し、給料の安いヒスパニック系(メキシコ、キューバなどラテン系)の職人が残されたようで、今なおコロナ工場はヒスパニック系の職人が多いとのことです。
1984年、とうとうCBSはフェンダー社を手放します。翌年シュルツ氏はかき集めた資金でフェンダー社を買い取りますが、フラートン工場は売り飛ばされてしまっていたので、次なる生産拠点としてコロナ工場が設立されます。シュルツ氏はここにカスタムショップを立ち上げることで高級品を生産する体制を整えますが、反対に低コストでも生産できる拠点としてメキシコに注目し、比較的治安のよいエンセナダに工場を設立します。
エンセナダ工場は弦の生産からスタートしますが、1988年、コロナ工場の技術指導に活躍したフジゲンの技術者たちを迎え、ギター生産の準備に入りました。この技術指導の甲斐あって、翌1989年にエンセナダ工場でのギター生産が開始されます。技術指導が終わってからも、定期的にカスタムショップのマスタービルダーが訪れることで、製品の質は保たれるばかりか年々向上していると言われています。
日本には「フェンダー」を、別会社が運営していた「フェンダー・ジャパン」との区別で「フェンダーUSA」と呼ぶ伝統があります。この延長で、エンセナダ工場で作られるギターは「メイドイン・USA」ではないことから、便宜上「フェンダー・メキシコ」という呼び方が生まれました。
現在では「フェンダー・ジャパン」がなくなり、日本製のラインナップは「ジャパン・エクスクルーシブ」シリーズとして「フェンダー・レギュラーライン(USA)」に吸収されていますから、日本製もメキシコ製もアメリカ製も、生産地が異なるだけで等しく「フェンダー」ブランドのギターです。
しかしながら「生産地が違うんだから、同じブランドであっても違うものだ」という心理は、どうしても働いてしまいますね。日本でしか使用されないガラパゴス化した呼称ですが、「フェンダー・メキシコ」は「青森のりんご」「関のナイフ」「香川のうどん」のような「ブランドっぽく見える生産地の表示」として今後も使用されていくことでしょう。
USA製もメキシコ製も同じフェンダーの名を冠する製品であり、どちらが本物でどちらが偽物(コピー)で、という分け方はされません。では、両者のギターに品質の差はあるのでしょうか。これについては、「USA製とメキシコ製という分け方では、製品の品質に上下は生まれない」と考えるのが世界標準です。
それぞれの工場では、
このように製品のグレードが分けられていますが、工場で扱う製品のグレードと職人の製造技術は別の問題です。コロナ工場とエンセナダ工場とでは、
という点で、製品の品質に差ができにくい体制ができています。よって「メキシコ製だから作りが悪い」ということは起きません。自分好みにセットアップし直すと「化ける」ことが多いと言われるのも、USA製と同じ特徴です。ちなみにどちらも同じ作り方をする関係上、メキシコ製でもパーツの寸法は「インチサイズ」となります。
USAと共通の木材を使用していることもあって、音についての評判は上々です。さすがにカスタムショップ製が採用されることはありませんが、ピックアップも優秀で「ちゃんとフェンダーの音がする」と言われています。
「フェンダー・ジャパン」など日本製のギターは高精度な組み込みできっちりと均一に作られるので、いわゆる極端なアタリ/ハズレが少ない半面、時として「音が硬い」と言われることがあります。これに対してメキシコ製のサウンドには暖かみがあると言われます。
左:STANDARD STRAT ARCTIC WHITE、American Standard Stratocaster Olympic White
メキシコ製とUSA製は、グレードの上下こそあれ品質に差はありません。では、どんなところが同じでどんなところが違うのでしょうか。価格の差はどんなところに由来するのでしょうか。
「標準(Standard)」を名乗るこの二台を比べてみましょう。
ネック関連については、
ということで、かなりの部分に共通点があります。
相違点としては、
STANDARD STRAT(MEX) | American Standard(USA) STRAT | |
ヘッドロゴ | モダン・ロゴ | スパゲティ・ロゴ |
フレット数 | 21 | 22 |
ナット幅 | 1.650″ (42 mm) | 1.685″ (42.8 mm) |
ジョイント | 4-Bolt Standard | 4-Bolt with Micro-Tilt™ Adjustment |
ペグ | ロトマチック | ロトマチック&スタガード |
楽器本体のグレードに関する相違点は、
この仕様の有無のみで、ネック本体のグレードとしては違いがない、と断言できます(マイクロティルトが付いていなくても、プロの職人に依頼すれば仕込み角を調整することは可能です。心配はいりません)。
メキシコ製は多くの場合、70年代に多く見られた「モダン・ロゴ」が採用され、一部のアーティストモデルなどを除いて21フレット仕様となります。人気の高い「スパゲティロゴ」、現代の音楽で有利な「22フレット仕様」、この二つの人気スペックがUSAの標準的な仕様であり、アメスタの付加価値になっています。
STANDARD STRAT(MEX) | American Standard(USA) STRAT | |
ボディ材 | アルダー | アルダー |
ボディ塗装 | ポリエステル | ポリウレタン |
ボディ材は共通、塗装に違いがあります。ポリエステルもポリウレタンも「ポリ系」としてラッカーと区別されますが、このポリ系にもやはり違いがあります。ポリエステルは厚塗りしても乾燥しやすいことから生産性が高く、価格を抑えたモデルの生産で頻繁に使用されます。反面「薄く塗ることができない」というデメリットがありますから、できるだけボディの振動を大事にしたい時には敬遠される塗装です。
ポリウレタンは塗幕をラッカー並みに薄くすることができるため、ボディ振動を邪魔しにくい優秀な塗装です。塗装面としての一定の強度に達するためには幾度もの重ね塗りが必要なため、生産効率はそれほど高くありません。アメスタは下地の塗装を極薄にすることで、ボディ鳴りを向上させています。
STANDARD STRAT(MEX) | American Standard(USA) STRAT | |
ピックアップ | Standard Single-Coil Strat | Custom Shop Fat ’50s Single-Coil Strat |
コントロール | ヴォリューム、フロントトーン、センタートーン | センターのトーンはリアにもかかる。 |
ブリッジ | 6点留めヴィンテージスタイル | 2点留め |
ケース | 別売 | ハードケース付属 |
ピックアップの違いが非常に大きなグレードの違いに出ています。スタンダード・ストラトは言ってみれば「普通のシングルコイル」が載っていますが、アメスタに載っているのはカスタムショップ製です。アメスタがリアピックアップにもトーンが効く現代版の回路を採用しているのに対し、スタンダード・ストラトはリアにトーンが効かない伝統的な配線になっています。
「どんなケースが付属するか」も価格に反映されるポイントです。アメスタがハードケースであるのに対し、スタンダード・ストラトではケースは付属せず、そのぶんだけさらに価格が抑えられています。デラックスシリーズなどギグバッグが付属するものもありますが、ちゃんとクッションが入っておりポケットも大きななかなか良いもので、ギターの持ち運びに重宝します。
次のページではエンセナダ工場で生産されるストラトキャスターのラインナップを見ていきますが、その前にラインナップの全体像をざっと把握しておきましょう。2018年8月時点で所謂メキシコ製フェンダー・ストラトは5つのラインナップからリリースされています(下テーブルのRoad Wornは厳密にはClassicシリーズに属します)。
Player シリーズ |
次世代を担うプレイヤーに向けた、あらゆるスタイルにフィットするモダンなプレイアビリティを備えたシリーズ。 | ¥64,800〜 ¥69,300 |
Vintera シリーズ |
50年代、60年代、70年代のストラトキャスターが帯びている特徴を再現したラインナップ。 | ¥108,000〜 ¥117,000 |
Classic シリーズ |
同上 | ¥117,000 |
Deluxe シリーズ |
Standardシリーズ(生産完了)をベースにアレンジを加え、強化したモデル。 | ¥108,000〜 ¥122,750 |
Road Worn シリーズ |
ツアーで弾き倒したギターが帯びる雰囲気を再現したギター。 | ¥135,000 ¥152,750 |
Artist モデル |
アーティストのシグネイチャーモデル | – |
メキシコ製ストラト・ラインナップの概要(価格は税抜:2019年11月時点)
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