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「フロイド・ローズ・トレモロシステム(FRT)」は、弦をネジで固定することでチューニングの狂いを極限まで抑えるナット&ブリッジのことで、両端をネジ留めすることから「ダブルロッキング・トレモロシステム」とも呼ばれます。大きな音程変化を出すことができ、またチューニングが安定することから「ギター界の最も革新的な技術」の一つと見なされています。今回は、このフロイドローズに注目してみましょう。
注:「フロイドローズ(Floyd Rose)」は登録商標のため、他社製品で使用する事のできない名前です。代わりの呼び方としては「ロック式」「ダブルロッキング・トレモロシステム」「フロイドローズ・タイプ」などがありますが、いちいち呼び方を変えるのはあまりにも不便なので、慣例的に全てひっくるめて「フロイドローズ」と呼んでいます。
Night Ranger – Penny (Live)
ナイトレンジャーのブラッド・ギルズ氏は、アーミングの名手として世界的に著名なギタリストです。この動画でも、2分から卓越したアーミングが冴えるギターソロが見られます。氏はリリース当初からフロイドローズに注目しており、初期型ユニットのシリアルNo.3を持っていると云われます(1はエドワード・ヴァン・ヘイレン氏、2はニール・ショーン氏(ジャーニー))。
フロイドローズタイプのロックナット
フロイドローズでは、ナットとブリッジのサドルの両側で弦が固定されます。チューニングが崩れるのはストリングポスト(ペグの軸)、ナット、ブリッジ内部が原因である事が多く、弦を両端でロックすることによってこれらがチューニングに影響しないようにしています。
チューニングはまずヘッド側のペグで行い、ナットを締めてからはブリッジ側の「ファインチューナー」で合わせます。
ファインチューナーをまわしてチューニングの微調整を行う
フロイドローズは、日常的に6角レンチを必要とします。いつでもレンチを使う事ができるように、ヘッド裏などに「レンチホルダー」を装着したり、常にレンチを携行したりするようにしましょう。
フロイドローズ・タイプの弦の交換方法
アームダウンした時の様子。調整によってはさらにダウンさせることもできる
フロイドローズは、音楽的に必要だと思いにくいレベルまで音程変化を出すことができます。弦がダルンダルンになるまで下げることができますし、ボディにザグりがあれば、1音半や2音のアームアップが可能になります。そこまで激しく動かしてもチューニングがほぼ保たれるため、技巧派プレイヤーにはとても頼りになるパーツです。
アームを使って弾いてみよう!色々なアーミングのやり方【ギター博士】
シンクロナイズド・タイプのギターと、フロイドローズ・タイプのギターでの、アームを使ったプレイの比較ができる。フロイドローズ・タイプのほうが、より「エゲツなく」アーミングができるのがわかる
Ibanez RG2770QZA-WPB:非常に重量感のあるブリッジ部分
フロイドローズは金属のパーツが多い重たいユニットなので、サウンドに影響します。一般に音の伸びが良くなり、ハーモニクスが出やすくなりますが、均一さのあるトーンは、人によっては平べったいとか、冷たいという印象を持つかもしれません。しかしこのトーンはディストーションサウンドとの相性がたいへん良好で、80年代におけるヘヴィメタルシーンにおいて大変重要なアイテムでした。またバンドアンサンブルではシンセサイザーとの相性がよく、ポップス/フュージョンのプレイヤーにも愛用されています。
ピッキングハーモニクス
Ibanez RG2770QZA-WPB
大きな金属パーツによる面構えは、武骨なイメージが演出されてとてもクールな印象になります。またハードロック/ヘヴィメタル、ポップス/フュージョンで用いられる事が多いということから、現代的なイメージがあります。
Joe Satriani – Satch Boogie
ジョー・サトリアーニ師匠の真骨頂「ハーモニクス・ホイッスル」が大いに味わえる曲です。左手であらかじめアームを下げておき、ピッキングハーモニクスを出してから戻します。この曲が収められているアルバム「Surfing with the Alien」は、ジェフ・ベック氏の「ブロウ・バイ・ブロウ」に次ぐ、人類史上2枚目の「ギターインストによるプラチナディスク」となっています。制作費の不足にあえぐ中、ドラムは打ち込み、ベースを自分で演奏したアルバムでしたが、この作品の成功で師匠は一躍ギターヒーローへと変身しました。
一般的なフロイドローズは「フローティング」といって、弦とトレモロスプリングの張力を釣り合わせてバランスを保つセッティングをします。弦が切れるとこのバランスが崩れ、ユニットの位置が大きく変わってしまい、チューニングがぐちゃぐちゃになってしまいます。やたらと弦を切ってしまわないようなプレイを心がける必要がありますが、万が一のために「アーミングアジャスター(ESP)」などのパーツを装備するのもお勧めです。
フロイドローズはストラトタイプのギターに搭載される事が多く、またハードロック/ヘヴィメタルにフィットする変形ギターに搭載される例も多くあります。反面テレキャスやレスポール、SGなどでの使用例はそれほど多くありません。
「フロイドローズがイイな」と何となく思っていても、最初はどんなギターを選べばいいのか判断がつかないかもしれません。しかし仕様については経験を積んでからこだわればいいことです。ここは割り切って、価格とルックスで選んでしまいましょう。これから巧くなっていく自分の相棒となる、クールな一本を選んで下さい。ただし、モデルによってはアームアップができないものがありますので、アームアップに憧れのある人は注意してください(ボディを加工するなどで後からアームアップを可能にする事はできます)。
DragonForce – Black Winter Night (Live) from ‘In the Line of Fire’ 2015
5分からのハーマン・リー氏によるギターソロに注目。アームを掴んでギターごと持ち上げるラストがとても印象的ですが、この場面ではハーモニクスを鳴らした上でアームアップを行い、とても高い音を出しています。
フロイドローズはユニット自体、パーツが多くて高額になりがちです。そのためフロイドローズ搭載モデルでは、ストラトやレスポールなどスタンダードな機種で見られるように、¥1万近辺で手に入るという機会はなかなか得られません。だいたい¥2万近辺が最も低価格なモデルになります。
この価格帯のギターをプロが仕事で使用する事はほとんどありませんが、初心者が最初に持つギターとしては充分で、練習だけでなくユニットの扱いやサウンドメイクまで、しっかり学ぶことが出来ます。
Cort X-6VPR-BKS
イシバシ楽器が推しているギターブランド「コルト」は、高いスペックを維持しながら価格を極限まで下げる事に成功しています。このX-6は、スーパーストラトのスマートなディに高出力なピックアップをHSH配列し、さらにはトーンポットに仕込まれたスイッチによりコイルタップまでできます。テクニカル指向のギターとして充分な機能が備わっており、ギターの練習だけでなくこうしたタイプのギターの構造や取扱について知ることができます。
Cort X-6シリーズを…
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KRAMER Pacer Classic Candy Red
ヴァン・ヘイレン氏がかつて愛用したことで名高いクレイマーからは、シンプルなスタイルで求めやすい価格を実現したモデルがリリースされています。ボディにザグりがなくアームアップができない仕様(通称「ベタ付け」)ですが、アームを使わない時にユニットがボディトップに接することから弦振動の伝達に優れる、という利点があります。この価格帯ながらボディ材にマホガニーを採用していること、ヘッド裏にレンチが備えられているところもポイントです。
KRAMER pacer Classicを…
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この価格帯から、ボディシェイプやカラーリングなどのバリエーションが一気に増えます。これから始める方の感覚としては「ワンランク上の、ちょっとイイ楽器」になり、作りも音もよく、初心者から中級者まで長期的に付き合うことが出来ます。先述のコルトやクレイマーにもこの価格帯のモデルが出ている他、いろいろなブランドがこの価格帯のモデルをリリースしています。
ESPの人気機種「フォレスト」を低価格で再現したGrassRootsブランドのモデルです。アッシュボディの木目を活かしたシースルー塗装で、クラスを超えた高級感があります。フォレストのボディシェイプは樹木をイメージした斬新なものですが、ストラトタイプをベースとしており演奏性を損なわないように工夫されています。
GrassRoots G-FR-62GTを…
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群を抜いたコストパフフォーマンスを誇る老舗「アリアプロII」からは、求めやすい価格帯を維持しながらもメタル方向にしっかり振り切ったモデルがリリースされています。「MAC-MAX」は代表機種「MAC」のスレンダーなスタイルに、
そしてFRT搭載という仕様を盛り込んだ、まさに純粋なメタルギアとして仕上がっています。
この価格帯でハムバッカー1基というギターはかなり珍しいですが、「ネックジョイント付近に穴が空いていない」というボディ構造は強度が頼もしく、フロントピックアップを持つギターではなかなか難しいタイトさのあるサウンドが得られます。
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「JS32」は、ジャクソンの定番機種「ディンキー」を求めやすいJSシリーズからリリースしたモデルで、ナチュラルカラーはマホガニーボディ、塗りつぶしカラーはバスウッドボディです。「JS32Q」は、ポプラ製ボディのトップにキルテッドメイプルをあしらった上位機種です。両機とも求めやすい価格帯ながら「ジャクソン製のギター」としての矜持をしっかり持ち、
という定番スペックを受け継ぎ、緩やかな曲面を描くボディトップの加工によって、もう一息演奏性が上がっています。
Jackson JS32/JS32Qを…
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この価格帯になると定価で¥10万になるものもあり、デザイン的に凝った装いのものや、高性能なパーツが付けられているものになってきます。ハンドメイドモデルも珍しくはなく楽器としてかなり優秀になりますから、調整の追い込み方次第でプロミュージシャンの要求に応じることもできる、高いポテンシャルを秘めています。
長年キラーを愛用しているルーク篁氏のシグネイチャーモデル「KG-ファシスト」を低価格で再現したモデルです。ピックアップセレクタ、ボリュームポットに加え、ボリュームポットを介さず前回の音量を出力させるダイレクトスイッチが付いており、ソロ←→バッキングの切替がスムーズにできます。弦高を下げたセッティングなのでトレモロユニットは落とし込まれていますが、アームアップには対応していません。
KILLER KG-Serpentを…
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フェンダー「プレイヤーストラトキャスター・フロイドローズHSS」は、ストラトにハムバッカーとFRTを乗せた「スーパーストラト」ど真ん中のモデルです。ピックアップが大きなポイントで、伝統的なフェンダーサウンドからややエッジを立たせた現代的なサウンドにチューンナップした上で、
というように磁石に違いを設けることで各ピックアップの音量を整え、「リアだけやたら音量がでかい傾向」というSSHの泣き所を解消しています。リア+センターでハムバッカーが自動的にコイルタップされること、指板がメイプルとパーフェローから選べること、メタル/ハードに縛られず全ジャンルに行けることもポイントです。
Fender Player Stratocaster Floyd Rose HSSを…
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現代ハード/ヘヴィ路線の雄「ディーン・ギターズ」の代表機種「ML 79」は、ディーンの人気を再燃させた功労者であり、ライブ中に非業の死を遂げたダイムバッグ・ダレル氏の忘れ形見でもあります。ディーンのMLと言えばダレル氏の愛用した仕様を意識したモデルが多い印象でしたが、近年はその影響から自由になり、柔軟なモデル展開を始めています。
大胆に伸びたボディと二股に分かれたヘッドが並々ならぬ存在感を発揮しますが、
という仕様は、ロックの伝統を牽引したギブソンの定番スタイルを踏まえています。ネックやボディ外周を縁取るバインディング、円柱形のスピードノブといった意匠も、伝統的なエレキギターの様式です。
DEAN ML 79 FLOYDを…
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PRSの「SEフロイド・カスタム24」は、同社の定番機種「SEカスタム24」にFRTを載せた強化版です。PRSのトレモロもチューニングの安定度はかなり優秀ですが、本機ではFRT装備に合わせてボディにザグリを施し、アームアップが可能になっているところが大きなポイントになっています。
ピックアップの「85/15″S”」はUSA製の上位機種「S2」シリーズと同じもので、太くつややかなPRSのトーンを持っています。またトーンポットの操作により両ハムバッカーをコイルタップでき、HH配列あるいはSS配列のギターとして使用できます。曲面で覆われた本体の美しさも手伝い、あらゆるジャンルの音楽で使用することができますが、どんなスタイルの音楽にでも攻撃的なアーミング・プレイを放り込むことができるわけです。
The PRS SE “Floyd” Custom 24
ラストのハーモニクス・ホイッスル。FRTの真骨頂です。
PRS SE Floyd CUSTOM 24を…
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PrestigeシリーズのRG
Ibanez RG(Prestige)シリーズをギター博士が弾いてみた!
Ibanez RG シリーズには Premium、Prestige、j.custom という順にグレードが上がっていきます。ギター博士が弾いている RG は Prestige のラインナップ「RG2770QZA-WPB」で、ハードロック的な歪み/テクニカルなリードプレイに適したモデル。もちろんフロイドローズの恩恵によってハードなアーミングにもバッチリ対応できるようになっています。
ハード/ヘヴィ・ロックの王道「Ibanez RG」徹底分析!
フロイドローズが誕生した時には、ストラトのトレモロをフロイドローズに交換するという改造が流行しました。現在では最初からフロイドローズがついているギターが多くリリースされていますが、シンクロタイプのギターをフロイドローズにする、あるいはトレモロレスのギターにフロイドローズを取付けるという改造も行なわれます。こうした取付けには高度な技術を必要とするため、プロのリペアマンに依頼しましょう。
ギター修理・リペアショップ検索サイト
現行フロイドローズの定番中の定番で、カラーリングは4種類(シルバー、ゴールド、ブラック/ニッケル、ブラック)あります。世界中のプロミュージシャンに支持されるユニットですが、このユニットが苦手な人もいて「ファインチューナーが近くて演奏の邪魔」と言われます。しかしそこはフォームの研究と練習でクリアできます。
「プロの道具」を誇示するかのようにパーツごとの販売も行なわれているので、調子を崩した部品を取り替えるなどして長期的に使用することができます。またサスティン・ブロックの厚みが3種類あり、好みの鳴り方にすることができます。
Floyd Rose Originalを…
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日本のパーツメーカー「ゴトー」のGE1996Tは、フロイドローズライセンス(フロイドローズ社に特許料を支払った)トレモロユニットの定番になっています。ファインチューナーがサドルから遠ざかるように設置してあるため、演奏の邪魔に鳴りにくいのが特徴です。また6弦側の支点が直線状の「ナイフエッジ」になっており、さらに小さなポイントでユニットを支えています。多少の違いこそあれ本家のフロイドローズ・オリジナルとそっくりな外観ですが、パーツに互換性はありません。
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