アイバニーズ(Ibanez)のギター徹底紹介!

[記事公開日]2016/3/1 [最終更新日]2022/12/21
[編集者]神崎聡

アイバニーズ(Ibanez)のエレキギター

アイバニーズ(Ibanez)は愛知県名古屋市に拠点を構える星野楽器が保有するブランドで、その歴史は1908(明治41)年、星野書店の楽器部新設から始まります。「なぜ書店で楽器が?」とも思いますが、「教科書など学校の教材を扱う上で、音楽の教材としてオルガンなどの楽器が求められた」という背景のようです。

1929(昭和4)年にはスペインの名門「イバニエズ・サルバドール」社のギターを中心に世界各地の楽器を輸入、販売を開始。この「イバニエズ」が現在のブランド名「Ibanez」の由来です。第二次世界大戦での名古屋空襲で全てを失ってしまいますが、べっ甲ピックの輸出を成功させるなどでじわじわと復活、徐々に生産力を上げていきます。

この頃はまだコピーモデルを生産していましたが、以後1970年代にはオリジナルモデルを次々と発表、ジョージ・ベンソン氏やポール・スタンレー氏(KISS)など一流ミュージシャンのシグネイチャーモデルも開発しています。スティーヴ・ヴァイ氏のシグネイチャー「JEM」は1988(昭和63)年に発表。その後も変わらず数々の一流プレイヤーとのコラボレーションを続けています。

「魅力あるギターを生み出す使命」Ibanezメールインタビュー

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1: 代表機種「RG」に見る、アイバニーズ・ギターの特徴 1.1: 「多弦」先駆者のノウハウ 1.2: 魔法がかかったように弾きやすい極薄ネック 1.3: 機能美に富んだブリッジ 1.4: コイルタップをからめた特殊配線 1.5: HM/HRにフィットしたトーン 2: アイバニーズのソリッドギターのラインナップ 2.1: IRON LABEL 2.2: AXION LABEL 2.3: RGシリーズ 2.4: Sシリーズ 2.5: AZシリーズ 2.6: FRシリーズ 2.7: Artistシリーズ 2.8: Roadcoreシリーズ 2.9: TALMANシリーズ 2.10: 変形ギター 2.11: シグネイチャーシリーズ 3: アイバニーズのホロウボディ・ギター 4: その他のアイバニーズ製品

代表機種「RG」に見る、アイバニーズ・ギターの特徴

RG2727FZA RG2727FZA TBK

アイバニーズのギターはどのモデルもスタイリッシュであり、想定されるジャンルでのプレイアビリティが高いという特徴がありますが、実際には「アイバニーズのギターはこうでなければならない」といった決まりを設定しているわけではなく、プロジェクトごとに自由なコンセプトを打ち立てています。またポイントを絞ったブリッジやピックアップなどで、大企業ならではの強力な開発力をいかんなく発揮しています。

これにより、ポップスからロック、デスメタルまで、また始めたばかりの初心者から超絶技巧派や変態さんまでカバーできるソリッドギター群、ジャズやブルース、ロカビリーなど幅広いジャンルをカバーするアーチトップギター群といった膨大なラインナップが作り上げられています。ここでは代表的モデル「RG」の中からRG2727FZA(Prestige)をピックアップして、アイバニーズのギターに見られるいろいろな特徴をチェックしてみましょう。

「多弦」先駆者のノウハウ

アイバニーズの7弦ギター

アイバニーズはスティーヴ・ヴァイ氏とのコラボレーションでいち早く7弦ギターを開発、後に続くコーン(KORN)やリンプ・ビスキット(Limp Bizkit)とのコラボレーションなどで、「多弦ギター」の普及に貢献しています。現在では8弦ギターや9弦ギターまで開発しており、この分野では他のブランドを一歩リードしています。

多弦ギターにおいては、弦の張力に耐えるためにも、弦振動を受け止めるためにも、ネックの剛性が求められます。アイバニーズではメイプルやウォルナットなどを貼り合わせた「多層ネック」により剛性を稼いでいますが、モデルごとに使用する木材や合わせ方を変えるこだわりを見せてくれます。なお、RG2727FZA(Prestige)ではメイプルとウェンジを組み合わせた5層ネックが採用されています。

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魔法がかかったように弾きやすい極薄ネック

Wizard HP

アイバニーズの大きな特徴である極薄ネックは「Wizard(魔法使い)」の名が付けられ、特にテクニカルなプレイにおけるストレスのない運指を可能にします。RG2727FZAには「Wizard HP」が採用されており、従来のWizardをさらにブラッシュアップしたグリップになっています。指板は430Rとかなり平滑で、薄いグリップと相まって技巧派プレイヤーに「ぐっ」と来る仕様になっています。

しかし「どんなギターもとにかくネックを薄くしろ」というわけではなく、ギターヴォーカル向けに開発された「Roadcore」シリーズはアコギからの持ち替えを想定して丸みのあるグリップを採用するなど、モデルそれぞれのコンセプトを重視したネックグリップが選ばれます。

機能美に富んだブリッジ

RG2727FZAに採用されている「Edge-Zero 7 tremolo bridge w/ZPS3」には、フロイドローズ・ユニットとしての高い基本性能に加え、

といったフロイドローズの泣き所を解消させる、さまざまなアイディアがふんだんに盛り込まれています。

  • ゼロポイントシステム:弦が切れてもブリッジのポジションを一定に保つ機能
  • スプリングミュートトレモロスプリングの共振を止め、キレのあるサウンドに

このほか、ネジ回しの要領でオクターブ調整ができる画期的なアイテム、道具を使わずにトレモロスプリングを調整する機構、アームのトルクを調節する機構、スタッドをがっちり固定する機構などで性能とサウンドが強化されています。

アイバニーズの「エッジ」シリーズはナイフのように鋭利な支点でスタッドに接するユニットで、「クリケット奏法」にことのほか良好です。ゼロポイントシステムとスプリングミュートは大変便利なものですが、ユニットやスプリングの振動を止めてしまうのでクリケット奏法のためには不必要となります。これらは外してしまうこともできるので、好みに合わせたセッティングに合わせることができます。

アイバニーズは他にもさまざまなブリッジを開発しており、それぞれに機能美が追求され、ギターの魅力を演出しています。

  • Lo-Pro Edge:ファインチューナーが邪魔にならない、フロイドローズ型ブリッジの名器
  • SyncroniZR(シンクロナイザー):支点部に高精度のボール・ベアリングを採用し、スムーズなアクションを実現
  • Tight-End R:ベース・プレートにサドルをがっちり固定し、弦振動の伝達効率を向上
  • Gibraltar Standard II:太いボルトでボディにがっちり固定する重量級フィクストブリッジの定番

など。

コイルタップをからめた特殊配線

コイルタップ機能

コイルタップはハムバッカーのパワフルな分厚いサウンドをシングルコイル風の澄み切ったサウンドに切り替えることができ、幅広いサウンドメイクが可能です。しかしタップ用のスイッチを増設すると、操作系が煩雑になってしまいます。このジレンマに対してアイバニーズは「セレクタスイッチの操作に連動したコイルタップ」を昔からの標準仕様とし、シンプルな操作で幅広いトーンバリエーションを実現しています。

RG2727FZAは2ハム仕様ですがセレクタスイッチは5ポジションあり、「通常のフロントハム、リアハム、両ハムのミックス」に加え、「フロントハムのパラレル(並列)、両コイルタップのミックス」が得られるようになっています。

RG2727FZAのピックアップ配列
ブルーカラーのPUはパラレル接続となる

「パラレル」はシングルコイル風のトーンになりますが、コイルを両方とも使っているためハムバッカーの強みである「ノイズ消去」が効きます。両タップをミックスしたハーフトーンは、リアハムバッカーの状態からスイッチを一つ進めると得られます。これはストラトキャスターで言うところの「リア+センター」に相当するポジションであり、ストラトに慣れたプレイヤーにとって扱いやすいようになっています。このタップした音も二つのコイルでノイズ除去作用が働くため、歪ませてもクリアなトーンが得られます。

コイルタップって何?コイルタップできるエレキギターについて

この他、

  • キルスイッチ:出力を全カットするスイッチ
  • トリサウンド:一つのピックアップで3種類のトーンを出すスイッチ

といった特殊機能が付けられるモデルもあります。

HM/HRにフィットしたトーン


ブリッジミュートを用いたリフの練習フレーズ【ギター博士】
ギター博士によるIbanez RGを使っての演奏。ハードロック・ヘヴィメタルとの相性抜群!

アイバニーズのトーンには「不自然なばらつきが出ないように整頓された、まとまりのある音」、という印象を持つプレイヤーが多いようです。このトーンはHM/HR(ヘヴィメタル/ハードロック)といった轟音の壁を打ち出したいジャンルとの相性が極めて良好で、このジャンルのアーティストモデルも多くリリースされています。

RG2727FZA(Prestige)のピックアップには、ディマジオ製「PAF」の7弦版がセレクトされています。このPAFはヴィンテージのギブソン・レスポールのピックアップを再現したもので、温かみのある太い音を持ち味としています。

ディマジオ以外にもセイモアダンカンEMGといった一流ブランドのピックアップが採用されることもあり、モデルごとにさまざまなトーンを持たせています。またオリジナルピックアップにも力を入れており、

  • TDB:タップしたときに本格的なシングルコイルの音になる高性能ハムバッカー(SVシリーズに採用)
  • Quantum:「ジェント」系サウンドに良好な、切れの良いハムバッカー
  • Super’58:70年代から愛され続ける伝統的なハムバッカー(ARTSTAR/Artcoreシリーズ)

など、キャラクターの立ったピックアップが用意されています。

また各ピックアップはハーモニクスポイントの目印になるように設計されているので、ハーモニクスを使用するプレイに大変有利な設計になっています。

アイバニーズのソリッドギターのラインナップ

アイバニーズ・ギターのヘッド

アイバニーズでは、様々なコンセプトで多様なラインナップが展開されています。すべてを把握するのはなかなか大変ですが、可能な限りまとめて紹介していきます。

アイバニーズのソリッドギターは、

  • AZシリーズ
  • RGシリーズ:RG,RGA,RGD
  • Sシリーズ:S,SV,SA
  • FRシリーズ
  • mikro などその他のボディシェイプ

というようなボディ形状に由来する多くのシリーズ、

  • j custom:マテリアルにも加工にも最高のものをとりいれた、国内生産の最高級モデル
  • Prestige:上位機種として国内生産され、各部調整用の専用マルチツールが付属
  • Premium:海外生産の上位機種で、ハイスペックでありながら求めやすい価格帯を堅持
  • AXION LABEL:モダンで挑戦的なメタルプレイヤーに向けて放つ新シリーズ
  • IRON LABEL:HM/HRに特化した、いかつい外観とサウンド
  • Standard:標準モデル

というように、生産地やコンセプトを表す追加情報で分類されています。

IRON LABEL

アイバニーズ「Iron Label」 RGIX6DLB

アイバニーズのソリッドギターは、HM/HRといったラウドミュージックのシーンと共に歩んできたと言えるでしょう。2013年に立ち上げられた「アイアン・レーベル(Iron Label)」は、このラウド系に着目したラウドミュージックのためのシリーズです。多機能を特徴とする RG や S も、アイアンレーベルのモデルはこのジャンルのために敢えて機能を制限し、操作をシンプルにアレンジしています。ジャンルにフィットした外観を伴うこともあり、こちら側を志向する多くのギタリストから支持を集めています。

ただメタル・ミュージックのために。アイバニーズ「Iron Label」

AXION LABEL

RGA61AL:ボディ RGA61AL

アイバニーズの「アクシオン・レーベル(AXION LABEL)」は、モダンで挑戦的なメタルプレイヤーに向けて放つ新シリーズです。進化が止まることのないメタルシーンを意識した新しいデザインは、アイバニーズの定番仕様に加え、他シリーズと異なる新しい仕様が多く採用され、同社のラインナップでもひときわ異彩を放っています。

現代メタルミュージックへの挑戦、アイバニーズ「AXION LABEL」

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