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ビートルズへのリスペクトを込めて「エピフォン・カジノ」特集

「Epiphone Casino」特集

「Casino(カジノ)」は、ギブソン ES-330 の Epiphone(エピフォン)版として1961年にデビューします。ギブソンのヒット作ES-335のエピフォン版「リヴェラ(Rivera)」、高級機ES-355のエピフォン版「シェラトン(Sheraton)」といったラインナップの中でカジノは廉価版という位置づけでしたが、ビートルズのポール氏、ジョージ氏、ジョン氏がこぞって愛用したことで抜群の知名度を築きました。現在では本家のES-330を押しのけるばかりか、エピフォンを代表する名機にまでなっています。ここではそのエピフォン・カジノに注目し、その魅力に迫っていきたいと思います。

Epiphone Casino本体の特徴

カジノはセミアコ?フルアコ?

「薄型でダブルカッタウェイのハコモノ」というカジノのボディシェイプは、一見してES-335を代表とするセミアコを思わせます。しかしカジノのボディ内部には、ES-335に内蔵されている「センターブロック」がなく、フルアコ同様「完全に空洞」になっています。これにより薄型ながらアコースティックな鳴りが強調され、一般的なセミアコよりも奥行きのある太いトーンが得られます。カジノの上位機種であるリヴェラやシェラトンはセンターブロックを内蔵したセミアコになっており、ソリッドのパンチとホロウボディのエアー感が共存したトーンが得られます。

普通のフルアコのようにボディ材を一枚板から削り出して作ったギターは楽器本体の鳴りが良すぎるため、ロックバンドの音量で鳴らすとハウリングやフィードバックを起こしやすくなってしまいます。そこでカジノではES-335同様、メイプルを何枚も貼り合わせた合板を使ってボディを成形し、鳴りを抑えています。さて、このカジノはフルアコなのでしょうか、セミアコなのでしょうか。
豊かで、力強いトーン「セミアコースティックギター特集」
甘く、くつろぎのあるトーン「フルアコースティックギター特集」

このような議題が上がった場合、日本国内ではボディの内部構造に注目し、ボディは薄いけどフルアコだという解釈が一般的です。しかし海外での解釈は違っており、一般に薄いハコモノは全てセミアコ(=semi-acoustic guitar)で、ボディ構造にはホロウ(hollow)/セミホロウ(semi-hollow)という言葉を使っています。フルアコの代表機種と考えられているES-175ですら、フィードバック対策のためボディが合板でできており生音を期待しているギターではない、ということからセミアコという解釈のようです。ですからカジノをセミアコと思っている人もいれば、フルアコだと思っている人もいますが、くれぐれもカジノの解釈を巡って口喧嘩などして、人間関係に亀裂を生じさせてしまわないようにしましょう。

トレードマークとなっている金属カバーのP-90

金属カバーのP-90

カジノにはドッグイヤーのP-90ピックアップがマウントされますが、プラスチックで包まれている通常のものと異なり、金属製のカバーで覆われています。レスポールのハムバッカーと同じように、ピックアップが金属のカバーで覆われていると、パワーと高音域が若干抑えられてマイルドな印象になります。著名な定番機でこのピックアップを搭載しているのはカジノだけなので、ピックアップについて見てもカジノには独特のトーンがあることが分かりますね。

フロント/リアそれぞれに同様のピックアップを持ち、レスポールなどギブソン系のギター同様それぞれのピックアップに対してボリューム/トーンポットが付き、ピックアップを切り替えるトグルスイッチが付いています。ボリューム/トーンは操作しやすい場所にはありませんが、あらかじめソロ用/バッキング用などのようにそれぞれの音量/トーンをセットしておいて、演奏ではトグルスイッチを中心に切り替えるという用途を意図した設計です。


Radiohead on Austin City Limits “Morning Mr Magpie”
カジノはブリティッシュ・ロックでは欠かす事のできないアイテムになっています。

ネックジョイントいろいろ

カジノの原型となったES-330は、19フレット地点でボディと接続していました。これに対してデビュー当時のカジノは16フレットでボディと接続されており、そのぶんネックがボディに深く刺さっています。これによりナット位置がプレイヤーに近くなり、ハイポジションと引き換えにオープンコードでのプレイが楽になります。一時期19フレット接続や17フレット接続に変更されることがありましたが、現在ではデビュー当時の16フレット接続に落ち着いています。

ブリッジ/テールピース

国内ではフルアコに分類されているカジノですが、TOM(チューン・O・マチック)ブリッジが採用されており、一般的なフルアコとの大きな違いになっています。
フルアコは

  • ボディの鳴りを大事にしたい
  • 単板削り出しボディトップに穴を空けることで剛性を損なわせたくない

ということからブリッジをボディに固定させず、弦の張力で安定させます。このためオクターブ調整はその位置を微調整することで簡単にできますが、アーミングやチョーキングなどの激しいプレイでは位置が変わってしまって、チューニングが崩れてしまう恐れがあります。いっぽうカジノのボディトップは合板で強度が充分なので、TOMブリッジをマウントすることができました。これにより激しいプレイをしっかりと受け止めることができるようになっています。

現在のテールピースは、伝統的なフルアコに搭載される「トラピーズ(ブランコ)テールピース」が採用されています。合板トップの強度からするとレスポールやES-335にマウントされる「ストップ・テールピース」もマウントできたかもしれませんが、さすがにそこまでの剛性は期待できないという設計者の判断があったようです。このトラピーズ・テールピースはブリッジからボディの端に向かって弦を張る形式なので、ブリッジからきつい角度を付けるストップ・テールピース(しかし角度調整はできるので、トラピーズ・ブリッジより優秀)よりも弦の張りが緩やかになり、押弦が楽になります。

casino-bigsby ブリッジにビグズビーが採用されたカジノ

アレンジとして、グレッチなどでも採用されている「ビグズビー・トレモロユニット」に換装されることがあります。またヴィンテージなどでは、

  • フリーケンサター:frequensator。フレクエンサターなどとも。エピフォンのトレードマークであった、長短2連のトラピーズ・テールピース
  • トレモトーン:各弦の可変域を調節することで、和音を崩さずにアーミングできるトレモロユニット

といったテールピースがマウントされていることもあります。

ビートルズは、なぜカジノを選択したのか?

カジノのスペックを一言で表現すると「P-90を搭載した、シンライン(ボディが薄い)フルアコ」となります。クリアでありながら太く奥行きのあるサウンドはジャズでも使用例があり、過度に歪ませない限りはどんなジャンルにも使用できる守備範囲の広い楽器です。それでもブリティッシュ・ロックの定番機とみなされているのは、ビートルズの影響に他なりません。では、なぜビートルズの3人はそこまでカジノを愛用したのでしょうか。本家のギブソンES-330ではいけなかったのでしょうか?


Get Back
「ゲットバック」のリードプレイの、キレがありながら丸く太いトーンはカジノならではです。

ポール氏が最初に惚れ込んでメンバーに勧めた、というのが定説となっていますが、これには諸説あるようです。ギター本体についてはポール氏もジョン氏も、その時たまたま気に入ったギターを使う、というスタンスだったようです。積極的に研究を重ねていたのはむしろジョージ氏のほうで、ジョージ氏に言われて試したカジノが気に入った、という経緯ではないかという説もあります。カジノ以前のビートルズのトレードマークといえばリッケンバッカーですが、これについてもピート・タウンゼンド氏(ザ・フー)がポール氏に勧めたら、ジョン氏も使いだしたということがあったそうです。

カジノには永らく愛用していたギブソンJ-160E(J-45にP-90を載せてエレアコ化したギター)と同じピックアップが載っているから、馴染みのあるトーンだったということも指摘されていますが、カジノが誕生する遥かに昔からP-90を搭載しているギターは多くリリースされているので、決定的ではありません。

当サイトとしては、もちろん軽い上に音が気に入ったからでもあるでしょうが、「16フレット接続により、使用頻度の高いローポジションが弾きやすかったから」説を推したいと思います。本家ES-330や上位機種のES-335、リヴェラやシェラトンは共通して19フレット接続であり、カジノだけが16フレット接続で異なる弾き心地だったのです。

また、現在のエピフォンはギブソンの傘下であり下位ブランドのような位置づけですが、1957年にギブソンの買収を受けるまではギブソンのライバルとしてシェアを競っていました。カジノの誕生は買収以後のことでしたが、当時のエピフォンには「ギブソンに対抗するブランド」というイメージが定着しており(買収後もギブソンより高い価格設定だったとか)、エピフォンで気に入ったのだからわざわざギブソンを試さない、というのは普通の考えでした。また当時のエレキギターはギブソンですら製品のバラ付きがたいへん大きく、ギタリストは「当たり/外れ」に悩まされることが多かったようで、「当たり」の個体は宝物だったわけです。

Epiphone Casinoのラインナップ

カジノは60年代に完成したと見られており、当時の面影をしっかり残したモデルがリリースされています。定番視されているナチュラルカラーはもともとのカラーバリエーションにはなく、「塗装をはがすと音が良くなる」というコンセプトでジョン氏がピックガードもろとも塗装をはがしたのが起源になっています。

Casino/Elitist Casino

Elitist Casino

基本モデルの「Casino」はアジア諸国で生産され、5プライのメイプル合板でボディを成形し、内部にバスウッドのブレーシングが配置されています。これに対して上位機種の「Elitist Casino」は日本製で、3プライの合板、スプルースのブレーシングというボディ構造になっており、搭載されるP-90ピックアップは本家ギブソンUSAのものが使用されています。

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Casino Coupe

Casino Coupe

2014年に登場した「Casino Coupe(カジノ・クーペ)」はカジノのボディを85%(ギブソンES-339と同じサイズ)にまで縮小したモデルで、より現代のバンドで使いやすくなるようアレンジしたニューモデルです。ボディ幅を16インチから14インチ(レスポールより僅かに広い)まで狭めていますが、全長、弦長、ピックアップの位置などは本家カジノと同じになっており、サウンドはカジノそのままです。ボディを小さくしたぶんはネックジョイントに影響し、本家の16フレット接続から19フレット接続に変更しています。一般的なセミアコと同じようにハイポジションでのプレイがしやすく、リードプレイが多いギタリストにもフィットします。

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Limited Edition Gary Clark Jr. “Blak & Blu” Casino

Blak & Blu Casino

ゲイリー・クラーク氏は、若くしてかのエリック・クラプトン氏の前座に抜擢されて注目を集め、ミック・ジャガー氏、故B.B.キング氏、バディ・ガイ氏などそうそうたる大御所と共演するなど、現在とても勢いのある若手ブルースマンです。限定生産となっている氏のシグネイチャーモデルは、これまでカジノのイメージになかったブルーバーストで、ギブソン製ピックアップを搭載しているワンランク上のモデルとなっています。


Gary Clark Jr – When My Train Pulls In [LIVE]

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カジノを愛用する主なギタリスト

  • ザ・ビートルズ(ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン)
  • ノエル・ギャラガー(OASIS)
  • デイヴ・デイヴィス (The Kinks)
  • キース・リチャーズ(The Rolling Stones)
  • ジ・エッジ(U2)
  • ポール・ウェラー
  • 寺尾聰
  • 泉谷しげる
  • 渡辺香津美
  • 破矢ジンタ(JITTERIN’JINN)
  • TAKURO(GLAY)
  • Mr.Children(桜井和寿、田原健一)
  • 桑田佳祐(サザンオールスターズ)
  • トータス松本(ウルフルズ)
  • 吉井和哉
  • 奥田民生
  • 田中和将(GRAPEVINE)
  • 藤巻亮太(レミオロメン)
  • 斉藤和義
  • 松本素生(GOING UNDER GROUND)
  • 加橋かつみ(ザ・タイガース)
  • 曽我部恵一(サニーデイ・サービス)
  • 北川悠仁(ゆず)
  • 高田漣(pupa)

など。