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ギブソン・レスポール・デラックス徹底分析!

ギブソン・レスポール・デラックス

「Gibson Les Paul Deluxe(ギブソン・レスポール・デラックス)」は、1968年に再生産されたレスポール・スタンダードのピックアップをミニハムバッカーに変更して作られた、1970年代を代表するレスポールです。ミニハムバッカーをマウントしたルックスを「スタイリッシュだ」と感じるファンが一定数いたため、1980年の生産終了以後も何度か限定生産されましたが、それでも「ミニハムのレスポール・デラックスならこの人」という名手が今なお存在しない不遇のレスポールでもあります(あなたにもチャンスがある!かも)。そのため2015年に再びレギュラー入りしたデラックスがどこまで支持を広げるのか、注目が集まっています。


ROLLY/タイムマシンにおねがい(full version)
独特のキャラクターで知られるROLLY(旧:ローリー寺西)氏は、90年代にロックバンド「すかんち」で活躍した達人ロックギタリストです。演奏では多くのギターを使い分けていますが、自身のアルバムジャケットやアーティスト写真で2015年版レスポール・デラックスを構えています。ミニハムのスマートな印象とスレンダーなROLLY氏のイメージが見事にマッチしていますね。

レスポール・デラックス誕生秘話

レスポール復活

現在では「最高のエレキギター」として呼び声も高い58年〜60年のレスポール・スタンダード、いわゆる「バースト」ですが、発表当時の音楽シーンでは重くてパワーがありすぎることから販売が振るわず、1960年に一旦生産が止まってしまいます。しかしエリック・クラプトン氏の名演(Blues Breakers With Eric Clapton/John Mayall/1966)によりレスポールのトーンが再評価され、中古市場が活気づくとともにギブソン以外のブランドがコピーモデルを生産し始めます。

lespaul-standard-1968 Les Paul Standard 1968年製:引用元 www.vintageandrare.com

この状況を受けてギブソンが1968年にリイシュー(再生産)したレスポール・スタンダードは、何故か「ゴールドトトップ+P-90ピックアップ」という仕様で、「スタンダード」の名が付けられる前の’56年型「レス・ポール」であり、「サンバーストカラー+ハムバッカーピックアップ」の仕様で「バースト」と言われた「レスポール・スタンダード」以前の仕様でした。これについては「市場調査が甘かった」と批判されていますが、ギブソンの思惑としては、

  • ゴールドトップ、P-90のレスポール・スタンダード
  • メイプルトップ/マホガニーバック、2ハムバッカーのレスポール・カスタム

というラインナップでレスポールの再生産を展開したかったのだろうと考えられます。再生産に先立ちギブソン社と再契約したレス・ポール氏の意向があったのかも知れません。本来マホガニー1ピースボディだったレスポール・カスタムは、スタンダードと同様のメイプルトップ/マホガニーバックボディに仕様変更しており、リイシューと云うよりはむしろ「バーストの継承者」として生まれ変わったものでした。エボニー指板によるタイトなトーンを持つカスタムは今でこそロックを象徴するアイテムですが、クラプトン氏の使用したバーストが欲しかったギタリスト達は、当時仕方なくカスタムを買っていったそうです。

レスポール・リイシュー→レスポール・デラックス

「ハムバッカーのレスポール・スタンダードが求められている」という状況を見て、P-90サイズのピックアップキャビティに収まるサイズの小さなハムバッカー(ミニハムバッカー)をマウントして1969年にリリースされたのが「レスポール・デラックス」です(本体は1968年モデルのレスポール・リイシューなので、デビューは’68年だという説もあります)。デビュー当時はゴールドトップのみでしたが、’70年頃からサンバーストのものも生産されるようになります。

Sunday/Buster – Youtube
「バスター」は1976年に「Sunday(邦題:すてきなサンデー)」でデビューした英国北ウェールズ出身の4人組ポップロック・バンドです。日本国内ではCM起用や来日公演などで洋楽チャート第1位を獲得し、ベイシティ・ローラーズと並び70年代の洋楽アイドル系ロックバンドブームの立役者として活躍しました。

70年代中盤まで、サンバーストのレスポールはデラックスのみでした。普通サイズのハムバッカーを搭載したモデルはデラックスのオプションとして少数生産されていますが、バーストと同一仕様のレスポール・スタンダードがレギュラーラインに復帰するのは’76年ころです。「そんなにスタンダードを再販するのがイヤだったの?」という疑問が湧きますが、これについては

  • スタンダードを作ることのできる木材が枯渇した(後述)
  • 2ハムのスタンダードを生産するラインが確保できなかった
  • 「2ハムが欲しかったら、カスタムを買えば良いじゃない!(マリー・アントワネット風)」という経営方針

など、諸説あります。

レスポール・スタンダードが復活すると、たちまち多くのギタリストがデラックスからスタンダードに持ち替えるようになり、デラックスの売り上げは低迷、’80年に生産が終了します。

「パンケーキ構造」を代表する特徴的な多層構造

lespaul-pancake3層のバック材

70年代に良材が枯渇した状況を如実に物語るのが、この時代のボディ構造として知られる「パンケーキ構造」で、オリジナルレスポール・デラックスの大きな特徴になっています。薄いマホガニー材で1mmほどの厚さのメイプルを挟んで3層にしたバック材が、横から見るとパンケーキを重ねているかのように見えます。またネックもマホガニーを3本貼り合わせた3ピースネックになり、一時期はメイプルに置き換わります。トップのメイプルも中央で二分割した2Pではなく、不揃いな3Pが普通でした。個体の重量は増し、5キロを超えるレスポールも出てきました。これはギターを製造するために充分な大きさの、また良質で軽量な木材がなくなってきたという状況下で、それでもどうにかしてギターを作ろうという言わば苦肉の策でした。

木材の処理の違い

それまでギブソンが使用してきた木材は、伐採した木を何十年も放置して熟成させる、昔ながらの製材法で作られてきました。寝かせている間にバクテリアが内部の樹脂を食べ尽くしたり、また細胞組織が変質していったりするなどいろいろなことが起こり、よく響き強度も充分な楽器用の木材ができます。いっぽう現在主流となっている、熱で強制的に乾燥させる製材法は生産効率が飛躍的に向上するかわりに内部組織の変質をストップさせてしまうため、これでギターを作るとなると昔ながらの木材とは異なるサウンドになります。

充分なサイズの、また軽量な良材は使い切ってしまったが、それでも昔ながらの木材を使ってギターを作りたい、という職人のハートによって、こうした多層構造のギターは作られたのです。レスポール・カスタムは真っ黒く塗りつぶしてしまうので問題なく生産できましたが、ボディトップやネック裏で継ぎ目が確認できてしまうシースルー塗装のレスポール・スタンダードはどうしても作れなかった、というのが実情のようです。

昔ながらの材木を生産しようと思ったらまた何十年も待たなければならず、そこまで待つことはできません。結局70年代中盤より、ギブソンは現代的な製材法の木材でギターを生産することを余儀なくされます。ギブソンの中古/ヴィンテージ市場において、70年代初期を境に大きな価格差があるのは、「古さ故の価値」に加えて「木材に由来するサウンドの違い」があるためと言われています。

レスポール・デラックスの改造

「P-90のキャビティに収めるハムバッカー」というコンセプトで開発されたミニハムバッカーは、ミニハムの先輩であるギブソン・ファイヤーバードにマウントされたミニハムと異なり、ポールピースを持ち各弦ごとに感度を調節できるようになっていました。またコイルのサイズが小さくなった分だけターン数を増してパワーを増強しており、実際には当時の普通のハムバッカーよりも高出力で、かつ鋭さのあるトーンを持っていました。そのためレスポール・スタンダードのサウンドを欲するギタリストの間で、ピックアップキャビティを拡大し、普通サイズのハムバッカーをマウントするという改造が流行しました。

KISSのエース・フレイリー氏がデビュー当時愛用していたタバコサンバーストのレスポールが、実際にはデラックスのピックアップを交換したものだと云う話は有名です。この情報を元にX-Japanの故HIDE氏は初めてのギターにレスポール・デラックスを選択、後でピックアップが交換されていたということを知るや、彫刻刀でピックアップキャビティを拡大してダンカンのハムバッカーを載せようとした、という逸話が残っています。


Kiss – Shout It Out Loud (Live On Letterman/2012)

いっぽうザ・フーのピート・タウンゼンド氏は’78年〜’82年頃までレスポール・デラックスをメインとして愛用していますが、センターの位置に普通サイズのハムバッカーをマウントするという大胆な改造を施しています。後にも先にもこの改造を施したギタリストはおらず、このいびつな3ハムバッカー配列はタウンゼンド氏の代名詞になっています。
The Who – Won’t Get Fooled Again – Live 1978
伝家の宝刀「ウィンドミル奏法(腕をぶん回してストローク)」をトレードマークとする激しいステージング、楽器をぶっ壊す勢いの攻撃的なパフォーマンスは、若き日のタウンゼンド氏にとって通常運行でした。

生まれ変わったレスポール・デラックス:2015年モデル

Gibson Les Paul Deluxe 2015 GoldTop Les Paul Deluxe 2015年モデル

抜本的なモデルチェンジが施されたギブソンのラインナップの中にレスポール・デラックスが加わったのは、ちょっとしたニュースになりました。では現代に転生したレスポール・デラックスがどんなものなのか、チェックしてみましょう。

基本スペック

Gibson Les Paul Deluxe 2015 ゴールドトップ、サンバースト、ペルハム・ブルー、ワイン・レッドのカラーラインナップがある

レスポールの伝統を継承したゴールドトップ、60年代後半に流行したメタリックブルー「ペルハム・ブルー」といった由緒あるカラーリングは、レスポール・デラックスにのみ使用されます。

Gibson Les Paul Deluxe 2015のヘッド部分 ゼロフレット・ナット、自動チューニングシステム「G Force」

2015年モデルを象徴するゼロフレット・ナット、自動チューニングシステム「G Force」、厚みを増したローズ指板、チタンサドル、コイルタップ、太くなった内部配線などのスペック、またレス・ポール氏生誕100周年記念ヘッドロゴ、ヘッド裏のレス・ポール氏ホログラムといったルックスの特徴がこのデラックスにも付加されています。

2015年モデル唯一の、ネジ留め式ピックガード

レスポール・デラックス2015年モデルのピックガード伝統的なピックガード

ピックガードは伝統的なネジ留め方式で、他のレスポールのようにカンタンに着脱できるようにはなっていません。これはデラックスがメインと位置づけているボディカラーがゴールドやメタリックブルーという塗りつぶしであり、またトップに使用されるメイプルが「Cグレード(模様がほとんどない)」のため、ピックガードを外してまでトップ材を見せつけなくても良い、という設計側の判断だとも考えられますが、本当の理由はエスカッションの設計にあります。
レスポール・デラックスのミニハムバッカーはエスカッションに固定されており、このエスカッションごとボディにマウントされます。この方式だと、通常のレスポールのようにエスカッションをボディトップに固定するネジを必要としません。こうしてネジが少なくなりスッキリとしたルックスになったところが、レスポール・デラックスのスタイリッシュさを演出しています。しかしピックアップの高さを調節しようとするとエスカッションもろとも上下しますから、エスカッションに食い込ませる2015年版のピックガードを付けることができなくなりました。よって2015年モデル内で唯一、伝統的なピックガードがマウントされることになりました。

ボディ/ネックの仕様

バック材に開けられた9つの穴穴が開けられたボディ・バック材

ボディトップのカーヴィング(削り)は、スタンダードよりもやや緩やかな「Classic」スタイルで、つるんとしたイメージです。このカーヴィングはレスポール・スタンダード Less+、レスポール・クラシック、レスポール・シュープリームと同じものになっています。

またバック材には9つの穴があけられ、ボディ重量が調節されています。指板のRは一定ですが、ネックグリップは6弦側にボリューム感のある「非対称ラウンド」グリップで、指板/グリップ共にレスポール・シュープリームと同一の仕様になっています。

コイルタップ対応、+15dBのブースター・スイッチ搭載

レスポール・デラックス2015年モデルのピックアップ小型のハムバッカーが搭載

新しく設計されたレスポール・デラックス専用ミニハムバッカーは、ファイヤーバードなどのミニハムバッカー同様にポールピースを持たないつるんとしたルックスが特徴です。磁石には現代の定番「アルニコV」が採用されており、高音域が豊かに響き高出力な、現代的なトーンになっています。ピックアップの幅が狭いとブライトに、広いとファットなトーンになりますから、ミニハムバッカーはこの形状からも中高域が主張するブライトなサウンドになります。またサイズこそ小さいピックアップですが、コイルのターン数を通常のハムバッカーより4割程度増やしており、そのぶん出力が大幅に増強されています。
フロント/リア共にボリュームポットに仕込まれたスイッチで各個のコイルタップができるようになっており、充分なサウンドバリエーションを持っています。さらにミニスイッチの操作で出力を15dB持ち上げるブースターが備わっており、ライブの使用で威力を発揮します。

スマートな存在感

lespaul-deluxe-bottom

無骨なイメージの強いレスポールのラインナップにおいて、ネジの少ないミニハムのスマートなルックスと個性的なカラーリング、また現代的なブライトでパワフルなサウンドを持つレスポール・デラックスには、際立った個性があると言えます。ここまでキャラが立っている上に、リードもサイドもでき、軽快なカッティングから出力にものを言わせたハイゲインサウンドまで得られる万能さがありますから、どんなスタイルのギタリストにもお勧めできるギターになっています。