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ロック史に名を刻んだギターには、時に“家が買えるどころじゃない”とんでもない値札がつきます。名曲が生まれた瞬間を支えた一本、時代の価値観を象徴した一本、アーティストの精神そのものが刻まれた一本、それらは文化と感情と記憶を内包した“アイコン”として、時に数億円もの価値を持ちます。
近年、著名ギタリストが愛用したモデルは世界のオークション市場で注目を集め、次々と歴史的な落札記録が更新されています。この記事では、これまでに実際に取引されたギターの中から、特に高額で落札されたものをランキング形式で紹介します。音楽史を揺るがした“伝説の一本”とは、一体どのような存在だったのでしょうか。
※2025年10月22日時点の情報です。
※2025年10月22日時点でのレート換算
| 順位 | モデル名 所有していたギタリスト (所属バンド) |
落札額 (日本円換算) |
|---|---|---|
| 1位 | 1969 Fender Competition Mustang カート・コバーン (NIRVANA) |
$4,687,500 (約7.1億円) |
| 2位 | The Black Strat デヴィッド・ギルモア (Pink Floyd) |
$3,975,000 (約6億円) |
| 3位 | 1982 Kramer “Hot for Teacher” エディ・ヴァン・ヘイレン (Van Halen) |
$3,932,000 (約5.9億円) |
| 4位 | Fender Stratocaster “Reach Out to Asia” |
$2,700,000 (約4.1億円) |
| 5位 | “Wolf” ジェリー・ガルシア (Grateful Dead) |
$1,900,000 (約2.9億円) |
| 6位 | 1954 Fender Strat “#0001” デヴィッド・ギルモア (Pink Floyd) |
$1,815,000 (約2.8億円) |
| 7位 | 1954 Gibson Les Paul “Oxblood” ジェフ・ベック (The Jeff Beck Group) |
£1,068,500 (約2億円) |
| 8位 | Fender Stratocaster “Anoushka” ジェフ・ベック (The Jeff Beck Group) |
£1,008,000 (約1.9億円) |
| 9位 | 1958 Futurama ジョージ・ハリソン (The Beatles) |
$1,271,000 (約1.9億円) |
| 10位 | 1964 Gibson SG “The Fool” エリック・クラプトン (Cream) |
$1,270,000 (約1.9億円) |
| 11位 | 1961 Fender Stratocaster ロリー・ギャラガー |
£889,400 (約1.8億円) |
| 12位 | 1964 Fender Stratocaster ボブ・ディラン |
$965,000 (約1.5億円) |
| 13位 | “Blackie” エリック・クラプトン (Cream) |
$959,500 (約1.5億円) |
| 14位 | “Tiger” ジェリー・ガルシア (Grateful Dead) |
$957,500 (約1.5億円) |
| 15位 | 1965 Mosrite Ventures II ジョニー・ラモーン (Ramones) |
$937,500 (約1.4億円) |
| 16位 | 1964 Gibson ES-335 エリック・クラプトン (Cream) |
$847,500 (約1.3億円) |
| 17位 | “Lenny” スティーヴィー・レイ・ヴォーン |
$623,500 (約9,400万円) |
| 18位 | “Blue Angel” プリンス |
$563,500 (約8,500万円) |
| 19位 | 1976 Gibson Explorer ジ・エッジ (U2) |
$437,500 (約6,600万円) |
| 20位 | Custom Kramer エディ・ヴァン・ヘイレン (Van Halen) |
$231,250 (約3,500万円) |
以下オークション落札個体ではない画像も含まれます。

Photo by X-ray Delta One via Wikimedia Commons / CC BY 2.0
「NIRVANA」のギターボーカル「カート・コバーン」氏が「Smells Like Teen Spirit」のMVで使用した1969年製Fender Mustangは、2022年にジュリアンズ・オークションで出品され、468万7,500ドル(約7.1億円)という史上最高額で落札されました。
独特のブルーフィニッシュが特徴的なこの1本は、コバーン氏の激しいパフォーマンスを支えた実使用個体であり、NIRVANAだけでなくグランジ・ムーブメントそのものを象徴する存在として圧倒的な存在感と価値を持つエレキギターです。
コバーン氏はギター・ワールド誌に語った最後のインタビューで「俺は左利きなんだ。手頃な価格で高品質な左利き用ギターを見つけるのは簡単じゃない。しかし世界中のギターの中で、Fender Mustangが最も気に入っている」と語っています。

Photo by TheTankman via Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0
「Pink Floyd」のギタリスト「デヴィッド・ギルモア」氏が長年愛用した1969年製のStratocaster(通称”Black Strat”)は、2019年にChristie’sのオークションで397万5,000ドル(約6億円)で落札されました。
1970年のバース・フェスティバルで初めて演奏されたこのギターはギルモア氏とギターテックの「フィル・テイラー」氏によってブラックに再塗装(元々はサンバーストだった)、ネックやピックアップ、トレモロユニットなどの換装など、幾度も改造を重ねられた唯一無二の個体となっています。
Pink Floydを代表する「Comfortably Numb」「Shine On You Crazy Diamond」「Money」などの曲で実際に使用され、伝説的なエレキギターの1つです。

Photo by Eden, Janine and Jim via Wikimedia Commons / CC BY 2.0
「Van Halen」のギタリスト「エディ・ヴァン・ヘイレン」氏が1983〜84年に実使用したKramer製のカスタムギター「CO176」は、2023年にSotheby’sのオークションで393万2,000ドル(約5.9億円)で落札されました。
このギターは1982年末に製作され、「Hot for Teacher」のミュージックビデオで披露されたことで一躍有名になります。エディ氏の代名詞ともなっているストライプデザインと超絶技巧が融合したこのギターは、まさにMTV時代を象徴する存在となりました。
1990年頃にドラマーテックの「グレッグ・エマーソン」氏に贈り、その後いくつかの所有者を経て再び市場に登場。唯一無二のキャリアと時代背景を背負ったこの1本は、80年代のロック黄金期を今に伝える貴重な証人と言えるでしょう。

Photo via Fender Wiki / Fandom / CC BY-SA 4.0
2004年のスマトラ沖地震の被災地支援を目的として制作されたこの白いストラトキャスターは、2005年にカタールのドーハで開催された「Reach Out to Asia」オークションで270万ドル(約4.1億円)で落札されました。
このFenderのストラトキャスターは「ブライアン・アダムス」氏の呼びかけによって集まった「エリック・クラプトン」氏や「ポール・マッカートニー」氏、「ジミー・ペイジ」氏、「デイヴィッド・ギルモア」氏、「ジェフ・ベック」氏など、計19名の著名ギタリストがボディにサインを施したチャリティーギターです。
実際に演奏されていたギターではありませんが、音楽による国際的支援を象徴する存在として大きな注目を集めました。ギタリストたちの想いが集約されたこの1本は、楽器という枠を超え、社会的・文化的意義を帯びたギターとしてその名を刻んでいます。

Photo by Eden, Janine and Jim via Wikimedia Commons / CC BY 2.0
「Grateful Dead」のギタリスト「ジェリー・ガルシア」氏が1970年代を中心に愛用したカスタムギター”Wolf”は、2017年にチャリティーオークションで190万ドル(約2.9億円)にて落札されました。
ギター・ルシアーである「ダグ・アーウィン」氏が1973年に製作したこの1本は、パープルハートとカーリーメイプルを用いた特徴的な構造とボディに描かれた狼のイラストのデザインで知られています。
1973年のニューヨーク公演で初めて使用された後、数多くのライブに登場し、ガルシア氏の即興的な演奏や長時間にわたるプレイを支え続けてきました。1990年代に一時手放されましたが、後に慈善目的で再び世に出された経緯も含め、演奏史と社会的背景の両面から価値を認められたこの”Wolf”は、ガルシア氏の音楽的信念と精神性が込められた象徴的な1本です。

Photo via Fender Wiki / Fandom / CC BY-SA 4.0
「Pink Floyd」のギタリスト「デイヴィッド・ギルモア」氏が所有した1954年製Fender Stratocaster “#0001” は、2019年にチャリティーオークションで181万5,000ドル(約2.8億円)で落札されました。
ネックプレートにはシリアル「0001」が刻印されており、Fender創業者であるレオ・フェンダー氏が1950年代初期に製作したプロトタイプ・モデルの一つとされています。 ギタリスト兼設計協力者の「レックス・ガリオン」氏に贈られたのち、ギルモア氏の手に渡ってからは1978年のソロ作や「Another Brick in the Wall (Part 2)」の録音セッションでも使用され、以降も彼のギターワークと深く結びついた存在となった特別なストラトキャスターです。

「ジェフ・ベック」氏が1972年末頃からメインギターとして愛用した1954年製Gibson Les Paul “Oxblood”は、2025年1月にロンドンのChristie’sオークションで1,068,500ポンド(約2億円)で落札されました。当初ゴールドトップだった個体は、深いワインレッドのオックスブラッドへ再塗装され、P-90からハムバッカーへの換装やネック修復など、多くの改造が施されています。
ベック氏はトリオ時代「Beck, Bogert & Appice」期のライブからソロ期の”Blow by Blow”制作に至るまで、このギターを主力として使用しており、長きにわたり音楽活動を支えた重要な一本です。この落札額はGibson Les Paulのオークション記録も更新していることから、同モデルが持つ音楽史的価値とベック氏の持つ影響力を改めて証明する結果となりました。
「ジェフ・ベック」氏が1990年代から晩年にかけてメインギターとして愛用した白いFender Stratocaster、通称”Anoushka”は、2025年1月にロンドンのChristie’sオークションで1,008,000ポンド(約2億円)で落札されました。このギターにはシタール奏者「アヌーシュカ・シャンカル」氏のサインが記されており、ベック氏は約16年間にわたりステージやレコーディングで使用してきた1本です。
ボディには幾度もの演奏跡が刻まれ、ネック修復などのリペア歴からも実戦で使い込まれた経緯をうかがうことができ、その完成されたトーンはベック氏の後期サウンドを象徴し、この落札額はGibson Les Paul “Oxblood”と並び、彼の音楽的影響力の大きさを改めて証明しています。

Photo by Martno via Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0
「ジョージ・ハリソン」氏が「The Beatles」初期のライブやレコーディングで愛用した1958年製のResonet Futurama(Grazioso)は、2024年11月に米ナッシュビルで開催されたJulien’s Auctions「Played, Worn & Torn」において1,271,000ドル(約1.9億円)で落札されました。
このギターはリヴァプールのHessy’s Music Centreで購入され、「The Beatles」が「Cavern Club」で演奏していた時期や、ハンブルクでの長期公演などで使用していたとされています。
ハリソン氏自身も「最も使い込んだギターの一つ」と語っているこのモデルは当時の英国では輸入制限の影響で海外製ギターの入手が難しく、Futuramaは「英国で手に入る数少ないストラトタイプ」として重宝された存在であり、この落札額はビートルズ関連ギターとして過去最高を更新する結果となりました。

Photo by Eden, Janine and Jim via Wikimedia Commons CC BY-2.0
「エリック・クラプトン」氏が「Cream」期に使用した1964年製のGibson SG、通称”The Fool”は、2023年11月に開催された米国オークションで1,270,000ドル(約1.9億円)で落札されました。
オランダのアート集団「The Fool」によるサイケデリックなペイントをボディ全体に施されており、「サマー・オブ・ラブ」を象徴するデザインとしても知られています。
クラプトン氏はこのギターで”ウーマン・トーン”と呼ばれる独特の音色を生み出し、「Sunshine of Your Love」や「White Room」などの代表曲で使用され、「ジョージ・ハリソン」氏を経て「トッド・ラングレン」氏の手に渡り、時代を超えて受け継がれた歴史的な一本となっています。
この落札額はクラプトン氏を象徴するギターとしてだけでなく、サイケデリック期のロック文化を体現する芸術作品としての価値をも示しました。
「ロリー・ギャラガー」氏が生涯にわたりメインギターとして愛用した1961年製Fender Stratocasterは、2024年10月にロンドンのBonhamsオークションで889,400ポンド(約1.8億円)で落札されました。
「ボブ・ディラン」氏が1965年の「Newport Folk Festival」で使用した1964年製Fender Stratocasterは、2013年にChristie’sのオークションで965,000ドル(約1.5億円)で落札されました。
「エリック・クラプトン」氏が1970年代から1985年にかけて愛用した1956-57年製Fender Stratocaster “Blackie”は、2004年のニューヨーク Christie’s オークションにて959,500ドル(約1.5億円)で落札されました。
「ジェリー・ガルシア」氏が1970年代に愛用した1979年製 “Tiger” は、2015年のオークションで957,500ドル(約1.5億円)で落札されました。
「ジョニー・ラモーン」氏が愛用した1965年製 Mosrite Ventures IIは、2017年にオークションで937,500ドル(約1.4億円)で落札されました。
「エリック・クラプトン」氏が「Cream」期からソロ初期にかけて使用した1964年製Gibson ES-335は、2004年にChristie’sのオークションで847,500ドル(約1.3億円)で落札されました。
「スティーヴィー・レイ・ヴォーン」氏が1970年代後半から晩年まで愛用したFender Stratocaster “Lenny”は、2004年にChristie’sのオークションで623,500ドル(約9,400万円)で落札されました。
「プリンス」氏が1990年代初期に使用した”Blue Angel”ことCloud 2は、2020年にヘリテージ・オークションズで563,500ドル(約8,500万円)で落札されました。
「ジ・エッジ」氏が「U2」初期から愛用した1976年製Gibson Explorerは、2023年にオークションで437,500ドル(約6,600万円)で落札されました。
「エディ・ヴァン・ヘイレン」氏が1980年代後半のライブで使用したCustom Kramerギターは、2023年にオークションで231,250ドル(約3,500万円)で落札されました。
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