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ローランドが1975年に発売した120Wの大型アンプ「JAZZ CHORUS-120(JC-120、通称ジャズコ)」。発売後40年以上も愛され続けている、ローランド史上最長のロングセラー製品の一つです。トランジスタならではの美しいクリーントーンは他の追随を許さず、この音こそがこのアンプの絶対的個性と呼べるものとなっています。
個体差が少なく、頑丈なのが強みであり、その特徴ゆえに日本中のあらゆるライブハウス、スタジオに常備してあります。熟練のスタジオミュージシャンからこれからライブをやろうと思っているバンドマンまで、すべてのギタリストにとって避けては通れないギターアンプです。
このページでは Roland JC-120 の音の出し方、音作りの方法、イコライザーやエフェクトの使い方について解説していきます。ギター初心者の人で使い方や音作りの方法がまだわからない人は是非チェックしてみて下さい。
Roland JC-120が音楽シーンに与えた影響は、音楽ジャンルの枠を超えて横断的に広がっています。特に1970年代後半から80年代にかけてのポップス、フュージョン、ニューウェーブにおいては、JC-120の澄み切ったクリーンとステレオ・コーラスが“時代の音”を決定づけたといっても過言ではありません。
代表的な使用例のひとつが、The Policeのギタリスト、アンディ・サマーズです。彼の繊細で浮遊感のあるクリーントーンは「Every Breath You Take」などの楽曲で聴くことができ、JC-120のステレオ・コーラスを活かした音作りが、ポリスのサウンドイメージそのものになりました。同時期のニューウェーブやポストパンクのバンド、例えばThe Cureのロバート・スミスもJC-120を愛用し、暗くも幻想的なサウンドスケープを生み出しています。
一方、ジャズやフュージョンの分野でもJC-120は定番機材となりました。パット・メセニーのように、クリーントーンで複雑なコードワークやソロを弾くギタリストにとって、JC-120の透明感とレスポンスの速さは理想的なものでした。真空管アンプ特有のコンプレッションが少ないため、指先のニュアンスがそのまま出力され、プレイスタイルに忠実な音を届けることができます。特にフュージョン全盛期の1970〜80年代は、スタジオ常設アンプとしての地位を確立し、多くのレコーディングにその音が刻まれています。
さらに、オルタナティブロックやシューゲイザーの文脈でもJC-120は大きな役割を果たしました。Slowdiveは、エフェクターとJC-120の組み合わせで独特の轟音と立体感を生み出し、後のインディーロックの方向性に強い影響を与えました。特にリバーブやディレイと組み合わせることで、JC-120は「空間系エフェクトのキャンバス」として機能し、他のアンプにはないクリーンでフラットな特性が実験的なサウンドメイクを可能にしました。
Shoegaze & Roland Jazz Chorus | JC-120 AMP DEMO ALL FEATURES
1990年代後半から2000年代初頭にかけて、ニューメタルブームの中心にいたLimp Bizkit。そのサウンドを支えたのが、ギタリストのウェス・ボーランドです。彼は重厚なリフと実験的なサウンドメイクを両立させることで知られていますが、その中で重要な役割を果たしたのがJC-120でした。JC-120特有のクリーンの透明感がヘヴィなディストーション・リフと対比的に使われることで、楽曲全体のダイナミクスを強調しました。
Limp Bizkit – Full Concert | Live at Shoreline Amphitheatre (1999)
国内に目を向けても、JC-120はほぼすべてのリハーサルスタジオやライブハウスに常設されており、日本のギタリストにとって「誰もが一度は弾くアンプ」となっています。BOØWYの布袋寅泰氏を筆頭に、Jポップ系のスタジオミュージシャンまで、幅広いアーティストに使用され続けてきました。スタジオでJC-120に直挿しするだけで“プロっぽいクリーン”が得られるという安心感は、多くのプレイヤーの共通体験ともいえます。
このようにJC-120は、ジャンルを問わず「クリーントーンの基準」を築いたアンプです。ポップスの煌びやかなアルペジオ、ジャズの緻密なコードワーク、オルタナティブの実験的サウンド――いずれの文脈においても、JC-120が果たした役割は計り知れません。
JC-120はどんなアンプで、どのような利点があるのでしょうか。
故障が非常に少なくメンテナンスが最小限で済み、サウンド的な個体差が少ないという利点が他のアンプを凌駕しているためか、どこに行っても設置してあるのが特徴です。
使い尽くされ酷使された個体でも、サウンド的な劣化が少なく、日本全国どこのJC-120でもほぼ同じ音が出せます。これはJC-120を使いこなすことで、どこに行っても自分の欲しい音が得られるということを意味しており、このアンプを好んで使う最大の理由になり得ます。
JC-120はエフェクターの乗りが非常に良いことでも知られます。歪みなどはJC-120に合わせてセッティングすることで、そのエフェクター本来のサウンドを味付けなく鳴らすことが出来ます。JC-120は単体ではほとんど歪まないため、歪んだ音が欲しい場合はエフェクターやプリアンプなどを使用することになりますが、その際にこのエフェクターの乗りが良いことは大きなメリットになります。
もとよりオーディオ的な設計で作られているため、純粋な再生機器としても優秀で、近年増え続けるギタープロセッサーや高機能マルチエフェクターなどはJC-120のリターンに接続することで、オーディオ的な理想的再生環境を得ることが出来るでしょう(後述)。
内蔵のコーラスエフェクトはこのアンプの代名詞ですが、ステレオスピーカーを利用した品質の極めて高いもので、余りにも評価が高かったためにローランド初のコーラスエフェクターCE-1として、単体で発売されるに至りました。このコーラスを使うためにJC-120を利用する、という選択もまたあって良いでしょう。
JC-120弟分である「JC-40」を使っての演奏(1:16〜)。
ステレオ出力のディレイを2つのチャンネルに繋ぐことで、1台のアンプで立体感のあるディレイサウンドが得られる。JC-120でも同様のプレイが可能で、JAZZ CHORUSシリーズの隠れたメリットだ。
定評のあるクリーントーンはあらゆるジャンルで利用できる素晴らしいもので、高域を絞ってジャズ系に合わせるもよし、低域をうまくカットしてカッティング用として使えばファンクにも合います。ロック系のクリーントーンをこのアンプで鳴らしているギタリストは多く、アルペジオなどにコーラスエフェクトをうまく利用しても面白いです。
JC-120が嫌われる要因となっているトランジスタらしい硬い音も、クリーンブースターや真空管搭載エフェクターなどを利用することでかなり修正できます。
また、クセのないオーディオ的なサウンドはキーボード、ボーカル、アコースティックギター用としても優秀で、実際に使われている例も少なくありません。
それではJC-120の使い方を見ていきましょう。シンプルなアンプなので特に迷うことはないと思います。
スタジオによっては初めからコンセントが繋いであるところもありますが、つないでない場合もあるので自分で確認しておきましょう。
コンセントに繋いだら、次はギターに繋いだケーブルのもう片側を、JC-120の「INPUT」に繋ぎます。CHANNEL1、CHANNEL2のそれぞれ「HIGH/LOW」4箇所どこに繋いでも大丈夫です(それぞれの違いは後述)。
JC-120のパネル右端の電源をONにします。
電源をONにしたらボリュームを上げていきます。これで音が鳴るようになります。
音の出し方の手順
続いて JC-120 の機能をフルに使った音作りについて。ギター博士がJC-120を使って演奏した動画を見ながらみていきましょう。
ギター博士「博士は LOW INPUT に繋いでおる。チャンネル1と2は音は変わらんゾ。チャンネル2の時のコーラスやリバーブはキレイにかかるのぅ。」
六弦かなで「はかせ、動画さいごのほうで歪みエフェクター使ってるね。歪ませたら使いやすそうだナー、かなでもやってみようっと!!」
JC-120 には「インプットジャック」と「ブライトスイッチ」、「イコライザー」を搭載した「チャンネル1」と、それに「エフェクト機能」を搭載した「チャンネル2」があります。それぞれ独立したプリアンプとパワーアンプを持っていますが、フットスイッチによるチャンネル切り替えには対応していません。
2つのチャンネルに音質的な差はなく、どちらを使っても同じサウンドになります。ただ、チャンネル 2 は JC-120 の搭載エフェクトが使えるので、基本的にはチャンネル2を使用するといいでしょう。
JC-120には各チャンネルに「Highインプット」と「Lowインプット」といった2種類の入力ジャックが装備されています。Hiインプットはインピーダンス(交流抵抗)が高いために出力が高く、Lowインプットはインピーダンスが低いため、Highに比べて出力も低くなっています。
ギターからアンプに差し込む場合はHighインプットに、エフェクターを接続している場合はLowインプットに差し込むとバランスの良いサウンドになります。
JC-120には
といった4種類のエフェクトを搭載しています。
JC-120のコーラスは非常に評判が良く、2つのスピーカーを使うことで、より自然なハーモニーになります。付属のフットスイッチでオンとオフを切り替えることができ、JC-120搭載のコーラスを好んで使っているギタリストも多いです。
前面にある切り替えスイッチを操作すると、コーラスとビブラートを切り替えることができます。ビブラートモードにすると SPEED と DEPTH のコントロールが使えるようになり、ギターサウンドに独特の揺らぎを与えてくれます。
また、JC-120 にはスプリングを使ったリバーブユニットが搭載されており、アナログライクなリバーブサウンドを楽しむことができます。
ディストーションは音が硬く、強く歪ませると音割れするのであまり使えません。別の方法で歪ませるようにしましょう。
JC-120にはトレブル、ミドル、ベースといった「3バンドイコライザー」に加え、「ブライトスイッチ」という機能が搭載されています。ブライトスイッチをオンにすることにより、高音域がブーストされた音抜けの良いサウンドになります。
一般的なギターアンプはイコライザーをフラットの状態にしてから音作りを始めますが、JC-120はフラット時の正確なイコライジングが未だにわかっていないアンプです。そのため、人によって「フラットの定義」が異なることでも知られています。
JC-120のフラットについては諸説がありますが、有名なのは「ベース5・ミドル5・トレブル5」という説と、「ベース0・ミドル10・トレブル0」の2つです。後者はかなり極端なセッティングなので、前者のように全てのツマミを5に設定し、それから自分好みのサウンドになるように微調整すると良いでしょう。JC-120は元々低音が出やすいアンプなので、ベースは控えめに設定した方がバランスの良いサウンドになります。
JC-120にはチャンネルリンクと呼ばれる「両チャンネルのプリアンプを同時に使用する」方法があります。
これにより、トランジスタアンプであるJC-120が、「真空管アンプのような暖かさと太さ」を兼ね備えたサウンドになります。
これにより、「各チャンネルのイコライザーを同時に使える」ほか、「原音とエフェクターをミックス」して出力することもできます。チャンネルリンクはJC-120の性能をフルに発揮する、一種の裏技のようなものです。
チャンネルリンクはギターやエフェクターを繋いだシールドを「チャンネル1のLowインプット」に差し込み、「チャンネル1のHighインプットとチャンネル2のLowインプットを別のシールドで接続」することで可能です。配線の組み合わせは計8種類あるので、色々なパターンを試してみると良いでしょう。
ギターからのシールドを「チャンネル1のHighインプット」に差し込み、「チャンネル1のLowインプットとチャンネル2のLowインプットを別のシールドで接続」したイラスト図
左:JC-22、右:JC-40
ライブでJC-120を使うという人はエフェクターが欠かせません。しっかりと音作りを行なって本番に臨めたらいうことはありませんが、リハーサルでは十分に音作りに時間を作れないという人もいるでしょう。
RolandからはJC-120の小型サイズのコンボアンプ「JC-22」「JC-40」がリリースされています。これらのアンプは、ライブやスタジオリハーサルに向けて「仮想JC-120対策」にうってつけのモデルです。自宅で手軽にJC-120のサウンドが得られる「JC-22」、持ち運びしやすく自宅でもライブでも使える「JC-40」と、用途に合わせて選ぶことができるようになっています。JC-120対策に、または純粋にJC-120ファンの人も要チェックです。
レビュー記事:
Roland JC-40は、JC-120の弟分と片付けられない深さを持っていた
ROLAND JC-22 – SuperNice!ギターアンプ
片手サイズのBluetoothスピーカーは数多くあれど、ギターアンプそのままの形をしているものは多くありません。JC-01はJCシリーズとうり二つの外観を持つ充電式スピーカーです。特にギタリストであれば誰もが見たことのあるそのルックスは、家の片隅に置いておくのにもぴったりです。オーディオスピーカーの割にギターアンプさながらの3バンドEQが付いている辺り、こだわりというべきなのかお遊びというべきなのか微妙なところですが、こんなところまで再現してくれているのは嬉しいですね。
コンボアンプの売れ筋を…
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