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「ブースター」は、ギターの信号をブースト(強化/増幅)させるエフェクターです。初めからブースターとして開発されたものもあれば、ゲインの低いドライブペダルやグラフィックイコライザーなど、ブースターとしての使い方ができるものもあります。そんなわけで今回、ギター博士は著名な10機種のブースターを次々とチェックしました。まずはそのサウンドを確認して、それぞれがどんなものかを見ていきましょう。
ちょい足しでサウンドを完成させる!ブースターペダル10個弾き比べてみた!
ひとつずつしっかりチェックしていくことで、歴代最長の動画となりました。いろいろなギターを使い分けてもいるので、それぞれのサウンドをぜひチェックしてみてください。
「単純に音量を上げるだけなら、どれでも一緒じゃない?」と思う人もいるでしょう。それが本当なら、本件はこれにて終了してしまいます。しかし、幸いにもお話は終わりません。ブースターそれぞれに、キャラクターがあるのです。またゲインやイコライザーなど、搭載する機能を使って積極的な音作りができるものもあります。各ブースターを見ていく前に、ブースターの役割をチェックしていきましょう。
以下に挙げるのは、一般的に知られるブースターの使い方です。アイディア次第でいろいろな使い道がありますが、総じてあまり極端な設定にはせず、本稿のタイトルにある通り「ちょい足し」に留めるのがブーストの王道です。ブーストに使うエフェクターにはキャラクターがあるので、「AをBでブーストすると、こうなったのか」のように、組み合わせの妙が楽しめます。ここに自分のギターサウンドを作り上げるための、一つのヒントがあると言ってよいでしょう。
このごろ注目されている「クリーンブースター」とは、エフェクター自体の過度な個性を抑え、またほんのりとサウンドを整え、音量を持ちあげるエフェクターです。ドライブペダルと違い、音量を絞り切ったところで原音と同じ音量になるモデルが多く、またサウンドの整え方に各モデルの個性が出ます。
機能として歪みを伴わないので、クリーントーンのサウンドをそのままに音量を持ち上げることができます。また、歪んだアンプやドライブペダルの前段に使用すると、余計な個性を追加することのないナチュラルなゲインブーストができます。
ではここから、動画で博士がチェックした10機種を、動画の順番に従ってチェックしてみましょう。ブースターは音量を持ちあげるというシンプル極まりないエフェクターですが、やはりそれぞれにキャラクターがあり、奥の深さを感じさせます。
アイバニーズの「TS9」は「チューブスクリーマー(真空管にギャーって言わせるやつ)」という名の通り、チューブアンプの歪みを増強する目的で設計されたオーバードライブです。「DRIVE」つまみはゼロでも若干の歪みが得られます。ブースターとして使うと、低域が整理されて中域がしっかり主張する、そしてキメの細かいまとまり感のあるサウンドが得られます。
TS9は80年代のデビュー以来、自分のギターサウンドにもう一味追加したい世界中のギタリストに愛用され、「世界で最も成功したエフェクター」とまで呼ばれています。歪みのジャンルに「TS系」という言葉があることからも、それを類推できるでしょう。
TSシリーズは現代版(TS9)、復刻版(TS808)、小型版(TS MINI)など、さまざまにバリエーションを展開しています。
ギター博士「ワシだったら、レンジ広めのクランチサウンドを作っておいて、TS-9でブースト。アンプのゲインもプッシュし、ペダルのキャラクターも加えれるようなセッティングにして、リードトーンをプレイするかな♫」
Ibanez Tube Screamer TS-9 – Supernice!エフェクター
マクソンの「OD808」は、「OVERDRIVE」つまみがゼロの状態でもなかなかの歪み具合があり、またエッジの効いたザクザクとした、またカラっと乾いたサウンドが得られます。ブルース、ロック、フュージョンなどあらゆるジャンルで使用されますが、ドライブサウンドのブースターとして使用すると強力なディストーションサウンドが生まれることから、特にアメリカ系ハード/ヘヴィ志向の音作りに重宝されます。
低域の整理された、中域の存在感が立ったブースト感が似ていることから、先述「TS-9」とよく比べられるエフェクターです。そもそも、日伸音波製作所が開発した新型ドライブペダルを、国内向けに「MAXSON」ブランドでリリースしたのが「OD808」で、海外向けに「Ibanez」ブランドでリリースしたのが「TS808」です。工場は同じで中身も同じでした。TS808から後継機「TS9」が生まれ、そこでキャラクターの違いが出るようになったのです。
ギター博士「ワシだったら、ギター1本でも存在感のあるハードなドライブサウンドにかけて、ザクザク感のある中音域、リッチなハーモニクスを加え、強力なサウンドを得るかな♫」
MAXON OD808 – Supernice!エフェクター
BOSSのスーパーオーバードライブ「SD-1」は、名機「OD-1」のサウンドを現代に伝える定番のドライブペダルです。低域を引き締めて中域をほんのりと持ちあげるキャラクターは、「乾いた明るいサウンド」と称されます。また、合わせるアンプやギターを選ばない柔軟性、効きの良い「TONE」つまみといった高い基本性能が支持され、発表以来40年近く生産されています。
上位機種として「SD-1W」もリリースされています。こちらはSD-1の音質を向上させ、かつ2タイプのキャラクターを切り替えるスイッチが付けられています。
ギター博士「ブースターとして使うなら、LEVELノブは上げ目、そしてソロ/リズム問わず使えるな♫。TONEノブの効きも良いので、イコライザー的なイメージで使っても良いかな♫」
MXRの「マイクロ・アンプ」は1976年にリリース、「小型アンプ」という名の通りプリアンプとして開発され、レスポールからストラトに持ち替えた時などの音量補正に使われます。しかしその使い勝手の良さから、クリーンブースターとしての用途も定番視されています。
「GAIN」つまみゼロで原音と同じ音量、そこから音量を持ち上げることのみに機能を絞っていて、原音に輝きを加えるキャラクターを持っています。つまみ12時まではシンプルに音量が上がり、それ以降は迫力とごくわずかな歪みが加わります。現在では、上位モデルとしてトレブル、ベースのつまみを追加した「マイクロ・アンプ+」もリリースされています。
注:動画で博士は「オーバーロードしたような」という言葉を使っています。オーバーロードはオーディーオ用語で「過負荷」を意味し、「入ってくる音量がでかすぎて、アカンかもしれん」というような状態です。コレを肯定的にとらえてしっかり歪ませたのが、ギターで言う「オーバードライブ」です。
ギター博士「ONにするだけで雰囲気が出るワイ!ワシだったらゲイン 0〜3 くらいで常にかけっぱなしで使うかな♫」
エキゾチック(Xotic)「RCブースター」は現代ブースターの定番機として幅広く支持されている高性能エフェクターで、「Gain」つまみで色付けができるクリーンブースターに、高域低域二つのイコライザーを備えています。カッティングやアルペジオなどにトレブルブースト、ジャズのソロなどファットなサウンドのためにローブーストなど、目的に合わせた柔軟な使い方ができます。イコライザーのつまみにはセンタークリックが付いているので、サウンドキャラクターをいじりたくない場合にも安心です。
ギター博士「クリーンブースターのゲイン感を持っているが、使い勝手としてはドライブペダルをブースターとして使用する時のような柔軟性を持っておるな!RC Boosterのサウンドが好きならかけっぱなしでEQで補正、アンプのサウンドが好きなら用途に合わせて幅広く音色を作り込むかな♫」
Xotic RC Booster V2 – Supernice!エフェクター
エキゾチック(Xotic)「EPブースター」は、リリースしてすぐ「つないだだけで音が良くなる」として大変な評判となったエフェクターです。つまみ一つのシンプルさとコンパクトな本体のサイズも、その好評に一役買っています。またこのサイズでありながら、電池駆動にも対応しています。
中低域にしっかりとした存在感がありながら、高域がしっかり輝くのでサウンドがうまくまとまります。それゆえクリーンブースターとしてだけでなく、プリアンプ的に付けっぱなしという使い方も一般的です。
そのままつまみ一個のシンプルなブースターとして使うこともできますが、内部のDIPスイッチにより、音づくりの選択肢が得られます。スイッチ「1」は3デシベルのブースト、スイッチ「2」は高音に輝きを加えるブライトスイッチで、出荷時には両方ともONになっています。
ギター博士「太さに加えてトップ(高音域)が少し艶やかになるな。ワシだったら内部スイッチは 1 をOFF、2 はONにしてボリュームのブーストはあまりせず、 EP Boosterのキャラクターを加えるかな♫」
Xotic EP Booster – Supernice!エフェクター
J.ロケット・オーディオデザイン「アーチャー・アイコン」は、ブティック系ドライブペダルの開祖「ケンタウロス」のサウンドを現代に伝える「ケンタウロス・クローン系ペダル」の代表機種です。なお、「アーチャー」は廃盤で、動画でも使われている「アーチャー・アイコン」が現行版です。
バンドに埋もれることなくしっかり抜けてくる、太くて力強いリッチなサウンドがケンタウロス系の特徴です。ゲインが低く抑えられているので、単体の歪みエフェクターとしてよりブースターとしての用途が想定されているようです。
ギター博士「原音感はありつつ立体的なサウンドぢゃ。フレッシュで瑞々しい印象ぢゃな!ワシだったら、ドライブサウンドにプラスして、フレッシュかつリッチな存在感を演出するかな♫」
ケンタウロス・クローン系オーバードライブ特集 – Supernice!エフェクター
J.ROCKETT AUDIO DESIGNS ARCHER IKON – Supernice!エフェクター
ウォルラス・オーディオ「ボイジャー」は、ローゲインでは一音一音をブライトに響かせ、ゲインを上げれば図太いオーバードライブを生み出す、高性能なプリアンプ/オーバードライブです。「gain」と「tone」のつまみで積極的な音づくりができますが、どう回してもきれいに整ったサウンドが得られます。「gain」ゼロでブースターとして使用すると、高音のきらめきを特徴とする力強く抜けの良いサウンドが得られます。
ギター博士「クリーンなブースト感ではあるが、音色の変化はしっかりと感じる。ザラつきもあって艶もある、絶妙なバランスで、良い塩梅にチューニングされていると感じたゾィ♫」
Walrus Audio Voyager – Supernice!エフェクター
ポール・コクレーン「ティミー」は、原音への忠実さにこだわる「トランスペアレント系オーバードライブ」の先駆けとなったペダルです。高低ふたつのイコライザーが付いていますが、これは「Gain」回路の後段に配されたパッシブ・トーン回路となっています。回路が及ぼすサウンドの影響をできるだけ抑え、トレブル/ベースのカットという機能だけが得られるように考案された斬新な設計です。
あくまでもナチュラルであることを追求しているペダルですが、ミニスイッチの操作で3つのクリッピング回路を選択でき、いろいろな使い方が考えられます。
ギター博士「原音重視でハリのあるサウンド。ワシだったらハリのあるブースト感とカット式のEQでレンジをまとめて、アンプ直の延長上にあるイメージで音作りするかな♫」
トランスペアレント系ローゲインオーバードライブ特集 – Supernice!エフェクター
Paul Cochrane Timmy – Supernice!エフェクター
TCエレクロトニック「スパークミニ・ブースター」は、20デシベルまでの強力なブーストを可能にした、一見シンプルなクリーンブースターです。求めやすい価格帯でありながら、石(集積回路)に頼らないディスクリート回路で構成されたアナログ・エフェクターであるところも注目に値します。
最大の特徴はフットスイッチにあります。ラッチ型(踏むたびにON/OFF)とモメンタリー型(踏んでいる間だけON)の両方の機能を備えているので、ギターソロなどの入口に一回踏んでしばらく点けっぱなしにしたり、伴奏中にオブリガードを挿入する間だけ踏んでそのときだけ音量を持ち上げたりできます。特に、いつも同じ音量でオブリガードを挿しこみたかったギタリストにとって、待ち焦がれた救世主となるでしょう。
ギター博士「強力なクリーンブースト感、元々の音にツヤと立体感を加えるイメージぢゃ。やはりモメンタリー式のフットスイッチが面白いのぅ。ワシだったらライブやセッションなどで積極的に使用するかな♫」
TC Electronic Spark Mini Booster – Supernice!エフェクター
以上、10機種のブースターをチェックしていきました。今回はギターとアンプの間に挟む形でのみのシンプルなセッティングでしたが、ドライブペダルとの組み合わせも面白く、たいへん奥の深い世界です。
本稿のタイトルではブースターで音作りを完成させると謳っていますが、決してブーストする前のサウンドが未完成だというわけではありません。しかしながら、ブースターを適切に使用することで今まで届かなかったところに到達でき、「ああ、サウンドが完成した。」という感慨を味わうことができるのも事実です。ブースターの奥深い世界、ぜひ足を踏みいれてみてください。
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