ライン・クリシェ

[記事公開日]2013/8/13 [最終更新日]2018/3/20
[編集者]神崎聡

ラインクリシェの一例 ラインクリシェの一例

定石と言われるコード進行の一つにライン・クリシェがあります。ライン・クリシェとは「コードトーンの中の一つの音だけが2度で変化する進行」です。同じコードが続く場合に変化を付けるために使われます。曲を作ったりする時の引き出しのひとつにもなるライン・クリシェを覚えましょう!


六弦かなでとギター博士のジングルベルっ!
1:15〜 からの「ジングルベル・ギターアレンジ」では、Aメロ、サビ共にクリシェを用いたアレンジが施されています。

ライン・クリシェの種類

変化する音は

  • コードのルート音
  • 5度の音

です。それぞれ主な進行を見てみましょう。

(1)ルート変化型

ルート音が2度で下降する進行です。

①1 – M7 – 7(短7度) – (M6)

1 – M7 – 7(短7度) – (M6)

メジャー・トライアド、マイナー・トライアドともに使用されます。
ルート音が変化する、といっても無くなってしまう訳ではなく、ルート音をオクターブで重ねておいてその片方のみが変化していきます。

マイナー・コードでは短7度はナチュラル・マイナー・スケール上の音なのでそのままM6音になるか、あるいはもう一度M7に戻る場合もあります。

メジャー・コードでの使用

ラインクリシェ1 CCM7C7 F ※ここでのダイアグラムはラインクリシェにおける変化する音のつながりがわかりやすいようにしてあります。 黒字に白文字がその音です。 実際は他のコードフォームで押さえても構いません。 メジャー・キーのⅠあるいはマイナー・キーのbⅢで使用されます。 3つめのセブンス・コードの後がM6音になる場合は多くの場合、完全4度上のコード(Ⅳコード)に進みます。 これはⅠ7は二次ドミナントになりⅣコードへ進行しようとするからです。 まれにセブンス・コードからまたM7に戻る場合もありますが、その場合は二次ドミナントというよりも単なる半音づつの音の流れと取れるため、Ⅳコード以外のコード(1 - M7 - 7 - M7のあともう一度ルート音になろうとするのでルート音を含むコード)にも進行します。 ラインクリシェ2 この進行でのライン・クリシェにあたるコード進行はCからC7ですが、その後も半音づつ下行する流れは続き、次のようになる場合もあります。 ラインクリシェ3 ※ラインクリシェの変化する音がベースラインになることもあります。 上の例の変化する音をベース音にした例もあげておきます。 (上の譜例、下段を参照)

マイナー・コードでの使用

メジャー・キーのⅡm、Ⅵmあるいはマイナー・キーのⅠm、Ⅳmに使われます。 いずれの場合もM6ではなく7のあとが再びM7になる場合もあります。 ラインクリシェ4 マイナー・キーのⅠmでこの進行が使われた場合は長6度音の後はさらに半音下がり、その音を含むⅣmに進行する事が多いです。 メジャー・キーのⅥmとマイナー・キーのⅠmは平行調間なら同じコードになり、音階も同じなります。 メジャー・キーのⅡmとマイナー・キーのⅣmも同じです。 スケールの関係からライン・クリシェ全体やその後の進行に違いが現れます。 Ⅰm、Ⅳmでのラインクリシェ また変化する音をベース音にすると次のようになります。 ベース音が変化するラインクリシェ この場合のⅠm6/ⅥはⅥm7(b5)と同じコードになります。

ラインクリシェから発展した進行

一見ラインクリシェには見えませんが同じような音の流れを含む進行もあります。 Cm - G7 - Cm7 - F7 これらはラインクリシェには含めませんが、このような音の流れがコード進行から読み取れるようすることでスムースなコード進行を作る事ができたり、アドリブの際にも役立ちます。 ラインクリシェのアレンジ例 メジャー・コードでのラインクリシェを元にアレンジした例

②1 – M7 – M6 – M7

このラインはメジャー・スケールで動くのでメジャー・コードでのみ現れます。

1 – M7 – M6 – M7

CCM7C6_5CM7

長く同じコードが続くような場合のアレンジとして覚えておくと良いでしょう。

(2)5度変化型

5度音が2度で上行する進行です。

①5 – +5 – M6 – 7(または+5)

変化する音、ルート音
メジャー、マイナーコードともに現れます。
ラインの4つ目はまた+5に戻る場合もあります。

メジャー・コードでの使用

使われるコードはルート変化型と同じくメジャー・キーでのⅠ、マイナー・キーでのbⅢに加えてメジャー・キーのⅣ、マイナー・キーでのbⅥにおいても使用されます。 ラインクリシェ7 C_5C+C6C7_5F ラインの短7度が現れる場合はメジャー・キーでのⅠ、マイナー・キーでのbⅢのみで、 その場合はコードはセブンス・コードになり、4度上のコードへと進行します。 (メジャー・キーでの、Ⅳやマイナー・キーでのbⅥはセブンス・コードになると完全4度上にダイアトニックコードがないので二次ドミナントとしてつかわれないためです。) ラインクリシェ78 この進行は次のように変化することもあります。 C - E+ - F - Bb7 オーギュメント・トライアドはすべてのコードトーンがM3づつ重なってできているため、それぞれがルートとなる3つのコードは構成音が同じものになります。覚えておくといろいろな場面で役立ちます。 C+ - E+ - G#+

マイナー・コードでの使用

メジャー・キーのⅥmあるいはマイナー・キーのⅠmで使われます。 Cm - Cm+ - Cm6 - C7orCm7 Cm_5Cm+Cm6_5Cm7_5_2Cm7_5 マイナー・コードでの+5はm6でもあるため、その部分のコードのⅠm+はⅠ音がベースになったbⅥとも考えられます。 構成音は同じ マイナー・コードでの短7度の部分がマイナーセブンス・コードであればいろいろなコードへ進行しますが、 セブンス・コードになった場合は完全4度上のコードに進みます。 マイナーセブンスよりもほとんどの場合はセブンスが使われます。

②5 – M6 – M7 – M6

これもメジャー・スケール内での動きになるためにメジャー・コードにのみ現れます。

5 - M6 - M7 - M6

メジャー・キーのⅠ、Ⅳ、マイナー・キーのbⅢ、bⅥで使用されます。

ラインクリシェにおけるメロディ

ラインクリシェでは細かくコードが変化するのでスケールも変わっていきます。
が、あまり細かくスケールを考えるよりも変化している音以外は変わらないと考えて
変化しない他のコードトーンを中心にメロディを作るといいでしょう。
変化していく音をメロディに使うこともありますが、その場合は逆に変化する音が綺麗に流れるように作ると良いでしょう。

LC_25

変化する音でない音をメロディに持った例

変化する音をメロディに持った例

変化する音を他のコードトーンと組み合わせたメロディの例

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