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McCarty 594 Sunburst
1994年に発表された「PRSマッカーティ(McCarty)」は、PRS創設者ポール・リード・スミス氏と親交のあったテッド・マッカーティ氏の名を冠したモデルです。マッカーティ氏は
として、PRS社の躍進に多大な功績を残しました。その名を後世に語り継ぐRPSマッカーティは、テッド氏からポール氏へ受け継がれた全てが注がれた、PRSラインナップの中で特別な存在になっています。今回は、このPRSマッカーティに注目していきましょう。
Dead & Company: Live from KeyBank Pavilion (6/15/2017 Set 1)
このライブではミニスイッチを多く持つプライベートストックをメインに使用しているジョン・メイヤー氏ですが、15分ころに1曲だけマッカーティ594を使用しています。ご自身のシグネイチャーモデル「Silver Sky」に通じるギンギラギンのカラーリングが斬新ですね。
テッド・マッカーティ氏(1909-2001)は、ギブソンの黄金時代を築いた「ギター・レジェンド」です。特に名機「レスポール」を開発した功績で知られ、「エレキギターを永遠に変えた設計者」とも言われます。役職はCEOのちに社長でしたが、氏は常に現場に立つ技術者でもあり、数々の製品開発に携わりました。ギブソンに在籍した1948年~1966年の間には、
こうした「ギブソンのアイデンティティ」といえるパーツやギターが生まれており、ギブソン社が取得した特許は相当数に上ります。
ポール・リード・スミス氏がマッカーティ氏のことを知ったのは、その特許からでした。米国特許庁を訪れてギター関連の特許を調べると、ギブソンの持つ特許の中に「テッド・マッカーティ」の名前がやたら出てくるわけです。そこでポール氏はマッカーティ氏に会いにいき、コンサルタントとして招致します。そのとき1986年、マッカーティ氏は70代後半という高齢で、目がほとんど見えなくなっていたそうです。
実はギターが弾けない?
「マッカーティ氏はギターが弾けなかったので、多くのプレイヤーから意見を集めた」と伝えられていますが、フェンダー創設者のレオ・フェンダー氏も同様で、地元のミュージシャンから意見を集めていました。人類エレキギター史において超重要なこの二人が「ギターを弾けない人」だった、という話は大変おもしろいですね。
それぞれを見ていく前に、「PRSラインナップ内でとりわけヴィンテージ志向」と言われるマッカーティ各モデル共通の特徴を見てきましょう。かつてPRSは、
と言われていましたが、このマッカーティに限っては、レスポール・スペシャルのアレンジからスタートしたPRSにおける、ギブソン黄金時代を築いたテッド・マッカーティ氏の名を関するモデルだけに、随所にギブソン的な雰囲気を感じることができます。
McCARTY 594 Tobacco Sunburst
ソリッドボディでは、ほかのPRSギターより数ミリ厚いバック材が使用されます。この数ミリの差が、多少の重量と引き換えに、引き締まった低音域と伸びのあるサスティンを生みだします。
また、マッカーティのカラーリングと言えば「マッカーティ・サンバースト」および「マッカーティ・タバコサンバースト」と呼ばれる伝統的なサンバーストがもっとも印象的です。カラーリングの美しさにやたらこだわるPRSにおいて、カラー名にモデル名が使われた例はマッカーティだけです。
マッカーティ・シリーズで採用される「58/15」ピックアップは、ポール・リード・スミス氏自らが設計しました。モデル名の由来は「58年製レスポールのピックアップを2015年に再現」というもので、PRS Custom 24などで採用される「85/15(デビューイヤーである1985年のPRSピックアップを2015年に再現)」と異なる方向性を持っています。
この「58/15」はパワーで勝負しないヴィンテージ・スタイルで、中音域が豊かに響く明瞭なサウンドを持っています。金属製ピックアップカバーの存在も大きなポイントで、カバーが付いている(カバード)だとサウンドがやや丸くなる傾向にあります。いっぽう定番機種Custom 24や同22のピックアップはカバーが付いておらず(オープン)、比較的鋭いサウンドになります。
ピックアップセレクターにはトグルスイッチが使われており、トーンポットに仕込んだスイッチによってコイルタップできます。これ自体は珍しい仕様ではありませんが、標準機のラインナップ「PRS Core Models」の多くは5Wayセレクタースイッチの操作でコイルタップを含めたピックアップ切替を行いますから、一見スタンダードなマッカーティの電気系は、PRS内では異彩を放っていると言えます。「ピックアップの切替だけならトグルスイッチの方がシンプルで好き」という人も多いことでしょう。
しかも、このコイルタップは一般的な「片っぽを切るだけ」ではありません。内部配線にひと手間かけられており、「切る側のコイルの音をちょっと残す」ようになっているのです。これによって
といった「コイルタップあるある」が解消されます。特に歪みを抑えたセッティングでピッキングニュアンスを大事に演奏したい、という要求にもじゅうぶん応じることができます。「5Wayセレクターでタップする機種に、この機能はない」というところも注目に値します。
マッカーティではバインディングを施した22フレットのローズウッド指板が使用され、ヴィンテージ志向の雰囲気を演出しています。コアモデルの中では、このマッカーティ・シリーズとサンタナ氏のシグネイチャーモデルのみに採用されている限定的な仕様です。
現在のマッカーティ・シリーズにはトレモロ搭載機がなく、すべて固定式ブリッジです。「PRSマッカーティ」ではブリッジとテールピースが一体化した「ストップテール・ブリッジ」、「マッカーティ594」シリーズではブリッジとテールピースを分けた「PRS 2ピース」が採用されています。厚みのあるボディと固定式ブリッジの組み合わせによって、このモデルのサウンドがしっかりと方向づけられているのです。
The PRS McCarty Demo
動画のマッカーティは旧モデルで、ブリッジはアルミ削りだしの1ピースです。ハムバッカーではしっかり太く、タップしたサウンドも美しく澄んでいます。またその音量差が抑えられており、使いやすい印象です。
では、PRSマッカーティのラインナップをチェックしていきましょう。現在PRSマッカーティは、ソリッドボディ3モデル、ホロウボディ1モデルの合計4モデルがリリースされています。
マッカーティ・シリーズの基本となっている「PRSマッカーティ」は、先述した特徴によって伝統的なスタイルが濃く反映されたギターです。特にボディ厚、ピックアップ、ブリッジという3つの点により、PRSの他モデルと違った方向性のサウンドを持っています。
ヴィンテージ・トーンへのリスペクトを込めたレギュラーモデルとしては「PRS Custom 22」とほぼ同時期に発表されています。この2モデルはエレキギターの伝統を継承する意味で共通のコンセプトを持ちつつ、
という対を成していると言えるでしょう。両機にはおおまかなボディ形状、22フレット仕様、ナット幅や厚みなどネック寸法に共通点があるほか、ボリュームポットに「ハイパスフィルター」が仕込まれているのも共通しています。
旧モデルで使われてきたストップテール・ブリッジは、アルミの塊から削り出した極めてシンプルな設計でした。これには軽量かつパーツ点数が少ないことで得られる「良好な音響性能」と引き換えに、「各弦のオクターブ調整ができない」というデメリットがありました。現在のブリッジはこれに調整機構を盛り込んでおり、各弦の正確なピッチと、楽器全体の調整の幅が確保されています。
使用される金属にも変更が加えられており、重量は大幅に増しています。バータイプ・ブリッジの特徴は残しながら、TOMブリッジを搭載しているレスポール・タイプの方向へと若干の軌道修正をしているわけです。
McCartyを…
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マッカーティ・シリーズで特に人気の高い「マッカーティ594」は、ヴィンテージ・トーンへのさらに深めたリスペクトと、PRSの持ち味である高い演奏性/しっかりとした丁寧な作りを両立させたギターです。しっかり育った歴戦のギターが持つフィーリングを持ちながら、どのポジションでも正確なピッチが得られ、かつ弾きやすい「PRSの完成形」と言われています。
「ここ数年弾いた中ではベスト。ヴィンテージのハートとソウルがあって、ハイポジションのピッチと演奏性の良さも実現している。」− John Mayer(要約)
「品質、プレイアビリティ、トーン、どれをとっても最高のギターだと確信しています。手にしたすべての人びとの楽しみと真の音楽性の源になれば、これほど嬉しいことはありません。」− Paul Reed Smith(抜粋)
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マッカーティ594は、「現代の材料でいかにしてヴィンテージ・トーンを得るか」を追求し、これまでのモデルに対して数多くのブラッシュアップを施しています。ヘッドがちょっと薄い、バックコンターがちょっと浅いなど、かなり抜本的な追及ぶりです。モデル名の「594」は弦長24.594インチを意味していますが、「50年代製レスポールの弦長を計測したところ、24.594インチだった」ことに由来しています。
ネックシェイプは新たに採用されている「パターン・ヴィンテージ(Pattern Vintage)」で、通常のものよりやや厚みを増し、かつ高音弦側のやや薄い非対称を成しています。特に50年代製のギターにはネックが分厚いのが多く、当時の特徴を継承するためにも、また良好な鳴りを得るためにも重要な仕様です。ナットがPRSで標準的な樹脂製から牛骨製に変更されているのも、ヴィンテージ・フィールの演出に大きく寄与しています。
という操作系配置は、まさにレスポールそのままを継承しています。やはりこちらの配置に慣れている、という人も多いことでしょう。トグルスイッチはレスポールとほぼ同様の位置に設置されますが、ボリューム/トーンはやや手元に接近する位置に設置されます。「二つのボリュームを一気に操作しやすい」ことを目指していますが、演奏の邪魔になりにくく、かつ操作しやすい絶妙な配置になっています。
それぞれのトーンポットでコイルタップができますが、やはり回路が一工夫されており、タップ時にも良好なサウンドです。しかしボリュームポットにハイパスフィルターは仕込まれていません。「音量を絞ったら甘いサウンドになり、ちょっとモコる」というところも、ヴィンテージ・フィールには重要なファクターなのです。
594シリーズに共通して、「トゥイークト・フェーズIII(Tweaked Phase III)」ペグが採用されています。従来の「フェーズIII」をもう一息前進させ、
というアレンジで振動のロスを低減させたことで、音の立ち上がりがもう一歩速くなり、ブライトな鳴りになります。なお、ペグボタンを固定するネジ(セット・スクリュー)を自分で調整すると「ペグ自体がぶっ壊れる可能性がある」とのことで、PRS側も注意を喚起しています。
PRSはレスポール・スペシャルをスタート地点にしていたからか、これまでのトレモロレス仕様はブリッジとテールピースを一体化させた「ラップアラウンド」型が主体でした。これに対して594シリーズでは、ヴィンテージ・レスポールいわゆる「バースト」へのリスペクトから、ブリッジとテールピースを分化させた「PRS 2ピース・ブリッジ」を取り入れています。受け止めた弦振動をしっかりボディへ伝達し、正確なオクターブ調整ができ、テールピースの調整により弦張力を操作できます。
テールピースにはスリットが刻まれており、弦交換に要する時間を大幅に短縮できます。
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February 2016 – Private Stock Guitar of the Month: The “McCarty 594”
現在のマッカーティ594は、この「プライベートストック・ギター・オブ・ザ・マンス」から始まりました。デモ演奏は4分30秒あたりから。太く甘い、何ともいえず上質なサウンドです。
マッカーティ594のシングルカッタウェイ版「マッカーティSC594」は、単にカッタウェイを減らしただけではない、ヴィンテージ・レスポールへのリスペクトをさらに深めたモデルです。ボディ厚はマッカーティ594よりさらに数ミリ厚く、ネックとボディの接地面積がより広くなっており、永年弾きこまれてきたかのようなヴィンテージ・フィールがありながら、どのポジションでも正確なピッチが得られる、そしてより芯のある太いサウンドが得られます。
ネックヒール部の加工にもこのモデル専用の工夫が施されており、シングルカッタウェイモデルによくある「ハイポジションの弾きにくさ」はしっかりと解消されています。
McCarty SC594を…
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The PRS McCarty Singlecut 594 | PRS Guitars
PRSはシングルカッタウェイモデルでもピックガードを搭載しませんが、ボディトップはちょうど指を置きやすいところの平面を遺しており、問題なく気持ちよく演奏できます。
「マッカーティ594ホロウボディII」は、マッカーティ594のボディを全てくり抜いたモデルです。
という設計で、ボディの表裏共に美しくカーヴィング(削り)されたメイプルを眺められます。
ボディ構造以外の基本仕様はマッカーティ594と共通ですが、トップ材が薄くなっている関係で、ヴォリュームとトーン各ポットはボディに埋め込まれず、ボディ表面に沿うように設置されます。スウィートなジャズトーンをPRSの高い演奏性で使用できますが、このボディ構造のゆえハウリングドライブサウンドを使用する際にはハウリングへの注意が必要です。
McCarty 594 Hollowbodyを…
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The McCarty 594 Semi-Hollow | Demo by Bryan Ewald | PRS Guitars
ソリッド部分を残した「セミホロウ」構造のマッカーティ594も限定生産されました。594シリーズの特徴である「芯のある、太いヴィンテージ・サウンド」にボディ構造に由来する柔らかさがありながら、しっかり歪ませてもハウリングしにくいのがメリットです。
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