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アイバニーズの「アクシオン・レーベル(AXION LABEL)」は、モダンで挑戦的なメタルプレイヤーに向けて放つ新シリーズです。進化が止まることのないメタルシーンを意識した新しいデザインは、同社のラインナップでもひときわ異彩を放っています。今回は、このアクシオン・レーベルに注目していきましょう。
「Axion(アクシオン/アキシオン)」
素粒子物理学において、標準型の未解決問題の一つである強いCP問題を解決するとしてその存在が期待されている仮設上の未発見の素粒子である。暗黒物質の候補の一つでもある(Wikipediaより)
Ibanez Axion Label Electric Guitar featuring Once N For All
まずこのカラーリングに目を奪われますね。ハイゲイン一直線の感があったアイアン・レーベルと異なり、キレのあるハイゲインと煌びやかなクリーンの両方を駆使するタイプのメタルミュージックを目指しているようです。
アクシオン・レーベルでは、アイバニーズの定番仕様に加え、他シリーズと異なる新しい仕様が多く採用されています。まずはシリーズに共通する仕様をチェックしてみましょう。
RGA61AL
アクシオン・レーベルでは、現代のメタルシーンで特に注目されているピックアップが採用されています。
Bare Knuckle Pickups「Aftermath」
「RGA」に搭載されるベア・ナックル社製「アフターマス(Aftermath)」は、レスポンスの早い低域、ダイナミックな中域、表現力に富む高域を持っています。ハイゲインモデルでありながらクリーントーンも明瞭に響くことから、ジャズプレイヤーにも使用されています。
Fishman「Fluence」
「RGD」と「S」に搭載されるフィッシュマン社製「フルーエンス(Fluence)」は「コイルレス(コイルがない!)」という新発想のピックアップで、ノイズや電気的トラブルに強く、非常にピュアなサウンドが得られます。コイルタップ(「S」のみ)に加え、ピックアップ自体のサウンドをヴィンテージ系とモダン系に切り替えられることが最大の特徴です。
また、トーンポットが最初からついていないのも、音抜けを重視するメタル専用機ならではの設計です。
はじめから「S-Lock」ストラップ・ロックピンが採用されている
トレモロレス仕様機には、チューニングの安定度の高いゴトー社製「MG-T」サムロック式ロッキングチューナー(ロック式ペグ)が採用されます。締めて弦を固定する「サムホイール」のぶんだけヘッドの重量が増し、引き締まったクリアなサウンドになります。
また、シャーラー社製「S-Lock」ストラップ・ロックピンを採用しています。スマートなルックスに着脱がラクで、不幸な落下事故を未然に防ぐことができます。
またアイバニーズはブリッジに対して並々ならぬこだわりを持っており、アクシオン・レーベルでは全モデルで同社独自設計のブリッジが採用されています。
モデル名 | 概要 | 搭載機種 |
Edge-Zero II | アイバニーズの伝統、ナイフエッジ搭載のフロイドローズタイプ | RGA60AL |
Gibraltar Standard II | 強固でありつつ低弦高のセッティングが可能な固定式ブリッジ | RGA61AL、RGA71AL S61AL、S71AL |
Mono-rail bridge | 弦ごとに独立したブリッジで、隣の弦同士の共振が抑えられる。ファンフレット機に良好。 | RGD61AL、RGD71AL |
表:アクシオン・レーベルに採用されるブリッジ
RGA61AL:ボディバック
アクシオン・レーベルで採用されている「ナイトロウィザード・5pcネック」は、パンガパンガとウォルナットを交互に重ねた5層構造です。
アフリカ大陸南東部、モザンビーク共和国に主に生育するパンガパンガは、ウェンジ(指板やネックなどに使用される)と近縁のマメ科植物で重くて硬く、強靭な木材です。アメリカやカナダを産地とするウォルナットは、乾燥後の狂いが少なく硬質な、ギターの材料としては比較的ポピュラーな木材です。これにマカッサル・エボニー(縞黒檀、マッカーサー・エボニーとも)の指板が貼られます。こちらはインドネシアが主要な産地で、やはり重硬な特性を持っています。
カッチカチな木材で組み上げた強固なネックは剛性に優れ、立ち上がりが早くサスティンの豊かなサウンドを生みます。また濃い色調の木材でまとめられており、エキゾチックな雰囲気が醸し出されています。
開放弦から12フレットまでは低音側、12フレット以上は高音側に配置する指板インレイ「ステップ・オフセット・ドットインレイ」は、控えめな意匠ながらポジションごとの見やすさを考慮した合理的な設計です。
新規採用された「サブゼロトリーテッド・フレット(Sub Zero Treated Frets)」は、ニッケルシルバー(洋白)に摂氏0度以下の冷却行程を施した、通常より安定性と耐久性を向上させた特別なフレットです。
ネックのサイドポジションに蓄光素材が使用されることは他モデルでも見られましたが、アクシオン・レーベルではヘッドロゴにもこれを採用、暗転したステージで存在感を発揮します。
ここで、ラインナップ内での上下関係を見てみましょう。いろいろな特徴を帯びているアクシオン・レーベルですが、今のところ代表機種「Ibanez RG」からのリリースはなく、RGから派生した「RGA」と「RGD」、および極薄ボディで知られる「S」の3モデルから発表されています。
シリーズ | RGA | RGD | S |
j.custom | RGA8420 ¥324,000 | ||
Prestige | RGD7UCS ¥367,200 RGD3127 ¥275,400 |
||
Premium | S1070PBZ ¥226,800 S1027PBF ¥226,800 |
||
AXION LABEL | RGA60AL ¥226,680 RGA61AL ¥221,400 RGA71AL ¥232,200 |
RGD61ALMS ¥172,800 RGD71ALMS ¥183,600 |
S61AL ¥162,000 S71AL ¥172,800 |
IRON LABEL | RGAIX6MQM ¥151,200 RGAIX6FM ¥151,200 |
RGDIR6M ¥129,600 RGDIR7M ¥183,600 |
SIX6FDFM ¥151,200 |
Standard | RGAT62 ¥124,200 RGA42FM ¥75,600 RGA742FM ¥86,400 |
S670QM ¥113,400 S621QM ¥86,400 |
表:AXION LABEL 価格比較(2019年2月時点)
アクシオン・レーベルはメタル専用機種として知られる「アイアン・レーベル(IRON LABEL)」の上位機種、という位置づけですが、各モデルで上から二番目のグレードでもあることがわかります。「先進的的なメタルの専用機種」というコンセプトを打ち立てているアクシオン・レーベルではありますが、それだけでなく上位グレードとアイアン・レーベルの間を埋めるシリーズでもあるわけです。
次は、シリーズごとに仕様を比較してみましょう。どんな違いが確認できるでしょうか。RGAをピックアップしてみます。
グレード | j.custom | AXION LABEL | IRON LABEL | Standard |
モデル名 | RGA8420 | RGA61AL | RGAIX6MQM | RGAT62 |
ネック | メイプル/ウォルナット5P チタンロッド |
パンガパンガ/ウォルナット5P | メイプル/パープルハート | メイプル/ウォルナット5P (スルーネック) |
ボディ | AAA フレイムメイプルトップ(3mm) アフリカンマホガニーボディ(41mm) |
フレイムメイプル ナトーボディ |
キルテッドメイプルトップ ナトーボディ |
メランチウィング |
指板 | 厳選ローズウッド ツリーオブライフ指板インレイ |
マカッサル・エボニー ステップ・オフセット指板インレイ |
バーズアイメイプル 指板インレイなし |
ジャトバ オフセットドットインレイ |
フレット | ジャンボフレット (w.j.custom fret edge treatment) |
ジャンボフレット (Sub Zero treated frets) |
ジャンボフレット | ジャンボフレット |
ブリッジ | Lo-Pro Edge tremolo bridge | Gbraltar Standard Ⅱ bridge | Gbraltar Standard Ⅱ bridge | Fixed bridge |
ピックアップ | Dimarzio Fusion Edge (Passive/Ceramic) |
Bare Knuckle Aftermath (Passive/Alnico) |
Dimarzio Fusion Edge (Passive/Ceramic) |
Dimarzio Air Norton/The Tone Zone (Passive/Ceramic) |
表:RGA各シリーズの仕様比較
まず、アクシオン・レーベルのネックが唯一メイプルを使用しておらず、導管の埋まっていないパンガパンガ独特の触り心地になっています。j.カスタムのネックは特別な仕上げが施され、内部にチタン製の補強が入ります。比較的低価格なスタンダード・シリーズに、本来なら高級仕様のスルーネックモデルがある、というのもアイバニーズの攻めの姿勢がうかがえるポイントです。
この比較では、ボディは総じてマホガニーに類する木材を使用しています。ナトーはアジアで産出される木材で、マホガニーの代替材として認知が上がっています。メランチは主に東南アジアに生育する代表的な南洋材で、やはりこれもマホガニーの代替材という扱いです。
指板の仕様は見事にバラバラになりました。ジャトバは主に南米に生息するマメ科植物で、エボニーよりも硬いと言われるカッチカチの木材です。また、j.カスタム以外は、指板インレイのインパクトを重視していないようです。
フレットは全てジャンボですが、j.カスタムではフレット両端に滑らかな球面加工が施され、アクシオン・レーベルでは低温処理された強化フレットが採用されています。
ピックアップのセレクトには各シリーズのコンセプトを垣間見ることができます。どれも「立ち上がりの良さ」を強みとしていますが、アイバニーズと共同開発したディマジオ社製「フュージョン・エッジ」はプログレッシヴ・メタルを、ベアナックル社製「アフターマス」はキレッキレの「Djent」を意識していると言われ、ディマジオ社製「エア・ノートン」及び「トーン・ゾーン」は、パワー感のあるハムバッカーの代表的なサウンドをもっています。
ではいよいよ、それぞれのモデルに注目していきましょう。各モデルのフォーマットとアクシオン・レーベルのコンセプトに従いながらも、どれもアイデンティティを持ったギターに仕上がっています。
RGのボディトップをアーチ状に加工し、抱えやすさを増強したのが「RGA」です。カッタウェイ部分も滑らかにベベルド加工されており、演奏性が強化されています。操作系はマスターボリューム、3Wayセレクター、タップスイッチのみのシンプル設計で、コイルタップすると両ハムバッカーの内側のみを起動するモードになります。
「RGA61AL」は、今のところアクシオン・レーベル唯一のトレモロ搭載機です。素早い立ち上がりを生み出すというアッシュボディ仕様で、特徴的な木目が存在感を力強く主張するカラーリングに仕上がっています。
RGA60ALを…
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アクシオン・レーベルを代表する「RGA61AL」並びに「RGA71AL」は、新色「インディゴ・オーロラバースト・フラット」と、焼きを入れたピックアップカバーとのマッチングが恐ろしく斬新なカラーリングとなっていますが、真っ白いバインディングを境にバック面は一転してシックな色調でまとめています。
こちらはフレイムメイプルトップ、ナトーボディというRGAでは標準的な木材構成で、ヘッドにもフレイムメイプルの突板(つきいた)が貼られたマッチングヘッド仕様になっています。
Ibanez 2019 Ibanez RGA60AL Axion Label Electric Guitar Demo
アッシュの木目が物凄い存在感ですね。ギター側の音量を絞った状態でも充分に抜けてくるクッキリしたサウンドは、ピックアップの性能とアッシュボディのなせる技です。
RGA61AL/RGA71ALを…
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「ダウンチューニング専用機種」として弦長を延長、ボディエッジを大胆にカットしたのが「RGD」です。アクシオン・レーベルでは6弦/7弦ともにファンフレット仕様(ニュートラルポイントは12フレット)にアレンジされており、1弦は一般的な25.5インチに、そこから徐々に延長していきます。通常ならヘッド側にトラスロッドを開口することろですが、ファンフレット機ではネックエンド側にアジャストホイールが備わります。
ピックアップにはフィッシュマン社製「フルーエンス」を採用、ボリュームとトグルスイッチのみの超シンプル操作ですが、ボリュームのプッシュ/プルでピックアップの音色を切り替えることができます。
6弦ファンフレット仕様の「RGD61ALMS」は、ほぼ同じ厚さのアッシュとナトーを貼り合わせたボディのトップに、フレイムメイプルをあしらってドレスアップしています。斜めにカットしたボディエッジ部分では縦方向に走るアッシュの木目が、トップ面ではフレイムの横線が走る、異なる世界が共存する面白い意匠となっています。
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7弦ファンフレット仕様の「RGD71ALMS」は、ナトー製ボディを新色「ブラック・オーロラバースト・マット」で彩った、フルーエンスピックアップのルックスもあって未来感のある雰囲気をまとっています。
Ibanez 2019 Ibanez RGD71AL 7-String Multi-Scale Demo
エレキギターが木でできているということを忘れてしまいそうな、未来感に満ちたルックスですね。ファンフレットの利点は、高音弦の弾きやすさを維持しながらも低音の張りを増すことができる点です。
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「S」は、表裏ともになだらかな曲面を描く極薄ボディが特徴です。エッジ部分の薄さは尋常ではありませんが、中央部分の厚みは充分に残っています。そのためこのサイズ感でありながら、しっかりとした弦振動を得ることができます。
アクシオン・レーベル版の「S」は、リバースヘッドの攻撃的なシルエット、ボディ外周を覆う多層バインディング、モノトーンのグラデーションカラーがルックス上の特徴です。フィッシュマン社製「フルーエンス」ピックアップを採用しており、ボリュームポットのプッシュ/プルでピックアップのサウンドを切り替え、ミニスイッチでコイルタップができます。
マスターボリューム、トグルスイッチに加え、タップのスイッチも端っこに追いやられることなく、操作系はむしろ演奏中に手が伸びやすい位置に集められています。ギター側の音色切り替えをたくさん使いたいギタリストにとって嬉しい設計です。
Ibanez 2019 S61AL Axion Label Demo
同じピックアップを使用している上記RGDとは、また一味違ったサウンドになっていますね。「メタル専用機」という触れ込みながら、いろいろなジャンルに侵略できそう。
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