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「ホワイトペンギン」を代表とするグレッチの「ペンギン」シリーズは、豪華な意匠で彩られた、チェンバー・ボディモデルの最上位機種です。意匠の多くは同社の「G6136ホワイトファルコン」と共通しており、とても鮮やかな印象を受けます。今回は、このグレッチ「ペンギン」シリーズに注目していきましょう。
Dan Fogelberg – The Language of Love
1955年にデビューしたホワイトペンギンですが、1958年まではカタログなどで紹介されることのない、「裏メニュー」のような存在でした。いったん終了となる1964年までの生産数がわずか数十本と言われており、この期間に生産されたホワイトペンギンは大変希少なギターです。
動画のダン・フォーゲルバーグ氏は、心にキュンと来る歌詞を甘いテノールで歌うシンガーソングライターで、1980年代に一時代を築きました。氏の愛用するホワイトペンギンは1958年製で、しかもきわめて珍しいステレオ仕様だったと伝えられています。
ではさっそく、代表機種「’58年式ホワイトペンギン(Gretsch G6134T-58 Vintage Select ’58 Penguin)」をピックアップして、その特徴を見ていきましょう。ホワイトペンギンとは、どういうギターなのでしょうか。
ホワイトペンギンは同社の「G6128デュオジェット」を出発点として、ホワイトファルコンとコンセプトを同じくする、ゴージャスなルックスでまとめたギターです。ではどれほどゴージャスなのか、これを見ていきましょう。
Gretsch G6134T-58 Vintage Select ’58 Penguin:ヘッド部分
ギターのヘッドはデザインに自由が利くことも手伝い、ブランドやモデルの個性を最も主張しやすい部位です。ホワイトペンギンもその例にもれず、たいへん個性的なヘッドデザインを採用しています。’58年式ホワイトペンギンのヘッドには、
といった特徴があります。このヘッドデザインは「グレッチ・トップグレードの証」であり、
以上の2機種にしか許されない特別な意匠です(ただし、ヘッドだけでファルコンかペンギンかを見極めるのは極めて困難)。
ホワイトペンギンのピックガードは、肉厚なアクリルでできたピックガード本体に、金文字で「GRETSCH」のブランドロゴと、可愛らしいペンギンのイラストが添えられます。最上位機種のマスコットに、なぜ飛べない鳥を選んだのか、公式のコメントは出されていません。
「ペンギン」シリーズを語る上で欠かせないものは数多くありますが、バインディングもその一つです。’58年式ホワイトペンギンのバインディングには、目につきやすい最も外側に、ドラムのシェル(胴体)に使用していたゴールド・スパークル(ラメ)の入ったものが採り入れられています。また眩しいバインディングだけでなく、トラスロッドカバーやヒールキャップ、バックパネルにもゴールド・スパークルがあしらわれます。
ペグ、ピックアップカバー、各種スイッチやコントロールノブ、ブリッジ、テールピースなど、金属パーツはゴールドで統一されます。右肘部分の「アームレスト」は、ほぼペンギン・シリーズにしか採用されない個性的なパーツです。コントロールノブは「Jeweled G-Arrow」と名付けられた特別なもので、グレッチの「G」に矢印を加えたデザインの刻印が記され、宝石を模した石が埋め込まれます。’58年式ホワイトペンギンにはビグスビーが備わっていますが、トレモロレス仕様モデルでは「Gキャディラック・テールピース」が採用されます。
続いて「’58年式ホワイトペンギン」が、楽器としてはどういうものなのかを見ていきましょう。
「’58年式ホワイトペンギン」における重要部分の寸法は、
となっています。これはグレッチ「デュオジェット」に等しく、レスポールタイプのギターにかなり近い数値ですから、ストラトキャスターやテレキャスターよりはレスポールに近い弾き心地のギターだと言えるでしょう。
主要な寸法がデュオジェットに等しい「’58年式ホワイトペンギン」ですが、使用する木材にはちょっとした違いが表れました。ではここで、同じ「ヴィンテージセレクト・エディション」からリリースされている「’59年式デュオジェット(G6128T-59 Vintage Select ’59 Duo Jet)」との比較を試みてみましょう。
’58年式ホワイトペンギン | ’59年式デュオジェット | |
ボディトップ | アーチ状のメイプル合板 | アーチ状のメイプル合板 |
ボディバック | チャンバー加工を施したマホガニー | チャンバー加工を施したマホガニー |
ネック | メイプル、セットネック | マホガニー、セットネック |
指板、ブリッジベース | エボニー | エボニー |
表:ホワイトペンギンとデュオジェットで使用される木材
この表からは、
ということがわかりますね(デュオジェットの場合、モデルによってはローズ指板が採用されることもあります)。
レスポール、SG、ES-335などギブソンを例に挙げると、セットネックのギターではネック材にマホガニーを採用するのが定番だと思われがちです。しかし、同じくギブソンのL-5CES、Super400といった、もっと高級なギターのネック材にはメイプルが採用されます。これはヴァイオリンの設計にならったものですが、高級機ホワイトペンギン開発陣も、この例に従ったものと考えられます。ネック材が硬質なメイプルになることで、ホワイトペンギンはデュオジェットよりキュッと締まった、立ち上がりの鋭いサウンドになる傾向にあります。
「’58年式ホワイトペンギン」の電機系は、
という仕様です。TVジョーンズ社の「TV Classic」はグレッチの定番ピックアップ「フィルタートロン」の復刻版で、ヴィンテージ・グレッチに搭載されていたフィルタートロンを再現しています。グレッチの高級機では今や定番となっているこのTVジョーンズですが、モデルによっては通常版のフィルタートロンやダイナソニックが採用されます。
「トーンスイッチ」は
を切り替えるもので、グレッチ独特の回路です。こちらもモデルにより、一般的なトーンポットを用いた回路が採用されます。
「現代の定番」と目されているのは、さきほどチェックした1958年式のホワイトペンギンです。デビュー当時からこの年までに、またこの年から現在まで、どのような変化があったのでしょうか。ここでペンギン・シリーズの歴史を見てみましょう。
1955年にデビューした時のホワイトペンギンは、Vシェイプ・ヘッド形状、ゴールド・スパークルのバインディングなど今に残る意匠を備えつつ、
という仕様でした。
ホワイトペンギンはここをスタート地点として、歴史とともに他のグレッチ製品と同様の変化を遂げていきます。
ホワイトペンギンは1958年にようやくチラシや価格表に記載されるようになりましたが、昔のカタログをチェックしても、なかなか「ペンギン」の文字を見出すことができません。ペンギン・シリーズは一部の人しか知りえない、「幻の裏メニュー」だったようです。
しかしこの時までには
という仕様変更が確認できます。この年から翌1959年までの間にヘッドの意匠が変更され、横書きのブランドロゴと四角い金属プレートというデザインになりました。
この年、グレッチはほとんどのモデルを「ダブルカッタウェイ化」させ、ハイポジションの演奏性を飛躍的に向上させました。われらがホワイトペンギンもこの流れに乗って、ダブルカッタウェイ化します。ダブルカッタウェイモデルには「ゼロフレット」が付けられましたが、アームレストは廃止されました。
ホワイトペンギンの生産は、1964年にいったん終了したと伝えられています。この時までに生産されたホワイトペンギンがいわゆるヴィンテージ・ホワイトペンギンで、ヴィンテージ市場でもめったにお目にかかれない「幻のギター」となっています。
1980年代に入ると、グレッチは経営上の問題から全モデルの生産が停止しますが、1989年から再開、
という多角的な生産体制で、ヴィンテージモデルや新しいモデルをリリースしていきます。その中で「白くないペンギン」も作られ、ペンギン・シリーズとして多様化していきます。
ではここから、グレッチ「ペンギン」シリーズのラインナップを見ていきましょう。100万円近辺で取引される「グレッチ・カスタムショップ」製のものは置いといて、現実的な日本製を見てきます。今のところレギュラー生産されているのは2モデルのみで、あとは限定生産となっています。黒いカラーリングの「ブラックペンギン」も定番に近いモデルですが、今のところ生産されていません。白や黒以外のカラーリングが登場しており、今後も装いを新たにした新色のペンギンが順次リリースされるのが予想されます。
ホワイトペンギン発表時のスタイルを残す「’55年式」は、
という仕様を基本としています。その時にはなかった新しいカラーリングが採用されることで、バリエーションが生まれています。
「モーターシティ・ペンギン」は、ホワイトペンギンがデビューした50年代のアメ車をイメージし、ピンク、レッド、ブルー、ブラックという4タイプのカラーリングで彩ったモデルです。サイド&バックはホワイトというツートンカラーが、ギターのクールさを演出します。
こちらは’55年式のスタイルを「キャディラックグリーン」カラーで彩ったモデルです。
ペンギン・シリーズ唯一の左用は、’55年式が採用されました。
さきほど注目した「’58年式ホワイトペンギン」は、高人気なヴィンテージギターをベースとしています。とはいえ当時のホワイトペンギンのリアピックアップが若干センター寄りに設置されていた点については、現代風の位置に修正されています。また、
など、電機系が強化されています。
現代的なアレンジが施されたモデル、また年式の区別が難しいモデルをこちらに紹介します。
「ケニー・ワイルドペンギン」は、横山健氏のシグネイチャーモデルとして随所にアレンジが加えられた、新しいペンギンです。「バーティカル・ロゴ」と「ハンプブロック指板インレイ」は’55年式の特徴、「(TVジョーンズ社製)フィルタートロン」と「トーンスイッチ回路」は’58年式の特徴、この二つを組み合わせた上、
というアレンジにより、弦張力を増し、ボディへの振動伝達を向上させています。
また電機系も強化されており、
現代のロックで特に重視される「音抜け」の向上がはかられています。
「G6134TDC-LTD15」は、60年代に採用されたダブルカッタウェイのボディ形状を、「ブロードウェイ・ジェイド(翡翠色)」のカラーリングと白系の意匠でまとめた異色のペンギンです。クロームの金属パーツ、ホワイト・スパークルのバインディングは、高級感を残しながらも爽やかさを感じさせます。
採用されている「ロッキング・バーブリッジ」は、ツルツルの金属棒をサドルに使用するもので、弦との摩擦がすくないことからビグスビーとの相性は良好です。
以上、ヴィンテージ市場では「幻のギター」と言われている、グレッチのペンギン・シリーズをチェックしていきました。いかにもアメリカ的なギラっとした豪華さにふさわしく、お値段もなかなかです。しかしステージ映え、写真写りの良さは格別であり、日本製なので楽器としての信頼性も非常に高いギターです。ぜひ検討してみてください。
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