《アジア最大の楽器ショー》MUSIC CHINA 2017取材レポート!

[記事公開日]2017/10/26 [最終更新日]2021/4/28
[編集者]神崎聡

日本のブランド

現地に根差した日本ブランド

KÄMPFER

KÄMPFERブース

「ケンプファー(ドイツ語で「闘士」)」は、日本のへヴィメタルバンド「AION(アイオン)」のギタリスト、IZUMI氏のローディーを30年にわたって務めたSHINGO氏が立ち上げたオリジナルブランド。日本人が中国で立ち上げ、中国で生産するという珍しいケースです。ブランド名については400個の候補がどれも何かに使われていたなか、ようやくたどりついたものだとか。只今販売代理店を絶賛大募集中。

KÄMPFERのギター

主要モデル「EPSILON(イプシロン)」は、トランプになぞらえた

  • J’s:アルダーボディ、メイプル指板
  • Q’s:アルダーボディ、エボニー指板、マッチングヘッド
  • K’s:アルダーボディ、フレイムメイプルトップ、メイプル指板

という3グレードを展開。変形でありながら「80~90年代におけるヘヴィメタルギターの演奏性を追求した」という自然な弾き心地でバランスも良く、一切ストレスを感じさせません。またハーモニクスで「キー!!」って言わせやすい、という印象でした。

KÄMPFERギターのボディ

「ヘヴィメタル志向」というコンセプトから、ボリュームポットはこだわりの「Bカーブ」を採用。ちょっと触ったくらいではフルボリュームと変わらず、「0」か「10」かしか使わないギタリスト向けです。また、二つのハムバッカーの配置に美しさを求めるがゆえの22フレット仕様。7弦モデルのみ、高音側だけ24フレットになっています。

KÄMPFERギター:ピックアップ

ブランドとしてのオリジナリティに強くこだわっており、ペグ、ピックアップ、ブリッジにブランドロゴが入ります。

KÄMPFER:ヘッド部分

SHINGO氏は現在中国で雑貨生産の仕事をしているが、これと並行してギターの仕事がしたくてしょうがなくなって、中国においてギターの生産が盛んな広東省の恵州(けいしゅう)に乗り込んで5年、今回がブランドの華々しいデビューなんだとか。当取材班が、日本人としては初めてケンプファーに触れた模様です。

KÄMPFER:ヘッド裏

「日本においてSHINGO氏が設計、AION LIMITED社によるプロデュースで、中国にてハンドメイドされ、中国における意匠登録が取得済みである」という表示。

KÄMPFER:ネック

グリップはやや丸くて、ほんのり非対称です。これはまだサンプルなので丸いグリップだが、製品版ではもう少し薄くなる予定とのこと。「ギター弾きの自分が欲しいギターを作った。万人受けはしないが、きっと惚れこんでくれる人がいる。そういう人のためのブランド」だというSHINGO氏。鋼鉄の魂を持った来場者の中には「幾らでも出すから売ってくれ」と迫る人もいたが、展示品はあくまでもサンプルのため、販売できなかったのだとか。

KÄMPFER:エボニー指板

中国のギターは加工精度の観点では、やはり中国製の域を脱していないが、それでもエボニーなどの銘木をふんだんに使用しても日本国内より安価なので、ものすごく面白い、という考え。Q’sでエボニー指板を採用しているのも、ローズとエボニーであまり材費に違いがないことから、いっそのこと高級感のあるエボニーにしてしまおう、という考えです。エボニーに似たブラックウッド材の指板も開発中だとか。

意匠登録

ギター本体の意匠登録は、中国国内でしっかり取得しています。これがあれば、中国国内では断りなくコピーモデルを作ることが違法となるわけです。中国でのビジネスの手法は雑貨の仕事でじゅうぶん積み上げているとのこと。ケンプファー立ち上げに際しての商標登録や工場とのやりとりなど、数々のチャイナマジックに翻弄される苦労話が日本の雑誌で漫画化される(!)という企画も持ち上がっているのだとか。

KÄMPFER Guitar Products Official Web Site.

現地法人

日本企業の現地法人による展示も多数見られました。

Rolandブース

同系列の「BOSS」と「Roland」はまとめてひとつの大きな展示。そのため、(くどいようですが)ギター用の展示場であっても電子ドラム(V-Drum)やシンセサイザーも展示されていたわけです。

BOSSエフェクター

ESPギター

ESPグループのギターは、「ESP」、「E-II」、「LTD」がずらり。「ESP」は欧米のヘヴィ系アーティストモデルが中心ではありますが、SUGIZO氏(LUNA-SEA)の「ECLIPSE」も加わっており、日本人アーティストの存在感も感じることができます。

E-II

ヘヴィ系のラインナップが主体、かつそれでありながら多弦のラインナップはかなり控えめな印象です。

LTD

どのブランドでも、デモ演奏を行うギタリストは、全てヘヴィ系のアーティストでした。中国のロックシーンではヘヴィ路線が注目を集めているようです。こちらのジャンルに強いE-IIやLTDといったブランドは、中国市場でも注目を集めそうです。

Ibanez(アイバニーズ)

多弦のパイオニア「Ibanez(アイバニーズ)」は、やはり7弦/8弦モデルも展示しています。有名ブランドで来場者の関心が高いようであるのに加え、ブースが出入り口に近い良好な立地条件であることから、常に人でごった返しています。手前に見えるRoadcoreは、ピックガードや操作系が国内仕様とは異なる海外向けモデルです。

Pearl

TAMA

TAKAMINE

ARIA

ISHIBASHI楽器

量販店「イシバシ楽器」は、かなり早い段階で上海に支店を設立しています。自社ブランド「SELVA」は中国市場でも流通されています。

その他

販売店のブースで展示されている、メイドイン・ジャパンのハイエンドモデル。スタッフさんへのインタビューに次々と割って入りこんでくる商談。メイドインジャパンに対する海外からの関心の高さが伝わってきます。日本人が忘れかけている「景気が良い」という状態がまさにここで展開されているようです。高級機は「羨ましがられてなんぼ」という考え方も手伝ってか、特に有名なブランドに関心が集中する傾向にあります。

ちょいちょい違うブランドが混在するのが、中華風のディスプレイ。いまのところゼマイティスではストラトタイプのリリース予定はありません。

中国市場に挑戦する日本ブランド

こちらは「ジャパン・パビリオン」と称し、展示場をシェアして使用しています。「メイドインジャパン」のクオリティを武器に、中国市場にチャレンジしていこうという日本ブランドたちです。今までの中国にはなかった新しい製品を提案していくことで、中国市場の需要を掘り起こそうと頑張っています。人気のアーティストが使用しているモデルなどはものすごく売れるそうで、学生さんが必死でバイトして買っていくのだそうです。

ジャパン・パビリオン

TOKAI

TALBO

TOKAIはアルミニウム鋳造ボディを特徴とする「TALBO」をメインに展示。一般に「重い」と言われるTALBOですが、構えてみると気になるほどの重みではなく、だいたいレスポールと同じくらいになっているそうです。

TALBOレインボーカラー

レインボーカラーのショーモデルが目を引きます。ボディバック側がエッジをえぐったような形状になっていたせいか、重いどころかむしろ軽いとすら感じます。ピックアップはレース社製のコイルレス。タイプ。くせのないナチュラルかつ美しいサウンドが、アルミボディの個性を素直に発揮させているようです。アルミボディは豊かなサスティンと、歪ませた時に明瞭に立つハーモニクスが特徴です。

TALBOネック

EVO

アルミのボディに数々のギミックをブチ込んだ未来ギター「EVO」。ものすごい未来感ですが、中国のバイヤーたちの目にはどのように映ったのでしょうか。

SHINOS AMPLIFIER

SHINOS AMP

配線からキャビネット製作まで全部を自社工房で行っている、こだわりの高級アンプブランド「SHINOS」。ここから出てくるプリップリのクランチは、まさに本格的なヴィンテージサウンド。いつまでも聴いていたい。

SHINOコンボアンプ

現在の中国ではハードロック全盛であり、ハイゲインアンプに注目が集まりがちといういわば逆境の中、この胸を打つ音の良さは大きな反響を呼んでいました。

SHINOSアンプヘッド

ハイゲインが欲しい人に向け、真空管を内蔵したオーバードライブペダルも用意されていましたが、これもまた凄いサウンド。全機種自社製につき安価なラインナップの無い少量生産という体制でありながら、他社に先駆けて中国市場に打って出るところに、なみなみならぬパワーを感じます。
【音の良さと、現場での強さ】ギターアンプメーカー「SHINOS」訪問インタビュー

Cyberstep

KDJ One

MIDI打ち込みにサンプリング機能も備え、これ一台で簡単に音楽制作ができてしまう「KDJ One」。

ROKKOMAN

ROKKOMAN

今回で7回目の出店となる「ロッコーマン」は、年々認知度を上げてきており大忙しの様相です。本来なら「アストリアス」ブランドでラインナップを展開するところですが、中国国内では他社にこの名前を使われてしまっているとのこと。

ROKKOMAN2

中国での楽器演奏は、今のところバンドよりも家で一人で楽しむことの方が多く、そのためエレキよりアコギが、またポピュラー音楽の歴史が浅いことから鉄弦のアコギよりもクラシックギターの方が求められる傾向にあるそうです。ロッコーマン社はこの分野で日本国内でも高い評価を得ていますが、近年では鉄弦のギターにもチャレンジしています。

ドルフィンギターズ

ドルフィンギターズ

今回で二回目の出展ながら、自社ブランド「Switch」を使用するアーティストが中国で人気という状況が追い風となっている「ドルフィンギターズ」。

Switch

値段が高くても、ちゃんとした良いものが欲しいという顧客からの問い合わせを多く受けているのだそうです。ハイエンドモデルを事故なく日本から運びこんでくるのは、なかなか大変なことなのだそうです。

Switchヘッド

KIWAYA

KIWAYAウクレレ

中国でのテナーウクレレ人気を尻目に、あえてソプラノ/コンサートサイズで出店に臨んでいる「KIWAYA(キワヤ)」は、日本国内では「フェイマス」でも知られていますね。ペグもギアペグではなく伝統的なスタイルのものが主流です。KIWAYAブースでは小売りも行っており、取材に訪れた時には、すでにほとんどのモデルが売れてしまっていました。ウクレレの分野でも日本製の評価は高く、良いものを手に入れたい人が集まってくるそうです。生活にある程度ゆとりのある人の中で、多少値が張っても長く愛することができるものを求める考え方が広まっている、と感じられるとのこと。

ディバイザー

ディバイザー・ブース

今回で7回目の出店となる株式会社ディバイザーは、「HEADWAY」、「STR Guirtars」、「momose」ら各ブランドをひっさげての大規模な展開。やはり認知度の高いブランドだけあり、ひっきりなしに商談が繰り広げられている様子です。ギタープレイヤーの「おさむらいさん」によるデモ演奏やサイン会でにぎわっていましたが、その人気の高さから、おさむらいさんシグネイチャーモデルの需要がかなりあるのだとか。ディバイザー的にはアコギ/エレキの人気に差はないという印象を持っているようで、展示しているギターもまんべんなく「売約済み」のラベルが貼られていました。

こちらの様子は、DEVISER MUSIC CHINA 2017でご覧いただけます。

黒雲製作所

モズライト

黒雲製作所は、今回初めての出展です。中国にはベンチャーズの「テケテケ」サウンドが伝わっておらず、モズライトは純粋に「他とは違う、斬新なエレキギター」として注目されていました。

モズライト2

黒雲のモズライトは木工の素晴らしさが高く評価されており、かつ金属パーツがGOTOH製で信頼できます。トラディショナルなモデルだけでなく、アッシュの木目を際立たせた印象的なルックス、トレモロを持たないシンプルなモデルなど、新しいテイストのモデルも展示されていました。

モズライト3

何しろ「中国にモズライトが上陸したのが初めて」とのことなので、個性的な品ぞろえが欲しいというショップからの問い合わせが多くあったのだとか。中国にはベンチャーズが伝わっていないこともあって、モズライトに対するイメージはまさにニュートラル。純粋に珍しいギターとして受け入れられているようでした。そういう意味でモズライトが中国市場に挑戦するのはかなり面白みがあって夢があるし、Music Chinaのについては渡航費用を含めても、国内の展示会に出展するより低予算なのだとか。

モズライト4

中国のコピー文化は現象として認め受け入れつつ、「だからこそ木工技術の差で勝負できる」と前向きです。たとえこのモズライトがコピーされたとしても、出来栄えで負けることはありません。

モズライト:TOMブリッジモデル

特にモズライト特有のビブラートユニット「ビブラミュート」は調整が難しいため、専門家のいない中国市場に向けては、調整のしやすいTOMブリッジモデルをプッシュしていきたい考えです。

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