自宅での使用に特化した小型アンプ「デスクトップアンプ」特集

[記事公開日]2025/3/27 [最終更新日]2025/3/30
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

デスクトップアンプ
YAMAHA THR30II Wireless
2011年に発表されたYAMAHA「THR」シリーズが、デスクトップアンプという新しいジャンルを確立した。

自宅での使用に特化した小型アンプ「デスクトップアンプ」が注目されています。その名の通り机に置いても使えるようなコンパクトさや家具と馴染むデザイン性を第一に、小型ながら本格的なギターサウンドが得られること、また練習から本格的な音楽制作までカバーできる守備範囲の広さも魅力です。そこで今回はデスクトップアンプに注目し、その特徴や使い方、おすすめモデルなどさまざまな観点から追跡してみましょう。

小林健悟

ライター
ギター教室「The Guitar Road」 主宰
小林 健悟

名古屋大学法学部政治学科卒業、YAMAHAポピュラーミュージックスクール「PROコース」修了。平成9年からギター講師を始め、現在では7会場に展開、在籍生は百名を超える。エレキギターとアコースティックギターを赤川力(BANANA、冬野ユミ)に、クラシックギターを山口莉奈に師事。児童文学作家、浅川かよ子の孫。

エレキギター博士

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エレキギター博士
コンテンツ制作チーム

webサイト「エレキギター博士」を2006年より運営。現役のミュージシャンやバンドマンを中心に、自社検証と専門家の声を取り入れながら、プレイヤーのための情報提供を念頭に日々コンテンツを制作中。


  1. デスクトップアンプと普通の小型アンプの違いは?
  2. デスクトップアンプでできること
  3. デスクトップアンプを選ぶ4つのポイント
  4. おすすめデスクトップアンプ6選
  5. デスクトップアンプを最大限に活かす、音作りのコツ

デスクトップアンプと普通の小型アンプの違いは?

デスクトップアンプとは何か。机に置けるサイズならデスクトップアンプなのでしょうか。今のところ「デスクトップアンプとは、こういうものです」という確固たる定義はありませんが、本記事では「音楽鑑賞にも適した小型デジタルアンプ」と定義します。特に「オーディオスピーカーとして使える」という機能は、普通のギターアンプとは一線を画すポイントです。

デスクトップアンプは、スピーカー自体が違う

Adio Air GTの筐体設計
VOX「Adio Air GT」の筐体設計。

本記事ではデスクトップアンプは、「音楽鑑賞に適したオーディオ用のスピーカーを備える」ものと考えています。デスクトップアンプには、ギター用ではなくオーディオ用のスピーカーが備わっているのです。一般にギターアンプのスピーカーは、エレキギターの周波数帯域(70Hz~5kHz)に特化します。中域に特性を持たせることもあり、使われる材料や設計などもギターの音を作るために選定されます。

一方、オーディオ用のスピーカーは音源をできるだけ忠実に再生するのが目的であり、人間の可聴範囲(20Hz~20kHz)をカバーしフラットに鳴ることを目指します。デスクトップアンプはオーディオ用のスピーカーを備えているからこそ、音質の良い音楽に合わせて快適な練習ができるわけです。また左右にスピーカーを配置するステレオ仕様が普通で、音の広がり感が得られます。

反対にデスクトップアンプは、スピーカーの特性をギターサウンドに活かすことができません。そこでデジタル・モデリング技術を駆使し、実際にギターアンプを鳴らしているかのような音を作っているのです。オーディオ用のスピーカーから、ギターアンプ用のスピーカーが鳴っているような音をいかにして出すか、ココが各メーカーの技術の見せどころです。

デスクトップアンプでできること

良い音質で自宅練習ができる

デスクトップアンプはクリーンからハイゲインまでさまざまなアンプを網羅し、エフェクターも備えているのでさまざまなサウンドが出せます。チューナーもついているしAUXやBluetoothを介して音楽やメトロノームを流すこともできます。さらに電池駆動ができてどこでも弾けますから、練習用のデバイスとしては最強と言えます。アンプはデジタルモデリングなので音量を抑えても音質が衰えず、ヘッドホンがあれば深夜でも無限に練習できます。

DTMやライブ配信ができる

デスクトップアンプはUSB端子を介してPCと接続することで、ギターに特化したオーディオインターフェイスとして機能するばかりではなく、モニタースピーカーとしても利用できます。PCと接続するだけで音楽制作ができるわけです。モデルによってはDAWソフトが付属しますから、買ったその日からDTMにチャレンジできます。また「仮想オーディオミキサー」をインストールすることで、USBマイクを併用したライブ配信やオンラインレッスンも可能です。

オーディオスピーカーとしても使える

AUXやBluetoothを介して音楽を流すことができるため、ゲームや動画視聴のためのスピーカーとしても使えます。特にデスクトップアンプは、「小さな本体でどこまでオーディオ性能を上げられるか」というメーカーのチャレンジが重ねられている分野です。同価格帯のオーディオシステムに比肩する音質と評されるモデルもあり、ギターを弾いていない時でも活用できます

専用アプリとの連携で深く使える

専用アプリを利用することで深く、また幅広く使えます。デスクトップアンプは本体が小さいので物理的にツマミの数も少なくならざるを得ませんが、本体だけでは操作できなかったパラメータをアプリによって調節したり、作ったサウンドをメモリの許す範囲内で無限に保存/呼び出ししたりできるわけです。ユーザーのコミュニティでサウンドを共有できることも多く、有名アーティストが作った設定をダウンロードできるモデルまであります。ただし、専用アプリがWin / Mac、iOS / Androidどれに対応するのかは各社各様です。

デスクトップアンプを選ぶ4つのポイント

デスクトップアンプはデジタル機器ですから、単純な性能で言えば後発のモデルであればあるほど優れていると言えます。しかしその一方で、発表から年数を経ているにもかかわらず生産されているモデルには、その時間の経過に堪えうるだけの性能や魅力があります。そんなわけでここでは、単純な新しさ以外のポイントを考えてみましょう。

1)用途を考えておく

どのデスクトップアンプも自宅練習、PCを介したレコーディング、オーディオリスニング、この3つが得意分野です。ライブストリーミングやビデオ録画に有利なTRSケーブルに対応しているモデルは多くありませんが、PCなどデバイスの工夫で充分に対応可能です。それ以外にライブでも使いたいならば、LINE OUT端子を備えるモデルが良いでしょう。また電池駆動についてはその可否、専用バッテリーパックの有無について確認が必要です。

六弦かなで

バンド練習やライブには注意が必要

デスクトップアンプは自宅での練習用としては最強のデバイスで、配信やオンラインレッスン、DTMにも大変便利です。とはいえそのフィールドを離れてバンド練習やライブ会場に持っていくには、ある程度の心得が必要です。第一の注意点は、その出力です。あまりパワフルなバンドでなければ30Wあれば充分に使えますが、音量の不足を感じるようならラインアウト端子を使ったりアンプの音をマイクで拾ったりと、PAの力を借りる必要があります。また演奏中の音色切り替えを考えると、ライブ出演のためには別途エフェクターボードを持っておく方が良いかもしれません。

2)収録アンプモデルをチェック

デスクトップアンプに収録されるアンプモデリングは、クリーン/クランチ/ドライブ/ハイゲインまでいくつも収録されますから、どのモデルでもギターサウンドを包括的にカバーできると言って良いでしょう。その中で具体的にどんなアンプモデリングを収録しているかについては、

  • 実在するアンプを再現したアンプモデリングを、可能な限り多数収録
  • メーカーオリジナルのアンプモデリングを、的を絞って収録

という二手に分かれます。さまざまなアンプをまんべんなく収録するモデルが多い中、VOXやFenderなど長い歴史を誇るアンプメーカーでは、やはり自社の名機を再現したアンプモデリングが充実しています。一方でBOSSやBlackstarなどアンプ数をキュっと絞ったモデルは、音作りに迷いにくいのが強みです。

3)収録エフェクトをチェック

エフェクターについては、ほぼ全てのデスクトップアンプにコーラスやフランジャーといったモジュレーション系、ディレイ、そしてリバーブが備わっています。その一方でドライブサウンドはアンプの歪みに頼るモデルが目立ち、オーバードライブやディストーションを備えるモデルは全てではありません。またワウやピッチシフターといった飛び道具までカバーするモデルはそれほど多くありません。デスクトップアンプ単体にどこまでエフェクターを要求するか、ある程度は考えておくと良いでしょう。

4)接続性を確認しておく

デスクトップアンプに限らず、現在のデジタルモデリングアンプには必ずと言って良いほどUSB端子が備わっており、ギターに特化したオーディオインターフェイスやPCのモニタースピーカーとして利用できます。またAUX端子とヘッドホン端子もほぼ必ず装備しています。しかしBluetooth接続の可否はモデルにより分かれていますから、ココが必要な人はチェックしておきましょう。近年ではファームウェアのアップデート用に、Wi-Fi接続できるモデルもあります。

おすすめデスクトップアンプ6選

YAMAHA THR-IIシリーズ

YAMAHA THR-II

2011年に発表されたYAMAHAのTHRシリーズは、スタックアンプでもコンボアンプでもない第3のアンプ「デスクトップアンプ」という概念を打ち立てた、この分野における第一人者です。最新版の「THR-II」シリーズは電源ONで内側が煌々と光るイルミネーションがチャームポイント。前モデルから音質や使い勝手が大幅に強化され、さまざまな場面で活躍できます。

使い勝手の良さを追求した、デスクトップアンプの第一人者

収録アンプ数は22で、内訳はギターアンプ15(5アンプ×3モード)、ベースアンプ3(1アンプ×3モード)、アコースティックアンプ3(1アンプ×3モード)、これにキーボードやリズムマシンなどにも使えるFLATが加わり、ギター以外にもいろいろなものが挿せてさまざまな使い方が可能。アンプの収録数は多いですが、ノブとスイッチの組み合わせで感覚的にセレクトできます。収録エフェクト数は12で、内容はコンプレッサー1、ノイズゲート1、モジュレーション4、ディレイ2、リバーブ4で、全てを使いきるには専用アプリが必要です。

ギター音量ノブのすぐ隣にAUDIO(オーディオ音量)ノブが備わっているのは、派手さはなくとも秀逸なポイントです。このオーディオ音量ノブはUSB、AUX、Bluetoothのいずれにも効き、どんなつなげ方であってもギターとオーディオの音量調整が直感的に可能です。

豊かなバリエーション

ニーズに合わせたバリエーションも展開しています。エレキギター用にはフラッグシップの30W「THR30II Wireless」、これを小型化した20W「THR10II Wireless」、基本設計に絞った「THR10II」があり、Wirelessモデルは充電池を内蔵し、別売の送信機を使うとワイヤレスで演奏できます。アコースティックギターに特化した「THR30IIA Wireless」はマイク入力を備え、弾き語りが可能。全てのモデルにSteinberg社の音楽制作ソフトウェア「Cubase AI」が同梱されており、買ったその日からDTMを始められます。

定格出力 30W(15W+15W)
収録アンプ台数 22(EG×15、EB×3、AG×3、FLAT×1)
収録エフェクト数 12
フットスイッチ対応 XSONIC AIRSTEP YT Edition(別売)
Bluetooth接続
AUX入力端子
出力端子 ヘッドホン出力
LINE OUT(L/R)
USB端子
専用アプリ THR Remote(MAC/ Windows/ iOS/ Android)
バッテリー 内蔵

Positive Grid Spark 2

Positive Grid Spark 2

Positive Gridは2013年にアメリカで立ち上げられた新興ブランドで、2019年に発表された初代Sparkは、盛り盛りの機能と高いコストパフォーマンスが賞賛されました。「Spark 2」は2024年下旬にリリースされた第二世代で、本記事で紹介するデスクトップアンプの中で最も新しいモデルです。

ついに実現した、AIでのサウンドメイク。ジャムセッションもできる。

Spark 2は、歴史上の名機を再現した33台のアンプモデルと43機のエフェクトを収録。全ての音色を確認&把握するのはなかなか大変ですが、専用アプリの機能「Spark AI Beta」を使うと、欲しいサウンドのイメージや目指すアーティスト名など、入力されるプロンプトから候補のサウンドを4つ提案してくれます。提案されたサウンドはそのまま使うことも気に入ったサウンドを起点に再び作り直すこともでき、使えば使うほどユーザーの好みを学習して賢くなっていきます。

初代Sparkでも利用できたSmart Jam(スマートジャム)機能は、ユーザーの演奏やサウンド、コード進行を検出して、4人のドラマーを軸に最長8小節のバッキングトラックを6タイプ作ってくれます。作成したバッキングは単にリピート再生するだけでなくプレイヤーの演奏に応じて変化してくれますから、自宅練習でジャムセッションのフィーリングを味わうことができます。

2タイプのルーパーでクリエイティブに演奏できる

ルーパーはSinple LooperとGroove Looperの2タイプ。Sinple Looperは本体のスイッチでも利用可能です。Groove Looperは何百というドラムトラックが利用できます。別売のフットスイッチで操作でき、カウントインやパンチインが可能で、オリジナルのループを作り込むことができます。

定格出力 50W(25W+25W)
収録アンプ台数 33(EG、EB、AG)
収録エフェクト数 43
フットスイッチ対応 Spark Control X(別売)
Bluetooth接続
AUX入力端子
出力端子 1/8″ ヘッドホン出力
1/4″ ラインアウト (L/Mono & R)
USB端子
専用アプリ Spark App for iOS and Android
バッテリー Spark Battery(別売)

BOSS KATANA-AIR EX

BOSS「KATANA-AIR EX」は、同社のKATANA-AIRを強化させた上位機種です。KATANA-AIRの機能をすべて受け継ぎながら、最大出力を30Wから35Wに増強、木製キャビネットと大型化させたスピーカーで音の良さを強化させています。またLINE OUT端子を備え、バッテリー駆動の利便性も強化させており、あらゆるシチュエーションで性能を発揮します。

快適なワイヤレス生活が送れる

「KATANA-AIR EX」にはワイヤレス・トランスミッターWL-Tが同梱され、追加の買い物をせずにワイヤレスシステムを利用できます。BOSSのワイヤレスシステムはクラス最高峰のレイテンシーを誇り、快適に演奏できるばかりか世界最高の製品を使っている満足感が得られます。

トランスミッターの挿し口とは別にINPUT端子が設けられているのは、KATANA-AIRでも採用されている秀逸な設計です。トランスミッターを充電させたままエフェクターボードなどをINPUTに挿せるわけで、挿しかえのちょっとしたストレスがありません。なお、INPUT端子の信号がトランスミッターに優先されますから、ワイヤレスで使うにはINPUTからシールドを抜く必要があります。

アプリとの連携でBOSSの真髄が味わえる

本体に収録されているエフェクターはベーシックなものを中心に15機ですが、専用アプリと連携すると60機以上のエフェクターが使えるようになり、BOSSのマルチエフェクターを手に入れたも同然の状態になります。

専用アプリではSESSION機能が独特で、Youtube動画を使った演奏に特化しています。ソング・リスト作成、動画の好きなところから好きなところまでのリピート再生、再生速度の調整、好きな場所で自動的に音色切替などBOSSらしいディープな使い方ができ、好きな動画で良い音で、効率よく練習できます。

定格出力 35W(17.5W+17.5W)
収録アンプ台数 5(EG×4、EB&AG×1)
収録エフェクト数 本体15(アプリ連携で60以上)
フットスイッチ対応 V-1-WL MIDI Expression Pedal
FS-1-WL Wireless Footswitch
Bluetooth接続
AUX入力端子
出力端子 PHONES
LINE OUT(R、L/MONO)
USB端子
専用アプリ BOSS TONE STUDIO(BTS) for iOS / Android
バッテリー 単三乾電池8本
充電式バッテリー・パック(Roland BTY-NIMH/A)

Fender Mustang LT40S

Fender「Mustang LT40S」はシリーズ内で唯一、フルレンジ対応のスピーカーを2発搭載する出力40Wのデスクトップアンプです。スピーカー2発搭載を意味する「TWIN」ではなく、敢えてステレオを意味する「S」をモデル名に付けているのはフェンダーのこだわり。押しスイッチ機能付き回転式コントロール「ENCODER (エンコーダー)」を基点とする効率的な操作、カラーディスプレイを備えるスタイリッシュなデザイン、そしてパーソナル・ユースにフォーカスしたシンプルな設計が持ち味です。

全ジャンル網羅できる充実したアンプ/エフェクトを収録

収録される20台のアンプモデリングは歴史上の名機を再現しており、クリーンからメタルハイゲインまで幅広くカバーしています。1957年Twinや1959年製Bassmanなどフェンダーの名機が充実していますが、ORANGE「OR120」、Marshall「JCM800」、EVH「5150III」など各社の著名モデルもずらりと並びます。

エフェクターは基礎的なものからマニアックなものまで26種あり、Ibanez「TS808」やProco「RAT」など著名モデルのほか本機のために新たに設計した万能型オーバードライブも収録。これらを組み合わせたプリセットが30個記憶されているので、ギターを始めたばかりで音の作り方がよくわからなくても、専門家の手による本格的なギターサウンドで演奏をスタートできます。

アプリ連携で膨大なデータベースにアクセス可能

専用アプリ「Fender Tone」を利用すると、Undo機能付きでサウンドメイキングできるほか各ジャンルに分類されたフェンダーのデータベースに接続でき、いろいろなプリセットをダウンロードできます。データベースには有名アーティストが作ったものも、有名アーティストの名演をイメージしたものもあり、手っ取り早く良い音で演奏できたり、サウンドメイクの手法を学んだりできます。

定格出力 40W(20W+20W)
収録アンプ台数 20
収録エフェクト数 26
フットスイッチ対応 〇(別売)
Bluetooth接続 N/A
AUX入力端子
出力端子 PHONE OUT
USB端子 Type-C
専用アプリ Fender Tone for Mac or Windows
バッテリー N/A

Blackstar ID:CORE V4 Stereo 10 Bluetooth

Blackstar(ブラックスター)のデスクトップアンプID:COREシリーズは2014年にデビュー。現行のID:CORE V4シリーズはアップデートを重ねた第4世代で、的を得たシンプルな操作性で同社のパワフルなサウンドと個性的なコントロールが利用できます。「ID:CORE V4 Stereo 10 Bluetooth」は、今のところシリーズ内で唯一となるBluetooth対応モデルです。

覚えやすいシンプルさと使い勝手が両立した操作系

収録するアンプモデルはクリーン×2、クランチ×2、オーバードライブ×2の6タイプで、それぞれのアンプモデルごとに1個ずつ本体にパッチを保存可能。エフェクトはモジュレーション×4、ディレイ×4、リバーブ×4の12種で、コンプレッサーと歪み系は本体/アプリ共に非採用です。

極限まで絞った操作系に、本記事で紹介する中では唯一、エフェクト音専用のLEVELノブが備わっているところは注目に値します。ダイレクト音とエフェクト音のバランスを調節することで、イメージ通りのリッチなサウンドが得られます。また出力を1Wに落とすパワーリダクションは、音量を極限まで絞らなければならないような状況下でちょうどよい音量に調整可能。LINE IN端子は4芯のTRRSに対応、スマートフォンと連携した高品質のライブストリーミングやビデオ録画がダイレクトに可能です。

遊び心ある専用アプリ

専用アプリ「Blackstar Architect」ソフトウェアを利用すると、ID:CORE V4の全ての操作が可能です。本体のEQはISF(Infinite Shape Feature)のみですが、アプリでは3バンドEQに加え、プレゼンスとレゾナンスも調節可能。また各エフェクターのパラメータ調節とキャビネットシミュレータ「Cab Rig Lite」の操作が可能です。

アンプ、エフェクター、Cab Rigそれぞれに超個性的な「ランダム化機能」を備えるのは、Blackstarの遊び心が反映された面白いポイントです。サイコロのアイコンをポチっと押すことで各パラメータがランダムに設定され、自分のフィーリングでは生まれなかったであろう未体験の設定が生成されます。妙ちくりんな音を楽しむも良し、インスピレーションのヒントにするも良し、運試しにも使えます。

定格出力 10W(5W+5W)
収録アンプ台数 6
収録エフェクト数 12
フットスイッチ対応 N/A
Bluetooth接続
AUX入力端子 3.5mm TRS/TRRS
出力端子 CABRIG & PHONES
USB端子 Type-C
専用アプリ Blackstar Architect(Mac/Windows)
バッテリー PB-1 PowerBank(別売)

VOX Adio Air GT

VOX 「Adio Air GT」は、妥協なきオーディオ性能を追及した出力50Wのデスクトップアンプです。本記事で紹介する中では最もレトロ感を帯びたデザインと、リスニング用スピーカーとしての使い勝手の良さが持ち味。群雄割拠の様相を呈するデスクトップアンプという分野で2017年から変わらず生産されているのは、その完成度の高さを物語っています。

家庭用ギターアンプとしてもリスニングスピーカーとしても頼れる

本体収録アンプはVOXの名機AC30をはじめとする11種、エフェクターはベーシックな8種ですが、専用アプリ「Tone Room」との連携でアンプは最大23種、エフェクターは最大19種が使用可能。ノイズリダクションは5段階まで調整が可能です。アンプモデリングは部品や回路図のレベルで緻密に行なっており、オリジナル・アンプの特性をパーフェクトに再現しています。

特筆すべきはそのオーディオ性能です。2重構造の筐体をはじめとする本体設計、ギター音量と独立して操作できるオーディオ用のボリュームノブ、さらには驚くほどワイドなステレオ効果の得られるバーチャル・サラウンド技術「Acoustage」の起動スイッチ(WIDE)、オーディオ用のイコライザーまで備えています。

オーディオ用イコライザーは4タイプあり、使わないという選択も可能。専用アプリ「Tone Room」と連携するとパラメトリック・イコライザーで周波数帯域ごとの細かな調整ができ、また超低域をカバーする独自回路「Bassilator(ベーシレーター)」も設定できます。

モデリング・ソフト「JamVOX III」をバンドル。

PC上で多くのアンプやエフェクターを使用できるモデリング・ソフトウェア「JamVOX III」がバンドル(同梱)されているのは興味深いポイントです。JamVOX IIIは19種のアンプ、12種のキャビネット、57種のエフェクトを備え、お手持ちのDAWソフトとの連携も可能。「Guitar XTraktion(GXT III)」機能はオーディオデータからギターの音をカットし、ギター用カラオケを作ることができます。オーディオ再生では特定の範囲を繰り返すリピート再生やテンポ変更ができ、耳コピや練習に大変便利です。

定格出力 50W(20W+20W)
収録アンプ台数 最大23
収録エフェクト数 最大19
フットスイッチ対応 N/A
Bluetooth接続
AUX入力端子
出力端子 PHONE
USB端子 Type B
専用アプリ Tone Room (Windows、Mac、iOS、Android)
バッテリー 単3形乾電池8本

NUX Mighty Air

NUX Mighty Air

NUX(ニューエックス)は2006年に立ち上げられた比較的若いブランドですが、再現性の高いモデリング技術や高いコストパフォーマンスで急速に支持を集めています。「Mighty Air(マイティ・エア)」はワイヤレスシステムとドラムマシンを実装した小型デスクトップアンプで、本体ではサクっと気軽に、アプリではしっかりめにサウンドメイクできます。ワイヤレス送信機は同梱されているので、買ったその日からワイヤレス生活が送れます。

幅広いサウンドをカバーし、QRコードでシェアできる

本体で切り替えられるアンプ数は4にとどまりますが、専用アプリではエレキギター×9、ベース×3、アコースティック×1の13種を選択できます。キャビネットも選べますが、このIR式キャビネットシミュレーションの枠で7種のアコースティックシミュレータを選べるのが興味深いポイントです。ギター側でフロントのシングルコイルを使うのが推奨とのことですが、ギブソンやマーチン、テイラーといった高級なアコギをイメージしたサウンドが得られます。エフェクターも充実しており、標準的なものに加えてタッチワウやユニヴァイブなど、マニアックなものも収録しています。

作ったプリセットをアプリの「Share」機能でQRコード化できるところは、他には無い新しい発想です。QR化されたプリセットはコミュニティサイトでシェアされていますが、こうしたQRコードは紙に印刷することもできるわけです。最新デジタル機器のデータをアナログで保存できるとは、なかなかにロマンがあります。

オーディオ機能も充実

アプリでは「Bluetooth Audio EQ」で、Bluetoothオーディオのサウンドをノーマルを含む9タイプから選択でき、好きなサウンドでリスニング可能。ふだんは給電用に使用するUSBポートを介したUSBオーディオとしても機能し、オーディオインターフェイスとしても使用できます。

定格出力 4W+4W
収録アンプ台数 13(EG×9、EB×3、AG×1)
収録エフェクト数 29
フットスイッチ対応 N/A
Bluetooth接続
AUX入力端子
出力端子 PHONES
USB端子 Type-C 5
専用アプリ iOS / Android
バッテリー 内蔵

デスクトップアンプを最大限に活かす、音作りのコツ

デスクトップアンプはアンプとエフェクターを多数収録することで、標準的なサウンドのほとんどをカバーできます。しかし何でもできるとからこその悩みというものもあります。ここではデスクトップアンプでの音作りについて考えてみましょう。

まずはアンプ1つだけで、好きな音を探ってみる

エレキギターに限らず、優秀な機材はそれ自体が音を出すのではなく、音を出すのはその使い手です。機材の性能を発揮させるには、ユーザー自身の成長が不可欠なのです。そんなわけでまずは、どれでも良いのでアンプモデルを1つ選んで、ゲインとイコライザーの組み合わせだけで好きな音を探ってみてください。最初のうちはエフェクターは使わないか、リバーブを薄くかけるだけにしておくのがおすすめです。

ギターの仕様を考慮する

ピックアップがシングルコイルなのかハムバッカーなのか、ボディがソリッドなのかセミホロウなのか全くの空洞なのか、こうしたギター本体の仕様を考慮した、自分のギターの性能が発揮できる音作りを心がけましょう。シングルコイルでは歪ませすぎるとノイズが大量に溢れてしまいますし、ボディに空洞を持つギターで歪ませすぎるとハウリングすることがあります。ハムバッカーではガラスクリーンを出すのはなかなか困難です。しかし、だからこそ常識に挑戦するという反逆の精神が新たなロックの原材料になるわけですから、いろいろと試してみましょう。

エフェクターは量と効果の関係を確かめながら、じっくりと味わう

エフェクターは、しばしばソースや調味料に例えられます。ギターとアンプで作った音に、どういう味を付けたいのか、カレーのようにがっつりとかけたいのか、香りづけにお醤油を一滴たらすだけにしておきたいのか、こうした「さじ加減」を探るのが、エフェクターを使いこなす秘訣です。エフェクターはかけすぎると音抜けが悪くなりやすく、音楽の中に埋もれてしまうかもしれません。しかしその一方で、「これを全開でかけたら何が起こってしまうのか」みたいな好奇心あふれるチャレンジも、成長には必要です。

全ての機能を使わなくても良い

デスクトップアンプは世界中のギタリストに向けて販売するデバイスです。たくさんのアンプやエフェクター、またその他の追加機能は、いろいろなギタリストのさまざまなニーズを満たすために用意されます。ですから、使わなくても決して勿体なくありません。しかし手持ちの機材で自分の好きな音を作るスキルはギタリストにとって必須なので、まず1つ、好きな音を作ってみてください。

部屋の響きも考慮してEQを操作する

デスクトップアンプの音は、鳴らす部屋の音響特性も関係します。いつも同じ部屋で使う分には全く問題有りませんが、別の部屋やライブ会場に持っていく際にはちょっと気に留めておくといいでしょう。完璧に作り込んだはずのプリセットも、別の環境で鳴らすと物足りなく聞こえてしまう事があるのです。一般に広い空間で鳴らすと低域が不足気味に聞こえますから、広い場所に持っていく際にはちょっと低域を持ちあげると良いでしょう。


以上、近年注目度を上げているデスクトップアンプについて、その機能や特徴、おすすめモデルなどをチェックしていきました。スマホやPCで操作ができて、小型軽量でかつリスニング用にも使えるので、生活の中にあるギターアンプとしては最良の選択です。ぜひ実際にチェックしてみてください。

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