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国産ブランド Landscape のセミアコースティックギター「SA-101」
「セミアコ(セミアコースティックギター)」とは、「芯となる部分をソリッドにした中空のボディ(セミホロウ構造)」を持つエレキギターのことです。「フルアコ(フルアコースティックギター)」と並び「ハコ(箱)モノ」と総称されますが、フルアコとソリッド(空洞の無いボディ)の中間に位置していると解釈されています。
ギブソン「ES-335」を代表とするセミアコは、同「ES-175」などフルアコの特徴である甘く豊かなトーン、そしてギブソン・レスポールなどソリッドギターの特徴である引き締まった力強いトーンがブレンドされた独特のトーンを持ち、クリーンでも歪ませても良好なサウンドが得られます。それゆえ「万能なギター」として、ジャズ/ブルーズ/ロック/ポップスなど幅広いジャンルで様々なプレイヤーに愛用されています。今回はこのセミアコに注目し、特徴やバリエーションを追っていきましょう。
セミアコの歴史は、1958年ES-335のデビューより始まります。フェンダー・テレキャスターやフェンダー・ストラトキャスターで支持を集めてきたフェンダーに脅威を感じていたテッド・マッカーティー氏(1910ー2001、当時のギブソンCEO)は、これに対抗すべく1958年のNAMMショウにあわせていくつものニューモデルを開発していました。
この年にデビューを飾った主なニューモデルは、現在では「王道」とも言うべきモデルばかりです。しかし当時の売り上げは振るわず、どのモデルも生産終了を経験しています。モダーンに至っては限定的に生産されるのみですが、この中で唯一ES-335のみ順調に支持を集め、これまで一度も生産をストップしたことがありません。ボディシェイプや仕様ではなく、楽器として全く新しい構造とトーンを持ったギターが生き残ったということになります。ES-335はチャック・ベリー氏(1926-)、エリック・クラプトン氏(1945-)、ラリー・カールトン氏(1948-)らが愛用し、ロック/ブルーズ/ジャズのプレイヤーを中心としたヒット作となりました。
Chuck Berry – Johnny B. Goode (Live 1958)
ちなみにこの年フェンダー・ジャズマスターがデビューしました。ジャズ志向という開発の意図に反してサーフミュージックのアーティストに支持されましたが、これも一度生産が終了しています。
rickenbacker 330
1960年代にはリッケンバッカーがセミアコ市場に参入し、定番機「330」を中心としたラインナップを展開していきます。コード弾きのしやすさと軽快なトーン、またビートルズの使用で支持を集めます。しかしセミアコというボディ構造以外は全くと云っていいほどES-335と異なるギターであり、ES-335のライバルとはならずブリティッシュ系ロックバンドに受け入れられていき、意図せずとも楽器としての住み分けができていました。
また、1966年からフェンダー・コロナドによりホロウボディ市場への参入を狙っていたフェンダーは、1970年に初のセミアコとなるフェンダー・スターキャスターを発表しますが、ギブソンの牙城を揺るがすことなく不発に終わっています。このようにセミアコ市場は永らく先駆者ES-335の独壇場でした。
ホロウボディのテレキャスター「シンライン」
スターキャスターに先立つ1969年、フェンダーはテレキャスターのボディに空洞を作り、Fホールを空けたテレキャスター・シンラインを発表します。これ自体はソリッドギターの軽量化を目的としていましたが、ソリッドボディをくり抜いて空洞を作る工法はこれまでのホロウボディとはまた異なっており、「ソリッドボディをホロウ化する」という新しいスタイルのギターが誕生するヒントになりました。またこのテレキャスター・シンラインが一般化していったことで、本来は「薄いホロウボディ」を意味していた「シンライン」という言葉が、現在ではソリッドボディをくり抜いたホロウ構造のギターを意味する言葉に置き換わっています。
国産ハイエンド・ギターブランドFreedom Custom Guitar Research「Brown Pepper」
シンラインにヒントを得て、ソリッドボディをくり抜いたホロウボディで積極的にアコースティックなトーンを作る試みが各ブランドで多くなされました。ソリッドギターのラインナップにホロウ/セミホロウ構造のモデルが加わるブランドが多くなり、ES-335の唯一の泣き所であった「ボディの大きさ」をカバーする、ソリッドギターのボディシェイプを持つスリムなタイプのセミアコが多く生産されています。
現在のセミアコは、
という二つのタイプが各ブランドよりリリースされています。
引用元:http://www.es-335.net/history.html
ES-335を代表とするセミアコは、中空になっているボディ内部に「センターブロック」と呼ばれる木材を配置するという「セミホロウ構造」が最大の特徴です。ボディの外殻部分/センターブロックそれぞれが弦振動に影響を及ぼします。
という構造により、「ホロウボディにソリッドの特徴が加わる」または「フルアコとソリッドのあいのこ」と言われます。では、フルアコにソリッド要素を加えることで何が起こったのか、ES-175というギブソンの超定番モデルとの比較からES-335というギターの構造的特徴を浮かび上がらせていきましょう。
まず類似点ですが、
など、多くの部分が共通しており、レスポール・スタンダードなど他の多くのモデルとも共通しています。それゆえボディ構造やピックアップの品番に由来する違いこそあれ、これらのモデルは共通して甘くて太いトーンを持っています。
続いて相違点です。ES-175とES-335の相違点には、ほとんど全てにセンターブロックが関わっています。
ES-335のネックジョイント部。ダブルカッタウェイ
まずネックジョイント部です。ここにカッタウェイを設けるとハイポジションでのプレイアビリティが上がる反面、ネックを支える部分の剛性が落ちてしまいます。シングルカッタウェイならまだ大丈夫ですが、完全に空洞のボディ構造を持っているフルアコにダブルカッタウェイを施すのは、当時の技術では強度不足の恐れから好ましくありませんでした。その点、センターブロックを持つセミアコはこの部分での強度を稼ぐことができます。ダブルカッタウェイ化させることで、ハイポジションの弾きやすさが飛躍的に向上しました。現在ES-335をイメージしたセミアコでは、ほとんどがダブルカッタウェイです。
続いてブリッジ構造ですが、ES-175その他のモデルに共通して、フルアコではブリッジをボディに固定せず、弦自体の張力を利用して位置を安定させています(エピフォン・カジノなど例外は多数)。これは伝統的なヴァイオリンのブリッジ構造に準拠しているものですが、位置を変更することでオクターブ調整ができるという利点があり、また板状のボディトップにブリッジを固定するネジの穴を空けてしまうと強度が不足するという危惧があるためです。テールピースについても同様に、フルアコではヴァイオリンの構造に準拠した、強度に優れるボディエンドで弦の張力を受け止める構造を取っています。
ES-335のブリッジ構造。レスポールと同様チューン・O・マチックブリッジ
こうしたフルアコのブリッジ構造に対し、ES-335はセンターブロックによりボディの剛性が飛躍的に向上したので、ボディに直接ブリッジをマウントさせることができます。1954年に開発されたTOM(チューン・O・マチックブリッジ&ストップ・テールピース)は、振動を直接ボディに伝える伝導性があり、また弦高調整/オクターブ調整/張力調整を可能にしたシンプルながら高機能なブリッジです。TOMブリッジが採用されたことにより、ブルーズやロックでのチョーキングを多用したプレイによってブリッジの位置が動いてしまうということがなく、このジャンルでハコモノのギターがストレスなく活用できるようになりました。
ES-335のボディの厚さ。わりと薄い
センターブロックを使用するという関係上、セミアコはフルアコに比べてボディが薄くなります。鳴りを良くするためにボディ厚を稼いでいるのに、そこをわざわざセンターブロックで埋めてしまう合理性が無いこと、また仮にそれだけの厚みのあるセンターブロックを挿入してしまうと、本体の重量が増してしまうといったことが根拠となります。
以上のことから、世の中にはハコモノのギターがいろいろありますが、
以上の条件を満たしているものはだいたいセミアコ(エピフォンのカジノなど例外もあり)だと思っていいでしょう。
一般に「セミアコ」と言うと、ブルース、ロックンロール、ジャズ、ポップス、フュージョンあたりの音楽で重宝されるイメージを持っている人は多いかもしれません。しかし!セミアコはハウリングの防止をしっかり設計に盛り込んでいるため、大音量で使用できるし、オーバードライヴやディストーションも平気で使えます。さすがにメタルでの使用例は超レアですが、セミアコはクリーンが美しく、そしてしっかり歪ませられるとあって、広くロック系でも使用できる優秀なギターなのです。では、ロックの現場で元気に奏でられるセミアコの姿を見ていきましょう。
Nothing’s Carved In Stone 『Spirit Inspiration』
生形真一(うぶかた・しんいち)氏はELLEGARDEN(エルレガーデン)時代からセミアコをトレードマークにしてきました。エフェクターと言う名前の「男の子の夢」をぎっちり詰め込んだ、やたらでかいエフェクターボードを駆使することでも有名です。
Rush – Tom Sawyer (Official Music Video)
過剰なオーバードライブに頼らずとも「音が太く、豊かに伸びる」というセミアコのサウンドは、シンセやオルガンの太く伸びる音と調和させやすく、分厚いアンサンブルを作り上げることができます。
Foo Fighters – The Pretender (Live At Wembley Stadium, 2008)
フーファイターズのデイヴ・グロール氏といえば、このペルハム・ブルーにリフィニッシュされた「トリニ・ロペス・スタンダード」が永年のトレードマークです。バンドにギタリストが二人いる場合、片方がセミアコだとサウンドキャラクターをしっかり分けることができます。
クリーンやクランチのサウンドにおいては、ピックアップ・ポジションによるサウンドやニュアンスの違いが如実に表れます。硬さと柔らかさを共存させたセミアコというギターは、こうした操作系へのアプローチやピッキングによる表情付けで、さまざまな表現が可能です。
ここまでセミアコについて見ていきました。ここからは、ES-335タイプ、テレキャスター・シンラインタイプ、その他のものに分類してどんなセミアコがあるのかを見ていきましょう。
セミアコの先駆者ギブソンからは、アーチトップ専門の部署であるメンフィスから、ES-335と派生モデルによる充実したラインナップのほか、ナッシュビルに拠点を置くカスタムショップから、各時代の特徴を可能な限り再現したリイシュー(再生産)モデルがリリースされています。
ES-335 Studio
基本モデルとなるES-335は、多くのアーティストモデルがあるほか、カスタムショップより1959年モデルと1963年モデルが復刻されています。また塗装の艶を抑えて価格を落とした「ES-335 Satin」や、インレイやバインディングなどの装飾を簡略化し、木材のグレードを下げることでほぼ半額という低価格化を実現した「ES-335 Studio」がリリースされました。
ES-335を…
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ES-339
335のボディサイズを大幅に縮小し、ほぼレスポール同様にまで小型化したモデルです。335のボディサイズに抵抗があるという人にフィットするサイズであるばかりでなく、レスポールやストラトなどソリッドギターからの持ち替えに違和感が無いという利点があります。こちらにも廉価版の「ES-339 Studio」があるほか、同じボディサズでありながらマホガニーのバック材をくり抜いて作った「ES-336」もリリースされました。336はセミアコでもシンライン寄りのニュアンスがあり、ハコ鳴り感を持つ339との比較が面白いギターになっています。
ES-339を…
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二つの平行四辺形が並ぶ(ダブル・パラレログラム)インレイと多層バインディング、ゴールドパーツで高級感を演出し、また「バリトーン・スイッチ」を追加させることでサウンドバリエーションを増強したパワーアップ版です。このバリトーン・スイッチは6段階のローカット・トーン回路になっており、「1」のバイパスから「6」へツマミをひねっていくに従い、低域を徐々に削っていきます。
ES-345を…
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レスポールスタンダードに対するレスポール・カスタムに相当する、335の高級機です。基本的な構造は全て335を踏襲していますが、エボニー指板(現行モデルはリッチライト)、ヘッドまで覆う多層バインディング、ヘッドに輝くダイアモンドインレイ、ゴールドパーツ、1フレットからのブロックインレイといった仕様で、ゴージャスな外観が魅力のモデルになっています。
B.B. King – The Thrill Is Gone ft. Tracy Chapman
故B.B.キング氏(1925-2015)の愛機として有名なルシールはこの355をベースとし、Fホールを排して345のバリトーン・スイッチを追加、またテールピースにファインチューナーがついているものを採用しており、現在では「B.B.King」としてラインナップされています。
ES-355を…
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Freedom Custom Guitar Research「Green Pepper」
フェンダー・テレキャスター・シンラインはどちらかというとセミアコの甘いトーンのイメージからは距離を置いたシャープなトーンが持ち味です。しかし多くのブランドでこれを新しいセミアコと解釈し、よりセミアコのイメージに近づけるアレンジが模索されてきました。こうして完成した新しいシンラインは、リード向きのメロウなトーンのためフロントにハムバッカーやP-90をマウントされた形で、特にジャズ/フュージョンにうってつけの楽器として浸透しつつあります。フロントのハムやP-90で甘く太い音が、リアのシングルで鋭い音が出せるので守備範囲が大変広い楽器です。この分野では、ボディ構造にいくつものバリエーションのある「フリーダムのペッパーシリーズ」に最も顕著にその傾向が現れています。
《特集》フリーダムCGR「Pepper シリーズ」の全貌に迫る!
「Landscape(ランドスケープ)」は、木材の特性をサウンドに反映させる「オーガニック・トーン」をコンセプトに、フルアコやセミアコをリリースするブランドです。同社のセミアコ「SA-101」は、故松原正樹氏の所有する1979年製ES-335の代打を務めるギターとして開発されました。最新の技術と現代の材料でヴィンテージ・ギターの音を再現するため、独自開発のレシピでオリジナルのハムバッカー・ピックアップを開発するほか、ボディ・トップに単板削り出しのスプルース、オリジナル同様にボディの末端まで詰まったセンターブロックにもスプルースを使用するなど、独自の設計が多く採用されています。
サウンドだけでなく、折れたりねじれたりといったトラブルを未然に防ぐ多層ネック、長期的に良好なポジションを維持できるスタッドアンカー・マウントのブリッジなど、信頼できる道具としての性能もしっかり確保しています。
《木の鳴りを大事にする「オーガニック・トーン」》Landscapeのギターについて
いろいろなブランドからES-335やES-339のコピーモデルがリリースされています。どれもが基本的にES-335と同様の仕様となっていますが、そのぶん価格が抑えられて求めやすくなっていることが多いほか、独自の工夫も多く見られますので、むしろ本家よりもこちらの方が気に入った、というプレイヤーも多くいます。
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