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ゼマイティス(Zemaitis)のギターについて

CS24PF WHITE PEARL 宝石のように美しい:CUSTOM SHOP製PEARL FRONT「CS24PF WHITE PEARL」

「ゼマイティス(=ゼマティス)」は、トニー・ゼマイティス氏が一人で作り上げる高級ギターブランドです。ギター本体は全て一人で作り上げ、彫金は友人のダニー・オブライエン氏が担当していました。上質なサウンドと彫金やインレイによる美しい装飾から「ギターのロールスロイス」とも「ロックンロールの歴史に刻んだ英国の栄光」とも言われています。

ゼマイティスの歴史は1950年代、家具職人だったトニー・ゼマイティス氏(Tony Zemaitis,1935-2002)が、見よう見まねで自作したフォークギターを友人に売る事から始まります。独学で始めたギター製作でしたが、一本、また一本と作っていくうちに独自のデザイン性と製作技術の水準は上がっていき、やがてロンドンの音楽シーンで注目されるまでに成長します。ロン・ウッド氏(ザ・ローリングストーンズ所属)が「ディスクフロント」を愛用したことで人気と認知が決定的となり、世界のコレクター垂涎の的になりました。

ボディ裏プレート DISC FRONTシリーズのギターのボディ裏プレート

トニー氏自らが製作したギターは「ヴィンテージ・ゼマイティス」と呼ばれ、アーティストやコレクターの愛用する楽器や家宝となっており、ヴィンテージ市場に登場することがほとんどない「幻の楽器」になっています。トニー氏の亡き後は、神田商会がブランドを受け継ぎました。神田商会のプロデュースで復活した新たなゼマイティスは「トニー氏の遺志を受け継ぐ」ことを至上命題とし、ゼマイティスの持つ雰囲気をしっかり守ったギターを生産しています。

最高グレードの「カスタムショップ」は、岐阜県可児市に新設したゼマイティス専門工房で一本一本ていねいに作られています。製造においては最高の素材と最高の技術が惜しみなく注がれ、材木や貝殻の選定がことのほか厳しくおこなわれるほか、最新の加工技術が積極的に導入されます。「常に新しさを探求した」という「トニー氏の姿勢」まで受け継ぐことをコンセプトとしており、トニー氏の後追いにとどまることのない「新しいものを作る挑戦」が果敢に行なわれています。カスタムショップの月産は最大で30本程度が限度といいますから、極めてレア度の高いギターだと言えるでしょう。


HOTEI – RUSSIAN ROULETTE
日本を代表するロックギタリストの一人、布袋寅泰氏は自身のシグネイチャー・テレキャスター(Fernandes)以外にもたくさんのギターを使い分けています。中でもゼマイティスを多く愛用していることが知られており、トニー・ゼマイティス氏本人が作成したものも多数所有しています。そのコレクションはメタルフロント、パールフロント、スペリオールにとどまらず、アコギやベースまでという入れ込み具合です。
この布袋氏が終始バリバリとゼマイティスを演奏する楽曲「RUSSIAN ROULETTE」は、いまどき珍しい伝統的な「ブルース進行」を全面に押し出したロックンロールに仕上がっています。半世紀以上も昔の手法を採用していながら、氏の楽曲は時代の一歩先を行く新鮮さを感じさせますね。

ゼマイティス・ギターの特徴

ゼマイティスのギターは主にレスポールタイプのギターをベースにしながらも、知っている者ならだれしもがそれと分かるだけの特徴を多く持っています。目が慣れてきた人なら、シルエットだけでも判別が付くでしょう。では、ゼマイティスのギターにどんな特徴があるのでしょうか。カスタムショップ製のギターをピックアップして、ゼマイティスの「唯一無二」と呼ばれる個性をチェックしてみましょう。

一幅の絵画を見ているかのような高いデザイン性

PEARL FRONT「CS24PF RING CHESS」 CUSTOM SHOP製PEARL FRONT「CS24PF RING CHESS」:フォトジェニック(写真写りが良い)とはまさにこのこと

METAL FRONT「CS24MF FR4C」 CUSTOM SHOP製METAL FRONT「CS24MF FR4C」:エレガントな印象だ

伝統的なエレキギターの形状を踏襲しながらも、ゼマイティスのギターはボディシェイプ、ヘッド形状、ブリッジやテイルピースなど金属パーツにいたるまで、オリジナルのデザインで作られています。また貝や彫金の装飾で覆われるギターはゼマイティス以前にはなく、独特の存在感と美しさを帯びています。
代表機種である「METAL FRONT(メタルフロント)」は一枚の金属板をボディトップに配し、また「PEARL FRONT(パールフロント)」はボディトップに貝の装飾を敷き詰めることで、ベースとなっているレスポ−ルの無骨なイメージから離れた「気品」の漂うスタイルを演出しています。

DISC FRONT「S24DT」 CUSTOM SHOP製DISC FRONT「S24DT」

またもうひとつの代表機種DISC FRONT(ディスクフロント)は3基のハムバッカーと独特な配置のコントロールのオリジナルシェイプです。これらの形状はオリジナルの楽器デザインとして完成の域に達しており、見るものの心を捕らえる強力な魅力になっています。
下地からニトロセルロースラッカーが使用されるという大変ぜいたくな塗装ですが、きれいに施した塗装にスクラッチ加工を施すことによってわざわざ細かな傷を付け、トニー氏が刷毛(はけ)で塗っていたオリジナルの雰囲気を再現するとともに、ヴィンテージ風の渋い貫禄を演出しています。

METAL FRONTのボディ メタルフロントのボディトップのメタルプレートには彫金が施されている

メタルフロントやディスクフロントで使用される金属プレートには彫金が施され、シックかつロック的でありながらゴージャスな雰囲気を醸し出しています。パールフロントなどではアバロン貝、白蝶貝、黄蝶貝といった天然の貝が組み合わされ、輝きに満ちています。それに加えて各金属パーツにも彫金が施されており、隙がありません。これらのデザインはゼマイティス独特のもので、工芸品のような美しさは私たちの目を楽しませてくれます。

以上、ゼマイティスの外観は豪奢な装飾による美しさを最大の特徴としていますが、全機種に共通して緩やかなカーブを描くボディトップが採用されています。パールフロントはその曲面に沿って天然の貝を敷き詰め、メタルフロントやディスクフロントは曲面に金属板をフィットさせています。このような立体的な作りにすることで、トップ面の存在感や美しさが、より一層感じられるようになります。

また、ホーンやヘッドの先、指板のエンドなどを斜めに削るのも、他のギターではほぼ見られない特徴です。音や演奏性にほとんど関係のない部分ですが、こういうところにまで手を加えたデザイン性の高さが、ゼマイティスの魅力を演出しています。

パールフロントのボディ パールフロント「CS24PF WHITE PEARL」のボディに貼り合わせられた貝。眩い光を放っている

楽器としての高い基本性能

CUSTOM SHOPシリーズの指板 CUSTOM SHOPシリーズの指板。インレイの美しさもさることながら、黒々としたエボニー材が惜しみなく採用されている

ヴィンテージ・ゼマイティスは「ボディ、ネックともに3ピース構造」という設計でした。「木材を敢えて貼り合わせることで、剛性と安定性が確保されている」ともいえる設計ですが、実際には「工具や工法上の制限で、3ピースでしか作ることができなかった」というのが正解だったようです。そのため現在のカスタムショップでは、ボディは2ピース、ネックは1ピースという設計が採用されています。

全モデルでセットネック構造が採用されていますが、オリジナル同様に、接合する面積を広くとってしっかり接着する「ブロックジョイント」が採用されています。またヒールの出っ張りは少なく、24フレットまでキッチリ使えるように設計されています。これらの設計から、美観や音だけにとどまらず剛性とプレイヤビリティのバランスまで追求した、ゼマイティス氏の深いこだわりをかうかがう事ができます。

ジュラルミンのブリッジ&テイルピース

パールフロント「CS24PF LITTLE RING」 パールフロント「CS24PF LITTLE RING」のブリッジ部分。細部まで徹底したこだわりで、見ていて飽きがこない

完璧なピッチ、よく伸びるサスティン、倍音豊かなサウンドを追求した結果に行き着いたのが、手作業で削りだされるジュラルミン製のブリッジ&テイルピースです。ジュラルミン(A2017)は銅を含んだアルミ合金で、鉄鋼材料に匹敵する硬度を持ちながら軽量で響きやすいという特性を持っています。テイルピースには彫金も施され、豪華な外観を演出するポイントになっています。

ブリッジの高さを操作する「サムナット」は、大型の「フラワーナット」にアレンジされています。パーツ単体としての美しさもさることながら、大型化によって操作しやすくなっているのが特徴です。

金属製のヘッドプレート&ロッドカバー

ゼマイティス・ギターのヘッド部分

ゼマイティスでは彫金の施されたヘッドプレートとロッドカバーを採用していますが、デザイン性だけでなくサウンドにも影響する設計です。ギターの弦振動とヘッドの重量との間に密接な関係がある事は知られています。ヘッドが重いと弦の振動の分離感が得られ、低音が引き締まった感じになりますが、ゼマイティスではそれを狙い、メタルプレートによってヘッドを大型化することなくヘッド重量を稼いでいます。

ゼマイティス・ギターのサウンド

ゼマイティス・カスタムショップのギターは、

  • マホガニーボディ&ネック
  • エボニー指板

というマテリアルを基本としており、マホガニーの特性が発揮された「豊かな中域の響く、柔らかいサウンド」を特徴としています。これに硬質かつ軽量で反応の良いジュラルミン製ブリッジ&テールピースを採用することによって、立ち上がりの良いアタック感が得られます。またヘッドの重量を稼いでいる事で低音が引き締まり、輪郭のはっきりとした分離の良い響きが得られることから、エフェクタとの相性も良好になっています。

パールフロント(トップに貝)、メタルフロント(トップにジュラルミン板)、スーペリア(トップなし)はいずれも同じギター本体に同じピックアップを採用する、基本的に同じ仕様のギターになっています。

しかしながらトップの個性がサウンドに反映し、

  • パールフロント:メイプルよりもはるかに硬質な「貝」の個性が活かされ、鋭さや明瞭さのある、あらゆるジャンルにマッチする音
  • メタルフロント:ジュラルミンの個性が立ち、金属的な響きが付加された音となる。クリーンよりもドライブサウンドに良好で、ロック系の愛用者が多い
  • スーペリア:木材の個性を活かした、ストレートな音

といった個性が、モデルごとに現れます。

この「同じピックアップだが、トップの違いが音に反映される」というコンセプトは、以下に続く「アンタナス」、「カシミア」にも、ほぼ同様に受け継がれています。

またメタルフロントやディスクフロントでは、トップのジュラルミン板に強力なアース効果があります。このアース効果によって、パッシブ回路でありながらノイズが極限まで軽減された、雑味の無いクリアなサウンドが得られます。

主な使用ギタリスト

ヴィンテージ・ゼマイティスのオーナーは、日本にも多くいます。生前のトニー・ゼマイティス氏は気に入った相手のためにしか作らなかったそうですが、気に入ったクライアントのために真心をこめて一本一本ていねいに作っていました。ゼマイティスのギターは「ギタリストを刺激する楽器」として、神田商会によって引き継がれた今なお多くのアーティストに愛用されています。
DOMESTIC PLAYERS | ZEMAITIS® Official Web Site

ZEMAITISシリーズ一覧

現在のゼマイティスには5つのシリーズがあります。価格帯の高いものから順に並べると、

  • CUSTOM SHOP / TONY’S COLLECTION(カスタムショップ/トニーズ・コレクション)
  • CUSTOM SHOP(カスタムショップ)
  • ANTANUS(アンタナス)
  • CASIMERE(カシミア)
  • Z

があり、それぞれに木材や設計、仕様やコンセプトなどが設定されています。

CUSTOM SHOP / TONY’S COLLECTION

説明 「ヴィンテージ・ゼマイティス」の構造を可能な限り追及して、伝統を継承したコンセプトモデル。
木材 オリジナル同様の、ホンジュラスマホガニー3Pボディ&ネック、エボニー指板。指板にハカランダが使用されることも。
ピックアップ DiMarzio Custom PAF (DP103) 、またはDiMarzio Custom Stack Single Coil(ZDS 07、 ZDS 04 )
金属パーツ ゴトー製ペグ、ハンドメイドによるジュラルミン削り出しオリジナルブリッジ&テールピース
塗装 ラッカー
価格帯 \800,000~\2,000,000
生産地 日本(岐阜県可児市、神田商会可児工場)

CUSTOM SHOP

説明 熟練の技術を持つ職人達と最新の加工技術によって生み出される、ゼマイティスのフラッグシップ。
木材 アフリカンマホガニー2Pボディ、アフリカンマホガニー1Pネック、エボニー指板。
ピックアップ DiMarzio PAF (DP103) 、またはDiMarzio Custom Stack Single Coil(ZDS 07、 ZDS 04 )
金属パーツ ゴトー製ペグ、ジュラルミン削り出しオリジナルブリッジ&テールピース
塗装 ラッカー
価格帯 \500,000~\650,000
生産地 日本(岐阜県可児市、神田商会可児工場)

ANTANUS

説明 トニー氏の遺志を大前提としながら、新しいアイディアにも挑む、クリエイティブな一面を持ったミドルクラス。
木材 アフリカンマホガニーボディ&ネック、ローズウッド指板。ボディトップにメイプルが使用されることも。
ピックアップ ゼマイティスオリジナル(「Dragon」シリーズ)
金属パーツ ゴトー製ペグ、ジュラルミン削り出しオリジナルブリッジ&テールピース
塗装 ウレタン
価格帯 \260,000~\300,000
生産地 日本(国内の提携工場)

CASIMERE

説明 伝統をしっかり受け継いだスタイルと高い品質を確保しながら、低価格化を実現したコストパフォーマンスモデル。
木材 ナトーボディ&ネック、ローズウッド指板。ボディトップにメイプルが使用されることも。
ピックアップ ゼマイティスオリジナル(「D2」シリーズ)
金属パーツ オリジナルペグ、ジュラルミン削り出しオリジナルブリッジ&テールピース
塗装 ウレタン
価格帯 \165,000~\180,000
生産地 韓国

Z

説明 ゼマイティスの基本コンセプトを継承しつつ、「より自由な発想」をテーマにする「新しいゼマイティス」。
木材 ボディ&ネック材は、ナトーを基本としながらバリエーションが豊富。指板はローズウッド。
ピックアップ オリジナルで。バリエーションが豊富。
金属パーツ ペグはオリジナル。ブリッジにもバリエーションはあるが、TOMタイプのブリッジには「フラワーナット」が採用されている。
塗装 ウレタン
価格帯 \80,000~\170,000
生産地 日本(国内の提携工場)、韓国

5つのシリーズは大きなコンセプトとして、

ヴィンテージ・ゼマイティスを再現するシリーズ
・TONY’S COLLECTION

ゼマイティスのレギュラー・ラインナップ
・CUSTOM SHOP
・CASIMERE
・ANTANUS

自由な発想や新しいアイディアを積極的に取り入れる
・Z

に大別することができます。