初級/中級/上級別、オススメのクリップチューナー

[記事公開日]2018/3/7 [最終更新日]2024/6/23
[編集者]神崎聡

クリップ式チューナー

「クリップチューナー」とは、ギターのヘッドに取り付けるタイプのチューナーです。現在では安いものも多くなってきましたから、エレキギター初心者セットに組み込まれることも多く、初めて手にするチューナーがこのタイプだったという人も多いことでしょう。シールドでつながなくてもよいこともあって、日常的な練習には最も理想的なチューナーだと言えます。今回は、そんなクリップチューナーに注目してみましょう。


KORG AW-OT Series Tuners – The first ever tuner with OLED technology
クリップチューナーの歴史は、2004年に発表されたKORG(コルグ)の「AW-1」に始まります。AW-1は当時「チューナーとして世界最小」でもありました。それから10年以上を経た現在、クリップチューナーの性能はかなりのところまで来ており、低価格化も進んでいます。

クリップチューナーのメリット

クリップチューナーのメリットは、

  • シールドを使わないから、チューニングの準備が面倒くさくない。
  • 小さく、持ち運びに便利。
  • 安いものが多く、手に入れやすい。
  • 周りで音が鳴っていても、平気で使用できる。

など、良いことずくめです。ギターのヘッドに付けっぱなしでも良いので、シールドをつなぎかえる必要がなく、気が付いたらすぐにチューニングすることができます。かさばらないし、仮に何かがあっても買い直すのは比較的簡単です。
他の音が鳴っていてもチューニングできるというのは、大きなメリットになります。「チューニングにはスマホのアプリを使う」という人も、現在では多く見られます。しかしその場合、スマホにギターの音を聞かせるために周りが静かでなければなりません。「となりで誰かが話しかけてきても、平気でチューニングできる」というクリップチューナーの大きなメリットは、自宅練習でもバンドのリハーサルでも実感することができるでしょう。

クリップチューナーのデメリット

メリットの多いクリップチューナーですが、その逆も考えてみましょう。クリップチューナーのデメリットは、

  • 壊れる、また失くすリスクが比較的高い
  • 極端にうるさいところでは使えない
  • 共振する可能性や、検出しない可能性
  • 落下の恐れ
  • ヘッドレスギターでは使いにくいかも

これくらいが考えられます。クリップ部分はプラスチックでできているのが普通なので、使っているうちに関節が破損することが、また荷物の中で圧力がかかって割れてしまうことがあります。小さいものなので、おっちょこちょいな人は失くさないように保管場所を決めておくといいでしょう。
ライブ会場などあまりに音が大きい現場では、周りの音が楽器に伝わってしまって使えないことがあります。その時は楽屋に逃げ込むなど、静かな所に行けば問題ありません。

楽器の振動にクリップチューナー自身が共振して、「ビビビッ」と音がすることがあります。また、取りつけたところがたまたま響きの伝わりにくいポイントだった場合に、検出が鈍くなることがあります。しかしいずれの場合でも、取り付けるポイントをずらせばだいたい大丈夫です。
クリップチューナーを付けっぱなしでライブ演奏するギタリストも、最近多く見られるようになりました。しかしステージで暴れるならば、外しておいた方が良いでしょう。ギターのヘッドには遠心力がかかりますから、何かの拍子に床やお客さんに向かって飛んで行ってしまうこともあります。
ヘッドレスギターでもSAITO GUITARS(サイトー・ギターズ)や.strandberg*(ストランドバーグ)のギターでは、ヘッド部にクリップチューナーのしがみつく余地が残されています。しかしSTEINBERGER(スタインバーガー)のギターにその余地はなく、ストラップピンやコントロールノブといった部分に取り付けるなど、苦しい使い方になります。

クリップ式チューナーを選ぶポイント

今やクリップチューナー市場には数多くのブランドが参入しており、群雄割拠の様相を呈しています。いろいろ特徴的な製品も多くリリースされていますが、特にこの製品はだめだ、というものはなく、「ギターチューナー」と書いてあったらギターのチューニングができます。細かいことにこだわらない人は、「現代の三大チューナーメーカー」
KORG(日本)
BOSS(日本)
tc electronic(デンマーク)
に絞って、フィーリングで決めてしまってもいいでしょう。「せっかく買うんだから、ある程度の吟味はしたい」という人は、以下のポイントでチェックしてみましょう。

【初級】価格と性能

プロの現場でも使われることがある標準的なクリップチューナーは、だいたい売値で2,000円~3,000円あたりです。この価格帯のものは「チューニングモード」の切り替えや変則チューニング/ダウンチューニングへの対応、「キャリブレーション」変更など機能が充実しており、反応速度も充分です。

これより安いものは、使える機能を絞ったベーシックなものが多くなります。しかし機能が絞られているだけで性能が劣るわけではありません。たとえば1,000円近辺の定番チューナー「Pitchclip(コルグ)」はたいへんシンプルなクロマチックチューナーですが、そのぶん反応が速いのでストレスなく使えます。逆に安くても多機能なものはメーカーがかなり頑張っていますが、引き換えに反応速度は許せる範囲くらいにとどまります。

高額なものは機能や精度、スピード共に優れたものになります。高額なクリップチューナーの定番「polytune clip(TCエレクトロニック)」は、弦6本を一度にチューニングできる「ポリフォニック・チューニング」と「ストロボ・モード」による超シビアな高精度チューニングの両方ができる高性能ぶりで、反応もクイックです。

【初級】チューニングモード

「チューニングモード」は、チューナーがどのように振動を検出するかを表します。クリップチューナーでは、
ギター/ベース/ウクレレ・モード
クロマチック・モード

の二つが標準で、両方を切り替えられるものも、どちらかのみのモデルもあります。チューナーを始めて使うという人は、まずこのモードのどちらかを使えるようにするといいでしょう。

高機能なものでは、
ポリフォニック・モード
ストロボ・モード

これらのモードを使用できるモデルが、クリップチューナーという分野でも出現しています。こちらは超スピードでチューニングを終わらせたい、または超精度でビシっとチューニングしたい人向けです。

チューニングモードについては当サイト記事「ペダルチューナーについて」より、下記リンクを参照してください。
チューニングモード(チューニングの仕方)

【中級】キャリブレーション変更

普通にロックやポップスを演奏するぶんには気にしなくて良い「キャリブレーション」ですが、活動の幅が広がっていくと、そういうわけにもいかなくなります。
キャリブレーション(エレキギター博士「ペダルチューナーについて」より)

キャリブレーション変更ができるクリップチューナーの多くは「CALIB」と書かれたボタンを押して操作します。このボタンはたいがい見えにくいところにあるんですが、コルグの「Sledgehammer」シリーズや「AW-LT100G」は右手側のシャトル・スイッチで操作するので、ロックバンドと吹奏楽部を行き来するなど、頻繁にキャリブレーションを変更する人にとっては大変使いやすくなっています。

【中級】チューニング精度

標準的なクリップチューナーのチューニング精度は「±1セント」で、ライブの時に重宝するペダルチューナーと同じです。高品位モデルでは「±0.5セント」や、「±0.02セント」といった、超高精度のチューニングを可能にしたものもあります。シビアなチューニングに慣れると耳が育ちますし、耳コピもはかどります。しかしそれだけチューニングの作業に時間がかかりますから、ライブ中などでは標準的な精度のチューニングが使えた方が便利なことがあります。
セント(エレキギター博士「ペダルチューナーについて」より)

【上級】反応のスピード

技術の進歩というものは今なおすさまじく、現代ではどんな価格帯のクリップチューナーでも反応速度にストレスを感じさせません。たいがい弦を弾いた瞬間に反応するのが普通です。チューナー業界に革命を起こした世界初のクリップチューナー「AW-1(コルグ。2004年)」は名機でしたが、現代の感覚ではストレスを感じることでしょう。

現代のクリップチューナーにおいて、スピードの決め手は「低音弦への反応」です。特に弦が古くなってくると、6弦への反応が鈍ることがあります。この場合「12フレットのハーモニクスでチューニング」という技が使えますが、日常的なチューニングではそれでも面倒に感じてしまいます。7弦以上の多弦ギターやベースを弾くことがある、またはダウンチューニングするという人は、ちょっと頑張って最新かつ高品位のクリップチューナーを選ぶと良いでしょう。

この反応速度に対して、各メーカーは表示しないのが一般的です。低音弦への反応が良いチューナーを検討するには、ショップなどで検証するか、口コミを聞きあさるか、といった手法に頼ることになります。

クリップチューナーのラインナップ

では、山のようにリリースされているクリップチューナーからいくつかをピックアップしていきましょう。便宜上【初級向け】から【上級向け】までランク付けしていますが、始めたばかりの人が【中級向け】や【上級向け】のクリップチューナーを手にされてもまったく問題ありません。

【初級向け】

初級向けのクリップチューナーは、
低価格
シンプルな操作や機能

という基準でセレクトしています。クリップチューナーは壊したり失くしたりする可能性を否定できないものですから、低価格モデルを起用する意義はじゅうぶんにあります。メイン機に何かがあった時の備えとしても、頼もしい存在です。

KORG Pitchclip / Headtuneシリーズ

KORG Pitchclip、Headtuneシリーズ

コルグの「ピッチクリップ」および「ヘッドチューン・シリーズ」は、
・ボタン1個のみの超シンプル設計
・キャリブレーション440Hz固定

という仕様を共通している、「シンプルさ」を突き詰めたクリップチューナーです。1,000円近辺の価格ながら表示は見やすく、また反応速度がしっかり確保されていて、この分野を切り拓いたコルグのプライドを感じさせます。
「ピッチクリップ」は、「クロマチック・モード」のみのシンプルなチューナーです。横画面表示ですが反転させることもできますから、左利きのギタリストさんにもストレスをかけません。クロマチック・チューナーは変則チューニングやギター以外の楽器もチューニングできますから、初めてのクリップチューナーとして最もお勧めできます。
「ヘッドチューン・シリーズ」は、ギターのヘッドに似せたユニークなチューナーです。LEDが各ペグの位置に対応しているため、どのペグを回せば良いのか一目で分かります。ストラトキャスタータイプのヘッドには「HT-G1」が、レスポールタイプのヘッドには「HT-G2」がいいでしょう。

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YAMAHA YTC5

YAMAHA YTC5

初めてギターに触れる人は、「クリップチューナーはコルグが元祖」と言われても「コルグって何?」と思ってしまうかもしれませんね。しかしYAMAHAなら有名なメーカーだから、安心です。YTC5は売価1,000円近辺ながら、チューニングモードとキャリブレーションを変更することがでる、高性能クリップチューナーです。「文化祭で吹奏楽部とコラボ」なんて企画をやるなら、キャリブレーション変更は必須です。

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SNARK SN-5X

SNARK SN-5

「スナーク」のクロマチック・クリップチューナー「SN-5X」は、ギター博士も愛用している同社SN-5Gの後継機種です。スナークは低価格帯モデルでありながら起動が早く、カラー表示は明瞭で見やすく、また反応の速さと表示の敏感さのバランスが良いことで人気機種となり、「コルグ一強」とまで言われるクリップチューナー界に一石を投じました。他モデルではメトロノーム機能のあるもの、外部マイクを持つものなど、バリエーションも豊富です。

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https://youtu.be/di_eCs6v96Y
SNARK TUNER SN-5X
世界的にも支持されているスナークは、チューニングのしやすさだけでなく、「首」の自由度も注目です。チューナー側、クリップ側いずれも球体関節が採用されているため、自由な向きにセッティングできます。

【中級向け】

中級向けのクリップチューナーは、
●標準的な価格
●キャリブレーション変更ができるクロマチックチューナー

という基準でセレクトしています。クロマチックチューナーはカポタストを使用したり変則チューニングを試したりする時には欠かせないし、チョーキングの音程をチェックするのにも有効です。

KORG AW-LT100G

KORG AW-LT100G

コルグ「AW-LT100G」は、名機「AW-1」から始まったクリップチューナーの歴史を継承する「ギター専用クロマチックチューナー」です。ベース用のAW-LT100Bと分けてリリースすることで検出音域をギターにフォーカス、そのぶん処理速度を上げています。通常のチューニングのほかストロボ・モードを搭載しており、「±0.1セント」の高精度チューニングが可能です。

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BOSS TU-10

BOSS TU-10

短いスパンで新製品を続々とリリースし続けるコルグに対し、ライバルのBOSSはこの「TU-10」を堅実に流通させています。可動部分がクリップしかない独特のフォルムは、「首が折れやすい」というクリップチューナーの泣き所を完全にクリアしています。発表から何年も経過しているロングラン製品ですが、反応速度はいまだに物足りなさを感じさせないし、カラーバリエーションがあるのも魅力です。

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Planet Waves NS Mini Headstock Tuner PW-CT-12

PLANET WAVES  NS Mini Headstock Tuner New Type

ギター弦大手ダダリオの運営する「プラネット・ウェイヴス」の「PW-CT-12」は、世界最小クラスのクリップチューナーです。ヘッドに取り付けたら姿が見えなくなることから「ステルス・チューナー」と呼ばれたこともあります。付けっぱなしで全く気にならないこともあり、メーカーは「お手もちのギター一台ごとにPW-CT-12を一台」を推奨しています。音ではなく表示でテンポを出す「ビジュアルメトロノーム」は、ライブでギターから始まる曲を演奏する時に頼りになります。こちらもギター博士愛用のモデルです。

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【上級向け】

上級向けのクリップチューナーは、
●売価が5,000円以上
●スタンダードな「針式クロマチック」以外のチューニングができる

という基準でセレクトしています。高価格なモデルは設計の自由度が高く、画面の見やすさはもちろんさまざまな機能が充実しています。「自分の使い方」を心得ている人に向け、目的に合わせて機能を選べる多機能モデルばかりでなく、高精度チューニング一本に絞ったこだわりのモデルもあります。

KORG AW-OTG/AW-OTG-POLY

KORG AW-OTG

クリップチューナー先駆者「コルグ」のニューモデル
ギター専用クロマチックチューナー「AW-OTG」
ギター専用ポリフォニックチューナー「AW-OTG-POLY」

の両機は、カラー表示の流行から抜けだした有機ELディスプレイを採用して、逆に新鮮な印象を帯びています。くっきりとした見やすい画面には通常の画面のほか「チューニングが合うと花が咲く」、「猫が猫じゃらしを叩く」、といったさまざまなアニメーションを選択できます。これにより「機能と性能」のみが注目されてきたチューナー界に、「楽しさ」という新しい価値が取り入れられました。キャラクタービジネスで世界を席巻する日本の企業だからこそ、作ることのできた製品だと言えるでしょう。

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PETERSON StroboClip HD

PETERSON StroboClip HD

「ストロボチューナー」の代名詞とも言われるピターソン社は、10,000円を越えるストロボ式クリップチューナー「ストロボクリップ」の発表で、小型化/低価格化が流行していたクリップチューナー界に風穴を開けた実績があります。「ストロボクリップHD」はその後継機種で、大きな画面いっぱいの動きで「±0.1セント」の高精度なチューニングを行う、その一点にポイントを絞ったストイックなモデルです。チューニング方法は一つですが、エレキギター、アコースティックギター、またバジーフェイトン・チューニングなど楽器や音率にあわせた「カスタムチューニング」が充実しています。

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tc electronic polytune clip

TC Electronic Polytune Clip

6本の弦を同時にチューニングできる「ポリフォニックチューニング」の発明で世界を沸かせた「TCエレクトロニック」の次なる挑戦は、「同じ機能をクリップチューナーで実現する」ことでした。完成した「ポリチューン・クリップ」は見事にそれを達成し、
・MonoPoly検知:全弦弾いたらポリフォニック、一本弾いたら通常のクロマチックにチューニングモードを自動切換え
・±0.5セントの高精度クロマチックチューニング
・±0.02セントの超高精度ストロボチューニング

という圧倒的なチューニング機能を小さな本体にに収め、反応速度も最速レベルを達成しています。また、クリップには頑丈なステンレスを使用しているため、普通に考えたら破損することがありません。

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以上、「クリップチューナー」をテーマに様々なことをチェックしていきました。日常的な練習からリハーサル、レコーディングまで、また暴れないならライブステージでも活躍する頼もしいアイテムです。一軍のチューナーとしても、控え選手としても、ぜひ一個持っておいてください。

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