マルチエフェクターに搭載するアンプモデルの元ネタ・アンプ解説

[記事公開日]2024/7/24 [最終更新日]2024/8/1
[ライター]森多健司 [編集者]神崎聡

アンプモデルの元ネタ

マルチエフェクターにはアンプモデルというものが大量に内包されています。これは既存のアンプを擬似的に模したもので、ギターアンプがこの世に誕生してから今まで70年来の間に登場した様々なアンプがシミュレートされています。マルチエフェクターでは、何よりもこの部分が音色の方向性や質感を決める最大の要素となるため、各社もっとも力を入れている部分でもあります。つまり、マルチエフェクターは様々なエフェクトの集合体である以上にアンプをシミュレートするマシンと言ったほうが近く、初心者にとって非常にわかりにくく感じる理由もここにあります。

当然、各アンプモデルにはそれ固有の音色があり、その音色を知ったうえで自分の意志でモデルを選んでいけるのが理想です。しかし、アンプの名前だけを見てその音色を想像するのは、初心者には不可能です。ましてや、モデリング名称は元アンプの名前はそのまま使われず、元の名称を微妙に匂わせるだけの別称になっているため、よりわかりにくさを感じます。

今回はマルチエフェクターでよくモデリングされる定番アンプと、それを表す別称をまとめてみました。どの名称のモデルを選べばどのような音が出るのか、特にアンプの名前と音色が一致していない初心者の方はぜひ参考にしてください。

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なぜ独自の名前なのか

なぜ元アンプの名前をそのまま使わないかというと商標や権利によるところが大きく、製品名をそのまま使うことができないため、元の名称を彷彿させる別名が使われます。ただし、同じ会社の製品であればこの問題がクリアできるため、製品名がそのまま使われます。たとえばBOSSの製品では、親会社のRoland JC-120のモデリングにはその名前がそのまま使われます。

森多健司

ライター
モリタギター教室 主宰
森多 健司

新大阪に教室を設立し10年弱、小学生から70代まで、音楽経験皆無の初心者から歴20年のベテランまで、幅広い層に教える。2015年 著書「ロック・フュージョン アドリブ指南書: マイナー7th上で多彩なフレーズを生み出す方法」、2016年 著書「六弦理論塾〜ギタリストのためのよく分かる音楽理論」上梓。

エレキギター博士

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webサイト「エレキギター博士」を2006年より運営。現役のミュージシャンやバンドマンを中心に、自社検証と専門家の声を取り入れながら、”プレイヤーにとって役立つ情報提供”を念頭に日々コンテンツを制作中。

フェンダー(Fender) ~ US、FD、Tweedなど

ギター本体同様、フェンダー社のアンプは定番中の定番で、どのようなエフェクターにも複数のフェンダーアンプモデリングが含まれます。ZOOMのエフェクターではFenderをもじって”FD”、Line 6のものではアメリカ製であることから”US”と表記されます。

Twin、Deluxe

65 Twin Reverb65 Twin Reverb

65年製Twin Reverb、Deluxe Reverbの二機種。クリーントーンが非常に美しく、とりあえずきれいなクリーンが欲しければこれを選んでおけば良いというほどの定番。Twinの方が出力が高く、より余裕のあるクリーンが得られ、Deluxeはやや小さめで低出力のため、ボリュームを上げるとバリバリとした歪みが得られます。
コントロールパネルが黒色であることから”Blackface”という通称で知られているため、Black~という名前もしばしば使われ、接頭語にBlackが付くモデル名を見かけたら、これらをイメージしておけば間違いないでしょう。ちなみに単にTwinではなくTweed Twinなどとなっている場合は、下記のTweed系の仲間となり、音色の方向性が大幅に異なりますので注意してください。

Tweed

Fender TweedEC Twinolux

フェンダー黎明期に生み出されたごく初期のアンプを指す通称で、外装がツイードで覆われていることからこのように呼ばれます。上で紹介したBlackfaceのTwinやDeluxeよりも柔らかくナチュラルによく歪み、ブルースやトラディショナルなロックには最適です。

Tweed Bassman

59 Bassman Demo | Clip 6 | Fender

多彩なラインナップを誇ったツイードアンプの製品群のなかでも、最も有名なものが59年製のTweed Bassmanです。ベースアンプでありながら、ギタリストに大人気を博した最初期のフェンダーを代表する製品で、大型のキャビネットから放たれる骨太なサウンドはロック黎明期において大変重宝されました。モデリングの名称としてTweedとだけ表記されている場合はこのモデルを表していることが普通。Tweedアンプでは他にエリック・クラプトンがLaylaのレコーディングで使用したとされる、小型のTweed Champも有名で、Line 6 HelixやHOTONE Amperoではこのアンプのモデリングも含まれています。

マーシャル(Marshall) ~Brit、British、MS、Plexiなど

アメリカ製のフェンダーに対比しイギリスを代表するマーシャルは”British”やそれを略した”Brit”などと表記されます。ZOOMのエフェクターではMarshallから”MS”と名付けられています。マーシャルの製品は数字でモデルが表されることが多いので、45や1959、800などを覚えておくと便利です。

45

JTM 45

マーシャル初期のJTM 45から。世界初のスタックアンプで、コンボでは得られない大音量とパワーが得られることから人気を博しました。粘っこい歪みとザラザラした質感が特徴で、最初期モデルながら現在でも人気のあるサウンドです。

1959、Plexi

Plexi1959SLP

Marshall 1959 Super Leadより。現在のマーシャルアンプの原型とも言える存在で、分厚い中低域にジャキジャキとしたヌケの良い歪みは、60〜70年代ロックのサウンドそのものです。コントロールパネル部にプレキシガラス(アクリル)が使われたため”Plexi”と呼ばれ、プレキシマーシャルという通称はこのモデルを指しています。モデリング名が”Plexi”になっている例は枚挙に暇がありません。

70年代終わりごろ、エディ・ヴァン・ヘイレンがこのモデルを改造して放ったハイゲインのサウンドはロックの歴史でも最高の音の一つとされていますが、こちらは通称ブラウン(Brown)サウンドと呼ばれ、ノーマル1959とは区別して別モデルとして扱われるのが普通です。

800、900

Marshall JCM800JCM800

JCM 800、900より。ともに80~90年代のハードロック全盛を支えた銘機で、分厚いクランチサウンドの800と、時代に沿ってよりハイゲインに振った900は、セットとして語られることが多いモデルです。900は800の直系として似たサウンドであるためか、モデリングされているものとしては800が圧倒的に多く、900がモデリングされているエフェクターは稀と言って良いでしょう。モデル名として”800”と記載されていれば、間違いなくこれを表しています。

VOX ~UK、A30など

VOX AC30S1AC30S1

VOX(ヴォックス)のアンプはビートルズやブライアン・メイが使用したAC30が有名。フェンダーとはまた違う、英国的な湿り気を帯びたクリーントーンはVOXならではの魅力があり、非常に弾いていて気持ちの良い音色です。兄弟機であるAC15とともに幅広くモデリングが提供されており、マーシャルのBritishに対して”UK”となっている例(ZOOM、Mooerなど)や、モデル名を表すA30A15(Line 6製品)、Voxをもじった”Voxy”(HOTONE製品)など、各社様々な表記がされています。

メサブギー(Mesa Boogie) ~Cali、Recti

カルロス・サンタナが名付け親とされるアメリカを代表するアンプメーカーで、初号機のMark Iからメタル向けに絶大な支持を誇るDual Rectifierまで傑作を数多く生み出しました。Line 6、Mooerなどの製品では、カリフォルニア発祥であることから”Cali”と表記され、Zoom、BOSSの製品ではMesa Boogieから”BG”と表記されます。フェンダーのTweedなどと同じく、わざわざメーカーを匂わせず単に”Recti”などの製品名が付いていることもあります。

Recti、Rectifire

Mesa Boogie Dual RectifierDual Rectifier

メサブギーを代表するハイゲインアンプDual RectifierおよびTriple Rectifierのこと。Rectifier自体は「整流管」という意味のただの単語であるからか、ぼかさずにこのまま表記されている例もあります。90年代に発表され、メタリカが使用したことから大きくヒットします。メタル向けアンプの代表的存在です。

Mark I、II、III、IV

MESA/Boogie Mark VII

メサブギーアンプの第一号であるMark Iは1972年に登場しました。マスターボリューム、そしてその前段にゲインを装備することで、自由な音量で歪ませることを可能にした世界初のアンプで、歪ませようとすると強引に大音量にして演奏するしかなかった当時において、非常に画期的な存在でした。このモデルは社名の名付け親であるサンタナや、日本でも高中正義氏などが愛用しています。その後、1979年にデュアル・チャンネルモデルのMark II~IIB,IIC、1986年によりハイゲインに振ったMark III、1989年に外部フットスイッチに対応したMark IVが登場しました。
これらはハードロックやフュージョンの黎明期~全盛期を支えた銘機で、現在も多くのギタリストに愛されており、いずれもモデリングされていることが多いアンプです。名称は単に数字で”IV”、”II C+”とか、”Mark 1”などと表記されています。

オレンジ(Orange) ~ Citrus、Mandarin、ORG

Orange SUPER CRUSH 100SUPER CRUSH 100

オレンジ色の外装がオシャレな英国発のアンプ。ジャリジャリとした歪みはマーシャルよりもさらに粗く、かき鳴らしたりするプレイには最高にマッチします。もともとはVOXから独立する形で誕生したメーカーで、その個性的なルックスも含め、長く人気のあるブランドです。モデリング元のアンプはまちまちで、AD30、AD200、Graphic120などが挙げられます。
モデリング名はかなりばらつきがあり、Line6、Mooerではオレンジと同じ柑橘系を連想させる”Citrus”、”Mandarin”、Zoom,BOSS製品ではOrangeを略した”ORG”、”ORNG”がつかわれています。ちなみに、HOTONE製品では口味を表す”Tang”となっていますが、これは日本人には少しわかりにくく感じますね。

六弦かなで

六弦かなで「マルチエフェクターでアンプモデルを選ぶ時、いつもなんとなくで選んでたけど、元ネタとなっているアンプのサウンドがわかればイメージが湧きやすいね!🥰」

ボグナー(Bogner) ~ German、BGNR、Boger

Soldano SLO-100Ecstacy

ドイツ発祥のアンプメーカー。1992年に発表されたEcstacyが世界的に高い評価を受け、その地位を不動のものとしました。EcstacyにはBlue,Redの二種のチャンネルがあり、モデリングされる際にはこれらが別々のモデルとして扱われるのが普通。他にもUbershallというハイゲインアンプがリリースされており、こちらも人気のある機種です。モデル名としてドイツ発祥であることから、”German”、ブランド名を連想させる”BGNR”、”Boger”などが使われたり、製品名のEcstacyから”XT”、”XTACY”などが使われることも。Zoom、BOSS製品ではMesa BoogieがBGと表記され、紛らわしいので注意。

その他~よくモデリングされる銘機たち

Soldano SLO-100 ~ Solo,Solo 100

Soldano SLO-100

1987年にクランチ~ハイゲインアンプとして登場。Super Lead Overdrive 100WからSLO-100という型番となっています。ハイゲインアンプとして当時のハードロック勢から絶大な支持を受けた他、ジューシーなクランチチャンネルはエリック・クラプトン、ゲイリー・ムーアなどもそれを使用したと言われる伝説的なアンプです。モデリングでは”Solo”や”Slow”などSLOを想起させる別単語が当てられています。

Peavey 5150/6505 ~ PV、5050

Peavey 65056505

1992年、エディ・ヴァン・ヘイレンとの連携で製造されたアンプで、噛みつくようなハイゲインサウンドが魅力です。5150の製品名は商標の関係から使えなくなっており、6505という別名となって現在も製造が続けられています。モデリングでは社名のPeaveyは”PV”、5150の代わりに5050とか、一目でわかるようなものが使われることが多く、エディ・ヴァン・ヘイレンからもじった”EV”、”Eddie”などと表記される例もあります。

Matchless DC-30 ~ Match、Matchbox

Matchless DC-30

アメリカ発祥のコンボアンプ。そのリッチなサウンドには定評があり、ブライアン・メイやボブ・ディランも好んで使用したと言われます。スピーカー一基の30W出力という大きさもちょうど使いやすいサイズ感で、現在でもリイシューが人気です。モデリングでは社名をもじった”Match”や”Matchbox”となっている例がほとんど。

ハイワット(Hiwatt) ~ Hiway、Whowatt、HW

Hiwatt DR103

非常に図太くかつ美しいクリーントーン、粘っこく芯のあるクランチが特徴。60年代後半、ザ・フーのピート・タウンゼントとジョン・エントウィッスルの要望によって作られたブランドで、のちにDR103という銘機を生み出し、70年代のロックギタリストに大いに使われることになります。モデリングもほとんどがこのDR103をベースとしたものです。モデリング名称はHiwattを連想させる”Hiway”、単に略した”HW”、中にはザ・フーからのもじりで”Whowatt”などとなっていることも。

Engl Powerball ~ Engle、Angl、Powerbell

Engl PowerballPowerball II

ドイツを代表するアンプメーカーにして1984年より続く老舗。当初はリッチー・ブラックモアの使用などで知られていましたが、後にメタル系のハイゲインアンプを続々生み出し、PowerballやFireballという傑作を生み出すことになります。Engl自体は他にも様々なアンプをリリースしているものの、モデリングされる際にはPowerballが一番多く、ブランド名を想起させる”Engle”、”Angl”、そして製品名をもじった”Powerbell”などの名称が使われています。

Diezel VH4、Herbert ~ DZ、Dizzle

VH4

Diezelはドイツ発祥のメーカーで、2000年代を代表するハイゲインアンプの旗手。メタリカが同社のVH4を使用したことから人気を博し、このVH4に加えてHerbertという2つのモデルがいずれも非常に高い評価を受けています。モデリングの際にはこの両機種のどちらか、あるいは両方が含まれることも多く、Diezelの人気ぶり、評価の高さが伺えます。名称としてブランド名を想起させる”DZ”とか、製品名をそのままもじった”VH+”などが使われています。

Roland JC-120 ~ Jazz 120、Jazz Clean

JC-120

Jazz Chorus 120からJC-120という型番を持つこのモデルは、日本を代表するトランジスタアンプです。日本国内ではどこに行っても置いてあるため、少しでもバンドで演奏した経験があれば、このアンプのサウンドを知らない人はほぼいないでしょう。
カリカリに乾いた硬いクリーントーンはそのまま使うと耳が痛いほどに研ぎ澄まされていますが、アルペジオなどで使うと、その美しさは唯一無二のものがあります。モデリングではJazz Chorusから”Jazz”という名が付いていることが多く、ごくたまに日本製のアンプであることから”Japan”という名がつけられていることも。BOSS製品ではJC-120という名がそのまま使われます。

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