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左:Highway Series「Parlor(Spruce)」、右:Highway Series「Dreadnought(Mahogany)」
フェンダー「Highway(ハイウェイ)」シリーズは、人間工学に基づいてゼロから設計された、抱えやすく弾きやすい全く新しいアコースティックギターです。
先行する「Acoustasonic(アコースタソニック)」シリーズは、エレキとアコギの両方の特徴を持ち合わせるハイブリッドギターです。これに対しHighwayシリーズはAcoustasonicと従来のアコギの間を埋める、エレキギターの抱え心地で演奏できるアコースティックギターに仕上がっています。このたびギター博士がHighwayシリーズの2本をチェック、どんな弾き心地なのか、どんな音がするのかをレビューします!
抱えやすく弾きやすいので、手の小さい人でもコレなら弾けそう。生音では十分な音量が得られ、ライン録りでは明瞭で生々しいサウンドが得られる。
「Parlor(パーラー)」は、小ぶりなボディとミディアムスケール(24.75″)の組み合わせ。室内音楽に合うような軽く小気味いいサウンドで、アルペジオやフィンガーピッキングに実に良好。
まずは、ギター本体の感触をチェックしました!Highwayシリーズは第一に、エレキギター並みにコンパクトなボディが印象的です。
ボディ幅、ボディ厚ともに普通のエレキギターよりちょっと大きいくらいのサイズ感に収まり、また右ひじ部分とボディ背面が滑らかにカットされているので、アコギだとはにわかに信じがたい抱えやすさが感じられます。ソリッドボディのエレキと比べるとかなり軽量ですが、ボディにはある程度の重さが残されているので、抱えた時の重量バランスも良好です。エレキギターのギグバッグにすっぽりと収まるから、持ち運びも楽ちんです。
右肘と脇腹の当たるところには滑らかなカットが施され、ストラトを想起させる。
また、ネックはエレキギターにかなり近い印象です。ちょっとだけ肉厚感のあるCシェイプはスリムでサラサラの感触があり、フレットは近年のフェンダーではお馴染みの「ナロー・トール」です。エレキからの持ち替えに違和感はほぼなく、12インチに設定された指板Rのおかげで、親指を出して握り込むにしてもバレーコードを押さえるにしても、ストレスはかなり軽減されます。
サドルはしっかりとオクターブ調整されているので、ハイポジションで押さえるコードも美しく響く。
「Dreadnought(ドレッドノート)」は、大きめボディとロングスケール(25.5″)の組み合わせ。高域の立ち上がりと低域のスケール感があり、コードストロークに特に良好。
アンプにつなぐ前に、本体の生の音をチェックしました!各弦はバランス良く鳴り、サスティーンもしっかりあるように感じられます。
本体の生音は自宅で弾くのにちょうどよい、程よく豊かな音量です。低域もしっかり響きますが、一般的なアコギよりやや軽やかに響く印象です。弦はアコギ用です。エレキ弦より弦自体の硬さはありますが、弦高が普通のアコギより低くセットアップされているようで、軽いタッチで演奏できます。指を伸ばすコードも押さえやすく、リードを弾きたくなります。
「Highway」シリーズはエレキ的な演奏性のある革新的なギターであり、ボディ厚はアコギの半分ほどしかありません。しかし王道の木材と斬新な構造で豊かな生鳴りを達成しています。
木材構成はマホガニーボディ&ネック、指板とブリッジにはローズウッド、トップには単板シトカスプルースと単板マホガニーの2タイプという、まさにアコギの王道です。
一方でボディの構造はかなり斬新です。マホガニーを大きく彫り込むチェンバー構造のボディ材に、このシリーズのための「フローティング X 」ブレーシングパターンを採用するトップ材を貼りつけています。トップ材はボディにはめ込まれるように接着される「インレイ・ソリッドトップ」工法で、内側に向けたL字型の凹みに収めるようにトップを接着することで、ボディが一体となって響く設計です。
アコギとしてはなかなか珍しい、ボルトオンジョイント。マイクロティルト機構を備え、ネックの仕込み角を調整できる。
ストラトキャスターのヘッドを太らせたようなヘッドストックは、フェンダー「コロナド」を想起させる。木部は光の反射が穏やかなので、写真が撮りやすい。ヴィンテージ・スタイルのペグは弦の端が飛びださないので、ギグバッグの内側を傷めにくい。
ボディ、ネック共にマットな印象のサテン塗装です。滑りの良いサラサラな感触ですが、光を当ててもテカらず柔らかに反射するので、写真や動画の撮影などSNSとの親和性が高そうです。
サウンドホールに取り付けられるピックアップは、木部の共振を適度に抑制するハウリング防止効果が期待できる。マグネット式ピックアップが拾うのは弦振動のみで、スラム奏法などボディを叩く音は拾わない。
さていよいよアンプにプラグインして、エレアコとしての性能をチェックしました!デジタルモデリングに頼らない、純粋にギター本体とピックアップによって紡ぎだされる、アナログのアコースティック・サウンドが得られます。
Highwayシリーズはエレキギターに近い抱え心地で演奏できるギターですし、サウンドホールに取り付けられたFishman社製「Fluence」ピックアップの設計は、エレキギターに近いマグネット式です。とはいえエレキギター用のアンプに挿すよりも、一般的なエレアコのようにアコースティックアンプやプリアンプ、DI、オーディオインターフェイスなどにつなぐほうがピュアなサウンドが得られて好印象です。
ピックアップの特性はフラットな印象で、ギターに対して素直なサウンドが得られます。エフェクターの乗りが良好なので、エフェクトを駆使したサウンドメイクにやりがいがあります。操作系はコントロールノブ2基で、ボリュームノブで音量を、「Contour」ノブで中域の量を操作できます。
アウトプットジャックはボディ側面に。コントロールノブは木製。
バックパネルには、バッテリーボックスが備わっている。LED搭載により、電池残量の確認も可能。
Exploring the Highway Series | Fender
Fender「Highway」シリーズは「Parlor(パーラー)」と「Dreadnought(ドレッドノート)」2タイプの本体、それぞれ2タイプのトップ材という合計4モデルのラインナップを展開しています。それぞれ音にもルックスにもキャラクターがあり、選ぶ楽しさがあります。なお、全機種共通でボディ厚は2.25”、ナット幅1.6875″ (42.86 mm)、指板Rは12″です。
上:Spruce、下:Mahogany
「Highway Series Parlor」はコンパクトなボディと弦長24.75″のミディアムスケールによる、軽くて小気味良いサウンドが持ち味です。抱え心地は、標準的なエレキギターとほぼ同じです。
上:Spruce、下:Mahogany
「Highway Series Dreadnought」は、やや大きめのボディと弦長25.5″のロングスケールによる、低域も高域もしっかりとした押し出しのある力強いサウンドが持ち味です。やや大きめとはいえ右ひじ部と脇腹部の滑らかなカットにより、抱え心地は大変良好です。
トップ材の違いにより、サウンドホールのロゼッタ、ボディ外周のパーフリングの意匠に違いが設けられている。
以上、フェンダーの提唱する新しいアコースティックギター、Highwayシリーズをレビューしました。フェンダーがこれまで築き上げてきたエレキギターの演奏性をアコギに注入した、高いプレイアビリティが第一の持ち味です。ボディの薄さはステージで重宝するほか、机に座ってギターを抱えたままPCで作業をしたり譜面を書いたりするのにもうってつけです。
また一聴してアコギだと分かるけれど、新しく感じられるサウンドもポイントです。従来のアコギの代わりに使うギターではない、アイデンティティのある新鮮なサウンドは新しい音楽を生み出すきっかけになるかもしれません。ぜひ実際にチェックしてみてください。
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