
ギタリストが使うコンパクト・エフェクター(ペダル)の中でも最もラインナップが多く種類が豊富なのが、オーバードライブ・エフェクターです。
オーバードライブは、エレキギターやベース、シンセサイザーやボーカルの声にも使われる「音を歪ませるエフェクター」としてもっともポピュラーなエフェクターで、様々なメーカーが独自の歪みを追求したペダルをリリースする激戦区でもあります。
そんなオーバードライブ・ペダルについて、詳しく見ていきましょう!!
- オーバードライブとは
- オーバードライブ・エフェクターの仕組みと内部構造
- オーバードライブ・エフェクターの種類と分類
- カテゴリ別:おすすめのオーバードライブ・エフェクター
オーバードライブとは

オーバードライブは「アンプのボリュームを上げ出力電圧を加えて回路が飽和して出力音が歪んでしまう」状態のことで、もともとは1950年代当時のクリーントーンしか出なかったギターアンプのボリュームを上げすぎた時に偶然見つかった現象でした。
エフェクターのオーバードライブはこの歪みを意図的にシミュレーションしたものです。
オーバードライブの使い方
オーバードライブは使い方の幅が広く、目的に合わせていろんな使い方ができるエフェクターです。
「ONに踏みっぱなしでバッキングギターを弾く」というのが定番の使い方ですが、その他に「アンプで歪ませた上でギターソロの時だけONにして音を目立たせる(”ブースター”として)」使うやり方もあります。
機種によってほんのり歪む(クランチ程度)ものからディストーションのように激しく歪むものまで幅も広いので、目的にあったペダルを用意しておきたいところです。
はじめてのオーバードライブ・エフェクター【ギター博士】
オーバードライブ・エフェクターの接続順

歪み系ペダルを代表とするオーバードライブは、「ギターに近い位置」に接続することをオススメします。
ただ、ワウペダルやコンプレッサーを併用する場合、インピーダンスの関係により「ワウペダル(フィルター系)とコンプレッサー(ダイナミクス系)の後段」に繋ぎます。
オーバードライブ・エフェクターの仕組みと内部構造
オーバードライブ・エフェクターの根幹には、”クリッピング“という波形加工と、”オペアンプ“を中心としたアナログ回路設計があります。
オーバードライブがどのように歪みを生み出しているのかを解説します。
オペアンプで微弱な信号を増幅させる
多くのオーバードライブ・エフェクターは、アナログ回路で構成されており、その中心的役割を果たすのが「オペアンプ」。信号を増幅したりフィルターをかけたりするためのIC(集積回路)です。オーバードライブ回路では、まずギターからの微弱な信号をオペアンプで増幅します。
ダイオードでクリッピング(歪ませる)
次にオペアンプで増幅された信号の波形を、一定以上の部分を「カット」してクリッピング(=歪ませる)し、波形の上下を抑え込む形で歪みを生み出します。
ダイオードには、主に「対称クリッピング」と「非対称クリッピング」の2種類の使い方があります。
対称クリッピング
対称クリッピングでは、波形の正方向と負方向の両方に、同じ特性のダイオードを1つずつ逆向きに接続します。
これにより、波形の上下が均等にクリップされ、整った、やや硬質でコンプレッション(圧縮)感の強い歪みが得られます。
代表機種:
Pro Co RAT
MXR Distortion+
BOSS DS-1
特にRATは対称クリッピングによる滑らかで厚みのあるディストーションが特徴で、ハイゲインでも音のバランスが良好です。
非対称クリッピング
非対称クリッピングでは、ダイオードの本数や種類を片側だけ変えることで、波形の上下で異なるクリッピングが起こるように設計されています。
これにより、自然な倍音が多く含まれた、アンプに近い複雑な歪みが生まれます。
代表機種:
BOSS SD-1
Fulltone OCD
非対称のソフトクリッピングにより、中域が前に出る“抜けのよい”歪みが得られます。
これは、ギターソロやブルース、クラシックロックなどで好まれる傾向があります。
今日ではクリッピング方式を切り替えられるペダルも存在します。
ディストーションとはどう違うの?
オーバードライブとディストーションの違いは、クリッピング方式の違いが大きな要素です。ただし、それだけがすべてではなく、歪みの量や回路の構成も関係します。
オーバードライブは、真空管アンプの自然な歪みに近い「ソフトクリッピング」を中心とした回路が多く、比較的マイルドでダイナミクスを残したサウンドが特徴です。
ディストーションは、より強く信号をカットする「ハードクリッピング」が中心で、より深く激しく歪ませたサウンドです。ピッキングニュアンスが失われやすい硬質でパワフルな音色になる傾向があります。
どちらもクリッピングする点では共通していますが、現代のエフェクターは両方の要素を組み合わせているものも多く、メーカーや設計思想による違いも大きいです。
ハードに歪むエフェクターはディストーション、マイルドに歪むエフェクターはオーバードライブと呼ばれているのが現状です。
オーバードライブ・エフェクターの種類と分類

エレキギター博士流:歪みの量(レイヤー)順に分類したオーバードライブ・ペダル
オーバードライブ(OD)ペダルにはさまざまな種類があり、その特徴や得意分野はペダルによって異なります。
本記事では、歪みの量(レイヤー)順に、当サイト独自の視点でオーバードライブを5つの系統に分類し、それぞれの特徴や代表的な機種をご紹介します。
1)ローノイズ・クリーンブースト系
クリーンブースターやゲインブースター的に使えるペダルです。
「音色を大きく変えずに音量や押し出し感をアップしたい」というプレイヤーに向いています。歪みが少なく透明度が高いため、常時ONにしてクリーンな音に厚みを加える「かけっぱなし」用途にも適しています。
歪みの量:
ほとんど歪まない
代表機種:
Xotic RC Booster
TC Electronic Spark Mini Booster
以下の記事では、ギター博士が厳選したブースターペダル10機種を実際に弾き比べ、それぞれの違いを徹底比較しています。
2)ナチュラル / トランスペアレント系
トランスペアレント系オーバードライブは、ギターやアンプ本来の音色を極力損なわず、軽く持ち上げるような自然な歪みが特徴です。
EQセクションもフラット志向で、クリーンな音にわずかなサチュレーション(飽和感)を加えたり、音量や音圧感を調整したりする目的に適しています。
Gainを上げても音の輪郭を保ちやすく、シングルコイルの煌びやかさやハムバッカーの太さをそのまま活かせるため、ジャンルを問わず“原音重視”のプレイヤーに向いています。
歪みの量:
少なめ
代表機種:
Paul Cochrane Timmy
Vemuram Jan Ray
3)ミッド強調タイプ(TS系)
中音域(ミッド)を強調する特性を持つオーバードライブです。
いわゆる「チューブスクリーマー系(TS系)」に代表され、「ギターの存在感をアップしたい」「ソロで前に抜ける音が欲しい」というプレイヤーに向いています。
また歪みペダルやハイゲインアンプの前段に置いてブーストすると、低音をタイトに引き締めつつゲインを足せるので、ヘヴィなジャンルのギタリストにも愛用者が多いです。
ミッド強調タイプは「音抜け」を重視する人にオススメです。
歪みの量:
中程度
4)ケンタウロス系
ケンタウロス系は、名機「Klon Centaur」に代表されるオーバードライブで、透明感と中域の自然な持ち上がりを絶妙なバランスで両立しているのが特徴です。
内部ではゲルマニウムダイオードによるハードクリッピングを用いつつも、昇圧されたヘッドルームによって歪みはあくまでナチュラルで抜けが良く、ブースターとしての使い方にも適しています。
中域にわずかな押し出し感を与えることで、ソロ時にもバンドアンサンブル内で埋もれにくく、クリーンブーストからクランチまで幅広く対応可能。
ブルース〜オルタナ〜カントリーまで、アンプの歪みを補完・強化したいプレイヤーに好まれる系統です。
歪みの量:
中程度でやや幅が広い
代表機種:
Klon KTR
J. Rockett Archer
5)プレキシ系
プレキシ系は、60〜70年代の「Marshall Plexiアンプ(JTM45〜Super Lead)」に代表されるクラシックなブリティッシュサウンドを再現するオーバードライブです。
やや広めのローエンドと、ナチュラルな中域、そしてギラつきすぎない高域のバランスが特徴で、ウォームで厚みのあるクランチトーンが得られます。
プレキシ系はアンプライクな反応性を重視しており、ボリュームやピッキングに応じて歪み量が可変する特性を持つため、クラシックロックやブルース、ブリティッシュ系ギターサウンドを志向するプレイヤーにとって魅力的です。
歪みの量:
多め
代表機種:
Marshall BluesBreaker
Marshall Guv’nor
エレキギター博士「歪み系ペダルは、いわば“沼”。
もし気になる機種や系統があれば、ぜひ音源を聴いたり、さらに調べたりして、自分にとっての“ベストOD”を探す旅を楽しんでみてくだされよ!」
カテゴリ別:おすすめのオーバードライブ・エフェクター
ODペダルについていろいろ分類を見てきましたが、ここからは実際にどんなペダルを選べばよいか、カテゴリ別に紹介していきます。
初心者におすすめ!最初の一台に適した格安オーバードライブ・エフェクター
はじめてのオーバードライブ・ペダルを探している、そんな人におすすめしたい「コストパフォーマンスに優れたオーバードライブ・ペダル」を厳選して紹介します。
定番・人気のオーバードライブ
続いて紹介するのは、BOSS、Ibanez、Electro Harmonixといった定番メーカーのオーバードライブ・ペダル。発売からロングセラーを続けるモデルです。
さらにこだわりたい人向けのおすすめモデル
「定番だけじゃ物足りない、もっと歪みの音に拘りたい」という人にチェックして欲しい、高い評価を集めるオーバードライブ・ペダルを紹介します。
ハイエンド/多機能モデル
以上、オーバードライブペダルについて詳しくみていきました。
今回紹介した定番モデルからハイエンド機まで、それぞれに独自の魅力があり、あなたのプレイスタイルや求める音に合わせて最適な一台を見つけることができるでしょう。
「歪みペダル探しの旅」は、ギタリストにとって終わりのない冒険かもしれません。しかし、その旅こそが新たな音の可能性を開き、演奏の幅を広げてくれます。
ぜひ自分だけの「理想の歪み」を追求し、音楽の表現をさらに豊かなものにしてください。
まだ探し足りない?:
歪みエフェクター探しの旅を終わらせる総まとめ – Supernice!エフェクター
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