古さを感じない完成度の高さ「BOSS OD-3」

[記事公開日]2020/6/14 [最終更新日]2022/4/5
[ライター]森多健司 [編集者]神崎聡

BOSS OD-3

1973年にRolandのグループ会社として創業したBOSS。創業4年目にして、現在ギタリストの足下に必ず見られる四角い外観のコンパクトエフェクターシリーズが産声を上げました。BOSSのコンパクト・エフェクター・シリーズ初号機となる、赤のSP-1、緑のPH-1、そして黄色のOD-1 OVERDRIVEです。これらが送り出された1977年こそ、BOSS史上初めての歪みペダルにして「OVERDRIVE」という名の付いたエフェクターが初めて世に出た年でした。

そんなBOSSのオーバードライブ・ペダルの中でも、今回は1997年に登場した「OD-3」をみていきましょう。

BOSSオーバードライブの歴史

OD-1は発売当初、音色変化に乏しく、地味な存在として認識されていました。当時の歪みエフェクターの代表格でもあったファズのように、音を激変させる作りではなく、アンプのオーバーロードを模して作られていたため、それは当然であり、元より開発の思想自体が異なっていたと言えます。しかし、当時このような方向性の製品は他になく、OD-1は唯一の存在としてヒットしていきました。

1981年になると、OD-1にTONEコントロールを増設したSD-1が新たに登場し、モデルチェンジが行われます。このSD-1は現在でも現行品としてラインナップされており、BOSSの製品の中でも最長のロングセラーモデルとなっています。

様々なジャンルに適合する王道の音色「BOSS SD-1」

その後、1985年には高いゲインを持つODシリーズの新製品OD-2 TURBO Over Driveが登場。スタックアンプ的なサウンドを意識した同モデルの設計思想には、当時隆盛を誇ったハードロックが念頭にあったと思われます。このOD-2は90年代中期まで生産が続けられますが、それと入れ替わる形で1995年、BD-2 Blues Driverが発売されヒットを記録。それを横目にODの名を冠した新モデルであるOD-3が1997年に登場します。

万能型オーバードライブ:BOSS BD-2の魅力とは

OD-3はOD-1やOD-2の直系ではなく、90年代終わり頃のギターサウンドに合わせたオーバードライブとして、全く違う回路を搭載して登場した新製品でした。そして2014年、十数年を経て劇的に進化したデジタル技術をつぎ込んで開発されたのがOD-1Xです。BOSS独自のMDPという技術が使われ、初代OD-1を超えたいという思いを持ってOD-1Xと名付けられました。

BOSS OD-3の特徴

BOSS OD-3:コントロール

OD-3は1997年発売となっており、1977年に世に出たOD-1とは20年の開きがあります。その間、ギターの機材事情は大きく変わってきており、ODのナンバリング製品でありながら、両者のサウンドの方向性は全く違うものになっています。

2段階の増幅回路とクリッパー回路を併用した構造によって、OD-1やSD-1に比べ、高密度で強めのゲインが得られます。それに伴って長いサステインも実現しており、音が非常に良く伸びます。その反面、コンプレッション感が強く、同じBOSSの人気商品であるBD-2のように、ギターのボリュームに追従した歪み量の変化や、ピッキングニュアンスに敏感に反応する、といったような特徴はあまり感じられません。

中低域の強さも特徴の一つで、レスポールなどでゲインを上げてリフを弾くと、ずっしりとした低域を感じ取る事ができます。高域のアタック感は強くなく、鋭い音というよりは伸びやかなイメージの強い出音ではありますが、高域が不足しているわけではなく、コードストロークやカッティングでも弾いていて気持ちの良いサウンドに仕上げられています。まさに優等生な歪みエフェクターとしてあらゆる層のギタリストにおすすめできるモデルです。

何かに使えるシーンが見つかるはず

単体でそれなりのゲイン量を得ることができるので、ハードロックなどの深い歪みを必要とする音楽でなければ、トランジスタのクリーントーンアンプに直接接続しても十二分に使えるでしょう。また、クランチ~軽めのオーバードライブ程度のアンプをプッシュすると、エッジが効き中域がせり出したパワフルな音色となるため、アンプだけで物足りない時に、ゲイン量と存在感のある中域を確保する、あるいはソロ時のみオンにして、リードギター用のブースターとして機能させるなど、様々な目的に応じて使い方が考えられます。クセが無く汎用性が広いので、初心者から上級者まで、何かに使えるシーンが見つかるはずです。

BOSS OD-3:外観

他BOSSペダルとの違いは?

OD-1との違い

チューブアンプのオーバーロードを再現したOD-1は、あまり歪まない70年代当時のアンプのサウンドを元にしているため、単体ではかなり控えめな歪み量となっています。しかし、OD-3には感じられない、アンプの持つサチュレーションの再現度の高さや、出音の透明感など、優れた特徴を多く持っています。それに対してOD-3は、単体でも現代のアンプに迫る歪み量、そして豊かな中低域を持ち、JC-120のようなトランジスタのアンプに合わせても単体での歪み用として使えるように作られており、より汎用的な製品です。OD-1はゲイン量が少ないため、現代ではアンプのブースター役を担うことが多く、マルチエフェクター内の歪みペダルカテゴリには、主にブースター用として必ずと言っていいほどモデリングされています。人気の高いモデルですが、廃版後かなり経っているためプレミアが付き、正規の値段では手に入りません。特性の大部分はSD-1に引き継がれていますので、よほどのこだわりがなければそちらを入手する方が無難でしょう。

SD-1との違い

OD-1の登場後、数年で開発されたこのSD-1こそがOD-1直系の製品です。サウンドの傾向もOD-1に近く、オールドアンプのナチュラルなオーバーロードしたサウンドを、そのままエフェクターで作るといった趣きです。OD-3に比べると中低域の強さが控えめで、アンプの出音のまま全帯域ごと歪ませて前へ出すと言った雰囲気が強く、より素直な歪み方となります。単体での歪みとしてはゲイン量が物足りない場合が多く、ブースターとして使われるのが一般的ですが、ブーストした際の透明感とハリのあるサウンドは、中低域のプッシュ量が強く、重い音色になりやすいOD-3にはない特徴です。

BOSS SD-1 SUPER OverDrive – Supernice!エフェクター

OD-1Xとの違い

つまみがレベルとドライブしかないOD-1、そしてそれにトーンが加わったSD-1、OD-3に比べ、OD-1Xはレベル、ドライブ、HIGH、LOWの4つのつまみがあります。高域と中低域の2系統に分かれたコントロールは、調整される周波数帯が絶妙なポイントになっており、簡便かつ微細なセッティングに対応できます。2000年代に入ってから激増したブティック系エフェクターの影響もあるのか、出音はそれまでのBOSSの歪みエフェクターにはなかった広域なレンジを確保しており、しっかりした芯の中、きらめきとまとまりを感じさせます。歪みの幅もOD-3並か、それ以上に広いため、単体での歪みとしても十分に機能し、またドライブを下げた時にはクリーンブースター的な使い方にも対応できます。OD-3がアナログならではの、ある意味での野暮ったさがあるのに比べ、OD-1Xには整理されたスマートさがあり、ともに優秀なドライブペダルとして幅広く使える製品です。

BOSS OD-1X – Supernice!エフェクター


現行品でのあるSD-1、OD-1Xと比べても、また違った特性を持つOD-3。現在でも古さを感じない、その完成度の高さは手に入れやすい価格帯も相まって、長い間定番の1つとして語られています。まだ歪みエフェクターをよく知らない初心者から、熟練者にまでおすすめできる、幅広い使い方に対応できる逸品です。

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