
「リバーブ(reverb)」は、「残響」を生み出すエフェクターです。コンサートホールや学校の体育館で手を叩いてみると「パァーーーン!」と音が鳴り響く、そんな効果が得られます。空間感や深みを与えサウンドを一層豊かにする、また包み込むような残響にはリスナーを別世界の空間へいざなうような魅力があります。今回はこのリバーブ・エフェクターに注目し、使い方やおすすめモデルなど探求していきましょう。
- リバーブとは?
- リバーブの種類を、歴史で追ってみる
- リバーブ・エフェクトの使い方
- おすすめのリバーブ・ペダル
リバーブとは?
リバーブを知るために、まず「音」について、ちょっとしたお勉強をしましょう。音には「直接音」と「反射音」があります。
- 直接音:発生源から直接耳に入ってくる音。
- 反射音:床や壁に跳ね返ってから耳に入ってくる音。
反射音はあちこち跳ねかえる分だけ耳に入ってくるまでに時間がかかるので、遅れて聞こえたり、響きが残って聞こえたりします。反射音が「山びこ」のように一つ一つ判別できる聞こえ方を「反響(echo)」といい、エフェクターではディレイで再現されます。体育館の柏手「パーーン」のように、反射音の個々が判別できない聞こえ方を「残響(reverberation)」といい、エフェクターではリバーブで再現されます。
はじめてのリバーブ・エフェクター【ギター博士】
残響がギターの音を包み込むことで、音の太さや広がりが演出できます。またレゲエ風リズム・ギター(1分20秒~)のように残響をしっかり聞かせる、という手法も効果的です。
リバーブの種類を、歴史で追ってみる
ではこの残響を作るために、人類がどんな工夫を重ねてきたかを見ていきましょう。

パイプオルガンを設置する教会は、神の偉大さを象徴させるような、荘厳なリバーブが発生するよう設計されています。このほかコンサートホールでは音楽的で豊かな残響が、日本でもお寺の境内では悟りに導く残響が、それぞれ得られるよう計算されています。現在でも、無名時代にお風呂で録音した大物ミュージシャンの逸話が散見されます。
このように「反射音は空間で作られる」という概念が第一にあったため、世界初のリバーブ発生装置「エコーチェンバー」も、部屋の響きを利用していました。
部屋で響かせる「エコーチェンバー(1947~)」

エコーチェンバーを再現するプラグイン「WAVES Abbey Road Chambers」
エフェクターとして初めて使われたリバーブは、タイル張りのバスルームにスピーカとマイクを設置した「エコーチェンバー」です。録音したものをスピーカから流し、ここで得られた音をもとの音に混ぜる、という手法です。効果は絶大でしたが、響き加減が調節できず、また引越しが絶望的に困難なことなど制約が目立ちました。
板で響かせる「プレートリバーブ(1957~)」
「鉄板エコー」とも呼ばれた「プレートリバーブ」は、巨大な鉄板を吊るし、信号を振動に変換する装置を取り付ける、というものです。世界初のプレートリバーブ「EMT 140」は特にボーカルに良好な重厚な残響が得られ、今なおDAWのプラグインに採用されるほど支持されています。高さ4フィート(1.2メートル)、幅8フィート(2.4メートル)、重さ約600ポンド(270kg)という巨体ですが、残響の長さを操作でき、また気合いが充分なら運搬もできました。
バネで響かせる「スプリングリバーブ(1959~)」
プレートリバーブと同じ原理でバネを響かせる「スプリングリバーブ」は、発明こそ1939年と言われますが、改良されリバーブ装置として世に出されたのは1959年とされています。残響を調整する機能は付けられませんが、独特の暖かいサウンドを持ち、比較にならないほどの小型化軽量化に成功しました。
1960年に発表された「タイプ4」をフェンダーが採用し、名機「ツイン・リバーブ(1962~)」が生まれました。以来スプリングリバーブはギターアンプ搭載リバーブの定番で、ギタリストにとって最も馴染み深いサウンドです。なお、アンプを揺らすとスプリングが跳ねて、「ガシャーン!」と破壊的な音が出ます。
アンプ内蔵型のスプリングリバーブは通常ツマミ一個で、音量のみ調整します。なお「ツイン・リバーブ」は、スピーカーを2発搭載した「フェンダー・ツイン」にリバーブを追加するなど改良を施したアップグレード版です。リバーブが2系統あるわけではありません。
実物のスプリングリバーブ。3本のスプリングが並んでいる。
コンピュータで響かせる「デジタルリバーブ(1976~)」
演算処理で残響を再現する「デジタルリバーブ」は、1960年代初頭にはすでに発明されていたようです。しかしコンピュータの性能がまだまだ未発達で、ようやく実際の使用に耐える性能に達したのは1976年でした。デジタルリバーブはクッキリとした音像に加え、さまざまなパラメータの操作によっていろいろな残響を作ることができる利便性が強みです。ホールの響きを再現した「ホールリバーブ」、部屋の響きを再現した「ルームリバーブ」、今や常識的に使用されるこの二つは、デジタルあってのものです。今やエフェクターとして生産されるリバーブの、ほとんどがデジタルです。
バッサリ切る「ゲートリバーブ(1980’s)」
リバーブにノイズゲートをかけ、長く延びる残響をバッサリ切り落とす「ゲートリバーブ」は、特に1980年代のドラムの音に盛んに使用されました。やはりドラムのイメージが強いためか、ギターへの使用は限定的です。しかしごく稀に、ゲートのモードを搭載しているリバーブエフェクターも見られます。
デジタルの極致「サンプリングリバーブ(1999~)」
「畳み込み(convolution)」という特別な演算処理を行うことから「コンボリューションリバーブ」とも呼ばれる「サンプリングリバーブ」は、空間における響き方をサンプリングし、残響に空間の個性を反映させるリバーブです。自然の響きをそのまま再現してしまうので、現在もっとも美しいリバーブだと考えられています。
「shimmer(2009~)」など、別世界のリバーブ

自然で美しいリバーブへの追及は、いまのところサンプリングリバーブが担っています。これ以後のリバーブは、モジュレーションやピッチシフトなどを組み合わせる新しい発想によって、かつてない別世界のサウンドを積極的に作るようになっていきます。もっとも名高いのが、ストライモン「blueSky」の「shimmer(シマー)」モードです。「shimmer(きらめく)」の名の通り、時間の経過とともに次々と倍音が追加されていく、キラキラした残響が得られます。
Strymon blueSky Reverberator | Reverb Demo Video
他の音も大変美しいですが、最後に出てくるshimmerの異次元感たるや。ギターがシンセサイザーになちゃったかのよう。
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リバーブ・エフェクトの使い方
では、リバーブはどのように使うのかを見ていきましょう。近年では恐ろしく多機能なモデルがあり、演奏での活かし方もさまざまですが、基本を押さえておけばだいたい大丈夫です。
操作の基本
現代のリバーブでは、ふつう3つ以上のツマミが備わります。以下の3つを基本に、高機能なものにはモード切替やプリディレイ(残響の始まるタイミング)などが追加されます。
- 音量(LEVEL、MIX):残響の音量。必要以上に多い状態は「お風呂」と表現される。
- 音質(TONE、DAMP):残響の高音を削る。広い空間の残響は、高音が削れる。高機能なものは、ローカットとハイカットの両方を備える。
- 減衰(TIME、DECAY):残響の持続する時間を操作する。狭い空間の響きは短く、広い空間では長くなる。
現在流通しているリバーブは、多機能&多音色を売りにしているモデルが目立ちます。「そんなにたくさん、使いきれないよぉ」とひるんでしまいそうですが、フットスイッチいっこのエフェクターでライブに使用できる音色は1つですから、気に入った音だけ使えばいいのです。
リバーブ・エフェクターの接続順
特にこだわりが無ければリバーブ・ペダルは「エフェクター・ボードの一番後ろ」で使用し、アンプで歪みを作る場合にはエフェクトループを使いましょう。ディレイとセットで使うことも多いですが、反響(エコー)に残響が乗るのが自然の響き方ですから、やはりディレイの後ろにリバーブを接続させるのが王道です。でもこうした道から外れることで新しいものが生まれるかもしれませんから、興味のある人はいろいろ試してみてください。
では、ギターの演奏ではどう使うのか?
やや大雑把な分析ですが、ギターの演奏におけるリバーブの使い方は、だいたい以下の3種類に絞られます。
隠し味として、うすーく常時ON
特にアンプ内蔵型スプリングリバーブの、もっともポピュラーな使い方です。ドライなギターサウンドがほのかな残響に包まれることで、バンドサウンドに馴染みやすくなります。リバーブ量はお好みで大丈夫ですが、ギター単体ではかすかに聞こえる残響が、アンサンブルになると感じられなくなるくらいがちょうどよい塩加減です。
「ここぞ」という場面でしっかりかける
これこそ全エフェクターの、もっとも普通の使い方です。歯切れの良さが求められる場面以外なら、リバーブはいつでもがっつり使えます。しかしリバーブを起動させる多くの場合、ディストーションのON/OFFやコーラス、ディレイなど、ほかのデバイスの操作とセットになります。それゆえ、スイッチャーで操作をまとめたり猛スピードで次々と切り替えたりなど、工夫や鍛錬が必要となります。
常時たっぷりかけて、60年代風のサウンドを作る
フェンダー「ツイン・リバーブ」が誕生した60年代は、アタックの立つ硬いギターにスプリングリバーブをたっぷりかけた「革新的なサウンド」が一世を風靡しました。現代でもこの時代っぽいサウンドを作るなら、「厚いリバーブ常時ON」が王道です。
おすすめのリバーブ・ペダル
では、お勧めのリバーブを見ていきましょう。アンプやエフェクターには必ず「アナログこそ至高」という意見がありますが、ことリバーブについては「デジタル一強」と言って良い情勢です。
お財布に優しい使えるリバーブ
定番/人気のリバーブ・ペダル
強い個性を持った新時代リバーブ
人はいつも「これ以上はない」と思いがちですが、人間の発想や想像力には、限界がありません。行くところまで行ったと思われたリバーブの分野でも、新しい技術や柔軟な発想によってさまざまな新時代のサウンドが生み出されています。これら斬新なサウンドが定番化するかどうかは未来に任せるとして、そんな新しいサウンドに特化した個性的なリバーブを見ていきましょう。
ハイエンドな多機能リバーブ
音にこだわればこだわるほど、場面ごとに異なるリバーブを使いたい。そんな思いに応えることができるのが、ハイエンド多機能リバーブペダルです。これらハイエンドモデルは、演奏中にいくつものサウンドを切り替えられるほか、ノイズに悩まされることのない良好な音質がメリットです。
以上、様々なリバーブ・ペダルを紹介していきました。ぜひ、自分の音楽にリバーブの魔法を取り入れてみてください。そして、その奥深い世界にどんどん没入していってください。
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